StudyMed医師国家試験

「名乗れない」と「やってはいけない」―業務独占と名称独占を見分ける

第104回医師国家試験 C問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第104回 C問題 第15問

業務独占が認められているのはどれか。

  1. a.医師
  2. b.保健師
  3. c.社会福祉士
  4. d.介護福祉士
  5. e.理学療法士

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療・福祉の国家資格について、法律がどんな形で資格者を守っているかを問う問題だ。カギになるのは「業務独占」と「名称独占」という2つの考え方。まずこの違いを説明できるかな。
医学生医学生
公衆衛生の講義で出てきました。業務独占はその資格がないと仕事ができないもの、名称独占は資格がないと名乗れないもの、でしたよね。
ドクタードクター
その理解で合っている。もう少し正確に言うと、業務独占は資格のない人がその業務を行うと法律違反になるもの。名称独占は、その名称や紛らわしい名称を名乗ることは資格者に限られるけれど、業務そのものは資格のない人が行っても違法ではないもの。業務独占の資格には、通常、名称独占もセットで定められている。
医学生医学生
じゃあ「その業務を資格のない人がやったら困るかどうか」を考えれば判断できそうですね。
ドクタードクター
いい発想だね。それでは医師から考えよう。医師法第17条には「医師でなければ、医業をなしてはならない」とある。これが業務独占の規定で、第18条には別に名称独占の規定もある。
医学生医学生
医業というのは、診察や治療をすること全般ですか。
ドクタードクター
法的には、医師の医学的判断と技術がなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為、つまり医行為を、反復継続する意思をもって行うことを指す。無資格者が行えば刑事罰の対象になる。だから医師は業務独占資格で、これが正解だ。
医学生医学生
保健師は迷いました。助産師や看護師と同じ保健師助産師看護師法の資格なので、業務独占かと思っていました。
ドクタードクター
そこはよく狙われるポイントだよ。同じ法律の中でも、助産師の助産と、看護師の療養上の世話・診療の補助は業務独占。でも保健師の保健指導は、医師や管理栄養士など他の職種も行えるから、保健師は名称独占にとどまるんだ。
医学生医学生
地域実習で保健センターに行ったとき、栄養士さんも健診後の指導をしていたのを思い出しました。たしかに保健師さんだけの仕事ではないですね。
ドクタードクター
まさにその実感が大事。次は社会福祉士と介護福祉士。どちらも社会福祉士及び介護福祉士法に基づく資格だ。
医学生医学生
介護は家族もしていますし、相談に乗ることも資格がなくてもできるので、どちらも名称独占ですか。
ドクタードクター
その通り。社会福祉士は福祉に関する相談援助や関係機関との連絡・調整、介護福祉士は介護とその指導を担うけれど、業務自体は無資格の人も行える。病院の医療ソーシャルワーカーも、社会福祉士の資格を持つ人が多いけれど、資格がなければ働けないわけではないんだ。
医学生医学生
理学療法士はリハビリ科の実習で、医師の指示を受けて運動療法をしていました。専門性が高いので業務独占かと思いましたが。
ドクタードクター
そう感じるのは自然だけれど、理学療法士も名称独占資格だ。法的な位置づけが少し面白くて、理学療法は本来、看護師の業務独占である「診療の補助」の一部にあたる。理学療法士は、資格法の規定によって例外的に診療の補助として理学療法を業とすることが認められている、という整理なんだ。
医学生医学生
なるほど、作業療法士や臨床検査技師などのコメディカル職種も同じような構造なんですね。
ドクタードクター
多くはそう考えてよい。業務独占の資格としては、医師・歯科医師・薬剤師、助産師・看護師・准看護師、それに放射線を人体に照射する診療放射線技師などをまとめて覚えておこう。名称独占のみの資格には、保健師、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士、管理栄養士などがある。
医学生医学生
チーム医療で他職種と働くときにも、それぞれが法的に何をできるのか知っておく必要がありますね。
ドクタードクター
その通り。医師は他職種に指示を出す立場になることが多いから、誰にどこまで任せられるのかを法律の枠組みで理解しておくことが、安全な医療とタスク・シフトの土台になるよ。

まとめ

国家資格の法的な保護には、資格者以外がその業務を行えない「業務独占」と、資格者以外がその名称を名乗れない「名称独占」の2種類があります。医師は医師法第17条で業務独占、第18条で名称独占が定められており、無資格者の医業は刑事罰の対象です。保健師、社会福祉士、介護福祉士、理学療法士は名称独占のみで、業務自体は他職種や無資格者も行えます。特に同じ保健師助産師看護師法の中で、助産師・看護師は業務独占、保健師は名称独占である点は混同しやすい要注意ポイントです。各職種の法的な位置づけを理解することは、チーム医療で役割分担や指示を適切に行うための基本となります。

解答・解説

正解はaです

国家資格の法的な独占には「業務独占」と「名称独占」の2種類がある。 ・業務独占:その資格を持つ者だけがその業務を行うことができ、資格のない者が行うと法律違反となるもの。 ・名称独占:資格を持つ者だけがその名称(紛らわしい名称を含む)を名乗ることができるもの。業務そのものは無資格者が行っても違法ではない。 業務独占が認められる資格では、通常あわせて名称独占も規定されている。本問の選択肢のうち、業務独占が法律で定められているのは医師のみであり、保健師、社会福祉士、介護福祉士、理学療法士はいずれも名称独占資格である。各職種の根拠法と、その業務が他の者にも行えるかどうかを考えると判断しやすい。

選択肢考察

  1. ○a.  医師

    医師法第17条は「医師でなければ、医業をなしてはならない」と定め、業務独占を規定している。さらに第18条で「医師でなければ、医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない」と名称独占も定めている。ここでいう医業とは、医師の医学的判断と技術をもってしなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を、反復継続する意思をもって行うことである。無資格者が医業を行えば刑事罰の対象となる。

  2. ×b.  保健師

    保健師は保健師助産師看護師法に基づく資格で、保健師の名称を用いて保健指導に従事する者である。保健指導自体は他の職種も行えるため業務独占ではなく、名称独占資格にとどまる。なお、同法で業務独占が定められているのは助産師(助産)と看護師(療養上の世話・診療の補助)である。

  3. ×c.  社会福祉士

    社会福祉士は社会福祉士及び介護福祉士法に基づく資格で、身体・精神上の障害や環境上の理由により日常生活に支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言・指導や、医療・福祉サービス関係者との連絡・調整などの援助を行う。名称独占資格であり、相談援助業務は資格のない者も行うことができる。

  4. ×d.  介護福祉士

    介護福祉士は社会福祉士及び介護福祉士法に基づく資格で、日常生活に支障がある者に対し心身の状況に応じた介護を行い、本人や介護者に介護に関する指導を行う。名称独占資格であり、介護業務そのものは家族や無資格の介護職員も行える。

  5. ×e.  理学療法士

    理学療法士は理学療法士及び作業療法士法に基づく資格で、医師の指示の下、身体に障害のある者に対し主として基本的動作能力の回復を図るため、治療体操などの運動療法や、電気刺激・マッサージ・温熱などの物理療法を行う。名称独占資格であり業務独占は規定されていない。理学療法は看護師の業務独占である診療の補助の一部にあたるが、同法により理学療法士は診療の補助として理学療法を業とすることが認められている。

主な医療・福祉関係職種の独占の区分

業務独占(名称独占も伴う) ・医師、歯科医師、薬剤師 ・助産師、看護師、准看護師 ・診療放射線技師(放射線の人体への照射) など 名称独占のみ ・保健師 ・理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士 ・臨床検査技師 ・社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士 ・管理栄養士、栄養士 など

関連知識

・医師の名称独占(医師法第18条)は、業務独占(第17条)とは別の条文で定められている。 ・理学療法士などのコメディカル職種の多くは、看護師の業務独占である「診療の補助」の一部を、各資格法の規定により例外的に行うことが認められているという法的な位置づけにある。

POINT

・業務独占:資格者以外はその業務を行えない。名称独占:資格者以外はその名称を名乗れない。 ・医師は医師法第17条で業務独占、第18条で名称独占。 ・保健師、社会福祉士、介護福祉士、理学療法士は名称独占のみ。 ・保助看法の中でも、助産師・看護師は業務独占、保健師は名称独占である点に注意。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。