StudyMed医師国家試験

「とこずれ」「たむし」「鳥目」―患者の言葉を医学に翻訳する力

第104回医師国家試験 C問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第104回 C問題 第14問

疾患とその俗称の組合せで正しいのはどれか。

  1. a.褥瘡 ―― とこずれ
  2. b.食中毒 ―― 湯あたり
  3. c.蛇咬症 ―― こむら返り〈こぶら返り〉
  4. d.寄生虫症 ―― たむし
  5. e.ビタミンC欠乏症 ―― 鳥目

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、疾患とその俗称の組合せを選ぶ問題だ。一見すると雑学のようだけど、実は医療面接の基本に直結している。患者さんは医学用語ではなく、日常の言葉で症状や病名を語るからね。それぞれの俗称が本当は何を指しているのか、一つずつ確かめていこう。
医学生医学生
OSCEの医療面接の練習で、模擬患者さんに「めばちこができて」と言われて一瞬固まったことがあります。
ドクタードクター
関西で使う麦粒腫の俗称だね。地域によって呼び方も違うから、こういう知識は意外と役に立つ。まず「とこずれ」はどうかな。
医学生医学生
寝床でこすれてできる傷なので、褥瘡のことですよね。
ドクタードクター
正解。褥瘡は、寝たきりなどで長時間同じ姿勢が続き、骨の出っ張った部分の皮膚や皮下組織が圧迫されて血流が途絶え、壊死や潰瘍に至る病態だ。仙骨部、大転子部、踵、坐骨部が好発部位。これが正しい組合せになる。
医学生医学生
「湯あたり」は、食べ物にあたるのと同じ感じで食中毒の別名かと思ってしまいました。
ドクタードクター
そこはひっかけだね。食中毒の俗称は「食あたり」。「湯あたり」は長湯や温泉への頻回の入浴でのぼせ、だるさ、めまい、動悸などが出る状態を指す言葉で、特定の疾患名に一対一で対応するものではない。
医学生医学生
「こむら返り」は「こぶら返り」とも書いてあるので、コブラに咬まれることかと一瞬思いました。
ドクタードクター
そう思わせる意地悪な選択肢だね。「こむら」はふくらはぎの古い呼び方で、こむら返りは主に腓腹筋に起こる有痛性の筋けいれん、つまり筋クランプのこと。「こぶら」はその訛りで、蛇とはまったく関係がない。蛇咬症に対応する一般的な俗称は特にないんだ。
医学生医学生
「たむし」は「むし」とつくので寄生虫っぽいですが、皮膚科の実習で白癬だと教わりました。
ドクタードクター
よく覚えているね。たむしは体部白癬の俗称で、白癬菌という真菌による感染症だから寄生虫症ではない。同じ白癬でも部位で呼び名が変わって、陰股部白癬が「いんきんたむし」、足白癬が「みずむし」、頭部白癬が「しらくも」だ。
医学生医学生
最後の「鳥目」は夜盲症ですよね。でも原因はビタミンCではなくビタミンAだったはずです。
ドクタードクター
その通り。網膜の杆体にある視物質ロドプシンの合成にビタミンAが必要だから、欠乏すると暗い所で見えにくくなる。ビタミンC欠乏症は壊血病で、コラーゲン合成が障害されて歯肉出血、皮下出血、創傷治癒の遅れなどが起こる。
医学生医学生
生化学で習ったビタミン欠乏症の表を思い出しました。B1が脚気とWernicke脳症、Dがくる病と骨軟化症、Kが出血傾向でしたね。
ドクタードクター
完璧だ。この問題は俗称とビタミンの知識を同時に確認しているわけだね。ほかにもよく出会う俗称を押さえておこう。おたふくかぜは流行性耳下腺炎、三日ばしかは風疹、とびひは伝染性膿痂疹、みずぼうそうは水痘、あせもは汗疹、しもやけは凍瘡、ぎっくり腰は急性腰痛症だ。
医学生医学生
小児科の実習でも、保護者の方は「とびひ」や「みずぼうそう」と言うことがほとんどでした。
ドクタードクター
そうだろうね。大事なのは、患者さんの言葉をそのまま受け取るだけでなく、医学的な概念に置き換えて鑑別を考えることだ。逆に説明するときは、専門用語を並べるより、患者さんに伝わる言葉を選ぶ必要がある。そして褥瘡は、臨床で本当によく出会う。体位変換、体圧分散マットレス、栄養管理、皮膚の観察で予防することが、病棟では医師にも求められるよ。
医学生医学生
俗称を知っていることは、患者さんとのコミュニケーションの道具なんですね。
ドクタードクター
その通り。言葉の橋渡しができると、問診の精度も説明の分かりやすさも上がる。地味だけど、一生使う知識だよ。

まとめ

「とこずれ」は寝たきりなどによる骨突出部への持続的な圧迫で生じる褥瘡の俗称であり、正しい組合せです。食中毒の俗称は「湯あたり」ではなく「食あたり」、「こむら返り」はふくらはぎの有痛性筋けいれんで蛇咬症とは無関係、「たむし」は体部白癬という真菌症で寄生虫症ではなく、「鳥目」は夜盲症でビタミンA欠乏が代表的な原因です(ビタミンC欠乏は壊血病)。ほかにもおたふくかぜ=流行性耳下腺炎、三日ばしか=風疹、とびひ=伝染性膿痂疹、みずむし=足白癬など、臨床でよく耳にする俗称は多くあります。患者の日常語を医学的概念に正しく置き換え、説明の際には伝わる言葉を選ぶ力は、医療面接と患者説明の土台となる基本的な臨床能力です。

解答・解説

正解はaです

患者は医学用語ではなく日常語(俗称)で症状や病名を訴えることが多い。医療面接では、患者の言葉を正しく医学的な概念に置き換え、逆に説明の際には患者に伝わる言葉を選ぶ必要がある。本問はその基礎として、代表的な俗称と正式な疾患名との対応を問うている。 考え方としては、各俗称が「何を指すか」をまず思い浮かべ、それが左側の疾患名と一致するかを確認すればよい。「とこずれ」は寝床(とこ)で体がこすれ・圧迫されてできる傷、すなわち褥瘡である。一方、「湯あたり」は入浴、「こむら返り」は筋肉のけいれん、「たむし」は真菌、「鳥目」は夜盲を指し、いずれも組み合わされた疾患名とは対応しない。

選択肢考察

  1. ○a.  褥瘡 ―― とこずれ

    褥瘡(じょくそう)は、長時間同じ姿勢で寝たきりになることなどにより、骨の突出部の皮膚・皮下組織が持続的に圧迫されて血流が途絶え、壊死・潰瘍に至る病態である。寝床で生じることから俗に「とこずれ(床ずれ)」と呼ばれる。仙骨部、大転子部、踵部、坐骨部などに好発する。対応は正しい。

  2. ×b.  食中毒 ―― 湯あたり

    「湯あたり」は、長湯や温泉への頻回の入浴によってのぼせ、倦怠感、めまい、動悸などの不調をきたす状態を指す俗称であり、特定の医学的疾患名に一対一で対応するものではない。食中毒の俗称は「食あたり」であり、「湯あたり」とは異なる。

  3. ×c.  蛇咬症 ―― こむら返り〈こぶら返り〉

    「こむら」はふくらはぎの古称であり、「こむら返り」は主に腓腹筋に生じる有痛性の筋けいれん(筋クランプ, muscle cramp)を指す。「こぶら返り」はその訛りで、蛇のコブラとは関係がない。蛇咬症(毒蛇などに咬まれた外傷・中毒)に対応する一般的な俗称の名詞は特にない。

  4. ×d.  寄生虫症 ―― たむし

    「たむし」は体部白癬の俗称であり、白癬菌(皮膚糸状菌)による真菌感染症である。名称に「むし」とあるが寄生虫症ではない。同じ白癬でも部位により俗称が異なり、陰股部白癬は「いんきんたむし」、足白癬は「みずむし」、頭部白癬は「しらくも」と呼ばれる。

  5. ×e.  ビタミンC欠乏症 ―― 鳥目

    「鳥目」は暗い所で物が見えにくくなる夜盲症の俗称である(多くの鳥が夜間に視力が落ちると信じられていたことに由来する)。夜盲症の代表的な原因はビタミンA欠乏で、網膜の杆体視細胞にある視物質ロドプシンの合成にビタミンAが必要なためである。ビタミンC欠乏症は壊血病であり、コラーゲン合成障害による歯肉出血、皮下出血、創傷治癒遅延などをきたす。

主な俗称と医学用語の対応

・とこずれ(床ずれ):褥瘡 ・食あたり:食中毒 ・こむら返り(こぶら返り):腓腹筋などの有痛性筋けいれん(筋クランプ) ・たむし:体部白癬(真菌症) ・いんきんたむし:陰股部白癬 ・みずむし:足白癬 ・しらくも:頭部白癬 ・鳥目:夜盲症(ビタミンA欠乏などが原因) ・ものもらい(めばちこ):麦粒腫 ・あせも:汗疹 ・おたふくかぜ:流行性耳下腺炎 ・みっか(三日)ばしか:風疹 ・とびひ:伝染性膿痂疹 ・みずぼうそう:水痘 ・ぎっくり腰:急性腰痛症 ・しもやけ:凍瘡

ビタミン欠乏症の整理

・ビタミンA:夜盲症、角膜乾燥症 ・ビタミンB1:脚気、Wernicke脳症 ・ビタミンC:壊血病 ・ビタミンD:くる病(小児)、骨軟化症(成人) ・ビタミンK:出血傾向(新生児メレナなど)

POINT

・とこずれ=褥瘡。骨突出部への持続圧迫で生じる。 ・食中毒の俗称は「食あたり」であり、「湯あたり」ではない。 ・こむら返りは筋けいれん(ふくらはぎ)で、蛇とは無関係。 ・たむしは白癬(真菌症)であり寄生虫症ではない。 ・鳥目=夜盲症=ビタミンA欠乏。ビタミンC欠乏は壊血病。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。