赤い目は「どこが赤いか」で読む―毛様充血が告げる急性閉塞隅角緑内障発作
第104回医師国家試験 B問題 第21問
国試問題にチャレンジ
毛様充血をきたすのはどれか。
- a.結膜炎
- b.加齢黄斑変性
- c.網膜色素変性
- d.正常眼圧緑内障
- e.急性閉塞隅角緑内障発作
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
眼の充血は、結膜表層の血管が拡張する結膜充血と、前毛様動脈系の深層(上強膜)血管が拡張する毛様充血に分けられます。結膜充血は円蓋部で強い鮮紅色で可動性があり血管収縮薬で消えやすく、結膜炎が代表です。毛様充血は角膜輪部周囲に強い暗赤紫色で動かず、角膜炎、虹彩毛様体炎、強膜炎、急性閉塞隅角緑内障発作など前眼部深部の病変を示唆します。急性閉塞隅角緑内障発作では毛様充血に加えて眼痛、視力低下、角膜浮腫、虹視症、中等度散瞳、浅前房、頭痛・嘔吐がみられ、緊急の眼圧下降が必要です。一方、加齢黄斑変性・網膜色素変性・正常眼圧緑内障など網膜や視神経の慢性疾患では充血は生じず、「どこが、どんな色で赤いか」を見ることが重症度判断の第一歩になります。
解答・解説
正解はeです
テーマ
眼の充血(いわゆる「目が赤い」)は、結膜充血と毛様充血の2種類に大別される。どちらのタイプかを見分けることは、病変が眼表面の結膜にとどまるのか、角膜・虹彩・毛様体といった眼球内部(前眼部深部)に及んでいるのかを推定する手がかりとなる。
結膜充血と毛様充血の違い
・結膜充血: 結膜表層の血管(後結膜動脈の枝)が拡張したもの。結膜円蓋部(まぶたの裏と眼球の結膜が折り返す部分)で最も強く、角膜に近づくほど弱くなる。色は鮮紅色で、血管は網目状・蛇行状に見え、円蓋部に近いほど太い。結膜とともに可動性があり、血管収縮薬(アドレナリン等)の点眼で消退しやすい。 ・毛様充血: 前毛様動脈から分かれる深層(上強膜)の血管が拡張したもの。角膜輪部(角膜と強膜の境界)の周囲に強く、輪部から放射状・直線状に走り、輪部に近いほど太い。色は紫がかった暗赤色で、結膜を動かしても血管は動かず、血管収縮薬で消えにくい。
設問の考え方
毛様充血は、角膜炎、虹彩毛様体炎(前部ぶどう膜炎)、強膜炎、急性閉塞隅角緑内障発作など、角膜や眼内の前部に炎症や急激な眼圧上昇がある疾患で出現する。選択肢の中では、急性閉塞隅角緑内障発作がこれに該当する。一方、結膜炎は結膜充血の代表であり、網膜・視神経など眼球後部の慢性疾患(加齢黄斑変性、網膜色素変性、正常眼圧緑内障)では通常、充血は生じない。
選択肢考察
- ×a. 結膜炎
結膜炎は、ウイルス(アデノウイルスなど)、細菌、クラミジア、アレルギーなどによって結膜に炎症が起こる疾患で、結膜表層の血管が拡張する結膜充血をきたす代表的疾患である。充血は結膜円蓋部で最も強く角膜輪部に向かうほど弱い鮮紅色のもので、眼脂(めやに)、流涙、かゆみ(アレルギー性の場合)などを伴う。角膜や眼内に病変が及ばないかぎり毛様充血は伴わず、視力も通常は低下しない。
- ×b. 加齢黄斑変性
加齢黄斑変性は、加齢に伴って網膜の中心部である黄斑が障害される疾患である。脈絡膜から異常な新生血管が生じて出血や滲出をきたす滲出型と、網膜色素上皮などが徐々に萎縮する萎縮型がある。症状は変視症(ものがゆがんで見える)、中心暗点、視力低下であり、病変は眼球後部の網膜・脈絡膜に限局するため、外眼部の充血はきたさない。
- ×c. 網膜色素変性
網膜色素変性は、主に視細胞(最初は杆体、のちに錐体)が遺伝的な原因で進行性に変性する疾患である。夜盲で始まり、輪状暗点から求心性視野狭窄へと進行し、末期には中心視力も低下する。眼底には骨小体様色素沈着、網膜血管の狭細化、視神経乳頭の蝋様萎縮がみられ、網膜電図(ERG)は減弱〜消失する。炎症や眼圧上昇を伴う疾患ではなく、充血はきたさない。
- ×d. 正常眼圧緑内障
正常眼圧緑内障は、眼圧が統計的な正常範囲(おおむね21mmHg以下)にありながら、緑内障性の視神経乳頭陥凹の拡大と、それに対応する視野欠損が進行する開放隅角緑内障の一病型である。日本人の緑内障では最も多い病型とされる。眼圧の急上昇や炎症はなく、自覚症状に乏しいまま慢性に進行するため、充血はきたさない。
- ○e. 急性閉塞隅角緑内障発作
急性閉塞隅角緑内障発作は、虹彩が前方に押し出されて隅角(房水の出口)が急激に閉じ、房水が流出できなくなって眼圧が著しく上昇(しばしば40〜50mmHg以上)する病態である。高度の眼圧上昇によって前眼部の深層血管がうっ血し、角膜輪部周囲に強い毛様充血が出現する(結膜充血を伴って混合充血となることも多い)。ほかに激しい眼痛、急激な視力低下、角膜浮腫(角膜の混濁)、虹視症(光の周りに虹のような輪が見える)、中等度散瞳と対光反射の減弱・消失、浅前房がみられ、頭痛・悪心・嘔吐を伴うため、脳血管障害や消化器疾患と誤認されることがある。放置すると短時間で失明に至るため、緊急の眼圧下降治療(高浸透圧薬の点滴、縮瞳薬・炭酸脱水酵素阻害薬などの点眼・内服)とレーザー虹彩切開術などが必要である。
充血の種類と原因疾患
・結膜充血: 結膜炎(ウイルス性、細菌性、アレルギー性)、ドライアイ、結膜への機械的刺激など ・毛様充血: 角膜炎・角膜潰瘍、虹彩毛様体炎(前部ぶどう膜炎)、強膜炎、急性閉塞隅角緑内障発作、眼内炎など ・両者が混在するものを混合充血と呼び、炎症が強い場合にしばしばみられる。 ・結膜下出血は血管の破綻による出血で、境界明瞭な一様な赤色を呈し、充血(血管の拡張)とは区別する。
見分け方のポイント
・最も赤い部位: 結膜充血は円蓋部、毛様充血は角膜輪部周囲 ・色調: 結膜充血は鮮紅色、毛様充血は紫がかった暗赤色 ・血管の走行: 結膜充血は網目状・蛇行状、毛様充血は輪部から放射状・直線状 ・可動性: 結膜充血の血管は結膜とともに動くが、毛様充血の血管は動かない ・血管収縮薬点眼への反応: 結膜充血は消退しやすく、毛様充血は消えにくい
緑内障の主な病型
・原発開放隅角緑内障(正常眼圧緑内障を含む): 慢性に進行し自覚症状に乏しい。 ・原発閉塞隅角緑内障: 遠視眼、高齢、女性に多い。散瞳(暗所、抗コリン薬など)を契機に急性発作を起こすことがある。 ・続発緑内障: ぶどう膜炎、ステロイド、糖尿病網膜症による血管新生緑内障などに続発する。
毛様充血をみたら
毛様充血は、角膜や眼内に病変が及んでいる可能性を示す「重い目の赤み」の徴候であり、視力低下や眼痛を伴う場合は眼科への緊急紹介を考える。
POINT
・結膜充血: 円蓋部で最も強い鮮紅色、表層、可動性あり、血管収縮薬で消える → 結膜炎など。 ・毛様充血: 角膜輪部周囲に強い暗赤紫色、深層(上強膜)、放射状・直線状、可動性なし → 角膜炎、虹彩毛様体炎、強膜炎、急性閉塞隅角緑内障発作。 ・急性閉塞隅角緑内障発作: 眼痛、頭痛・嘔吐、視力低下、角膜浮腫、虹視症、中等度散瞳、浅前房、高眼圧、毛様充血。 ・網膜や視神経の慢性疾患(加齢黄斑変性、網膜色素変性、正常眼圧緑内障)では充血はみられない。
