StudyMed医師国家試験

うなじの赤いあざは心配いらない?―ウンナ母斑を「出現時期・隆起・部位」で見極める

第104回医師国家試験 A問題 第57問

国試問題にチャレンジ

第104回 A問題 第57問

1か月の乳児。項部の紅斑を主訴に来院した。在胎39週3日,正常頭位分娩で出生した。身長52 cm,体重3,900 g。紅斑は出生時から認めていた。活気があり哺乳も良好である。項部の写真を別に示す。  母親への説明として適切なのはどれか。

第104回 A問題 第57問の問題画像
  1. a.「苺状に隆起します」
  2. b.「レーザー療法を行います」
  3. c.「ほとんどが自然に消えます」
  4. d.「新生児の10%にみられます」
  5. e.「出血しやすいので注意しましょう」

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、赤ちゃんのうなじにある赤いあざについて、お母さんにどう説明するかを考える問題だ。血管性のあざは見た目が似ていても、自然経過や治療方針がまったく違う。注目してほしいのは「いつからあるか」「盛り上がっているか」「どこにあるか」の3点だよ。
医学生医学生
赤いあざというと、まず苺状血管腫が浮かびました。小児科の講義でも一番時間をかけて習った気がします。
ドクタードクター
鑑別の筆頭に挙げるのは正しい姿勢だね。ただ、苺状血管腫、今の呼び方でいう乳児血管腫は、血管内皮細胞が増える良性腫瘍で、出生時にはないかごく小さく、生後数日から数週で出てきて、数か月かけて鮮やかな赤色に盛り上がってくるのが典型なんだ。今回の写真はどうだろう。
医学生医学生
うなじの真ん中あたりに、境界がややぼんやりした淡い赤色の斑があって、盛り上がりはなさそうです。しかも生まれたときからあったんですよね。
ドクタードクター
その通り。出生時から存在する平坦な紅斑は、腫瘍ではなく真皮の毛細血管が拡張した「毛細血管奇形」の系統と考える。その中で、体の正中に出るものを正中部母斑と呼び、うなじや後頭部ならウンナ母斑、おでこの真ん中や眉間、まぶたならサーモンパッチというんだ。
医学生医学生
出生時から平坦な赤あざだと、ポートワイン母斑とはどう区別するんでしょうか。皮膚科の実習でSturge-Weber症候群の患者さんを見て、印象に残っています。
ドクタードクター
いい質問だ。ポートワイン母斑、旧称の単純性血管腫も出生時からある平坦な紅斑だけど、顔や体に片側性・分節状に分布しやすく、自然には消えないどころか、年齢とともに色が濃くなったり厚くなったりする。それに対して正中部母斑は名前の通り正中に出て、成長とともに薄くなる傾向がある。分布と自然経過が決定的に違うんだ。
医学生医学生
では、お母さんへの説明としては「ほとんどが自然に消えます」が正しいということですね。
ドクタードクター
正解。正中部母斑は自然に薄くなったり消えたりすることが多いから、基本は経過観察でいい。ただし細かく言うと、眉間やまぶたのサーモンパッチは多くが1〜2歳頃までに消えるのに対し、うなじのウンナ母斑はそれより残りやすく、大人まで淡く残ることもある。それでも髪に隠れる場所なので、困ることは少ないんだ。
医学生医学生
「苺状に隆起します」は、さっきの乳児血管腫の説明ですよね。
ドクタードクター
そう。盛り上がるのは内皮細胞が増殖する乳児血管腫の特徴で、拡張した毛細血管によるウンナ母斑が経過中に盛り上がることはない。お母さんに「これから盛り上がる」と伝えたら、不要な不安を与えてしまうね。
医学生医学生
レーザー療法を勧めるのも違いますか。あざにはとりあえずレーザー、というイメージがありました。
ドクタードクター
そのイメージは半分正しい。パルス色素レーザーがよく効くのは、自然に消えないポートワイン母斑や、顔で目立つサーモンパッチが残った場合だ。ウンナ母斑は自然に薄くなることが多く、髪で隠れて整容面の問題も小さいから、初めからレーザーを勧めるのは適切ではないんだ。
医学生医学生
頻度の「新生児の10%」は、もっと多かったような気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。正中部母斑は新生児で最もよく見られる血管性病変で、報告によって幅はあるけれど、およそ20〜40%、それ以上とする報告もある。10%では少なすぎる。新生児室でうなじを見ると、実際かなりの赤ちゃんに見つかるよ。
医学生医学生
出血しやすいというのも、平坦で表皮が正常なら起こりにくそうですね。
ドクタードクター
その推論で合っている。ウンナ母斑は真皮内の毛細血管が拡張しているだけで、表皮は保たれているから、潰瘍や出血は通常起こらない。出血や潰瘍が問題になるのは、口唇やおむつ部など擦れやすい場所の乳児血管腫や、化膿性肉芽腫のような病変だね。
医学生医学生
つまり、出生時からか生後に出てきたか、平坦か隆起か、正中か片側か、の3つで整理すればいいわけですね。
ドクタードクター
まさにそれが鑑別の骨格だ。発展として、乳児血管腫のうち眼の周りや気道の近く、潰瘍を作るものはプロプラノロール内服が第一選択になる。またポートワイン母斑が三叉神経第1枝領域にあれば、脳軟膜の血管奇形やてんかん、緑内障を伴うSturge-Weber症候群を考える。そして臨床で大事なのは説明の仕方だ。赤ちゃんのあざを心配して来たお母さんに、自然経過を正しく伝えて安心してもらうことが、何よりの治療になるんだよ。
医学生医学生
乳児健診の見学で、保健師さんが「これはコウノトリのくちばしの跡って言われるんですよ」と説明していて、お母さんがほっとしていたのを思い出しました。
ドクタードクター
いいエピソードだね。正確な知識に、相手を安心させる言葉を添えられると、説明の質がぐっと上がる。国試でも臨床でも、病名を当てるだけでなく、その先の説明までできるようにしておこう。

まとめ

出生時から項部にある平坦な淡紅色斑はウンナ母斑で、前額正中・眉間・上眼瞼のサーモンパッチとあわせて正中部母斑(nevus simplex)と呼ばれる毛細血管奇形です。新生児の20〜40%程度にみられる頻度の高い病変で、隆起や出血は起こさず、成長とともに薄くなる傾向があるため原則として経過観察とします(ウンナ母斑はサーモンパッチより残存しやすいものの、髪に隠れて問題になりにくい)。生後に出現して苺状に隆起するのは乳児血管腫、片側性に分布して自然消退せずパルス色素レーザーの対象となるのはポートワイン母斑であり、「出現時期・隆起の有無・分布」で整理すると鑑別しやすくなります。血管性のあざの自然経過を正しく理解することは、保護者に適切な説明をして不要な不安や治療を避けるための基本となります。

解答・解説

正解はcです

所見の整理

・生後1か月の乳児。正期産・正常分娩で、体格も正常、活気・哺乳ともに良好であり、全身状態に問題はない。 ・項部(うなじ)に出生時から紅斑がある。 ・写真では、項部正中付近に境界がやや不明瞭な淡紅色〜紅色の斑がみられ、皮膚面からの隆起はない。

診断へのプロセス

出生時から存在する、隆起しない紅色斑であることから、真皮の毛細血管の拡張・増生による血管性病変(毛細血管奇形の系統)を考える。 鑑別として重要なのは乳児血管腫(いわゆる苺状血管腫)である。乳児血管腫は血管内皮細胞が増殖する良性腫瘍で、多くは生後数日〜数週で出現し、数か月かけて鮮紅色に盛り上がる。本例は出生時から存在し、隆起もないため、乳児血管腫とは考えにくい。 毛細血管奇形のうち、顔面・体幹・四肢に片側性に分布して生涯持続するもの(ポートワイン母斑、旧称:単純性血管腫)と、正中部に生じる正中部母斑(nevus simplex)とを区別する。正中部母斑は、項部に生じるものをウンナ母斑、前額正中・眉間・上眼瞼に生じるものをサーモンパッチと呼ぶ。本例は項部の平坦な淡紅色斑であり、ウンナ母斑と診断する。

設問の考え方

母親への説明としては、この病変の自然経過(多くは自然に薄くなる、あるいは消える)、頻度(新生児によくみられる)、治療方針(原則として経過観察)、合併症(出血や隆起は起こらない)を正しく伝える必要がある。乳児血管腫やポートワイン母斑の特徴と混同しないことがポイントである。

選択肢考察

  1. ×a.  「苺状に隆起します」

    苺のように鮮紅色に盛り上がるのは乳児血管腫(苺状血管腫)の特徴である。乳児血管腫は生後まもなく出現して増大期に隆起し、その後年単位で退縮する。ウンナ母斑は拡張した毛細血管による平坦な紅斑であり、経過中に隆起することはない。

  2. ×b.  「レーザー療法を行います」

    ウンナ母斑は自然に薄くなることが多く、また頭髪に隠れる部位で整容面の問題も少ないため、原則として経過観察とする。色素レーザー(パルス色素レーザー)の良い適応となるのは、自然消退しないポートワイン母斑(旧称:単純性血管腫)や、顔面で目立つサーモンパッチが残存した場合などである。本例に初めからレーザー治療を勧める説明は適切でない。

  3. ○c.  「ほとんどが自然に消えます」

    正中部母斑(ウンナ母斑・サーモンパッチ)は、生涯持続するポートワイン母斑とは異なり、成長とともに色調が薄くなり自然消退することが多い。そのため治療は不要で、経過観察でよいと説明するのが適切である。なお、眉間・眼瞼のサーモンパッチはほとんどが1〜2歳頃までに消えるのに対し、項部のウンナ母斑はそれより残りやすく、成人まで淡く残ることもあるが、頭髪に隠れるため問題になることは少ない。

  4. ×d.  「新生児の10%にみられます」

    正中部母斑は新生児に最もよくみられる血管性病変で、頻度は報告によって差があるものの、新生児のおよそ20〜40%程度(報告によってはそれ以上)とされる。10%という説明は実際より少なく、不正確である。

  5. ×e.  「出血しやすいので注意しましょう」

    ウンナ母斑は真皮内の毛細血管の拡張によるもので、表皮は正常に保たれており、潰瘍や出血を起こすことは通常ない。出血・潰瘍形成が問題となるのは、隆起した乳児血管腫(特に口唇・おむつ部など擦れやすい部位)や化膿性肉芽腫などである。

小児の主な血管性病変

血管性病変は、国際的な分類(ISSVA分類)で、内皮細胞が増殖する「血管性腫瘍」と、血管の形成異常である「血管奇形」に大別される。 1.乳児血管腫(苺状血管腫)=血管性腫瘍 ・出生時にはないか、ごく小さく、生後数日〜数週で出現する。 ・生後数か月にかけて急速に増大し、鮮紅色で隆起する(増殖期)。その後、数年かけて退縮する(退縮期)が、たるみや瘢痕を残すことがある。 ・眼周囲・気道周囲・潰瘍形成例などではプロプラノロール内服が第一選択となる。 2.毛細血管奇形 (1)ポートワイン母斑(旧称:単純性血管腫) ・出生時から存在する平坦な紅斑で、片側性・分節状に分布しやすい。 ・自然消退せず、加齢とともに色調が濃くなり、肥厚・結節を生じることもある。 ・パルス色素レーザーが治療の中心である。 ・三叉神経第1枝領域の病変では、Sturge-Weber症候群(脳軟膜の血管奇形、てんかん、緑内障)を考える。 (2)正中部母斑(nevus simplex) ・サーモンパッチ:前額正中・眉間・上眼瞼・鼻下などに生じる。多くは1〜2歳頃までに消退する。 ・ウンナ母斑:項部・後頭部に生じる。サーモンパッチより残存しやすいが、髪に隠れ問題になりにくい。 ・いずれも平坦で、隆起・出血はなく、原則として経過観察とする。

鑑別のポイント

・出生時から存在する平坦な紅斑 → 毛細血管奇形(正中ならnevus simplex、片側性ならポートワイン母斑) ・生後に出現し隆起する鮮紅色の腫瘤 → 乳児血管腫 ・自然消退するか:正中部母斑と乳児血管腫は消退傾向あり、ポートワイン母斑は消退しない。

POINT

・項部の出生時からある平坦な淡紅色斑はウンナ母斑、前額・眉間・眼瞼ならサーモンパッチ(あわせて正中部母斑)。 ・正中部母斑は新生児の20〜40%程度にみられる頻度の高い病変で、自然消退傾向があり経過観察でよい。 ・隆起せず、出血もしない。 ・苺状に隆起するのは乳児血管腫、自然消退せずレーザー治療の対象となるのはポートワイン母斑(旧称:単純性血管腫)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。