「高分化」「エストロゲン」「手術」―3つの鍵で読み解く子宮内膜類内膜癌Grade 1
第103回医師国家試験 I問題 第36問
国試問題にチャレンジ
子宮内膜類内膜腺癌Grade 1で正しいのはどれか。3つ選べ。
- a.未分化癌である。
- b.50~70歳に好発する。
- c.肥満は発症のリスク因子である。
- d.臨床進行期は画像診断で決定する。
- e.放射線感受性は子宮頸癌に比べて低い。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
子宮内膜類内膜癌は子宮体癌の大部分を占める組織型で、Grade 1は充実性部分が5%以下の高分化型を指し、未分化癌とは異なります。エストロゲン依存性のタイプⅠ体癌の典型であり、50〜60歳代を中心に閉経前後から閉経後に多く、肥満・未産・多嚢胞性卵巣症候群・エストロゲン単独療法・タモキシフェンなどのエストロゲン過剰状態がリスク因子です。進行期は画像ではなく手術で得た病理所見に基づく手術進行期分類で決め、腺癌であるため扁平上皮癌が多い子宮頸癌より放射線感受性が低く、治療は手術が第一選択となります。妊孕性温存を望む早期例では黄体ホルモン療法も選択肢となり、病態と治療を結びつけて理解することが、体癌と頸癌を対比して整理する上での土台になります。
解答・解説
正解はb, c, eです
類内膜癌(類内膜腺癌)は、正常な子宮内膜の腺に似た構造をもつ腺癌で、子宮体癌(子宮内膜癌)の大部分(約8割以上)を占める代表的な組織型である。したがって本問は、実質的には子宮体癌の典型像についての理解を問うている。 「Grade 1」は組織学的な分化度を表す。類内膜癌では、腺の形をつくらずにシート状に増える充実性の部分(扁平上皮への分化を示す部分は数えない)が腫瘍に占める割合で、グレードを決める。 ・Grade 1(G1):充実性部分が5%以下。高分化で、腺管構造がよく保たれている。 ・Grade 2(G2):6〜50%。中分化。 ・Grade 3(G3):50%を超える。低分化。 核の異型が強い場合は、グレードを1段階上げる。 類内膜癌G1は、エストロゲンへの長い曝露を背景に、子宮内膜増殖症(特に子宮内膜異型増殖症)を経て発生する、いわゆるタイプⅠの子宮体癌の典型である。閉経前後から閉経後の女性に多く、肥満・未産・糖尿病などがリスク因子となる。進行は比較的緩やかで、予後は良い。 設問を解くには、次の3点を押さえておけばよい。 ・分化度の意味(G1は高分化)。 ・疫学とリスク因子。 ・子宮体癌の進行期は手術で得た所見に基づいて決まること、および組織型(腺癌か扁平上皮癌か)による放射線感受性の違い。
選択肢考察
- ×a. 未分化癌である。
Grade 1は、充実性部分が5%以下で正常な内膜腺に近い腺管構造を保つ高分化型腺癌である。分化度が最も低いのはGrade 3(充実性部分が50%を超える)である。なお「未分化癌」は、腺管などの分化をまったく示さない別の組織型の名称で、類内膜癌のグレード分類とは異なる。
- ○b. 50~70歳に好発する。
子宮体癌の罹患率は40歳代後半から上がり始め、50〜60歳代にピークを迎える。閉経前後から閉経後の年代に多く、この記述は正しい。これに対して子宮頸癌は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染を背景に20〜40歳代の若い世代でも多い。代表的な初発症状は不正性器出血(閉経後出血)であり、閉経後に出血があれば子宮体癌を疑って内膜の検査を行う。なお近年は、若年の子宮体癌も増えている。
- ○c. 肥満は発症のリスク因子である。
類内膜癌G1を代表とするタイプⅠの子宮体癌は、プロゲステロンによる拮抗を受けないエストロゲン(unopposed estrogen)が長く内膜を刺激し続けることで発生する。肥満では脂肪組織のアロマターゼという酵素により、副腎由来のアンドロゲンがエストロゲンに変換されるため、エストロゲン過剰の状態になる。このため肥満は確立したリスク因子である。そのほかのリスク因子には、未産、遅い閉経、多嚢胞性卵巣症候群(排卵がないため黄体ホルモンが不足する)、エストロゲン単独のホルモン補充療法、タモキシフェンの服用、エストロゲンを産生する卵巣腫瘍(顆粒膜細胞腫など)、糖尿病、高血圧、Lynch症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸癌)などがある。
- ×d. 臨床進行期は画像診断で決定する。
子宮体癌の進行期は、国際産婦人科連合(FIGO)の分類に基づき、手術で摘出した子宮・付属器・リンパ節などの病理所見から決める手術進行期分類である(1988年以降)。MRIやCTは、手術前に筋層浸潤の深さやリンパ節転移を推定し、治療方針を立てるために用いるが、進行期を最終的に決める根拠ではない。手術が行えない症例では、画像などに基づく臨床進行期分類が用いられる。なお子宮頸癌は長く内診などによる臨床進行期分類であったが、FIGO 2018分類からは画像診断や病理所見も進行期の決定に用いてよいことになった。
- ○e. 放射線感受性は子宮頸癌に比べて低い。
子宮頸癌の多く(約7〜8割)は扁平上皮癌で、放射線によく反応するため、進行した頸癌では同時化学放射線療法が根治的治療の柱となる。一方、類内膜癌は腺癌であり、一般に扁平上皮癌より放射線感受性が低い。このため子宮体癌の治療は、子宮全摘出術と両側付属器摘出術を基本とする手術療法が第一選択となり、放射線療法は術後の補助療法や、合併症のため手術ができない場合などに限られる。
子宮体癌の2つのタイプ
・タイプⅠ:エストロゲン依存性。子宮内膜異型増殖症を前段階とする。類内膜癌のG1・G2が代表で、閉経前後の女性に多く、肥満などを背景とする。進行は緩やかで予後は良い。PTEN遺伝子の異常などを伴う。 ・タイプⅡ:エストロゲンに依存しない。萎縮した内膜から発生する。漿液性癌・明細胞癌などが代表で、高齢者に多く、進行が速く予後が悪い。TP53遺伝子の変異を伴う。 ※近年は、分子異常に基づく4分類(POLE超変異型、ミスマッチ修復欠損型、p53異常型、特異的分子異常なし型)も予後の評価に用いられ、FIGO 2023進行期分類にも取り入れられた。
子宮体癌の診断と治療の流れ
・症状:不正性器出血(特に閉経後出血)が最も多い。 ・検査:経腟超音波で内膜の厚さを評価し、内膜細胞診・内膜組織診で確定診断する。MRIで筋層浸潤や頸部への広がりを評価する。 ・治療:子宮全摘出術と両側付属器摘出術を基本とし、再発のリスクに応じて骨盤・傍大動脈リンパ節郭清を追加する。術後の再発リスクに応じて化学療法などの補助療法を行う。 ・妊孕性(妊娠する能力)の温存を強く望む若年者で、内膜に限局した類内膜癌G1に対しては、高用量の黄体ホルモン療法(メドロキシプロゲステロン酢酸エステル)が選択肢となる。
子宮頸癌との比較
・子宮頸癌:主な組織型は扁平上皮癌。HPVが関与し、若年者にも多い。放射線感受性は高い。 ・子宮体癌:主な組織型は類内膜癌(腺癌)。エストロゲンが関与し、50〜60歳代に多い。放射線感受性は相対的に低く、手術が中心となる。
POINT
・類内膜癌は子宮体癌で最も多い組織型である。Grade 1は充実性部分5%以下の高分化型を指す。 ・子宮体癌は50〜60歳代に多い。肥満・未産・遅い閉経・糖尿病・エストロゲン単独療法などのエストロゲン過剰状態がリスク因子である。 ・子宮体癌の進行期は、手術所見に基づく手術進行期分類で決める。 ・腺癌である体癌は、扁平上皮癌が多い頸癌より放射線感受性が低く、治療の第一選択は手術である。
