StudyMed医師国家試験

似ているけれど正体は別物―「異型リンパ球」と「芽球」を分ける細胞表面抗原

第103回医師国家試験 I問題 第28問

国試問題にチャレンジ

第103回 I問題 第28問

伝染性単核球症と急性リンパ性白血病の鑑別に有用なのはどれか。

  1. a.リンパ節腫脹
  2. b.白血球数
  3. c.血小板数
  4. d.血清LD〈LDH〉値
  5. e.細胞表面抗原

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、伝染性単核球症と急性リンパ性白血病という、見た目がよく似た2つの病気をどう見分けるかという問題だ。着眼点は「増えている細胞がどんな性質の細胞なのか」。症状や一般的な検査値ではなく、細胞そのものの素性に迫る検査は何か、を考えてみよう。
医学生医学生
どちらも若い人に多くて、発熱やリンパ節腫脹、肝脾腫が出るんですよね。小児科の臨床実習でも「EBVかと思ったら白血病だった」という話を聞きました。
ドクタードクター
そう、まさにそこが怖いところなんだ。しかも両方とも末梢血に見慣れないリンパ球のような細胞が出てくる。では、その細胞の本質的な違いは何だと思う?
医学生医学生
伝染性単核球症の異型リンパ球は、EBVに感染した細胞そのものじゃないんですか。
ドクタードクター
よくある誤解だね。EBVが感染するのはB細胞なんだけど、末梢血に増えてくる異型リンパ球の多くは、感染B細胞を排除しようとして活性化した細胞傷害性T細胞、主にCD8陽性T細胞なんだ。いろいろなクローンが一斉に反応しているから、多クローン性の反応性増殖ということになる。
医学生医学生
一方のALLは、未熟なリンパ芽球が1つの細胞から腫瘍性に増えるので、単クローン性ですね。
ドクタードクター
その通り。だから鑑別の鍵は「成熟した反応性の細胞の寄せ集め」か「未熟な腫瘍細胞の均一な集団」かを客観的に示すこと。それができるのが、フローサイトメトリーなどによる細胞表面抗原の解析だ。
医学生医学生
基礎の免疫学でCD抗原を延々と覚えさせられましたが、こういうところで使うんですね。具体的にはどう違って見えるんですか。
ドクタードクター
ALLの多くはB前駆細胞型で、CD19やCD10、CD79aが陽性、さらに未熟性の指標であるTdTやCD34が陽性の細胞が大部分を占めて、均一なパターンを示す。伝染性単核球症ではCD8陽性の成熟T細胞が主体で、未熟性マーカーは陰性だ。系統、分化段階、クローン性をまとめて評価できるのが強みなんだよ。
医学生医学生
なるほど。でもリンパ節腫脹は伝染性単核球症の三主徴の一つですし、それで区別できそうな気もしました。
ドクタードクター
伝染性単核球症では後頸部を中心とした頸部リンパ節腫脹が典型的だけど、ALLでも白血病細胞が浸潤して全身のリンパ節が腫れることが多い。どちらにも出るから決め手にはならないんだ。
医学生医学生
白血球数はどうでしょう。白血病なら著明に増えるイメージがあります。
ドクタードクター
そのイメージが落とし穴。ALLでも、白血病細胞が骨髄にとどまって末梢血にほとんど出てこず、白血球数が正常や減少になる例が少なくない。伝染性単核球症も増加することが多いけれど、病初期には正常のこともある。数値だけでは振り分けられないね。
医学生医学生
血小板減少は骨髄が占拠されるALLらしい所見だと思うんですが。
ドクタードクター
確かにALLでは高頻度にみられる。ただ伝染性単核球症でも、脾腫による脾機能亢進や免疫学的な機序で軽度の血小板減少がしばしば起こる。共通しうる所見なので鑑別には使えない。とはいえ、高度の血小板減少に貧血や好中球減少が重なっていたら、骨髄での造血障害を疑って骨髄検査を考えるきっかけにはなるよ。
医学生医学生
LDも、ALLでは腫瘍細胞の増殖と崩壊で上がりますし、伝染性単核球症でも肝炎やリンパ球の増殖で上がりますよね。
ドクタードクター
正解。LDはほぼすべての細胞に含まれる非特異的な指標だから、どちらでも上がりうる。結局、量や程度を見る検査では区別できず、細胞の「質」を見る検査が必要ということなんだ。
医学生医学生
症状や数値は似てしまうから、細胞の素性そのものを調べる、という発想ですね。
ドクタードクター
その理解で完璧。臨床で併せて行うことも押さえておこう。まず末梢血や骨髄の塗抹標本で、細胞質が豊富で好塩基性の異型リンパ球か、核小体の目立つ芽球かを形態的に見分けること。次にEBV抗体検査で、VCA-IgM陽性かつEBNA抗体陰性なら初感染と判断できる。EBNA抗体は感染後しばらくしてから陽性になるからね。
医学生医学生
CBTの勉強で、伝染性単核球症の患者さんにアンピシリンを出すと皮疹が出るというのも覚えました。
ドクタードクター
大事なポイントだね。アミノペニシリンは避けるべきだし、脾腫がある間は脾破裂予防のため激しい運動も控えてもらう。治療は基本的に対症療法で、多くは数週間で自然に良くなる。一方ALLは小児で最も多い悪性腫瘍で、骨髄検査と表面抗原、染色体・遺伝子検査で病型と予後を分類して治療を組み立てる。反応性か腫瘍性かという視点は、κ/λ軽鎖の偏りや遺伝子再構成解析など、リンパ系疾患全般に通じる考え方なんだ。

まとめ

伝染性単核球症と急性リンパ性白血病は、ともに若年者に多く、発熱、リンパ節腫脹、肝脾腫や末梢血の異常リンパ球様細胞を呈するため鑑別が重要です。伝染性単核球症で増える異型リンパ球は主にCD8陽性の活性化T細胞による多クローン性の反応性増殖であり、ALLはTdTやCD34陽性の未熟なリンパ芽球による単クローン性の腫瘍性増殖です。この違いはフローサイトメトリーによる細胞表面抗原の解析で客観的に示せ、系統・分化段階・クローン性を評価できます。リンパ節腫脹、白血球数、血小板数、LD値はいずれの疾患でも同様の異常を示しうるため決め手になりません。塗抹標本での形態観察やEBV抗体検査(VCA-IgM陽性、EBNA抗体陰性)も併せて活用し、「反応性か腫瘍性か」を見極める視点を身につけることがリンパ系疾患の診療の基本になります。

解答・解説

正解はeです

伝染性単核球症と急性リンパ性白血病(ALL)は、いずれも小児〜若年者に多く、発熱、リンパ節腫脹、肝脾腫を呈し、末梢血に「見慣れないリンパ球様の細胞」が出現するという点で臨床像が似ている。そのため両者の鑑別は臨床上重要である。 両者の本質的な違いは、増えている細胞の性質にある。 ・伝染性単核球症:主にEpstein-Barrウイルス(EBV)の初感染によって起こる。EBVはB細胞に感染し、これを排除しようとして細胞傷害性T細胞(主にCD8陽性T細胞)が反応性に活性化・増殖する。末梢血に出現する異型リンパ球の多くはこの活性化T細胞であり、多数のクローンから成る多クローン性(ポリクローナル)の反応性増殖である。 ・ALL:分化途中で成熟を止めた未熟なリンパ系細胞(リンパ芽球)が、単一の細胞に由来して腫瘍性に増殖する単クローン性(モノクローナル)の病態である。 この違いを客観的に示せるのが、フローサイトメトリーなどで細胞表面抗原(CD抗原など)を調べる検査である。これに対し、リンパ節腫脹、白血球数、血小板数、LD値は両疾患で同じような異常を示しうるため、鑑別の決め手にならない。 実際の臨床では、末梢血・骨髄の塗抹標本で異型リンパ球か芽球かを形態的に見分けること、EBV抗体検査(VCA-IgM陽性、EBNA抗体陰性など)で初感染を確認することも鑑別に用いられる。

選択肢考察

  1. ×a.  リンパ節腫脹

    伝染性単核球症では、特に後頸部を中心とした両側性の頸部リンパ節腫脹が典型的で、発熱・咽頭扁桃炎とともに三主徴をなす。一方、ALLでも白血病細胞がリンパ節に浸潤して全身性のリンパ節腫脹をきたすことが多い。どちらでもみられる所見であり、鑑別には有用でない。

  2. ×b.  白血球数

    伝染性単核球症では、リンパ球と異型リンパ球の増加により白血球数が増加することが多いが、病初期には正常〜軽度減少のこともある。ALLでは白血病細胞の増加により著明な白血球増多を示す例がある一方、末梢血に芽球がほとんど出ず白血球数が正常ないし減少する例(白血病細胞が骨髄にとどまる場合)も少なくない。いずれの疾患でも白血球数は一定しないため、数値だけでは鑑別できない。

  3. ×c.  血小板数

    ALLでは骨髄が白血病細胞で占拠されて正常な造血が抑制されるため、血小板減少(および貧血、正常好中球の減少)が高頻度にみられる。一方、伝染性単核球症でも、脾腫による血小板の脾臓への取り込み(脾機能亢進)や免疫学的機序によって、軽度の血小板減少がしばしばみられる。両者に共通しうる所見であり、鑑別には有用でない。ただし、高度の血小板減少に貧血や好中球減少を伴う場合は骨髄での造血障害を疑い、骨髄検査を検討する契機となる。

  4. ×d.  血清LD〈LDH〉値

    LD(乳酸脱水素酵素)はほぼすべての細胞に含まれる酵素で、細胞の破壊や代謝回転の亢進を反映して上昇する非特異的な指標である。ALLでは腫瘍細胞の増殖・崩壊によって上昇し、伝染性単核球症でも肝炎(トランスアミナーゼ上昇を伴う)やリンパ球の活発な増殖によって上昇する。両疾患で共通して上昇しうるため、鑑別には有用でない。

  5. ○e.  細胞表面抗原

    細胞表面抗原の解析(フローサイトメトリーによる免疫表現型検査)では、増えている細胞の系統(B細胞系かT細胞系か)、分化段階(未熟か成熟か)、そしてクローン性を評価できる。ALLでは、単一クローン由来の未熟なリンパ芽球が均一な抗原パターンを示し、多くはB前駆細胞型(CD19、CD10、CD79aなど陽性)であり、未熟性の指標であるTdT(ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ)やCD34陽性の細胞が大部分を占める。一方、伝染性単核球症で増加するのは主にCD8陽性の活性化した成熟T細胞であり、多数のクローンが混在する反応性の増殖で、未熟性マーカーは陰性である。このように、細胞表面抗原は腫瘍性・単クローン性の未熟細胞の増殖か、反応性・多クローン性の成熟リンパ球の増殖かを区別でき、両者の鑑別に有用である。

伝染性単核球症

・病因:主にEBVの初感染(唾液を介して感染するためkissing diseaseとも呼ばれる)。サイトメガロウイルスなどでも類似の病像を呈する。 ・症状:発熱、咽頭扁桃炎(白苔を伴う)、頸部リンパ節腫脹の三主徴に加え、肝脾腫、眼瞼浮腫、発疹など。 ・検査:リンパ球増加と異型リンパ球の出現(白血球の10%以上が目安)、AST・ALT・LDの上昇。EBV特異抗体では、VCA-IgM抗体陽性、EBNA抗体陰性であれば初感染と判断できる(EBNA抗体は感染後数週〜数か月以降に陽性化する)。 ・注意点:アンピシリンなどのアミノペニシリン投与で高率に皮疹が出るため避ける。脾腫がある間は脾破裂予防のため激しい運動を控える。 ・治療:対症療法が基本で、多くは数週間で自然軽快する。

急性リンパ性白血病(ALL)

・小児で最も多い悪性腫瘍(小児がん)であり、発症のピークは2〜5歳頃。 ・未熟なリンパ系細胞(リンパ芽球)が骨髄で単クローン性に増殖し、正常造血を抑制する。 ・症状:貧血(顔色不良、易疲労)、血小板減少による出血傾向、好中球減少による感染・発熱、骨痛、リンパ節腫脹、肝脾腫、中枢神経浸潤。 ・診断:骨髄検査で芽球の増加を確認し、細胞表面抗原(免疫表現型)、染色体・遺伝子検査(t(9;22)〈Philadelphia染色体〉、t(12;21)、高二倍体など)で病型と予後を分類する。 ・病型:B前駆細胞型が大部分を占め、ほかにT細胞型などがある。

反応性増殖と腫瘍性増殖の見分け方

反応性(感染などへの正常な免疫応答)では多種類のクローンが増えるため多クローン性、腫瘍性では1個の異常細胞から増えるため単クローン性となる。クローン性の評価には、細胞表面抗原の解析のほか、B細胞ではκ/λ軽鎖の偏り、T細胞ではT細胞受容体遺伝子の再構成解析、B細胞では免疫グロブリン遺伝子再構成解析などが用いられる。

POINT

・伝染性単核球症の異型リンパ球は主にCD8陽性の活性化T細胞で、多クローン性の反応性増殖 ・ALLは未熟なリンパ芽球の単クローン性の腫瘍性増殖(TdT陽性など) ・細胞表面抗原の解析(フローサイトメトリー)で系統・分化段階・クローン性を評価でき、両者の鑑別に有用 ・リンパ節腫脹、白血球数、血小板減少、LD上昇はいずれの疾患でもみられうるため鑑別の決め手にならない ・伝染性単核球症の確認にはEBV抗体(VCA-IgM陽性、EBNA抗体陰性)

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。