白目が黒目に伸びてくる―紫外線が育てる「翼状片」の正体
第103回医師国家試験 I問題 第29問
国試問題にチャレンジ
前眼部写真を別に示す。 この疾患で正しいのはどれか。

- a.小児期に多い。
- b.遺伝性である。
- c.悪性腫瘍化する。
- d.外的刺激が誘因となる。
- e.放射線治療が第一選択である。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
翼状片は、瞼裂部、特に鼻側の球結膜から線維血管組織が三角形に角膜輪部を越えて角膜内へ侵入する良性の増殖性病変です。紫外線の慢性曝露を中心に、乾燥や粉塵などの外的刺激が誘因となり、中高年や屋外労働者、日射の強い地域の住民に多く、遺伝性はなく悪性化もしません。進行すると不正乱視や視力低下をきたし、治療の基本は外科的切除で、再発予防に結膜弁移植やマイトマイシンC併用が行われ、放射線は補助療法にとどまります。角膜に侵入しない瞼裂斑や、外傷・炎症後に部位を選ばず生じる偽翼状片との鑑別も重要です。病変の形態と部位、誘因を結びつけて理解することが、前眼部写真問題を確実に解く力になります。
解答・解説
正解はdです
画像所見の読み取り
前眼部写真では、瞼裂部(まぶたを開けたときに露出する部分)の球結膜から、血管を伴った三角形の結膜組織が角膜輪部(黒目と白目の境界)を越えて角膜中央へ向かって入り込んでいる。先端(頭部)は角膜上にあり、基部(体部)は結膜側に広がる「翼」のような形をとる。この典型的な形態から翼状片と診断できる。
鑑別
瞼裂斑は同じく瞼裂部の球結膜にみられる黄白色の隆起だが、輪部を越えて角膜に侵入しない点で区別される。偽翼状片は角膜外傷・化学外傷・角膜潰瘍などの炎症後に結膜が角膜に癒着したもので、発生部位が鼻側に限らず、既往歴があることが手がかりになる。結膜の悪性腫瘍(扁平上皮癌など)は隆起が不整でゼラチン様・白斑状を呈することが多い。
設問の考え方
翼状片の疫学(中高年・屋外労働者に多い)、原因(紫外線をはじめとする慢性的な外的刺激)、良性病変であること、治療が外科的切除であることを押さえていれば、正解は選べる。
選択肢考察
- ×a. 小児期に多い。
誤り。翼状片は長年にわたる紫外線曝露などの累積によって生じるため、中高年に多く、小児にはまれである。小児で結膜が角膜へ侵入する病変をみた場合は、外傷や炎症後の偽翼状片、あるいは他の腫瘤性病変を考える。
- ×b. 遺伝性である。
誤り。翼状片は遺伝性疾患としては扱われない。紫外線量の多い低緯度地域の住民や、漁業・農業など屋外で長く働く人に多いことから、環境要因が主体と考えられている。
- ×c. 悪性腫瘍化する。
誤り。翼状片は結膜下の線維血管組織が増殖した良性病変で、悪性化はしない。ただし、紫外線曝露は結膜扁平上皮癌などのリスク因子でもあるため、形態が非典型的な場合(急速増大、ゼラチン様隆起、白斑を伴うなど)は腫瘍との鑑別を考え、切除組織の病理検査で確認する。
- ○d. 外的刺激が誘因となる。
正しい。翼状片の主な誘因は紫外線への慢性曝露であり、さらに乾燥、風、ほこりなどの外的刺激も関与すると考えられている。紫外線が輪部の幹細胞(角膜上皮のもとになる細胞)を障害し、結膜組織の角膜への侵入を許すという機序が想定されている。瞼裂部の、特に鼻側に好発するのは、この部位が外界に露出し、角膜の側方から入った光が鼻側の輪部に集まりやすいためと説明される。
- ×e. 放射線治療が第一選択である。
誤り。治療の基本は外科的切除である。小さく視機能に影響がなければ経過観察でよく、充血や異物感には点眼で対症的に対応する。瞳孔領に近づく、乱視が強くなる、整容的に問題があるといった場合に手術を行う。単純切除では再発が多いため、結膜弁移植(自己の結膜を移植する方法)や、術中のマイトマイシンC(細胞増殖を抑える薬)塗布などを併用する。かつては術後再発予防にβ線照射が用いられたこともあるが、これは補助療法であり、放射線治療が第一選択になることはない。
翼状片の概要
・定義:瞼裂部の球結膜から、結膜下の線維血管組織が三角形状に角膜内へ侵入する良性の増殖性病変。 ・好発:中高年、屋外労働者、低緯度地域(日射の強い地域)の居住者。多くは鼻側に生じ、両眼性のこともある。 ・原因:紫外線の慢性曝露が最大の要因。乾燥や粉塵などの刺激も関与するとされる。 ・症状:充血、異物感。進行して角膜中央に近づくと、角膜が引っ張られて不正乱視(角膜の形がゆがむことで起こる、眼鏡で矯正しにくい乱視)が生じ、瞳孔領に達すると視力が低下する。 ・治療:外科的切除。再発しやすいため、結膜弁移植や羊膜移植、マイトマイシンC併用などで再発を抑える。若年者ほど再発しやすいとされる。
偽翼状片との違い
偽翼状片は角膜の外傷・熱傷・化学外傷・潰瘍などの後に結膜が角膜へ癒着したもので、部位を選ばず(鼻側に限らない)、先端の下にゾンデ(細い棒状の器具)が通る(輪部で完全に癒着していない部分がある)ことが特徴とされる。真の翼状片は瞼裂部、特に鼻側に生じ、全体が角膜に密着している。
瞼裂斑
瞼裂部の球結膜にできる黄白色のやや隆起した病変で、同じく紫外線などの刺激が関与する。角膜には侵入しない点で翼状片と異なり、翼状片の前段階とみなされることもある。
POINT
・翼状片:瞼裂部(特に鼻側)の結膜が三角形に角膜へ侵入する良性病変。 ・中高年、屋外労働者に多く、紫外線などの外的刺激が誘因。遺伝性はなく、悪性化しない。 ・進行すると不正乱視・視力低下をきたす。 ・治療は外科的切除。再発が多く、結膜弁移植やマイトマイシンC併用で再発を予防する。 ・外傷・炎症後に部位を選ばず生じるものは偽翼状片。
