proximalとdistalを取り違えない―解剖学的位置を表す医学英語の基本
第103回医師国家試験 H問題 第20問
国試問題にチャレンジ
組合せで誤っているのはどれか。
- a.末梢の ―― peripheral
- b.近位の ―― distal
- c.前方の ―― anterior
- d.上方の ―― superior
- e.側方の ―― lateral
対話形式の解説
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ドクターまとめ
解剖学的な位置や方向を表す用語は、手掌を前に向けた直立姿勢である解剖学的正位を基準に定義されており、患者の体位にかかわらずこの姿勢を想定して用います。「近位の」はproximal、「遠位の」はdistalであり、PIP関節・DIP関節や近位尿細管・遠位尿細管などの表現でも区別されます。上方superior⇔下方inferior、前方anterior⇔後方posterior、内側medial⇔外側lateral、中枢central⇔末梢peripheralのように、多くの用語は対語になっているため、セットで覚えると取り違えを防げます。同側・対側、浅い・深い、矢状面・冠状面・水平面などの用語もあわせて押さえておくと、カルテ記載や画像の読影、英語文献の理解がスムーズになります。
解答・解説
正解はbです
本問は、身体の部位や病変の位置関係を表す基本的な解剖学用語(形容詞)の英語表記を問うものであり、誤った組合せを一つ選ぶ。 解剖学用語は、解剖学的正位(直立して顔と視線を正面に向け、両上肢を体側に下ろし、手掌を前方に向け、足先を前に向けた姿勢)を基準として定義されている。患者が臥位であっても、位置関係は常にこの姿勢を想定して表現する。 用語の多くは「上方⇔下方」「前方⇔後方」「内側⇔外側」「近位⇔遠位」「中枢⇔末梢」のように対になっているため、対語とセットで覚えると取り違えにくい。「近位の」は体幹(あるいは四肢の付け根や起始部)に近い側を指す proximal であり、distal はその反対の「遠位の」である。したがって b の組合せが誤りである。
選択肢考察
- ×a. 末梢の ―― peripheral
正しい組合せである。peripheral は「辺縁の、末梢の」を意味し、中心から離れた周辺部を指す。対語は central(中枢の、中心の)である。末梢神経 peripheral nerve、末梢血 peripheral blood、末梢静脈 peripheral vein などの形で頻用される。語源はギリシャ語の peri-(周りを)+ pherein(運ぶ)で、「周りを巡るもの」すなわち周縁の意となる。
- ○b. 近位の ―― distal
誤った組合せであり、これが正解である。「近位の」は proximal であり、四肢であれば体幹に近い側、血管や消化管などでは起始部に近い側を表す。distal はその反対の「遠位の」で、体幹や起始部から遠い側を指す。例えば、手指の関節では近位指節間関節が PIP 関節(proximal interphalangeal joint)、遠位指節間関節が DIP 関節(distal interphalangeal joint)であり、近位筋優位の筋力低下(proximal muscle weakness)、遠位尿細管(distal tubule)などの表現で用いられる。
- ×c. 前方の ―― anterior
正しい組合せである。anterior は「前方の」で、対語は posterior(後方の)である。前方・後方はそれぞれ腹側 ventral・背側 dorsal とほぼ同義に用いられることも多い。前十字靱帯 anterior cruciate ligament(ACL)、後十字靱帯 posterior cruciate ligament(PCL)、前下行枝 anterior descending branch などの例がある。
- ×d. 上方の ―― superior
正しい組合せである。superior は「上方の」で、対語は inferior(下方の)である。頭側を cranial、尾側を caudal と表すこともある。上大静脈 superior vena cava、下大静脈 inferior vena cava、上腸間膜動脈 superior mesenteric artery などの語で用いられる。
- ×e. 側方の ―― lateral
正しい組合せである。lateral は「外側の、側方の」を意味し、身体の正中面から離れる方向を指す。対語は medial(内側の、正中に近い)である。語源はラテン語の latus(側)に -al が付いたもので、「側に属する」の意となる。外側側副靱帯 lateral collateral ligament、内側半月 medial meniscus、側臥位 lateral decubitus position などで用いられる。
位置・方向を表す主な解剖学用語(対語)
・上方の superior ⇔ 下方の inferior(頭側 cranial ⇔ 尾側 caudal) ・前方の anterior ⇔ 後方の posterior(腹側 ventral ⇔ 背側 dorsal) ・内側の medial ⇔ 外側の lateral ・近位の proximal ⇔ 遠位の distal ・中枢の central ⇔ 末梢の peripheral ・浅い superficial ⇔ 深い deep ・内部の internal ⇔ 外部の external ・同側の ipsilateral ⇔ 対側の contralateral(両側の bilateral、片側の unilateral)
上肢・下肢に特有の表現
前腕では、母指側を橈側 radial、小指側を尺側 ulnar と呼ぶ。手では手掌側を palmar(volar)、手背側を dorsal と呼ぶ。下腿では、母趾側を脛側 tibial、小趾側を腓側 fibular(peroneal)、足底側を plantar と呼ぶ。
身体の断面
・矢状面 sagittal plane:身体を左右に分ける面。正中を通るものを正中矢状面という。 ・冠状面(前額面) coronal(frontal)plane:身体を前後に分ける面。 ・水平面(横断面) horizontal(transverse、axial)plane:身体を上下に分ける面。CTの通常の断面にあたる。
覚え方のヒント
proximal は proximity(近いこと)、distal は distance(距離、遠さ)と関連づけると取り違えにくい。
POINT
・近位の=proximal、遠位の=distal。混同しないよう対語で覚える。 ・上方 superior ⇔ 下方 inferior、前方 anterior ⇔ 後方 posterior、内側 medial ⇔ 外側 lateral、中枢 central ⇔ 末梢 peripheral。 ・位置関係は解剖学的正位(手掌を前に向けた直立位)を基準に表す。
