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白く染まるのは血管だけじゃない―頸部造影CTで総頸動脈を見抜く3つの手がかり

第103回医師国家試験 G問題 第26問

国試問題にチャレンジ

第103回 G問題 第26問

頸部造影CTを別に示す。  総頸動脈はどれか。

第103回 G問題 第26問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は頸部造影CTの横断像から、正常構造を同定する解剖の問題だ。ポイントは、気管と頸椎を基準に周囲の構造を配置していくこと、そして造影で白く染まるもの同士をどう見分けるか。まずはCT横断像の向きの約束から確認しよう。
医学生医学生
画像の上が腹側で、画像の左が患者さんの右、でしたよね。CBTの画像問題でよく左右を間違えました。
ドクタードクター
その通り。患者を足側から見上げた向きで表示するのが約束だ。この画像では、中央に黒く抜けた円形の気管があって、その背側に白い頸椎がある。空気は低吸収で黒、骨は高吸収で白。まずこの2つを見つければ、地図の原点ができる。
医学生医学生
気管の真後ろ、椎体の前にある扁平な軟部組織は食道でしょうか。
ドクタードクター
正解。頸部の正中は、前から気管、食道、椎体の順に並ぶ。食道は内腔が虚脱していると扁平な軟部組織として見えるし、気管の背側をやや左寄りに走ることが多い。総頸動脈は正中には存在しないから、ここは候補から外れるね。
医学生医学生
気管の前から両側を抱き込むように、かなり白く染まっている構造があります。これは血管ではないんですか。
ドクタードクター
そこが最初の落とし穴だ。気管を馬蹄形に囲み、前面の峡部で左右がつながっているのは甲状腺。甲状腺はヨードを多く含むので単純CTでも周囲の筋より高吸収だし、血流が非常に豊富だから造影CTではよく濃染する。濃く染まるからといって血管と取り違えてはいけない。
医学生医学生
解剖実習で甲状腺を剖出したとき、気管の前にぴったり張り付いていたのを思い出しました。形で見分けるんですね。
ドクタードクター
そう、形と位置で判断する。では甲状腺の外側後方を見てみよう。造影される丸い構造が2つ並んでいるね。ここに何があるか覚えているかな。
医学生医学生
頸動脈鞘ですね。中身は総頸動脈、内頸静脈、迷走神経です。でも両方白く染まっていたら、どちらが動脈か区別がつかない気がします。
ドクタードクター
いい疑問だ。造影CTでは動脈も静脈も染まるから、濃さだけでは決めにくい。そこで手がかりは位置と形と太さだ。頸動脈鞘の中では総頸動脈が内側、つまり気管や甲状腺寄りで、内頸静脈が外側。動脈は壁が厚く内圧が高いので正円形で比較的細く、静脈は壁が薄くて太く、楕円形や扁平になりやすい。
医学生医学生
内側にある小さな正円形の構造が総頸動脈、そのすぐ外側の太いほうが内頸静脈ということですね。
ドクタードクター
その通り、それが正解だ。内頸静脈が太く見えるのには理由もある。CTは仰臥位で撮影するから、立位より静脈還流の影響で頸静脈が充満して太くなる。左右差が大きいのも静脈の特徴だね。ただし、個人差や首の向きによっては内頸静脈が総頸動脈の前外側に重なって、前後に並んで見えることもあるから、一つの所見だけで決めつけないことが大事だ。
医学生医学生
さらに背外側にある、あまり染まらない構造は筋肉でしょうか。
ドクタードクター
そう、頸椎の横突起から起こる斜角筋群だ。血管や甲状腺に比べて造影効果が乏しいのが筋の特徴。前斜角筋と中斜角筋の間の斜角筋隙を腕神経叢と鎖骨下動脈が通る、というのも解剖で頻出だから合わせて覚えておこう。
医学生医学生
正中の構造、甲状腺、頸動脈鞘、斜角筋と、内側から外側へ順に並べていけば迷わないですね。
ドクタードクター
まさにその読み方だ。発展として、総頸動脈の走行も押さえておこう。右は腕頭動脈から、左は大動脈弓から直接分岐し、通常は甲状軟骨上縁、第4頸椎の高さで内頸動脈と外頸動脈に分かれる。分岐部には圧受容器の頸動脈洞と、化学受容器の頸動脈小体がある。
医学生医学生
耳鼻咽喉科の実習で、頸部リンパ節の腫れを見るときにも頸動脈との位置関係を確認していました。
ドクタードクター
臨床ではそこが本番なんだ。リンパ節転移や深頸部膿瘍などの異常は、正常構造の位置関係からの逸脱として見つける。腫大したリンパ節が頸動脈鞘とどう接しているかは、手術や穿刺の安全性にも直結する。正常解剖をCTで描けることが、すべての読影の出発点になるよ。

まとめ

頸部造影CTの横断像は足側から見上げた向きで表示され、画像の上が腹側、左が患者の右側になります。正中には前から気管、食道、椎体が並び、気管を馬蹄形に囲んで強く濃染するのが甲状腺で、ヨード含有と豊富な血流により血管と紛らわしいほど白く見えます。甲状腺の外側後方には頸動脈鞘があり、内側の小さな正円形の構造が総頸動脈、その外側の太く形の変わりやすい構造が内頸静脈で、さらに背外側の造影効果の乏しい筋が斜角筋群です。造影CTでは濃さだけでなく、位置・形・太さを組み合わせて動脈と静脈を見分けることが重要です。正常構造の位置関係を正確に把握しておくことは、リンパ節転移や膿瘍などの異常所見を見つけるための読影の土台となります。

解答・解説

正解はcです

頸部造影CT(コンピュータ断層撮影)の横断像で、正常構造を同定させる解剖の問題である。

画像の読み方の基本

CT横断像は、患者を足側から見上げた向きで表示するのが約束である。したがって画像の上が腹側(前)、下が背側(後ろ)、画像の左側が患者の右側になる。本画像では、中央に黒く抜けた円形の気管(空気なので低吸収=黒)があり、その背側に頸椎(骨なので高吸収=白)がある。これを基準に周囲の構造を配置していく。

前頸部の構造の並び

・正中:前から気管、その真後ろに食道、さらに後ろに椎体と椎前筋群。 ・気管の前面〜両側:気管を馬蹄形に抱き込むように甲状腺(左右葉と、気管前面でつなぐ峡部)。 ・甲状腺の外側後方:頸動脈鞘(けいどうみゃくしょう)という結合組織の鞘に包まれた、総頸動脈・内頸静脈・迷走神経の束。総頸動脈が内側、内頸静脈が外側に位置し、迷走神経は両者の間の後方にある。 ・さらに外側後方:斜角筋群、その後ろに肩甲挙筋・後頸部の筋群。

動脈と静脈の見分け方

造影CTでは動脈・静脈ともに造影剤で白く染まるため、濃さだけでは区別しにくいことがある。そこで次の点を手がかりにする。 ・位置:頸動脈鞘の中では、総頸動脈が内側(気管・甲状腺寄り)、内頸静脈が外側。 ・形と太さ:動脈は壁が厚く内圧が高いため正円形で比較的細い。内頸静脈は壁が薄く、径が太く、楕円形や扁平になりやすく、左右差も大きい。特にCTは仰臥位で撮影するため、立位に比べて頸静脈は充満して太く見える。 本画像で③は、甲状腺の外側後方にある小さな正円形の高吸収域で、そのすぐ外側に、より大きな④が並んでいる。この位置関係と大きさの差から、③が総頸動脈、④が内頸静脈と判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    ①は正中で気管の真後ろ、椎体の前に位置する軟部組織であり、食道である。食道は頸部では気管の背側をやや左寄りに走行し、内腔が虚脱していると扁平な軟部組織として見える。総頸動脈は正中には存在しないので誤り。

  2. ×b.  ②

    ②は気管の前面から両側を取り囲む構造で、左右が気管前面(峡部)でつながっている。甲状腺である。甲状腺は血流が非常に豊富であり、さらにヨードを多く含むため、単純CTでも周囲の筋より高吸収、造影CTではよく濃染する。濃く染まるからといって血管と取り違えないことが大切である。

  3. ○c.  ③

    ③は甲状腺の外側後方に位置する、小さな正円形の造影される構造である。そのすぐ外側に、より径の大きい④が隣接して並んでいる。頸動脈鞘内では総頸動脈が内側、内頸静脈が外側にあり、動脈は壁が厚く正円形で静脈より細いのが一般的である。この位置関係と形状から、③は総頸動脈である。なお、個人差や頸部の向きによっては内頸静脈が総頸動脈の前外側に重なり、画像上で前後に並んで見えることもある。

  4. ×d.  ④

    ④は③の外側に接する、③より太い造影される構造で、内頸静脈である。内頸静脈は壁が薄く、静脈圧や体位によって径が大きく変わる。仰臥位で撮影するCTでは静脈還流の影響で充満し、総頸動脈より太く見えることが多い。総頸動脈ではないので誤り。

  5. ×e.  ⑤

    ⑤は内頸静脈よりさらに背外側にあり、血管や甲状腺に比べて造影効果が乏しい軟部組織である。頸椎の横突起から起こる深頸部の筋、すなわち斜角筋群(前・中・後斜角筋)であり、そのうち最も腹側に位置するのが前斜角筋である。前斜角筋と中斜角筋の間(斜角筋隙)を腕神経叢と鎖骨下動脈が通る。血管ではないので誤り。

頸動脈鞘の内容

総頸動脈(内側)、内頸静脈(外側)、迷走神経(両者の間の後方)の3つを包む。頸動脈鞘の後方には頸部交感神経幹が走る。

総頸動脈の走行

右総頸動脈は腕頭動脈から、左総頸動脈は大動脈弓から直接分岐する。気管・食道・甲状腺の外側を上行し、通常は甲状軟骨上縁(第4頸椎)の高さで内頸動脈と外頸動脈に分岐する。分岐部には頸動脈洞(圧受容器)と頸動脈小体(化学受容器)がある。

甲状腺のCT所見

甲状腺はヨードを多く含むため、単純CTでも周囲の筋より高吸収を示し、造影CTでは血流の豊富さを反映して強く濃染する。気管前面の峡部で左右葉がつながり、気管を馬蹄形に囲む形が特徴である。

頸部CTで確認すべき主な構造

気管・喉頭、食道、甲状腺、総頸動脈・内頸静脈、胸鎖乳突筋、斜角筋群、椎前筋、頸椎。リンパ節腫大や膿瘍などの異常は、これらの正常な位置関係からの逸脱として見つけることになる。

POINT

・CT横断像は足側から見た像で、画像の左が患者の右。 ・頸部正中は前から気管→食道→椎体の順。 ・気管を馬蹄形に囲み強く濃染するのは甲状腺。 ・頸動脈鞘内では総頸動脈が内側、内頸静脈が外側。動脈は正円形で細め、静脈は太く形が変わりやすい。 ・内頸静脈の背外側の造影効果の乏しい筋は斜角筋群。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。