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「中心には気道と動脈、辺縁には静脈とリンパ管」―二次小葉の地図で読み解く肺の微細構造

第103回医師国家試験 G問題 第27問

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第103回 G問題 第27問

肺の微細構造について正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.杯細胞は気管支上皮に存在する。
  2. b.肺動脈は小葉間隔壁に存在する。
  3. c.細気管支は小葉間隔壁に存在する。
  4. d.リンパ管は小葉間隔壁に存在する。
  5. e.肺静脈は二次小葉中心部に存在する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は肺の微細構造の問題だ。押さえるべきは2つ。気道上皮にどんな細胞がいるか、そして肺の基本単位である二次小葉の中で、気道や血管、リンパ管がどこを走っているか。特に後者は高分解能CTの読影に直結する大事な知識だよ。
医学生医学生
二次小葉という言葉は呼吸器内科の講義で聞きましたが、正直イメージがあいまいです。
ドクタードクター
まずそこから整理しよう。二次小葉は、小葉間隔壁という結合組織の膜に囲まれた多面体状の領域で、一辺がおおむね1〜2.5cm程度。肉眼やCTでも認識できる大きさの単位なんだ。中に1本の細気管支が入り、その先で終末細気管支、呼吸細気管支へと分岐していく。
医学生医学生
その細気管支は、小葉のどこから入ってくるんですか。
ドクタードクター
小葉の中心からだ。そして細気管支には肺動脈の枝が伴走している。肺動脈は静脈血をガス交換の場へ運ぶ血管だから、空気の通り道と並んで中心から入るのが理にかなっているよね。
医学生医学生
じゃあ肺静脈も一緒に中心を走っているのかと思っていました。
ドクタードクター
そこがよくある誤解だ。ガス交換を終えた血液は肺胞から小葉の辺縁へ集まり、小葉間隔壁の中を走る肺静脈を通って左房へ戻る。だから肺静脈は気管支や肺動脈とは伴走せず、辺縁にある。中心には気道と肺動脈、辺縁には肺静脈、とセットで覚えよう。
医学生医学生
そうすると、肺動脈が小葉間隔壁にある、細気管支が小葉間隔壁にある、肺静脈が小葉中心部にある、という記述はどれも中心と辺縁が逆になっているんですね。
ドクタードクター
その通り。この原則一つで3つの誤りが見抜ける。では残りのリンパ管はどうだろう。
医学生医学生
隔壁にあると思います。心不全の患者さんの胸部X線写真でKerley B線を見たことがあって、あれは隔壁が厚くなった線だと教わりました。
ドクタードクター
よく結びつけたね。肺のリンパ管は胸膜下、小葉間隔壁、それに気管支・血管周囲の結合組織に分布し、肺門リンパ節へ流れる。間質性肺水腫や癌性リンパ管症で隔壁が肥厚して線状影として見えるのは、隔壁内のリンパ管のうっ滞や拡張を反映しているんだ。だからリンパ管が小葉間隔壁に存在する、は正しい。なお、肺胞壁そのものにはリンパ管はないことも覚えておこう。
医学生医学生
もう一つの正解は、杯細胞が気管支上皮に存在する、ですね。組織学実習で気管の標本を見たとき、白っぽく抜けた細胞が並んでいました。
ドクタードクター
それが杯細胞だ。気管・気管支の上皮は多列線毛円柱上皮で、線毛細胞、杯細胞、基底細胞などからなる。杯細胞はムチンを分泌して粘液層をつくり、吸い込んだ粒子や微生物を捕らえる。それを線毛運動で口側へ運び出すのが粘液線毛クリアランスだ。
医学生医学生
末梢の細気管支にも杯細胞はたくさんいるんですか。
ドクタードクター
末梢に行くほど減って、終末細気管支では通常ほとんど見られない。代わりにクラブ細胞、旧称Clara細胞が現れて、上皮の修復や解毒に関わる。上皮自体も中枢の多列線毛円柱上皮から、単層円柱、単層立方へと低くなっていく。喫煙や慢性炎症では杯細胞が増える杯細胞化生が起こり、痰が増える原因になるんだ。
医学生医学生
正解は杯細胞の記述とリンパ管の記述の2つですね。小葉の中心と辺縁で分けると、すっきり整理できました。
ドクタードクター
いいね。最後に臨床への応用だ。HRCTで病変が小葉中心性か、小葉辺縁・隔壁性かを見分けると、病態の主座が推測できる。細気管支が中心にあるから、びまん性汎細気管支炎、過敏性肺炎、経気道性の感染症では小葉中心性の粒状影が出やすい。一方、隔壁にはリンパ管と肺静脈があるから、癌性リンパ管症や肺水腫では隔壁が肥厚する。
医学生医学生
解剖の配置がそのまま画像の分布パターンになっているんですね。放射線科の実習でHRCTを読むときに使えそうです。
ドクタードクター
その通り。もう一つ、肺には2つの血管系があることも押さえておこう。ガス交換を担う肺動脈・肺静脈の肺循環と、大動脈から出て気道壁を栄養する気管支動脈の気管支循環だ。気管支静脈の血液の一部は肺静脈に流れ込み、生理的シャントの一因になる。微細構造を理解しておくと、画像も生理も一本の線でつながるよ。

まとめ

肺の基本単位である二次小葉は小葉間隔壁に囲まれたおおむね1〜2.5cm程度の領域で、中心部には細気管支とそれに伴走する肺動脈が、辺縁の小葉間隔壁には肺静脈とリンパ管が位置します。リンパ管は胸膜下・小葉間隔壁・気管支血管束周囲に分布し、肺水腫や癌性リンパ管症で隔壁が肥厚してKerley B線などの線状影が現れるのはこの配置を反映しています。気管支上皮は多列線毛円柱上皮で、粘液を分泌する杯細胞が線毛細胞とともに粘液線毛クリアランスを担い、杯細胞は末梢ほど減って細気管支ではクラブ細胞が増えます。この中心と辺縁の構造配置は、HRCTで小葉中心性病変と隔壁性病変を見分けて病態を推定する際の基礎となる重要な知識です。

解答・解説

正解はa, dです

肺の微細構造、特に気道上皮の細胞構成と、肺の基本単位である二次小葉(Millerの二次小葉)の中で各構造がどこを走るかを問う問題である。

二次小葉とは

二次小葉は、結合組織の膜である小葉間隔壁に囲まれた多面体状の領域で、一辺がおおむね1〜2.5cm程度と肉眼やCTで認識できる大きさの単位である。1本の細気管支(小葉細気管支)が入り、内部で終末細気管支・呼吸細気管支へと分岐し、数個の細葉(終末細気管支より末梢の単位)を含む。

二次小葉内の構造配置:中心と辺縁で分けて覚える

・小葉の中心(小葉中心部):細気管支と、これに伴走する肺動脈の枝(気管支肺動脈束)。肺動脈は静脈血をガス交換の場へ運ぶので、空気の通り道である気道と並んで小葉の中心から入る。 ・小葉の辺縁(小葉間隔壁・胸膜):肺静脈とリンパ管。ガス交換を終えた血液は肺胞から辺縁へ集まり、小葉間隔壁内の肺静脈を通って左房へ戻る。 ・リンパ管は小葉間隔壁と胸膜下に豊富で、加えて気管支・血管周囲の結合組織(小葉中心側)にも分布する。 「気道と肺動脈は中心、肺静脈は辺縁」という原則を押さえれば、b・c・eの誤りはすぐにわかる。この配置は、高分解能CT(HRCT)で病変の分布(小葉中心性か、小葉辺縁・隔壁性か)を読み解く基礎となる。

選択肢考察

  1. ○a.  杯細胞は気管支上皮に存在する。

    気管・気管支の上皮は多列線毛円柱上皮であり、線毛細胞、杯細胞、基底細胞、刷子細胞、神経内分泌細胞などで構成される。杯細胞は粘液(ムチン)を分泌する細胞で、気道表面に粘液層をつくり、吸入した粒子や微生物を捕らえる。これを線毛運動で口側へ運び出す仕組みが粘液線毛クリアランスである。杯細胞は末梢の細気管支に向かうほど減少し、終末細気管支では通常ほとんどみられず、代わりにクラブ細胞(旧称Clara細胞)が現れる。喫煙や慢性炎症では杯細胞が増生(杯細胞化生)し、痰の増加につながる。

  2. ×b.  肺動脈は小葉間隔壁に存在する。

    肺動脈は気管支・細気管支に伴走して分岐し、細気管支とともに二次小葉の中心部から入る。小葉内でさらに分岐し、最終的に肺胞壁の毛細血管網となってガス交換を行う。小葉間隔壁を走るのは肺静脈であり、肺動脈ではないので誤り。

  3. ×c.  細気管支は小葉間隔壁に存在する。

    細気管支は二次小葉の入口(小葉中心側)から入り、小葉内で分岐を繰り返して終末細気管支、呼吸細気管支、肺胞管へと続く。小葉の中心部に位置する構造であり、辺縁の小葉間隔壁には存在しない。びまん性汎細気管支炎や過敏性肺炎などでHRCT上「小葉中心性の粒状影」がみられるのは、病変の主座である細気管支が小葉中心にあるためである。

  4. ○d.  リンパ管は小葉間隔壁に存在する。

    肺のリンパ管は、胸膜下、小葉間隔壁、気管支・血管周囲の結合組織(気管支血管束)に分布し、肺門リンパ節へ向かって流れる。小葉間隔壁の中を肺静脈とともにリンパ管が走ることは二次小葉の基本構造である。癌性リンパ管症や心不全による間質性肺水腫で、HRCTや胸部X線写真上、小葉間隔壁が肥厚して線状影(Kerley B線など)として見えるのは、隔壁内のリンパ管のうっ滞や拡張を反映している。なお、肺胞壁そのものにはリンパ管はない。

  5. ×e.  肺静脈は二次小葉中心部に存在する。

    肺静脈は、肺胞でガス交換を終えた動脈血を集めて小葉の辺縁へ向かい、小葉間隔壁の中を走って太くなり、最終的に左房へ注ぐ。気管支や肺動脈とは伴走せず、小葉の辺縁に位置するため、「二次小葉中心部に存在する」は誤りである。

気道の区分と上皮の変化

気管→気管支(軟骨あり)→細気管支(軟骨なし、径およそ1mm以下)→終末細気管支(導管部の終わり)→呼吸細気管支(壁に肺胞が出現)→肺胞管→肺胞嚢→肺胞。 上皮は中枢の多列線毛円柱上皮から、末梢に向かうにつれて単層円柱上皮、単層立方上皮へと低くなる。杯細胞は末梢ほど減少し、細気管支ではクラブ細胞が増える。クラブ細胞は表面活性物質様の分泌物を産生し、上皮の修復や解毒に関わる。

肺胞上皮

I型肺胞上皮細胞:扁平で肺胞表面の大部分を覆い、ガス交換の場となる。 II型肺胞上皮細胞:立方状で、肺サーファクタントを産生し、I型細胞の前駆細胞としても働く。

肺の二つの血管系

肺循環(機能血管):肺動脈→肺胞毛細血管→肺静脈。ガス交換を担う。 気管支循環(栄養血管):大動脈から出る気管支動脈が気管支に沿って走り、気道壁や肺組織を栄養する。気管支静脈の血液の一部は肺静脈へ流入する(生理的シャントの一因)。

HRCTでの病変分布の読み方

小葉中心性:細気管支・肺動脈周囲の病変(びまん性汎細気管支炎、過敏性肺炎、経気道性の感染症など)。 小葉辺縁性・隔壁性:小葉間隔壁や胸膜下の病変(癌性リンパ管症、肺水腫、サルコイドーシスのリンパ路に沿う病変など)。

POINT

・二次小葉は小葉間隔壁に囲まれた、おおむね1〜2.5cm程度の単位。 ・小葉中心部:細気管支+肺動脈。 ・小葉間隔壁(辺縁):肺静脈+リンパ管。 ・リンパ管は胸膜下・小葉間隔壁・気管支血管束周囲に分布する。 ・杯細胞は気管支上皮にあり、末梢へ行くほど減り、細気管支ではクラブ細胞が増える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。