副腎と腎臓を取り違えない―腎臓が「造る」ホルモンは何か
第103回医師国家試験 G問題 第23問
国試問題にチャレンジ
腎で造られるのはどれか。2つ選べ。
- a.カテコラミン
- b.コルチゾール
- c.アルドステロン
- d.エリスロポエチン
- e.活性型ビタミンD3
対話形式の解説
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ドクターまとめ
腎臓は排泄臓器であると同時に内分泌臓器でもあり、エリスロポエチン(尿細管周囲間質細胞で産生)、活性型ビタミンD3(近位尿細管で1α位が水酸化されて生成)、レニン(傍糸球体細胞で産生)を造ります。一方、カテコラミンは副腎髄質、コルチゾールは副腎皮質束状層、アルドステロンは副腎皮質球状層で造られ、特にアルドステロンはレニンに調節され腎臓に作用するため混同しやすい点に注意が必要です。慢性腎臓病ではエリスロポエチン不足による腎性貧血と、ビタミンD活性化障害による低Ca血症・二次性副甲状腺機能亢進症(CKD-MBD)が生じ、ESAやHIF-PH阻害薬、活性型ビタミンD製剤などで補います。腎臓の内分泌機能を正しく理解することは、腎不全患者の全身管理を考える土台になります。
解答・解説
正解はd, eです
本問は、腎臓がもつ内分泌臓器としての働きを問う問題である。 腎臓は尿をつくる排泄臓器であるだけでなく、ホルモンの産生・活性化の場でもある。腎臓で産生(または活性化)される代表的な物質は次の3つであり、まとめて覚えておく。 ・エリスロポエチン(赤血球の産生を促す) ・活性型ビタミンD3(1α,25-ジヒドロキシビタミンD3。カルシウム代謝を調節する) ・レニン(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系の起点となる酵素) このほか、プロスタグランジンやキニン類なども腎臓で局所的に産生される。 一方、選択肢に並ぶカテコラミン、コルチゾール、アルドステロンはいずれも副腎で産生される。副腎は腎臓の上に位置するため混同しやすいが、発生も機能もまったく別の臓器である。特にアルドステロンは、腎臓から分泌されるレニンによって分泌が調節され、腎臓の集合管などに作用するため「腎臓と関係が深いホルモン」ではあるが、造られるのは副腎皮質である点に注意する。 したがって、腎で造られるのはエリスロポエチンと活性型ビタミンD3である。
選択肢考察
- ×a. カテコラミン
ホルモンとして血中に分泌されるカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)は、主に副腎髄質のクロム親和性細胞で産生される。ノルアドレナリンは交感神経終末からも神経伝達物質として放出される。カテコラミンはα・β受容体(アドレナリン受容体)を介して、心拍数増加、血管収縮、血糖上昇などの作用を示す。腎臓が血中のカテコラミンを供給する臓器ではないため誤りである。
- ×b. コルチゾール
コルチゾールは代表的な糖質コルチコイドで、副腎皮質の束状層で産生される。分泌は視床下部の副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)と下垂体前葉の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)により調節される。糖新生の促進、抗炎症・免疫抑制作用などをもつ。腎臓では、コルチゾールを不活性なコルチゾンに変換する酵素(11β-水酸化ステロイド脱水素酵素2型)が働いており、コルチゾールは腎臓で造られるのではなく、むしろ腎臓で不活化される側のホルモンである。
- ×c. アルドステロン
アルドステロンは代表的な鉱質コルチコイドで、副腎皮質の球状層で産生される。分泌は主にレニン-アンジオテンシン系(アンジオテンシンII)と血清K濃度の上昇によって促される。腎臓の遠位尿細管後半から集合管に作用し、Na+の再吸収とK+・H+の排泄を促進する。腎臓が産生するのは上流のレニンであり、アルドステロンそのものは副腎で造られるため誤りである。
- ○d. エリスロポエチン
エリスロポエチンは赤血球の産生を促す造血因子で、成人では主に腎臓で産生される(胎児期は主に肝臓)。産生を担うのは、腎皮質から髄質外層の尿細管周囲の間質にある線維芽細胞様の細胞(尿細管周囲間質細胞)である。貧血や低酸素によって組織の酸素分圧が低下すると、転写因子である低酸素誘導因子(hypoxia-inducible factor:HIF)が安定化し、エリスロポエチンの産生が増える。慢性腎臓病ではこの産生能が低下し、腎性貧血(通常は正球性正色素性貧血)を生じる。腎性貧血では、貧血の程度に見合うほど血中エリスロポエチン濃度が上昇せず、正常範囲にとどまるのが特徴である。
- ○e. 活性型ビタミンD3
ビタミンD3は、皮膚で紫外線の作用により7-デヒドロコレステロールから合成されるほか、食事からも摂取される。まず肝臓で25位が水酸化されて25-ヒドロキシビタミンD3となり、次いで腎臓の近位尿細管で1α-水酸化酵素により1α位が水酸化され、活性型の1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール)となる。この1α-水酸化は副甲状腺ホルモン(PTH)や低リン血症によって促進され、線維芽細胞増殖因子23(FGF23)によって抑制される。活性型ビタミンD3は腸管からのCa・Pの吸収を促進し、骨ではPTHと協調して骨吸収を促してCaを血中へ動員する。慢性腎臓病ではこの活性化が低下し、低Ca血症や二次性副甲状腺機能亢進症の原因となる。
腎臓の内分泌機能のまとめ
・エリスロポエチン:尿細管周囲間質細胞で産生。低酸素で産生増加。低下すると腎性貧血 ・活性型ビタミンD3:近位尿細管で1α位が水酸化されて生成。低下すると低Ca血症、二次性副甲状腺機能亢進症、骨病変(慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常〈CKD-MBD〉) ・レニン:輸入細動脈の傍糸球体細胞で産生。腎灌流圧の低下、緻密斑へのNaCl到達量の減少、交感神経(β1受容体)刺激で分泌増加
副腎のホルモンと産生部位
副腎皮質は外側から球状層・束状層・網状層の3層に分かれ、「塩(鉱質コルチコイド)・糖(糖質コルチコイド)・性(副腎アンドロゲン)」の順に産生すると覚える。 ・球状層:アルドステロン ・束状層:コルチゾール ・網状層:デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)などの副腎アンドロゲン ・髄質:アドレナリン、ノルアドレナリン
慢性腎臓病との関連
腎機能が低下すると、エリスロポエチン不足による腎性貧血と、ビタミンD活性化障害による骨ミネラル代謝異常が起こる。前者には赤血球造血刺激因子製剤(ESA)やHIF-PH阻害薬、後者には活性型ビタミンD製剤やリン吸着薬などが用いられる。これらはいずれも腎臓の内分泌機能の低下を補う治療である。
POINT
・腎で造られる(活性化される)代表的ホルモン:エリスロポエチン、活性型ビタミンD3、レニン ・カテコラミン:副腎髄質 ・コルチゾール:副腎皮質束状層 ・アルドステロン:副腎皮質球状層(分泌を調節するレニンは腎臓) ・腎不全では腎性貧血とビタミンD活性化障害が起こる
