StudyMed医師国家試験

息はある、でも危ない―ショックと意識混濁の傷病者に付けるタッグは何色か

第103回医師国家試験 F問題 第5問

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第103回 F問題 第5問

災害時に,自発呼吸があり意識混濁を伴うショック状態の患者につけるトリアージタッグの色で正しいのはどれか。

  1. a.緑
  2. b.黄
  3. c.赤
  4. d.黒
  5. e.白

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は災害時のトリアージの問題だ。多数の傷病者が出たとき、限られた人手や物資で誰を優先するかを短時間で決める。注目してほしいのは「自発呼吸がある」ことと「ショック」「意識混濁」がそろっている点。この組み合わせが何を意味するか考えてみよう。
医学生医学生
ショックで意識も悪いなら、かなり重症ですよね。もう助からないと判断して黒、という可能性はありますか。
ドクタードクター
そこが判断の分かれ目だね。黒は死亡、または気道を確保しても自発呼吸がないなど、その状況下では救命が困難と判断される人に付ける。今回は自発呼吸があるから、救命の可能性は残っているんだ。
医学生医学生
なるほど。黒は「重いから」ではなく、「助けられない」という判断なんですね。
ドクタードクター
その通り。そのうえで、ショックは循環が破綻して臓器に十分な血液が届いていない状態で、意識混濁は脳への循環不全の表れとも考えられる。放っておけば死亡に至るけれど、止血や輸液などの処置をすぐ行えば助かる見込みがある。こういう人を最優先治療群とし、赤のタッグを付けるんだ。
医学生医学生
救急科の実習で、災害訓練のときに「赤は今すぐ治療すれば助かる人」と教わりました。
ドクタードクター
まさにそれが赤の定義だよ。代表例は気道閉塞、呼吸不全、大量出血、ショック、意識障害など。ではほかの色も確認しよう。黄はどんな人かな。
医学生医学生
黄は歩けないけれど、すぐには命に関わらない人だったと思います。
ドクタードクター
正解。待機的治療群で、呼吸・循環・意識が保たれていて、治療が数時間遅れても生命に危険が及ばない人。バイタルが安定している骨折などがそうだね。今回はショックと意識障害があるから、待てる状態ではない。
医学生医学生
緑は自分で歩ける軽症者ですね。白というのは聞いたことがない気がします。
ドクタードクター
そう、緑は保留群で、軽い打撲や擦過傷などの歩行可能な軽症者。そしてタッグの区分は黒・赤・黄・緑の4色だけで、白は存在しない。優先順位は赤、黄、緑の順で、黒は治療・搬送の優先順位としては最後になる。
医学生医学生
実際の現場ではどうやって素早く判定するんですか。一人ひとり詳しく診察していたら間に合わないですよね。
ドクタードクター
一次トリアージではSTART法がよく使われる。まず歩ければ緑。歩けなければ呼吸を見て、気道を確保しても呼吸がなければ黒。呼吸数がおおむね30回/分以上か10回/分未満なら赤。次に橈骨動脈が触れない、または毛細血管再充満時間が2秒を超えれば赤。簡単な指示に従えなければ赤。どれにも当たらなければ黄だ。
医学生医学生
今回の患者さんは、ショックで循環の項目に当たり、意識混濁で指示に従えない項目にも当たるので、どちらからでも赤になりますね。
ドクタードクター
その通り。START法は呼吸、循環、意識という生理学的な指標を順に見ていくから、OSCEで習ったABCの評価の延長だと考えると覚えやすいよ。
医学生医学生
一度赤と付けたら、そのまま変えないんですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。傷病者の状態は時間とともに変わるから、トリアージは現場、搬送前、病院到着時など各段階で繰り返し行う。医療者が行う二次トリアージでは、生理学的評価と解剖学的評価を組み合わせたPAT法などでより詳しく判定する。黄だった人が悪化して赤になることも当然ある。
医学生医学生
タッグの付け方にもルールがあるんでしたっけ。
ドクタードクター
あるよ。タッグの下端に色分けされたもぎりがあって、判定した色が一番下に残るように切り取る。装着は原則右手首で、難しければ左手首、右足首、左足首、首の順。衣服や靴のような外れやすい所には付けない。トリアージは「最大多数に最良の医療を」という考え方に基づいているから、迷わず速く、そして繰り返し見直すことが大切なんだ。

まとめ

トリアージは、災害時に限られた医療資源を最大限に生かすため、傷病者の緊急度と重症度を短時間で判定して治療・搬送の優先順位を決める手順で、黒・赤・黄・緑の4色のタッグで区分します(白は存在しません)。自発呼吸があり、ショックと意識混濁を伴う傷病者は、直ちに処置すれば救命の可能性があるため最優先治療群の赤に分類されます。黒は気道確保後も呼吸がないなど救命困難な者、黄はバイタルが保たれ治療を待てる者、緑は歩行可能な軽症者です。一次トリアージのSTART法では歩行、呼吸、循環(橈骨動脈触知・CRT)、意識(指示に従えるか)の順に判定し、状態の変化に応じて各段階で繰り返し再評価します。呼吸・循環・意識という生理学的指標に基づく判断の流れを身につけることは、災害医療だけでなく日常の救急診療にも直結します。

解答・解説

正解はcです

トリアージとは

トリアージ(triage)は、多数の傷病者が同時に発生する災害現場などで、限られた医療資源(人手・物資・搬送手段)を最大限に生かすため、傷病者の緊急度と重症度を短時間で判定し、治療や搬送の優先順位を決める手順である。「最大多数に最良の医療を」という考え方に基づく。判定結果はトリアージタッグ(識別票)の色で表示し、黒・赤・黄・緑の4区分を用いる。

本問の患者の評価

本問の患者は、自発呼吸はあるので死亡(黒)ではない。しかしショック状態、つまり循環が破綻して臓器に十分な血液が届いていない状態にあり、さらに意識混濁がみられる。意識障害は脳への循環不全の表れとも考えられ、生命の危機が差し迫っている。一方で、今すぐ処置(止血、輸液など)を行えば救命できる可能性がある。このような「直ちに治療しなければ死亡するが、治療すれば助かる見込みがある」傷病者は最優先治療群に分類され、赤のタッグを付ける。

一次トリアージ(START 法)の流れで確認する

災害現場で広く用いられる START 法(Simple Triage And Rapid Treatment)では、次の順に判定する。 1. 歩ける → 緑 2. 歩けない場合、呼吸を確認。気道を確保しても呼吸がない → 黒 3. 呼吸数が多すぎる(おおむね30回/分以上)または少なすぎる(10回/分未満) → 赤 4. 橈骨動脈が触れない、または毛細血管再充満時間(CRT:爪床を圧迫して離した後、赤みが戻るまでの時間)が2秒を超える → 赤 5. 簡単な指示に従えない(意識障害) → 赤 6. 上記のいずれにも当たらない → 黄 本問の患者はショック状態(手順4に該当)かつ意識混濁(手順5に該当)であり、いずれの観点からも赤と判定される。

選択肢考察

  1. ×a.  緑

    緑はカテゴリーⅢ(保留群・軽処置群)で、自力で歩くことができ、専門的な医療機関への緊急搬送を必要としない軽症者(軽い打撲や擦過傷など)に付ける。ショックと意識混濁を伴う本患者はこれに当たらない。

  2. ×b.  黄

    黄はカテゴリーⅡ(待機的治療群・非緊急治療群)で、歩行は困難だが、呼吸・循環・意識は保たれており、治療開始が数時間程度遅れても生命に危険が及ばない傷病者(バイタルサインが安定した骨折など)に付ける。本患者はショックと意識障害があり、治療を待てる状態ではないので誤りである。

  3. ○c.  赤

    赤はカテゴリーⅠ(最優先治療群・緊急治療群)で、生命に関わる重篤な状態にあり直ちに処置が必要だが、処置によって救命が見込める傷病者に付ける。気道閉塞・窒息、呼吸不全、大量出血、ショック、意識障害などが代表である。本患者は自発呼吸があるため救命の可能性が残っており、一方でショックと意識混濁があり一刻を争う。まさに最優先で治療・搬送すべき対象であり、赤が正しい。

  4. ×d.  黒

    黒はカテゴリー0(死亡群・救命困難群)で、すでに死亡している者、または気道を確保しても自発呼吸がないなど、現在の状況下では救命が不可能と判断される者に付ける。本患者は自発呼吸があり救命の可能性があるので、黒には当たらない。

  5. ×e.  白

    トリアージタッグの区分は黒・赤・黄・緑の4色であり、白という区分は存在しない。したがって誤りである。

トリアージの4区分

・赤(カテゴリーⅠ):最優先治療群。直ちに処置すれば救命可能。例:気道閉塞、呼吸困難、大量出血、ショック、意識障害、開放性胸部外傷など。 ・黄(カテゴリーⅡ):待機的治療群。治療が多少遅れても生命に危険がない。例:バイタルサインが安定している骨折・熱傷など。 ・緑(カテゴリーⅢ):保留群。歩行可能な軽症者。 ・黒(カテゴリー0):死亡群・救命困難群。死亡または救命の見込みがない者。 治療・搬送の優先順位は赤→黄→緑→黒の順である。

トリアージタッグの構造と運用

タッグの下端には色分けされたもぎり(切り取り部分)があり、判定した色が一番下に残るように不要な部分を切り取って使う。装着部位は原則として右手首で、困難な場合は左手首、右足首、左足首、首の順に付ける。衣服や靴など外れやすい所には付けない。

トリアージは繰り返し行う

傷病者の状態は時間とともに変化するため、トリアージは一度で終わらせず、現場、搬送前、病院到着時など各段階で繰り返し行う。一次トリアージでは START 法のように短時間で行える簡便な方法を用い、医療者が行う二次トリアージでは、生理学的評価と解剖学的評価を組み合わせた PAT 法(Physiological and Anatomical Triage)などでより詳しく判定する。

POINT

・トリアージタッグは黒・赤・黄・緑の4色(白はない)。 ・赤=直ちに治療すれば救命可能な最重症者(ショック、意識障害、気道閉塞、大量出血など)。 ・黒=死亡または救命困難。気道を確保しても自発呼吸がなければ黒。 ・START 法:歩行可→緑、呼吸なし→黒、呼吸数異常・循環不全(橈骨動脈触知不能、CRT>2秒)・指示に従えない→赤、それ以外→黄。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。