StudyMed医師国家試験

初経のない17歳とモザイク核型―Turner症候群を「首と肘」で見抜く

第103回医師国家試験 E問題 第57問

国試問題にチャレンジ

第103回 E問題 第57問

17歳の女子。初経がみられないため母親に伴われて来院した。身長140cm,体重38kg。体温36.1℃。脈拍76/分,整。血圧110/78mmHg。乳房の発達は不良で,外陰部は小児様で陰毛の発育も乏しい。染色体検査では,45,XO/46,XXのモザイクであった。  この患者にみられるのはどれか。2つ選べ。

  1. a.円形顔貌
  2. b.低耳介
  3. c.翼状頸
  4. d.外反肘
  5. e.単一横走手掌線

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、性染色体異常の典型例から特徴的な身体所見を選ぶ問題だ。原発性無月経と二次性徴の欠如、低身長、そして核型。まずはこの組み合わせから診断をつけて、そのうえで各選択肢がどの疾患の所見なのかを整理していこう。
医学生医学生
X染色体が1本欠けた細胞があるので、Turner症候群ですよね。でもモザイクだと典型的な症状が出ないこともあるのでは、と少し迷いました。
ドクタードクター
いい疑問だね。確かにモザイクでは症状が軽く、自然に月経が来る人もいる。ただ今回は低身長も二次性徴の欠如もはっきりしているから、Turner症候群として考えて問題ない。ちなみに問題文の45,XOは古い表記で、今の国際表記では45,Xと書くよ。
医学生医学生
二次性徴が出ないのは、卵巣が働いていないからでしょうか。
ドクタードクター
その通り。Turner症候群では卵巣が線維性の索状性腺になって女性ホルモンを作れない。だから検査ではエストロゲンが低く、フィードバックが効かずにLHやFSHが高くなる、高ゴナドトロピン性性腺機能低下症のパターンになる。低身長のほうは、X染色体短腕にあるSHOX遺伝子の量が半分になることが主な原因とされているんだ。
医学生医学生
では選択肢の中だと、翼状頸は典型的ですよね。小児科の講義のスライドで首の横に皮膚のひだがある写真を見ました。
ドクタードクター
そう、翼状頸はTurner症候群の代表的な所見だ。胎児期にリンパ管の発達が悪く、頸部にリンパ液がたまって嚢胞性ヒグローマができ、それが吸収されたあとに余った皮膚がひだとして残ると考えられている。新生児期に手背や足背のリンパ浮腫で気づかれることがあるのも、同じリンパ系の問題だね。
医学生医学生
外反肘は、腕を伸ばしたときに前腕が外側に反る状態でしたっけ。
ドクタードクター
そう。肘を伸ばして手のひらを前に向けたときの運搬角が大きくなる状態で、Turner症候群の骨格異常として頻度が高い。第4中手骨が短いことも有名だ。だから正解は翼状頸と外反肘の2つになる。
医学生医学生
低耳介も染色体異常でよく見る所見なので、つい選びそうになりました。
ドクタードクター
そこは迷いやすいところだね。低耳介はDown症候群や18トリソミー、13トリソミーなど多くの染色体異常症でみられる小奇形だ。Turner症候群でも耳介の変形や低位がみられることはあるけれど特異性は低く、この問題で本症を特徴づける所見としては、翼状頸と外反肘が優先される。
医学生医学生
単一横走手掌線はDown症候群でしたよね。CBTの勉強でセットで覚えました。
ドクタードクター
そのとおり。いわゆる猿線で、Down症候群の代表的な皮膚紋理所見だ。ただ健常者にも数%みられるから、それだけで診断はできない。では円形顔貌はどうかな。
医学生医学生
丸い顔というと、Cushing症候群の満月様顔貌が思い浮かびます。
ドクタードクター
正解。それに偽性副甲状腺機能低下症のAlbright遺伝性骨異栄養症も、丸顔、低身長、短い中手骨が特徴だ。低身長や短い中手骨はTurner症候群と重なるけれど、丸顔はTurner症候群の典型ではない。
医学生医学生
所見ごとに「どの疾患の代表か」を対応づけておくのが大事なんですね。
ドクタードクター
そう。そして臨床で特に大事なのが内臓の合併症だ。大動脈縮窄症や二尖大動脈弁があり、大動脈解離のリスクにも注意が必要。ほかにも馬蹄腎などの腎奇形、橋本病による甲状腺機能低下症、耐糖能異常、難聴がある。診断したら心臓・腎臓・甲状腺などを一通り調べておく必要があるんだ。
医学生医学生
治療はホルモン補充ですか。
ドクタードクター
低身長には成長ホルモン療法を行い、思春期年齢になったらエストロゲンを少量から補充して二次性徴を誘導する。その後はエストロゲンとプロゲスチンを併用して周期的な消退出血を起こすKaufmann療法などに移る。骨粗鬆症の予防という意味もあるよ。もう一つ、核型にY染色体成分を含むモザイクでは性腺芽腫などのリスクが高いため、予防的な性腺摘出が考慮される。
医学生医学生
核型の確認は診断だけでなく、その後の管理方針にも関わるんですね。
ドクタードクター
その通り。知能はおおむね正常な人が多いから、長期的な健康管理と心理的なサポートを含めて支えていくことが大切だ。

まとめ

低身長と原発性無月経・二次性徴の欠如をもつ女性で、X染色体1本の欠失(45,Xやそのモザイク)を認めればTurner症候群と診断され、代表的な外表所見は翼状頸と外反肘です。翼状頸は胎児期のリンパ管発達不全による頸部嚢胞性ヒグローマの名残と考えられ、ほかに後頭部毛髪線の低位、盾状胸と乳頭間離開、第4中手骨短縮なども特徴です。低耳介や単一横走手掌線はDown症候群をはじめとする他の染色体異常症の代表的所見、円形顔貌はCushing症候群や偽性副甲状腺機能低下症の所見として区別しておきましょう。臨床的には大動脈縮窄症や二尖大動脈弁、馬蹄腎、甲状腺機能低下症などの合併症の検索と、成長ホルモン療法やエストロゲン補充による長期管理が重要です。所見を疾患ごとに対応づけて整理することは、染色体異常症全般の鑑別に役立ちます。

解答・解説

正解はc, dです

所見の整理

・17歳で初経がない → 原発性無月経(一般に満18歳を過ぎても初経がないものを指すが、15歳を過ぎて二次性徴が乏しければ精査の対象となる) ・乳房発達不良、小児様の外陰部、陰毛の発育不良 → 二次性徴の欠如・遅延 ・身長140cm → 同年齢女子の平均(約158cm)を大きく下回る低身長 ・染色体 45,X/46,XX のモザイク(問題文の表記は45,XO。現在の国際表記では45,Xと書く)

診断

低身長と二次性徴欠如をもつ女性で、X染色体の1本が欠けた細胞系列をもつことから、Turner症候群と診断できる。Turner症候群では卵巣が線維性の索状性腺(streak gonad)となって女性ホルモンを産生できないため、原発性無月経と二次性徴の欠如が起こる。低身長はX染色体短腕上のSHOX遺伝子の量が半分になることが主な原因とされる。

設問の考え方

選択肢には、Turner症候群に特徴的な外表所見と、他の染色体異常症(主にDown症候群)や内分泌疾患に特徴的な所見が混在している。各所見が「どの疾患の代表的所見か」を対応づけて判断する。Turner症候群の代表的外表所見は、翼状頸、外反肘、後頭部毛髪線の低位、盾状胸(幅広い胸郭)と乳頭間の離開、第4中手骨の短縮、爪の低形成、多発性色素性母斑、新生児期の手足のリンパ浮腫などである。

選択肢考察

  1. ×a.  円形顔貌

    円形顔貌(丸顔)は、Cushing症候群の満月様顔貌(moon face)や、偽性副甲状腺機能低下症でみられるAlbright遺伝性骨異栄養症(AHO:丸顔、低身長、短い第4・第5中手骨、肥満など)の特徴として知られる。Turner症候群の典型的所見ではない。

  2. ×b.  低耳介

    耳介が正常より低い位置にある低耳介(耳介低位)は小奇形の一つで、Down症候群、18トリソミー、13トリソミー、猫鳴き症候群(5p-症候群)など多くの染色体異常症でみられる。Turner症候群でも耳介の変形や低位を伴うことはあるが特異性は低く、本症を特徴づける代表的所見としては翼状頸と外反肘が優先される。

  3. ○c.  翼状頸

    翼状頸は、頸部の両側に耳の後ろから肩にかけて皮膚のひだが張り出す所見である。胎児期にリンパ管の発達が悪くリンパ液が頸部にたまり(頸部嚢胞性ヒグローマ)、それが吸収された後に余った皮膚がひだとして残ることで生じると考えられている。Turner症候群の代表的な外表所見である。

  4. ○d.  外反肘

    外反肘は、肘を伸ばして手掌を前に向けたとき、前腕が上腕に対して外側に強く反る状態(肘の生理的な外反角=運搬角が大きい状態)である。Turner症候群の骨格異常として頻度が高く、第4中手骨の短縮などとともに代表的な所見である。

  5. ×e.  単一横走手掌線

    単一横走手掌線(いわゆる猿線)は、手掌の2本の屈曲線が1本につながって横に走るもので、Down症候群の代表的な皮膚紋理所見である。健常者にも数%の頻度でみられる。Turner症候群の特徴的所見ではない。

Turner症候群の概要

・X染色体の全部または一部の欠失による性染色体異常症で、女児出生約2,000〜2,500人に1人の頻度である。 ・核型は45,Xが約半数で、残りは本問のような45,X/46,XXモザイク、X染色体の構造異常(同腕染色体Xq、環状X染色体など)である。モザイクでは症状が軽く、自然に月経が起こる例もある。 ・Y染色体成分をもつモザイク(45,X/46,XYなど)では、性腺芽腫などの性腺腫瘍の発生リスクが高いため予防的性腺摘出が考慮される。

主な症状

・低身長(ほぼ全例)、性腺機能不全(原発性無月経、二次性徴欠如)。検査ではエストロゲン低値とゴナドトロピン(LH・FSH)高値を示す高ゴナドトロピン性性腺機能低下症となる。 ・外表奇形:翼状頸、後頭部毛髪線の低位、外反肘、盾状胸と乳頭間離開、第4中手骨短縮、爪の低形成、多発性色素性母斑、新生児期の手背・足背のリンパ浮腫。 ・内臓合併症:大動脈縮窄症、二尖大動脈弁(大動脈解離のリスクにも注意)、馬蹄腎などの腎奇形、甲状腺機能低下症(橋本病)、耐糖能異常、難聴。 ・知能は概ね正常だが、空間認知の苦手さなどがみられることがある。

治療

・低身長に対して成長ホルモン療法を行う。 ・思春期年齢に達したらエストロゲン補充を少量から開始して二次性徴を誘導し、その後エストロゲンとプロゲスチンを併用したKaufmann療法などで周期的な消退出血を起こす。骨粗鬆症予防の意味もある。

他の染色体異常症との対比

・Down症候群(21トリソミー):つり上がった眼瞼裂、内眼角贅皮、低耳介、単一横走手掌線、筋緊張低下、心内膜床欠損、十二指腸閉鎖など ・18トリソミー:手指の重なり(握りこぶし状)、揺り椅子状足底、小顎、心室中隔欠損など ・13トリソミー:口唇口蓋裂、全前脳胞症、多指症、頭皮欠損など ・Klinefelter症候群(47,XXY):高身長、女性化乳房、小さな精巣、無精子症

POINT

・低身長 + 原発性無月経(二次性徴欠如)+ 45,X → Turner症候群 ・Turner症候群の外表所見:翼状頸、外反肘、後頭部毛髪線低位、盾状胸・乳頭間離開、第4中手骨短縮 ・合併症:大動脈縮窄症、二尖大動脈弁、馬蹄腎、甲状腺機能低下症 ・内分泌所見:エストロゲン低値、LH・FSH高値(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症) ・低耳介と単一横走手掌線はDown症候群を代表とする所見、円形顔貌はCushing症候群や偽性副甲状腺機能低下症

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。