StudyMed医師国家試験

「3・7・9・10」を体で覚える―副交感神経を運ぶ脳神経の見分け方

第103回医師国家試験 E問題 第3問

国試問題にチャレンジ

第103回 E問題 第3問

副交感神経を含むのはどれか。3つ選べ。

  1. a.動眼神経
  2. b.三叉神経
  3. c.顔面神経
  4. d.迷走神経
  5. e.舌下神経

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、脳神経のうち副交感神経の線維を含むものを選ぶ問題だ。暗記で解ける問題だけど、それぞれの線維がどこから出てどこへ行くのかまで理解すると、臨床症状とつながって忘れにくくなる。まずは副交感神経の全体像から確認しよう。
医学生医学生
副交感神経は「頭仙系」で、交感神経は「胸腰系」と解剖の講義で習いました。
ドクタードクター
その通り。副交感神経の節前ニューロンの細胞体は脳幹と仙髄のS2〜S4にある。脳幹から出る副交感線維は、4対の脳神経に乗って走るんだ。どれか言えるかな。
医学生医学生
語呂で「3・7・9・10」と覚えています。動眼神経、顔面神経、舌咽神経、迷走神経ですね。選択肢だと舌咽神経がないので、残りの3つが答えでしょうか。
ドクタードクター
正解だ。動眼神経、顔面神経、迷走神経の3つになる。ただ語呂だけだと応用が利かないから、1つずつ中身を見ていこう。まず動眼神経。副交感線維の起始核は中脳のEdinger-Westphal核だ。
医学生医学生
毛様体神経節でニューロンを替えて、瞳孔括約筋と毛様体筋に行くんですよね。縮瞳と調節です。
ドクタードクター
その通り。対光反射の遠心路でもある。臨床で大事なのは、副交感線維が動眼神経の表層を走っているため、外からの圧迫で先に障害されやすいこと。内頸動脈-後交通動脈分岐部の動脈瘤や鉤ヘルニアでは、散瞳を伴う動眼神経麻痺が起こるんだ。
医学生医学生
脳神経外科の実習で、瞳孔不同は絶対に見逃すなと言われました。そういう理由だったんですね。
ドクタードクター
そう、副交感線維の走行を知っていると瞳孔所見の重みがわかる。次は顔面神経。表情筋を動かす神経というイメージが強いと思うけど、どうかな。
医学生医学生
正直、顔面神経は運動神経だと思っていました。副交感神経も含んでいるんですか。
ドクタードクター
含んでいるんだ。中間神経と呼ばれる部分に、橋の上唾液核から出る副交感の節前線維が走っている。一部は大錐体神経を経て翼口蓋神経節で涙腺や鼻腺・口蓋腺へ、別の一部は鼓索神経を経て顎下神経節で顎下腺・舌下腺へ向かう。表情筋を支配する顔面神経核とは別の核だから混同しないようにね。
医学生医学生
だから顔面神経麻痺で涙や唾液の分泌が落ちることがあって、障害部位の推定に使えるんですね。耳鼻科の講義でシルマー試験が出てきました。
ドクタードクター
まさにそう。涙液分泌が保たれているかどうかで、病変が大錐体神経の分岐より中枢か末梢かを推定する手がかりになる。舌前2/3の味覚も顔面神経だよ。では迷走神経は?
医学生医学生
副交感神経の代表ですよね。心臓や肺、消化管に行っていると思います。
ドクタードクター
そう、副交感神経の最大の経路だ。延髄の迷走神経背側核から節前線維が出て、臓器の近くや壁内の神経節で節後ニューロンに接続する。消化管では左結腸曲あたりまでを支配し、それより遠位の大腸や骨盤内臓器は仙髄由来の骨盤内臓神経が担当する。心臓への線維は主に疑核から出て心拍数を下げるんだ。
医学生医学生
では三叉神経はどうでしょう。混合神経なので何となく副交感神経も入っていそうな気がしました。
ドクタードクター
そこがよく狙われる落とし穴だね。三叉神経は顔面の感覚と咀嚼筋の運動を担う混合神経だけど、脳幹に副交感神経の起始核をもたない。顔面神経や舌咽神経から来た副交感の節後線維が、三叉神経の枝に相乗りして涙腺や唾液腺に届くことはあるけど、それは他の神経の線維を借りているだけなんだ。
医学生医学生
相乗りしているだけで、三叉神経固有の線維ではないということですね。舌下神経は舌を動かすだけの運動神経なので、副交感神経は含まないですよね。
ドクタードクター
その通り。舌下神経は舌筋を支配する純粋な運動神経で、一側が障害されると挺舌で舌が障害側へ偏位し、同側の舌萎縮や線維束性収縮がみられる。OSCEの脳神経診察でもやったよね。
医学生医学生
はい、挺舌させて偏位を見ました。混合神経の中で三叉神経だけが副交感神経を含まない、と覚えておきます。
ドクタードクター
いい整理だ。最後に、選択肢にはなかった舌咽神経も押さえておこう。延髄の下唾液核から出て、小錐体神経を経て耳神経節でニューロンを替え、耳下腺の分泌を担う。そして対になる交感神経はT1〜L2付近の側角から出て、頭頸部へは上頸神経節からの節後線維が動脈に沿って分布し、瞳孔散大筋などを支配する。この経路が障害されるのがHorner症候群だ。
医学生医学生
縮瞳、眼瞼下垂、同側顔面の発汗低下ですね。動眼神経麻痺の散瞳と、瞳孔の向きが逆になるのが対照的です。
ドクタードクター
その対比はとても大事だよ。瞳孔が大きいのか小さいのか、どちらの自律神経が障害されているのかを考える習慣をつけておくと、救急でも神経内科でも役に立つ。

まとめ

副交感神経は頭仙系で、脳幹から出る副交感線維は動眼神経(Edinger-Westphal核)、顔面神経(上唾液核)、舌咽神経(下唾液核)、迷走神経(迷走神経背側核など)の4対の脳神経に含まれます。動眼神経は縮瞳と調節、顔面神経は涙腺・顎下腺・舌下腺、舌咽神経は耳下腺、迷走神経は胸腹部臓器を支配し、左結腸曲より遠位は仙髄由来の骨盤内臓神経が担います。三叉神経は混合神経ですが固有の副交感線維をもたず、他の神経の線維が相乗りするだけで、舌下神経は純粋な運動神経です。動脈瘤による散瞳を伴う動眼神経麻痺、顔面神経麻痺での涙液・唾液分泌低下、Horner症候群との対比など、線維の走行を理解しておくことが神経診察や救急での瞳孔評価に直結します。

解答・解説

正解はa, c, dです

脳神経のうち、副交感神経(節前線維)を含むものを問う問題である。 自律神経のうち副交感神経は「頭仙系」とも呼ばれ、節前ニューロンの細胞体は脳幹と仙髄(S2〜S4)にある。脳幹から出る副交感神経線維は、次の4対の脳神経に乗って走る。 ・動眼神経(Ⅲ):中脳のEdinger-Westphal核(動眼神経副核) ・顔面神経(Ⅶ):橋の上唾液核(涙腺核を含む) ・舌咽神経(Ⅸ):延髄の下唾液核 ・迷走神経(Ⅹ):延髄の迷走神経背側核(および心臓への線維を出す疑核の一部) 語呂として「3・7・9・10」と覚えるとよい。 選択肢のうち、この4対に該当するのは動眼神経、顔面神経、迷走神経の3つである。三叉神経は感覚と咀嚼筋の運動を担う混合神経、舌下神経は舌筋を支配する純粋な運動神経であり、いずれも脳幹に副交感神経核をもたない。

選択肢考察

  1. ○a.  動眼神経

    正しい。動眼神経には、中脳のEdinger-Westphal核に起始する副交感神経節前線維が含まれる。この線維は眼窩内の毛様体神経節でシナプスを形成し、節後線維(短毛様体神経)が瞳孔括約筋と毛様体筋を支配する。これにより縮瞳(対光反射の遠心路)と調節(近見反応での水晶体の厚みの増加)が起こる。動眼神経は圧迫を受けると表層を走る副交感線維が先に障害されやすく、脳動脈瘤(内頸動脈-後交通動脈分岐部)や鉤ヘルニアでは散瞳を伴う動眼神経麻痺となる。そのほか、上眼瞼挙筋と上直筋・下直筋・内直筋・下斜筋を支配する体性運動線維も含む。

  2. ×b.  三叉神経

    誤り。三叉神経は顔面・角膜・口腔・鼻腔などの体性感覚を伝える感覚線維と、咀嚼筋(咬筋、側頭筋、内側・外側翼突筋など)を支配する運動線維からなる混合神経である。脳幹に副交感神経の起始核をもたず、固有の副交感神経線維は含まない。なお、顔面神経・舌咽神経由来の副交感節後線維が三叉神経の枝(頬神経や舌神経など)に合流して涙腺・唾液腺へ到達するが、これは他の脳神経の線維が「相乗り」しているにすぎない。

  3. ○c.  顔面神経

    正しい。顔面神経(その一部である中間神経)には、橋の上唾液核に起始する副交感神経節前線維が含まれる。一部は大錐体神経を経て翼口蓋神経節でニューロンを替え、涙腺や鼻腔・口蓋の腺の分泌を促す。別の一部は鼓索神経を経て顎下神経節でニューロンを替え、顎下腺と舌下腺の分泌を促す。このため顔面神経麻痺では障害部位によって涙液分泌低下や唾液分泌低下がみられ、障害部位診断の手がかりとなる。顔面神経はほかに表情筋の運動線維と、舌前2/3の味覚線維も含む。上唾液核は顔面神経の運動核(表情筋を支配する顔面神経核)とは別の神経核である点に注意する。

  4. ○d.  迷走神経

    正しい。迷走神経は副交感神経の最大の経路であり、延髄の迷走神経背側核から出る節前線維が、胸腹部臓器(気管支・肺、消化管、肝臓、膵臓など)の近傍や壁内にある神経節で節後ニューロンに接続する。消化管では左結腸曲(脾弯曲)付近までを支配し、それより遠位の大腸と骨盤内臓器は仙髄由来の骨盤内臓神経が支配する。心臓への副交感線維は主に疑核から出て、心拍数を低下させる。迷走神経はほかに咽頭・喉頭の筋を支配する運動線維(疑核由来)や、内臓感覚・咽頭喉頭の感覚線維も含む混合神経である。

  5. ×e.  舌下神経

    誤り。舌下神経は延髄の舌下神経核から起こり、舌筋(内舌筋と、茎突舌筋・舌骨舌筋・オトガイ舌筋などの外舌筋、ただし口蓋舌筋は迷走神経支配)を支配する純粋な運動神経である。副交感神経線維は含まない。一側の障害では、挺舌時に舌が障害側へ偏位し、同側の舌萎縮や線維束性収縮がみられる。

副交感神経を含む脳神経(Ⅲ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ)

・動眼神経(Ⅲ):Edinger-Westphal核 → 毛様体神経節 → 瞳孔括約筋・毛様体筋(縮瞳・調節) ・顔面神経(Ⅶ):上唾液核 → 翼口蓋神経節 → 涙腺・鼻腺・口蓋腺          上唾液核 → 顎下神経節 → 顎下腺・舌下腺 ・舌咽神経(Ⅸ):下唾液核 → 小錐体神経 → 耳神経節 → 耳下腺 ・迷走神経(Ⅹ):迷走神経背側核・疑核 → 臓器近傍・壁内神経節 → 心臓、気管支、消化管(左結腸曲まで)など ・仙髄(S2〜S4):骨盤内臓神経 → 下行結腸以降の大腸、膀胱、生殖器

脳神経の線維構成の整理

・感覚のみ:嗅神経(Ⅰ)、視神経(Ⅱ)、内耳神経(Ⅷ) ・運動のみ:動眼神経(Ⅲ、ただし副交感線維を含む)、滑車神経(Ⅳ)、外転神経(Ⅵ)、副神経(Ⅺ)、舌下神経(Ⅻ) ・混合(感覚+運動):三叉神経(Ⅴ)、顔面神経(Ⅶ)、舌咽神経(Ⅸ)、迷走神経(Ⅹ) 混合神経のうち三叉神経だけは副交感神経を含まない点が試験で問われやすい。

交感神経との対比

交感神経の節前ニューロンは胸髄〜上部腰髄(T1〜L2付近)の側角にある(胸腰系)。頭頸部へは上頸神経節からの節後線維が動脈に沿って分布し、瞳孔散大筋などを支配する。この経路の障害がHorner症候群(縮瞳、眼瞼下垂、同側顔面の発汗低下)である。

POINT

・副交感神経を含む脳神経は動眼(Ⅲ)・顔面(Ⅶ)・舌咽(Ⅸ)・迷走(Ⅹ)の4対。 ・起始核:Edinger-Westphal核(Ⅲ)、上唾液核(Ⅶ)、下唾液核(Ⅸ)、迷走神経背側核(Ⅹ)。 ・三叉神経は混合神経だが副交感神経を含まない。舌下神経は純粋な運動神経。 ・副交感神経は頭仙系(脳幹+S2〜S4)、交感神経は胸腰系。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。