StudyMed医師国家試験

広さは深さを決めない―熱傷の「深度」を左右する熱源と皮膚の事情

第103回医師国家試験 E問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第103回 E問題 第14問

熱傷の深さに影響を与えないのはどれか。

  1. a.患者年齢
  2. b.受傷面積
  3. c.受傷部位
  4. d.接触時間
  5. e.熱源の種類

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は熱傷の重症度を考えるうえでの基本、「深さ」を決める因子を問う問題だ。熱傷の評価には「深さ」と「広さ」という2本の軸があるけれど、この2つは別物。その区別がついているかがポイントになるよ。
医学生医学生
重症度は深さと面積の両方で決まるので、どれも関係ありそうに見えてしまいます。
ドクタードクター
重症度という意味では確かにどれも大事だね。でも今回聞かれているのは「深さ」だけ。深さは、皮膚に加わった熱エネルギーの量と、それを受け止める皮膚の抵抗力のかけ合わせで決まる、と考えるとすっきり整理できる。
医学生医学生
熱源側と皮膚側、という分け方ですね。熱源側だと、温度と接触時間でしょうか。
ドクタードクター
その通り。温度が高いほど、接触が長いほど熱は深くまで届く。接触時間の典型例が低温熱傷だ。湯たんぽやカイロのように44℃前後の熱でも、数時間同じ場所に当たり続けると、見た目以上に深い熱傷になることがある。
医学生医学生
皮膚科の臨床実習で、湯たんぽで寝ていた高齢の方の下腿に、小さいのに植皮が必要な熱傷を見ました。見た目は地味だったのが印象的です。
ドクタードクター
まさにそれが低温熱傷の怖さだね。では熱源の種類はどうだろう。
医学生医学生
熱湯と天ぷら油だと、油のほうがひどくなるイメージがあります。
ドクタードクター
いい感覚だ。湯による熱傷は比較的浅いことが多いけれど、加熱油は温度が高いうえに粘って皮膚に付着し離れにくい。火炎、特に着衣への着火や高温の蒸気、熱した金属も深くなりやすい。だから受傷機転を聞けば、ある程度深さを推定できるんだ。
医学生医学生
次に皮膚側の要素ですね。皮膚の厚さが関係するということは、年齢と部位でしょうか。
ドクタードクター
そうだね。熱傷が自然に治るには、真皮にある毛包や汗腺などの皮膚付属器の上皮細胞が生き残っている必要がある。皮膚が厚ければ深部の付属器が残りやすく、相対的に浅い熱傷で済む。乳幼児や高齢者は真皮が薄いから、同じ熱でも深くなりやすいし、とっさに熱源から逃げられず接触時間が延びやすいという面もある。
医学生医学生
部位で言うと、背中や手掌・足底は厚くて、眼瞼や前腕の内側、陰部は薄いですよね。解剖実習で皮膚を剥いだとき、背中の厚さに驚きました。
ドクタードクター
その実感は大事だよ。薄い部位ほど熱傷は深くなりやすい。こうして見ると、年齢と部位は皮膚側、接触時間と熱源の種類は熱源側の因子として、いずれも深さに影響する。残るのが受傷面積だ。
医学生医学生
面積は「どれだけ広いか」であって、一か所に熱がどこまで届いたかとは関係ない、だから深さには影響しない、ということですね。
ドクタードクター
正解。ただ一つ補足しておくと、広範囲熱傷では循環障害や感染が起こりやすく、それが経過中に創を深くしてしまうことはある。熱傷創は中心の凝固壊死帯の周りに、治療次第で回復も壊死もしうるうっ血帯があって、ここが壊死に陥ると熱傷が深くなるんだ。でもこれは合併症を介した二次的な変化で、受傷時の深さを決める因子ではない。
医学生医学生
だから広範囲熱傷では、初期の輸液や創管理が大事なんですね。
ドクタードクター
そういうこと。最後に深度分類も確認しよう。I度は表皮だけで発赤と痛み、浅達性II度は真皮浅層で水疱底が赤く強い痛み、1〜2週で瘢痕を残さず治りやすい。深達性II度は真皮深層で水疱底が白っぽく、痛みは鈍く、肥厚性瘢痕を残しやすい。III度は全層壊死で革のように硬く、神経も壊れて痛みがない。付属器が残らないので原則植皮が必要だ。
医学生医学生
CBTで「III度は痛くない」と覚えました。痛がっていないから軽い、と判断してはいけないんですね。
ドクタードクター
その通り。面積は9の法則や手掌法で見積もり、II度とIII度だけを数える。深さと面積を組み合わせたBurn Indexや、年齢を加えた熱傷予後指数で重症度や予後を判断する。深さと広さを別々に正しく評価することが、熱傷診療の出発点だよ。

まとめ

熱傷の深さは、熱源側の要素(温度、接触時間、熱源の種類)と、皮膚側の要素(年齢や部位で変わる皮膚の厚さ)の組み合わせで決まります。低温でも長時間触れれば深くなる低温熱傷、加熱油や火炎による深い熱傷、乳幼児・高齢者や眼瞼・陰部など皮膚の薄い部位での深い熱傷はその代表例です。一方、受傷面積は熱傷の「広さ」を示す独立した指標であり、受傷時の深さを決める因子ではありません。ただし広範囲熱傷では循環障害や感染でうっ血帯が壊死に陥り、経過中に深度が進行しうるため、適切な輸液と創管理が重要です。深さと面積を別々に評価し、両者を組み合わせて重症度を判定するという考え方は、救急外来での熱傷初期対応の基本となります。

解答・解説

正解はbです

テーマ

熱傷の「深さ(深度)」と「広さ(面積)」は、どちらも重症度判定に欠かせない指標だが、互いに独立した別の要素である。本問では、熱傷の深さを決める因子を理解しているかが問われている。

熱傷の深さを決めるもの

熱傷の深さは、大きく次の2つの要素のかけ合わせで決まる。 1. 熱源側の要素(皮膚に加わった熱エネルギーの大きさ) 熱エネルギーの量は、熱源の温度と接触時間によっておおむね決まる。温度が高いほど、また接触が長いほど、熱は皮膚の深い層まで達する。熱源の種類(湯・炎・蒸気・油・金属など)は、温度や熱の伝わりやすさ、皮膚への付着しやすさの違いを通して深さに影響する。 2. 皮膚側の要素(熱に対する皮膚の抵抗性) 熱傷創が自然に上皮化するためには、真皮内にある毛包・汗腺・脂腺などの皮膚付属器の上皮細胞が生き残っている必要がある。皮膚が厚ければ、同じ熱量を受けても深部の付属器が残りやすく、結果として熱傷は相対的に浅くなる。皮膚の厚さは年齢や部位によって異なる。

正解を導く考え方

選択肢のうち、患者年齢と受傷部位は皮膚側の要素、接触時間と熱源の種類は熱源側の要素として深さに影響する。一方、受傷面積は熱傷が「どれだけ広いか」を示すもので、ある一点で熱が「どれだけ深く届いたか」を決める因子ではない。したがって、受傷面積が深さに影響を与えないものとして選ばれる。

選択肢考察

  1. ×a.  患者年齢

    乳幼児や高齢者は成人に比べて皮膚(特に真皮)が薄いため、同じ温度の熱源に同じ時間接触しても、熱が真皮の深層や皮下組織まで届きやすく、熱傷は深くなりやすい。高齢者では皮膚付属器も減少しているため、上皮化の源となる細胞が残りにくい。また、乳幼児や高齢者は熱源からすばやく逃げられないことが多く、接触時間が長くなりやすい点も深い熱傷につながる。よって年齢は深さに影響する。

  2. ○b.  受傷面積

    受傷面積は熱傷の広がり(体表面積の何%か)を示す指標であり、個々の部位に熱がどこまで深く達したかとは直接関係しない。したがって受傷直後の熱傷深度を決める因子ではなく、本問の正解となる。受傷面積は深度と組み合わせて重症度判定や輸液量の算出に用いられる。なお、広範囲熱傷では全身の循環障害や創感染が起こりやすく、それらが経過中に創を深くしてしまう(深度が進行する)ことはある。しかしこれは合併症を介した二次的な変化であり、受傷時の深さそのものを決める因子ではない。

  3. ×c.  受傷部位

    皮膚の厚さは部位によって大きく異なる。背部・臀部・手掌・足底などは皮膚が厚く、眼瞼・前腕屈側・大腿内側・陰部などは薄い。皮膚が薄い部位では熱が深部に届きやすく、皮膚付属器も残りにくいため、同じ条件でも熱傷は深くなりやすい。よって受傷部位は深さに影響する。

  4. ×d.  接触時間

    皮膚に加わる熱エネルギーは、熱源の温度に加えて接触時間が長いほど大きくなり、熱傷は深くなる。その典型が低温熱傷で、湯たんぽやカイロ、電気あんかなど、44℃前後の比較的低い温度であっても数時間にわたって同じ部位に接触し続けると、表面の見た目に比べて深い熱傷(深達性II度〜III度)になることがある。よって接触時間は深さに影響する。

  5. ×e.  熱源の種類

    熱源の種類によって温度や熱の伝わり方が異なるため、熱傷の深さも変わる。一般に、湯による熱傷(湯傷)は比較的浅いことが多い。これに対し、火炎(特に着衣への着火)、高温の水蒸気、高温で粘りがあり皮膚に付着して離れにくい加熱油、高温の金属などによる熱傷は深くなりやすい。このように熱源の種類から深度をある程度推定できるため、受傷機転の聴取が重要となる。

熱傷深度の分類

・I度熱傷(表皮熱傷):損傷は表皮にとどまる。発赤と疼痛がみられ、水疱は形成しない。数日で瘢痕を残さず治癒する。 ・浅達性II度熱傷(SDB:superficial dermal burn):真皮浅層までの損傷。水疱を形成し、水疱底は赤色で、強い疼痛を伴う。皮膚付属器が十分に残っているため、おおむね1〜2週間で上皮化し、瘢痕を残しにくい。 ・深達性II度熱傷(DDB:deep dermal burn):真皮深層までの損傷。水疱底は白色調で、知覚が鈍くなり痛みは比較的軽い。上皮化に3〜4週間程度かかり、肥厚性瘢痕を残しやすい。感染などで III度へ移行することもある。 ・III度熱傷(全層熱傷):皮膚全層(ときに皮下組織以下)が壊死する。白色〜褐色・黒色の硬い革様の外観を呈し、神経終末も破壊されるため痛みを感じない(無痛)。皮膚付属器が残っていないので自然上皮化は期待できず、原則として植皮などの外科的治療が必要となる。

受傷面積の算定法

・9の法則:成人で頭頸部9%、上肢各9%、体幹前面18%、体幹後面18%、下肢各18%、陰部1%とする。 ・5の法則:小児・乳児で用いられ、頭部の比率を大きく見積もる。 ・Lund-Browderの図表:年齢による体型の違いを考慮して部位ごとの比率を定めた方法で、最も正確とされる。 ・手掌法:患者の手掌(指を含む)の面積を体表面積の約1%として、小範囲や散在する熱傷の面積を見積もる。 なお、面積算定に含めるのはII度とIII度であり、I度は含めない。

重症度判定

深度と面積を組み合わせて判定する。代表的な指標にBurn Index(III度熱傷面積%+1/2×II度熱傷面積%)があり、10〜15以上で重症とされる。これに年齢を加えた熱傷予後指数(PBI:prognostic burn index=Burn Index+年齢)も予後の目安となる。Artzの基準では、II度30%以上、III度10%以上、顔面・手・足・会陰部の熱傷、気道熱傷、電撃傷、化学熱傷、軟部組織損傷や骨折の合併などが重症熱傷として熱傷専門施設での治療の対象となる。

熱傷創の三層構造(Jacksonの分類)

熱傷創は、中心の凝固壊死帯、その周囲の、循環障害があるが適切な治療で回復しうるうっ血帯(stasis zone)、さらに外側の充血帯に分けられる。循環不全や感染、乾燥によってうっ血帯が壊死に陥ると、熱傷は受傷後に深くなる。広範囲熱傷で適切な輸液と創管理が重要とされるのはこのためである。

POINT

・熱傷深度を決めるのは「熱源側(温度・接触時間・熱源の種類)」と「皮膚側(皮膚の厚さ=年齢・部位)」の要素。 ・受傷面積は深度とは独立した指標であり、受傷時の深度を決める因子ではない(ただし広範囲熱傷では循環障害・感染による経過中の深度進行に注意)。 ・乳幼児・高齢者、皮膚の薄い部位(眼瞼・陰部など)は深い熱傷になりやすい。 ・低温でも長時間接触すれば深い熱傷(低温熱傷)になる。 ・深度分類:I度(表皮)、浅達性II度(真皮浅層、1〜2週で治癒)、深達性II度(真皮深層、瘢痕を残しやすい)、III度(全層、無痛、植皮が必要)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。