坐骨棘はお産の物差し―展退度・Bishopスコア・Apgarスコアの数字を正しく覚える
第103回医師国家試験 E問題 第13問
国試問題にチャレンジ
正しいのはどれか。
- a.子宮頸部の展退度は最大で50%である。
- b.Bishopスコアの最高点は10点である。
- c.坐骨棘は胎児下降度の基準となる。
- d.頸管が約10cm開大すれば分娩第2期は終了する。
- e.Apgarスコアは児の成熟度を示す。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
分娩に関わる評価法は、それぞれ「何を・どの範囲で・何のために」測るかを区別して覚えることが重要です。展退度は子宮頸管の短縮・菲薄化を0〜100%で表し、Bishopスコアは開大度・展退度・児頭下降度(各3点)と硬さ・位置(各2点)の合計13点で頸管熟化度を評価し、分娩誘発の判断に用いられます。児頭下降度は左右の坐骨棘を結ぶ線をstation 0として上下のcmで表し、子宮口全開大(約10cm)は分娩第1期の終わりかつ第2期の始まりで、第2期は胎児娩出で終わります。Apgarスコア(最高10点)は出生後1分・5分の新生児仮死の評価であり、成熟度はDubowitz法やNew Ballardスコアで評価します。これらの定義を正確に押さえることは、分娩進行の把握と母子の安全確保に直結する基本となります。
解答・解説
正解はcです
テーマ
本問は、分娩に関わる基本的な評価法(内診による子宮頸部の評価、Bishopスコア、児頭の下降度、分娩の時期区分、新生児のApgarスコア)の定義を正しく理解しているかを問う一般問題である。
考え方
各選択肢はそれぞれ別の評価法を扱っているので、評価法ごとに「何を・どの範囲で・何のために測るのか」を思い出して照合する。 ・展退度:子宮頸管がどれだけ短く薄くなったかを百分率で表す(0〜100%)。 ・Bishopスコア:子宮頸管の熟化度(分娩への準備状態)を5項目で点数化する(0〜13点)。 ・児頭下降度(station):左右の坐骨棘を結ぶ線を0とし、そこから上下何cmかで表す。 ・分娩第2期:子宮口全開大から胎児娩出まで。 ・Apgarスコア:出生直後の新生児の状態(仮死の有無と程度)を評価する(0〜10点)。 これらの定義を押さえていれば、坐骨棘が児頭下降度の基準点であるという記述だけが正しいと判断できる。
選択肢考察
- ×a. 子宮頸部の展退度は最大で50%である。
展退とは、分娩が近づくにつれて子宮頸管が上方へ引き伸ばされ、短く薄くなっていく変化のことである。妊娠末期の本来の頸管長(約3cm前後)が保たれている状態を0%、頸管が完全に引き伸ばされて薄い膜状となり、子宮口の縁だけが触れる状態を100%と表す。したがって最大値は100%であり、50%ではない。
- ×b. Bishopスコアの最高点は10点である。
Bishopスコアは、頸管開大度(0〜3点)、頸管展退度(0〜3点)、児頭下降度(0〜3点)、子宮頸部の硬さ(0〜2点)、子宮口の位置(0〜2点)の5項目の合計で、最高点は3+3+3+2+2=13点である。最高点が10点なのは、5項目をそれぞれ0〜2点で評価するApgarスコアの方であり、両者を混同させる選択肢である。
- ○c. 坐骨棘は胎児下降度の基準となる。
児頭の下降度(station)は、左右の坐骨棘を結んだ線の高さを0(station 0)とし、児頭の最先進部がそれより何cm上にあるかを−(マイナス)、何cm下にあるかを+(プラス)で表す(例:−3〜+3など)。坐骨棘は内診で触れることができる骨盤内の目印であり、この高さは骨盤の最も狭い部分(骨盤濶部から峡部への移行部)に相当する。したがって坐骨棘は胎児(児頭)下降度の基準となり、この記述は正しい。
- ×d. 頸管が約10cm開大すれば分娩第2期は終了する。
子宮口が約10cm開大した状態を全開大という。全開大は分娩第1期(開口期)の終わりであり、同時に分娩第2期(娩出期)の始まりである。分娩第2期が終わるのは胎児が娩出されたときである。よって「10cm開大で第2期が終了する」は誤りである。
- ×e. Apgarスコアは児の成熟度を示す。
Apgarスコアは、出生後1分と5分の時点で、心拍数・呼吸・筋緊張・反射(刺激に対する反応)・皮膚色の5項目をそれぞれ0〜2点で評価し、合計0〜10点で新生児仮死の有無と程度を判定する指標である。示すのは出生直後の児の状態(適応の良否)であり、成熟度ではない。新生児の成熟度(在胎週数の推定)は、Dubowitz法やNew Ballardスコアなど、身体的特徴と神経学的所見を組み合わせた別の方法で評価する。
分娩の時期区分
・分娩第1期(開口期):規則的な陣痛(おおむね10分以内の周期、または1時間に6回以上)の開始から子宮口全開大(約10cm)まで。 ・分娩第2期(娩出期):子宮口全開大から胎児娩出まで。 ・分娩第3期(後産期):胎児娩出から胎盤・卵膜の娩出まで。 ・分娩後の約2時間は、弛緩出血などの異常が起こりやすいため「分娩第4期」として厳重に観察することがある。
Bishopスコア
子宮頸管の熟化度を評価する指標で、分娩誘発を行うかどうかの判断などに用いられる。 ・頸管開大度:0cm=0点、1〜2cm=1点、3〜4cm=2点、5cm以上=3点 ・頸管展退度:0〜30%=0点、40〜50%=1点、60〜70%=2点、80%以上=3点 ・児頭下降度:station −3=0点、−2=1点、−1〜0=2点、+1以上=3点 ・頸部の硬さ:硬=0点、中=1点、軟=2点 ・子宮口の位置:後方=0点、中央=1点、前方=2点 合計0〜13点で、一般に9点以上であれば頸管は熟化しており、分娩誘発が成功しやすいと判断される。点数が低い(頸管が未熟な)場合は、分娩誘発の前に頸管熟化を促す処置が検討される。
児頭下降度(station)
坐骨棘間線をstation 0とし、そこから骨盤入口側(上方)を−、骨盤出口側(下方)を+としてcm単位で表す。児頭の最大周囲径が骨盤入口面を通過した状態を「児頭の固定(嵌入)」といい、児頭最先進部がおおむねstation 0付近に達したころに相当する。
Apgarスコア
・心拍数:なし=0点、100/分未満=1点、100/分以上=2点 ・呼吸:なし=0点、弱い泣き声・不規則=1点、強く泣く=2点 ・筋緊張:だらりとしている=0点、四肢をやや屈曲=1点、四肢を活発に動かす=2点 ・反射(刺激への反応):反応なし=0点、顔をしかめる=1点、泣く・咳・くしゃみ=2点 ・皮膚色:全身蒼白またはチアノーゼ=0点、体幹ピンク・四肢チアノーゼ=1点、全身ピンク=2点 一般に7点以上が正常、4〜6点が軽症仮死、3点以下が重症仮死とされる。1分値は出生時の状態を、5分値は蘇生への反応や神経学的予後との関連をより反映する。なお、新生児蘇生はApgarスコアの算出を待たずに、呼吸・心拍・筋緊張などの評価に基づいてただちに開始する。
POINT
・展退度は0〜100%で表す。 ・Bishopスコアは5項目で最高13点(開大・展退・下降度が各3点、硬さ・位置が各2点)。一般に9点以上で頸管熟化良好。 ・児頭下降度は坐骨棘間線をstation 0として表す。 ・子宮口全開大(約10cm)は分娩第1期の終わり=第2期の始まり。第2期の終わりは胎児娩出。 ・Apgarスコア(最高10点)は出生後1分・5分の児の状態(仮死の程度)の評価であり、成熟度の評価ではない。成熟度はDubowitz法・New Ballardスコアで評価する。
