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眼球の中身はほとんど水?―99%が水でできた「硝子体」の正体

第103回医師国家試験 E問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第103回 E問題 第1問

重量の約99%を水が占めるのはどれか。

  1. a.結膜
  2. b.水晶体
  3. c.硝子体
  4. d.脈絡膜
  5. e.強膜

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は眼球を構成する組織の組成、特に水分の割合を問う基礎的な問題だ。ポイントは、眼球の「壁」をつくる組織と、光を通す「中身」の組織を分けて考えること。まず眼球の構造をおさらいしようか。
医学生医学生
外側から外膜、中膜、内膜の3層でしたよね。解剖学の講義で、外膜が角膜と強膜、中膜がぶどう膜、内膜が網膜と習いました。
ドクタードクター
完璧だね。ぶどう膜は虹彩、毛様体、脈絡膜の3つから成る。そしてこの3層の壁に囲まれた内部に、房水、水晶体、硝子体という透明な内容物がある。光を通す必要がある内容物は、細胞や血管をほとんど含まない水分の多い組織になっているんだ。
医学生医学生
透明で水っぽいものとなると、水晶体か硝子体ですね。水晶体も透明なので迷います。
ドクタードクター
そこが考えどころ。水晶体は透明だけど、実は水分は約65%で、残りの約35%は蛋白質なんだ。人体の組織の中でも蛋白質の割合が特に高い部類に入る。
医学生医学生
蛋白質がそんなに多いのに、なぜ透明なんですか。
ドクタードクター
主な蛋白質のクリスタリンが、高濃度で規則正しく並んでいるからだ。この配列のおかげで透明性と高い屈折率が両立している。加齢や紫外線でクリスタリンが変性・凝集すると、光が散乱して濁る。それが白内障だね。
医学生医学生
眼科の実習で白内障手術を見学しましたが、濁った水晶体を超音波で砕いて吸い出していました。あれは蛋白質のかたまりだったんですね。
ドクタードクター
そういうこと。一方、硝子体は水晶体の後ろで網膜に囲まれた空間を満たす無色透明のゲルで、眼球容積の約4/5を占める。重量の約99%が水で、残りのわずかなⅡ型コラーゲン線維の網目とヒアルロン酸がゲルの形を保っている。これが正解だ。
医学生医学生
99%が水なのにゼリー状を保てるのは不思議です。
ドクタードクター
ヒアルロン酸は大量の水を抱え込む性質があって、コラーゲンの網目がその骨組みになっているんだ。ただし、年をとるとこのゲルが液化して、後部硝子体剝離が起こる。これが飛蚊症の原因になったり、網膜を引っ張って網膜裂孔や網膜剝離の誘因になったりする。
医学生医学生
では壁のほうの組織、結膜や脈絡膜、強膜はどうでしょう。どれも水が99%とは思えないです。
ドクタードクター
その直感で正しい。結膜は眼瞼の裏と眼球前面を覆う薄い粘膜で、上皮細胞や杯細胞、血管を含む固有層からなる普通の組織だ。脈絡膜はぶどう膜の後部で、血管とメラノサイトに富み、網膜外層に酸素や栄養を届けつつ、メラニンで余分な光を吸収している。
医学生医学生
組織学実習で見た脈絡膜は、黒い色素と血管がぎっしりでした。確かに水だけという感じではなかったです。
ドクタードクター
よく観察していたね。強膜は眼球外壁の後方約5/6を占める白く丈夫な膜で、Ⅰ型コラーゲン線維が不規則に密に並んだ結合組織だ。眼球の形を保って中身を守る役割だから、線維が主体になっている。
医学生医学生
角膜は透明ですけど、水分量はどのくらいなんですか。
ドクタードクター
約78%だ。角膜は実質のコラーゲン線維が規則正しく並び、さらに角膜内皮のポンプ機能で水を汲み出して、やや脱水状態に保たれることで透明になっている。内皮が傷むと角膜がむくんで濁るんだよ。
医学生医学生
透明性の仕組みは組織ごとにずいぶん違うんですね。水晶体は蛋白の配列、角膜は線維の配列と脱水、硝子体は水そのものという感じでしょうか。
ドクタードクター
うまい整理だね。ちなみに房水も約99%が水だけど、今回の選択肢にはない。臨床的には、糖尿病網膜症などで起こる硝子体出血や、抗VEGF薬の硝子体内注射、硝子体手術など、硝子体は治療の舞台としても重要だ。組成を理解しておくと、こうした病態や治療のイメージもつかみやすくなるよ。

まとめ

眼球は外膜(角膜・強膜)、中膜(ぶどう膜=虹彩・毛様体・脈絡膜)、内膜(網膜)の3層の壁と、房水・水晶体・硝子体という透明な内容物から成ります。硝子体は眼球容積の約4/5を占めるゲルで、重量の約99%が水であり、Ⅱ型コラーゲン線維とヒアルロン酸がその形を保っています。水晶体は透明でも水分は約65%で、残りはクリスタリンという蛋白質が占め、その変性・凝集が白内障につながります。結膜・脈絡膜・強膜は細胞や線維、血管を含む組織であり、水分が99%を占めることはありません。各組織の組成と透明性の仕組みを理解しておくと、後部硝子体剝離や白内障、角膜浮腫といった疾患や、硝子体内注射などの治療を理解する土台になります。

解答・解説

正解はcです

眼球を構成する各組織の組成(水分含量)を問う基本問題である。 眼球は外側から、外膜(角膜・強膜)、中膜(ぶどう膜=虹彩・毛様体・脈絡膜)、内膜(網膜)の3層の壁で囲まれ、内部には房水、水晶体、硝子体という透明な内容物がある。光を通す必要がある内容物は、細胞や血管をほとんど含まない、水分の多い組織でできている。 なかでも硝子体は、眼球容積の約4/5を占めるゼリー状の透明なゲルで、重量の約99%が水である。残りのわずかな固形成分(コラーゲン線維とヒアルロン酸)が網目構造をつくり、ゲルとしての形を保っている。一方、壁を構成する膜組織(結膜・脈絡膜・強膜)は細胞や線維、血管を含む組織であり、水分が99%を占めることはない。水晶体は透明ではあるが、蛋白質(クリスタリン)を高濃度に含むため水分は約2/3にとどまる。

選択肢考察

  1. ×a.  結膜

    誤り。結膜は眼瞼の裏面(眼瞼結膜)と眼球前面の強膜表面(眼球結膜)を覆う薄い粘膜で、上皮細胞、杯細胞、血管やリンパ組織を含む固有層からなる。細胞と結合組織で構成される通常の組織であり、水分が重量の99%を占めることはない。

  2. ×b.  水晶体

    誤り。水晶体は水分約65%、蛋白質約35%で構成され、人体の組織のなかでも蛋白質含有率が特に高い。主な蛋白質はクリスタリンで、これが規則正しく高濃度に配列することで透明性と高い屈折率が得られている。加齢や紫外線などでクリスタリンが変性・凝集すると混濁し、白内障となる。

  3. ○c.  硝子体

    正しい。硝子体は水晶体の後方で網膜に囲まれた空間を満たす無色透明のゲルで、容積は約4mL、眼球容積の約80%を占める。重量の約99%が水であり、残りはⅡ型コラーゲン線維の網目とその間を埋めるヒアルロン酸などである。血管を持たず、眼球の形状保持、光の透過、網膜の支持に役立っている。加齢によってゲルが液化(離水)し、後部硝子体剝離や飛蚊症の原因となる。

  4. ×d.  脈絡膜

    誤り。脈絡膜はぶどう膜の後部を構成する、血管とメラノサイトに富む組織である。網膜外層(視細胞・網膜色素上皮)へ酸素と栄養を供給し、メラニン色素によって眼内の余分な光を吸収する。血管と細胞成分からなる組織であり、水分99%という組成ではない。

  5. ×e.  強膜

    誤り。強膜は眼球の外壁の後方約5/6を占める白く丈夫な膜で、主にⅠ型コラーゲン線維が不規則に密に配列した結合組織からなる。眼球の形を保ち、内容物を保護する役割をもつ。線維成分が多い組織であり、水分が99%を占めることはない(角膜の水分量も約78%程度である)。

眼球の構造の整理

・外膜(線維膜):角膜(前方約1/6、透明)、強膜(後方約5/6、白色) ・中膜(ぶどう膜):虹彩、毛様体、脈絡膜。血管と色素に富む。 ・内膜:網膜 ・内容物:房水、水晶体、硝子体

透明な組織の組成

・房水:毛様体無色素上皮で産生される液体で、ほぼ水(約99%)。水晶体・角膜内皮など無血管組織の栄養と眼圧の維持を担う。 ・水晶体:水約65%、蛋白質約35%(クリスタリン)。無血管・無神経。 ・硝子体:水約99%、コラーゲン線維とヒアルロン酸がゲル構造をつくる。無血管。 ・角膜:水約78%。実質のコラーゲン線維が規則正しく配列し、角膜内皮のポンプ機能で脱水状態が保たれることで透明性が維持される。

硝子体に関連する病態

・加齢による液化・後部硝子体剝離 → 飛蚊症、網膜裂孔・網膜剝離の誘因 ・硝子体出血(糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症など) ・治療として硝子体手術や硝子体内注射(抗VEGF薬など)が行われる。

POINT

・硝子体は眼球容積の約4/5を占める透明なゲルで、重量の約99%が水。 ・水晶体は水約65%、蛋白質(クリスタリン)約35%。 ・結膜・脈絡膜・強膜は細胞や線維、血管を含む組織であり、水分99%ではない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。