頸静脈は張るか、脈は速いか―4分類で読み解くショックの症候
第103回医師国家試験 B問題 第7問
国試問題にチャレンジ
組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.心原性ショック ―― 乏尿
- b.出血性ショック ―― 頸静脈怒張
- c.神経原性ショック ―― 頻脈
- d.敗血症性ショック ―― 蕁麻疹
- e.アナフィラキシーショック ―― 喉頭浮腫
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
ショックは組織への酸素供給が需要に追いつかない急性循環不全で、循環血液量減少性、心原性、閉塞性、血液分布異常性の4つに分けて考えると症候を理解しやすくなります。乏尿は腎血流低下を反映し、心原性を含むすべてのショックでみられる臓器低灌流の指標です。出血性ショックでは頸静脈は虚脱し、怒張は心原性や心タンポナーデ・緊張性気胸などの閉塞性ショックを示唆します。神経原性ショックは交感神経遮断により徐脈と四肢の温感を示すのが特徴で、蕁麻疹や喉頭浮腫はアナフィラキシーショックの所見であり、アドレナリン筋注と気道確保が急務となります。頸静脈・脈拍・皮膚所見から病態を推定する考え方は、救急の現場で治療方針を素早く決めるための基礎になります。
解答・解説
正解はa, eです
問われていること
ショックとは、全身の組織への酸素供給が需要に追いつかなくなり、細胞の機能障害をきたす急性の循環不全である。原因によって病態が異なり、それに応じて現れる症候も異なる。本問は、ショックの種類ごとの特徴的な所見を正しく結びつけられるかを問うている。
考え方
ショックは病態から次の4つに分けると整理しやすい。 ・循環血液量減少性ショック(出血性ショックなど):前負荷(心臓に戻る血液量)が減る。静脈圧は低く、頸静脈は虚脱する。代償として頻脈と末梢血管収縮(皮膚の蒼白・冷感)が起こる。 ・心原性ショック:心臓のポンプ機能が低下する。心臓から血液を送り出せず静脈系にうっ滞するため、頸静脈怒張や肺うっ血がみられうる。 ・閉塞性ショック(心タンポナーデ、緊張性気胸、肺塞栓症):心臓への血液の流入や拍出が物理的に妨げられる。頸静脈怒張をきたす。 ・血液分布異常性ショック(敗血症性、アナフィラキシー、神経原性):末梢血管が拡張し、血液が末梢に偏って有効な循環血液量が減る。 どのショックでも、血圧低下と循環不全により腎血流が減るため尿量は減少する。そのうえで、各ショックに固有の症候として、出血性なら頸静脈虚脱と頻脈、神経原性なら交感神経遮断による徐脈、アナフィラキシーなら蕁麻疹・喉頭浮腫・気管支攣縮などを押さえておくと、正しい組合せを選べる。
選択肢考察
- ○a. 心原性ショック ―― 乏尿
心原性ショックは、急性心筋梗塞、重症不整脈、心筋炎などで心臓のポンプ機能が急激に低下して生じる。心拍出量が減少して血圧が下がり、代償的な交感神経の緊張で腎血管が収縮するため、腎血流量と糸球体濾過量が低下し、尿量が減る。乏尿は1日尿量400mL以下(または0.5mL/kg/時未満)を指し、ショックにおける臓器低灌流の重要な指標である。なお尿量減少は心原性に限らずすべてのショックで起こりうる。
- ×b. 出血性ショック ―― 頸静脈怒張
出血性ショックでは循環血液量そのものが減少するため、中心静脈圧は低下し、頸静脈はむしろ虚脱(平坦化)する。頸静脈怒張は、心原性ショック(特に右心不全を伴う場合)や、心タンポナーデ・緊張性気胸などの閉塞性ショックのように、心臓へ戻る血液がうっ滞する病態でみられる所見である。外傷患者で頸静脈怒張を伴うショックをみたら、出血以外にこれらを疑う手がかりになる。
- ×c. 神経原性ショック ―― 頻脈
神経原性ショックは、主に上位胸髄より高位の脊髄損傷などで交感神経の出力が途絶して起こる。末梢血管が拡張して血圧が下がるが、心臓の交感神経も遮断されて副交感神経(迷走神経)の作用が相対的に優位となるため、他のショックと異なり頻脈にならず徐脈を示すのが特徴である。また皮膚血管が拡張しているため、四肢は温かく乾燥していることが多い。
- ×d. 敗血症性ショック ―― 蕁麻疹
蕁麻疹は、肥満細胞から放出されるヒスタミンなどの化学伝達物質による皮膚の症状で、アナフィラキシーショックに特徴的である。敗血症性ショックは感染に対する生体反応の制御不全によって起こり、発熱または低体温、頻脈、頻呼吸、意識障害、末梢血管拡張による低血圧などがみられる。初期には四肢が温かいことがある(warm shock)が、蕁麻疹は典型的な所見ではない。
- ○e. アナフィラキシーショック ―― 喉頭浮腫
アナフィラキシーは、主にIgEを介したI型アレルギー反応で肥満細胞・好塩基球から化学伝達物質が大量に放出されて起こる。血管拡張と血管透過性の亢進により血圧が低下するとともに、皮膚(蕁麻疹、紅潮、血管性浮腫)、呼吸器(喉頭浮腫、気管支攣縮による喘鳴)、消化器(腹痛、嘔吐)などに症状が出る。喉頭浮腫は嗄声、吸気性喘鳴、呼吸困難をきたし、上気道閉塞から窒息に至りうるため、アドレナリン筋注と気道確保が急務となる。
ショックの分類と主な所見
・循環血液量減少性(出血、脱水、熱傷など):中心静脈圧低下、頸静脈虚脱、頻脈、皮膚蒼白・冷汗 ・心原性(急性心筋梗塞、重症不整脈、心筋炎、弁膜症の急性増悪など):心拍出量低下、頸静脈怒張、肺うっ血、皮膚冷感 ・閉塞性(心タンポナーデ、緊張性気胸、肺塞栓症):頸静脈怒張。心タンポナーデではBeckの三徴(低血圧、頸静脈怒張、心音減弱)や奇脈、緊張性気胸では患側呼吸音の減弱と気管の偏位がみられる。 ・血液分布異常性 敗血症性:発熱、頻脈、頻呼吸、意識障害。初期は末梢が温かいことがある。 アナフィラキシー:蕁麻疹、血管性浮腫、喉頭浮腫、気管支攣縮、消化器症状 神経原性:徐脈、四肢の温感(脊髄損傷、血管迷走神経反射など)
ショックの一般的な症候
ショックの5徴(5P)として、蒼白(pallor)、虚脱(prostration)、冷汗(perspiration)、脈拍触知不能(pulselessness)、呼吸不全(pulmonary insufficiency)が知られる。ただし敗血症性や神経原性など血管拡張を伴うショックでは、皮膚が温かく蒼白・冷汗を欠くこともある。尿量減少は全てのショックに共通する臓器低灌流の徴候で、治療効果の指標としても用いられる。
治療の要点
出血性では止血と輸液・輸血、心原性では強心薬や機械的補助、閉塞性では心嚢穿刺や胸腔ドレナージなど原因の解除、敗血症性では抗菌薬・輸液・血管収縮薬(ノルアドレナリン)、アナフィラキシーではアドレナリン筋注(成人0.3〜0.5mg、大腿前外側)が第一選択、神経原性では輸液に加え血管収縮薬や徐脈に対するアトロピンを用いる。
POINT
・乏尿はすべてのショックでみられ、心原性ショックでも生じる。 ・出血性ショックでは頸静脈は虚脱する。頸静脈怒張は心原性・閉塞性ショックの所見である。 ・神経原性ショックは交感神経遮断により徐脈となる(他のショックは通常頻脈)。 ・蕁麻疹・喉頭浮腫・気管支攣縮はアナフィラキシーショックの特徴で、治療はアドレナリン筋注である。
