StudyMed医師国家試験

日本のODAはどこへ向かう?―「二国間・借款・アジア」で読み解く国際協力の姿

第103回医師国家試験 B問題 第23問

国試問題にチャレンジ

第103回 B問題 第23問

我が国の政府開発援助〈ODA〉で正しいのはどれか。

  1. a.非政府援助よりも少ない。
  2. b.二国間援助よりも多国間援助が多い。
  3. c.二国間援助では貸与よりも贈与が多い。
  4. d.二国間援助はアジア諸国に対するものが多い。
  5. e.国際機関に対する拠出額は世界第1位である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、日本の政府開発援助、いわゆるODAの特徴を問う問題だ。医学とは少し離れて見えるけれど、国際保健を理解するうえで欠かせない知識だよ。着眼点は「誰を通じて援助するか」「あげるのか貸すのか」「どこに援助するか」の3つ。まず、ODAとは何か説明できるかな。
医学生医学生
政府が開発途上国に行う援助ですよね。公衆衛生の講義で、JICAや青年海外協力隊の話と一緒に出てきました。
ドクタードクター
その通り。政府または政府機関が、途上国の経済発展や福祉の向上を主な目的として、緩やかな条件で資金や技術を提供するものだ。だからNGOや民間企業の援助はODAには含まれない。では、日本ではODAと民間の非営利団体による援助、どちらが大きいと思う?
医学生医学生
最近はNGOの活動もよく耳にするので、民間の方が多いのかなと思ったんですが……。
ドクタードクター
そう感じる人は多いけれど、日本ではNGOなど民間非営利団体による途上国への贈与は、ODAに比べてずっと小さい規模にとどまる。欧米と比べると民間の寄付文化が大きくなく、国際協力の中心は今もODAなんだ。だから「非政府援助よりも少ない」は誤りだね。
医学生医学生
次は援助の経路ですね。国際機関にまとめて出すほうが効率的な気がしますが。
ドクタードクター
ODAには、相手国に直接行う二国間援助と、WHOやUNICEF、世界銀行などの国際機関を通じる多国間援助がある。日本は二国間援助が大部分を占めているんだ。相手国の要請に合わせてきめ細かく実施でき、日本の援助だと相手に伝わりやすい、いわゆる「顔の見える援助」になる。だから多国間援助の方が多いという記述も誤り。
医学生医学生
二国間援助の中身は、贈与と貸付に分かれるんでしたっけ。
ドクタードクター
そう。贈与は返済不要の援助で、施設建設や機材供与のための無償資金協力と、専門家派遣や研修員受け入れなどの技術協力からなる。貸付は円借款と呼ばれ、低金利・長期返済で資金を貸すものだ。日本の二国間援助では、支出総額でみると円借款の比重が大きく、贈与を上回っている。
医学生医学生
途上国を助けるのに、あげるより貸すほうが多いのは少し意外です。
ドクタードクター
そこが日本のODAの理念なんだ。返済を前提にすることで、相手国が自分たちの力で発展しようとする自助努力を促す、という考え方だよ。贈与中心の欧米諸国とは対照的なところだ。ただ、過去の貸付の回収分を差し引いた純額でみると、年によっては貸付の方が小さくなることもある。いずれにせよ「贈与の方が多い」は正しいとは言えない。
医学生医学生
では援助先はどうでしょう。地理的に近いアジアが多いですか。
ドクタードクター
その通り、これが正解だ。日本の二国間援助は、地理的に近く、歴史的・経済的な結びつきも深い東南アジアや南アジアを最大の対象地域としてきた。道路や港湾、発電所などのインフラ整備に円借款が使われ、アジアの経済成長を支えてきた経緯がある。近年はアフリカや中東への援助も増えているけれど、支出総額ではアジア向けが最も多い。
医学生医学生
最後の、国際機関への拠出額が世界第1位というのは?昔は日本が世界一の援助国だったと聞いたことがあります。
ドクタードクター
よく知っているね。日本は1990年代を通じて2000年までODA総額で世界第1位だった。でもその後ODA予算が減少して順位を下げ、出題当時は米国、ドイツ、フランス、英国に次ぐ5位だった。最大の援助国は米国で、日本が国際機関への拠出で世界第1位という記述は誤りだよ。
医学生医学生
まとめると、日本のODAは「二国間中心」「円借款の比重が大きい」「アジア重視」の3点で押さえればいいんですね。
ドクタードクター
完璧だ。統計の数値や順位は年によって変わるから、細かい数字より構造の特徴を理解しておくと応用がきく。医療者として関係が深いのは保健医療分野の国際協力だね。JICAによる母子保健や感染症対策の技術協力、災害時の国際緊急援助隊医療チームの派遣、WHOやUNICEF、グローバルファンドへの拠出などがある。
医学生医学生
地域医療の実習で、JICA海外協力隊で看護師として活動していた方の話を聞いたことがあります。現地で母子手帳を広める活動をしていたそうです。
ドクタードクター
母子手帳は日本発の仕組みとして、技術協力を通じて各国に広がった好例だね。近年は、すべての人が必要な保健医療サービスを負担可能な費用で受けられるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、UHCの推進が重点課題になっている。国民皆保険を実現してきた日本の経験は、国際保健でも期待されているんだ。
医学生医学生
国家試験の知識としてだけでなく、将来国際保健に関わる道もあると思うと、少し身近に感じられます。

まとめ

政府開発援助(ODA)は政府や政府機関が開発途上国の経済発展・福祉向上を目的に行う援助であり、NGOなど民間の援助は含まれず、日本ではODAが民間の援助を大きく上回ります。日本のODAの特徴は、国際機関を通じる多国間援助より相手国に直接行う二国間援助が中心であること、二国間援助では支出総額で円借款(貸付)が贈与を上回り自助努力の支援を理念とすること、そしてアジア諸国が最大の援助対象地域であることの3点です。日本は2000年まで世界第1位の援助国でしたが、その後は予算削減により順位を下げ、最大の援助国は米国です。保健医療分野でもJICAの技術協力、国際緊急援助隊、国際機関への拠出を通じた協力が行われ、近年はUHCの推進が重点課題となっています。統計の細かい数値より援助の構造を理解しておくことが、国際保健の問題に対応する土台になります。

解答・解説

正解はdです

我が国の政府開発援助(ODA:Official Development Assistance)の構造と特徴を問う問題である。 ODAとは、政府または政府機関が、開発途上国の経済発展や福祉の向上を主な目的として行う資金・技術の提供であり、民間企業やNGO(非政府組織)による援助は含まれない。日本のODAは次のように分類される。 ・二国間援助(相手国に直接行う援助)  -贈与:返済義務のない援助。無償資金協力(施設建設や機材供与のための資金提供)と技術協力(専門家派遣、研修員受入れ、青年海外協力隊など)からなる。  -政府貸付(円借款):低金利・長期返済の条件で資金を貸し付ける有償資金協力。 ・多国間援助(国際機関を通じた援助):国連機関(WHO、UNICEF、UNDPなど)や世界銀行・アジア開発銀行などへの拠出・出資。 日本のODAの特徴として押さえるべきは、①二国間援助が中心で多国間援助より多いこと、②二国間援助では円借款(貸付)の比重が大きく、自助努力を促す「借款中心」の援助であること、③地理的・歴史的・経済的に結びつきの深いアジア諸国が最大の援助対象地域であること、の3点である。これらを知っていれば、アジア向けが多いとする記述が正しいと判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  非政府援助よりも少ない。

    誤りである。NGOなど民間の非営利団体による開発途上国への贈与額は、日本ではODAのおよそ10分の1以下にとどまり、ODAの方がはるかに多い。欧米に比べて日本は民間の寄付による国際援助の規模が小さく、国際協力の中心は政府によるODAである。

  2. ×b.  二国間援助よりも多国間援助が多い。

    誤りである。日本のODAは、相手国と直接結ぶ二国間援助が全体の大部分を占め、国際機関への拠出・出資を通じた多国間援助は一部にすぎない。二国間援助は、相手国の要請に応じてきめ細かく実施でき、日本の援助であることが見えやすい(いわゆる「顔の見える援助」)という特徴がある。

  3. ×c.  二国間援助では貸与よりも贈与が多い。

    誤りである。日本の二国間援助では、支出総額でみると円借款などの政府貸付(有償資金協力)が贈与(無償資金協力+技術協力)を上回る。これは、返済を前提とすることで相手国の自助努力を促すという日本の援助理念を反映したもので、贈与中心の欧米諸国との大きな違いである。ただし、貸付実行額から過去の貸付の回収額を差し引いた純額でみると、貸付は贈与より小さくなる年もある。

  4. ○d.  二国間援助はアジア諸国に対するものが多い。

    正しい。日本の二国間援助は、地理的に近く、歴史的・経済的な結びつきも強いアジア諸国(東南アジア、南アジアなど)を最大の対象地域としている。インフラ整備を中心とする円借款がアジアの経済成長を支えてきた経緯がある。近年はアフリカや中東への援助も増えており、回収額を差し引いた純額ではアフリカ向けがアジア向けを上回った年(債務救済の影響など)もあるが、支出総額ではアジア向けが最も多い。

  5. ×e.  国際機関に対する拠出額は世界第1位である。

    誤りである。日本は1990年代から2000年まではODA総額で世界第1位の援助国であったが、その後はODA予算の削減により順位を下げ、2007年時点では米国、ドイツ、フランス、英国に次ぐ第5位となった。国際機関への拠出を含め、現在の最大の援助国は米国であり、日本は第1位ではない。

ODAの定義

OECD(経済協力開発機構)の開発援助委員会(DAC)の定義では、ODAは①政府または政府機関によって供与されること、②開発途上国の経済開発や福祉の向上を主たる目的とすること、③緩やかな条件(贈与、または低金利・長期返済の借款)であること、を満たす資金の流れを指す。

日本のODAの実施体制

二国間援助の多く(技術協力、無償資金協力、円借款)は、独立行政法人国際協力機構(JICA)が一元的に実施している。青年海外協力隊(現在のJICA海外協力隊)もJICAの技術協力事業の一つである。

日本のODA予算の推移

一般会計のODA予算は1997年度をピークに減少を続け、2000年代後半にはピーク時から約4割減少した。これに伴い、国際的な順位も第1位から後退した。

保健医療分野の国際協力

保健医療分野では、JICAによる技術協力(母子保健、感染症対策など)、国際緊急援助隊(医療チーム)の派遣、WHO・UNICEF・世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)への拠出などが行われている。近年はユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進が重点課題となっている。

POINT

・ODAは政府による開発途上国への援助であり、NGOなど民間の援助は含まない。 ・日本のODAは二国間援助>多国間援助。 ・二国間援助では(支出総額で)貸付(円借款)>贈与であり、自助努力支援が理念。 ・二国間援助の最大の対象地域はアジア。 ・日本は2000年まで世界第1位の援助国だったが、その後順位を下げ、最大の援助国は米国である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。