その義務、どの法律に書いてある?―医師法・刑法・医療法を仕分ける
第103回医師国家試験 B問題 第18問
国試問題にチャレンジ
医師法に規定されている義務で正しいのはどれか。3つ選べ。
- a.応召
- b.守秘
- c.処方箋交付
- d.診療録記載
- e.入院診療計画書の交付
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
医師の義務は複数の法律に分散して規定されており、医師法には応招義務と診断書等の交付義務(第19条)、無診察治療等の禁止(第20条)、異状死体等の届出義務(第21条)、処方箋交付義務(第22条)、療養指導義務(第23条)、診療録の記載・5年保存義務(第24条)が定められています。一方、医師の守秘義務は刑法第134条の秘密漏示罪に、入院診療計画書の作成・交付は医療法第6条の4に規定されており、医師法上の義務ではありません。看護職の守秘義務は保健師助産師看護師法、感染症の届出は感染症法、児童虐待の通告は児童虐待防止法と、義務ごとに根拠法が異なります。「医師個人の業務は医師法、医療機関の運営は医療法、秘密漏示の処罰は刑法」という軸で整理しておくと、国家試験だけでなく、実際の診療で自らの責任の範囲を理解するうえでも役立ちます。
解答・解説
正解はa, c, dです
医師が守るべき義務は一つの法律にまとまっているわけではなく、医師法、刑法、医療法などに分散して規定されている。本問は「その義務がどの法律に書かれているか」を正確に区別できるかを問う頻出テーマである。 医師法は医師の資格(免許、国家試験、臨床研修など)と業務を定めた法律であり、業務上の義務は主に第4章(第17条〜第24条の2)に置かれている。代表的なものは次のとおりである。 ・第17条: 医師でなければ医業をしてはならない(業務独占) ・第19条第1項: 応招義務 ・第19条第2項: 診断書・検案書・出生証明書・死産証書の交付義務 ・第20条: 無診察治療等の禁止 ・第21条: 異状死体等の届出義務(検案して異状を認めたら24時間以内に所轄警察署へ) ・第22条: 処方箋の交付義務 ・第23条: 療養方法等の指導義務 ・第24条: 診療録の記載・保存義務 一方、守秘義務は刑法、入院診療計画書の交付は医療法に規定されている。医師法に列挙された条文と、それ以外の法律に規定された義務を分けて整理することが正答への近道である。
選択肢考察
- ○a. 応召
医師法第19条第1項に「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と規定されている(法文上の表記は「応招」)。同条第2項では、診察・検案・出産立会いをした医師は、診断書などの交付を求められたときに正当な事由なく拒んではならないとされる。したがって医師法に規定された義務である。
- ×b. 守秘
医師の守秘義務は医師法ではなく刑法第134条(秘密漏示罪)に規定されている。同条は医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人などが、正当な理由なく業務上知り得た人の秘密を漏らした場合に処罰すると定めている。なお保健師・看護師・准看護師の守秘義務は保健師助産師看護師法に定められており、職種によって根拠法が異なる点にも注意する。
- ○c. 処方箋交付
医師法第22条に、医師は患者に治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者またはその看護にあたる者に処方箋を交付しなければならないと規定されている。ただし、患者側が処方箋を必要としない旨を申し出た場合や、処方箋の交付が暗示的効果を期待する場合などで治療上支障があるとき、診断・治療方法が決まっていない場合、応急措置として投与する場合など、例外も定められている。医師法に規定された義務である。
- ○d. 診療録記載
医師法第24条第1項に、医師は診療をしたときは遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならないと規定されている。同条第2項により、診療録は5年間保存しなければならない(病院・診療所の勤務医の診療録は、その管理者が保存する)。医師法に規定された義務である。
- ×e. 入院診療計画書の交付
入院診療計画書の作成・交付・説明は医療法第6条の4に規定されている。病院・診療所の管理者は、患者を入院させたとき、病名や症状、予定される検査・手術・治療の内容、推定される入院期間などを記載した書面を作成して患者または家族に交付し、適切に説明しなければならない。厚生労働省令により、原則として入院した日から起算して7日以内に行うこととされている。医療法の規定であり、医師法の義務ではない。
医師の義務と根拠法の整理
・医師法: 応招義務、診断書等の交付義務、無診察治療等の禁止、異状死体等の届出義務、処方箋交付義務、療養指導義務、診療録の記載・5年保存義務 ・刑法: 守秘義務(第134条 秘密漏示罪)、虚偽診断書等作成罪(第160条)など ・医療法: 入院診療計画書・退院療養計画書の作成と交付、医療を提供するにあたっての適切な説明と理解を得る努力(インフォームド・コンセントに関する努力義務、第1条の4)、医療事故調査制度など ・感染症法: 感染症の届出義務(一類〜四類および五類の全数把握疾患は診断後直ちに、または7日以内など、類型により異なる) ・児童虐待防止法: 虐待を受けたと思われる児童を発見した者の通告義務(医師には守秘義務より優先して通告が認められる) ・民法: 診療契約(準委任契約)に基づく善良な管理者の注意義務(善管注意義務)
応招義務についての補足
応招義務は「正当な事由」があれば診療を拒むことができる。近年、医師の働き方改革の議論のなかで、緊急性の有無や診療時間内か否か、患者と医療機関との信頼関係などを踏まえて正当な事由を判断する考え方が厚生労働省から示されている。なお応招義務違反そのものに罰則規定はない。
診療録の保存期間
医師法上の診療録保存期間は5年である。一方、エックス線写真や検査所見記録などの「診療に関する諸記録」は、医療法施行規則により病院では2年間の保存が求められている。混同しやすいので区別しておく。
POINT
・医師法に定められた主な義務: 応招(第19条)、診断書交付(第19条)、無診察治療の禁止(第20条)、異状死体届出(第21条)、処方箋交付(第22条)、療養指導(第23条)、診療録記載・5年保存(第24条)。 ・守秘義務は刑法第134条(秘密漏示罪)に規定され、医師法には含まれない。 ・入院診療計画書の交付は医療法第6条の4に規定され、入院後7日以内に行う。
