StudyMed医師国家試験

頭蓋底の「出口」を地図で覚える―脳神経と孔の対応を前から後ろへ整理する

第103回医師国家試験 B問題 第15問

国試問題にチャレンジ

第103回 B問題 第15問

組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.上眼窩裂 ―― 視神経
  2. b.卵円孔 ―― 上顎神経
  3. c.正円孔 ―― 下顎神経
  4. d.内耳孔 ―― 顔面神経
  5. e.頸静脈孔 ―― 迷走神経

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、脳神経が頭蓋の中から外へ出るときにどの孔を通るか、という解剖の基本問題だ。バラバラに暗記するより、頭蓋底を前・中・後の3つの窩に分けて、前から順に地図のようにたどるのがコツだよ。
医学生医学生
解剖実習で頭蓋底を見たとき、穴が多すぎて途中で混乱した記憶があります。
ドクタードクター
みんな最初はそうだね。まず前頭蓋窩から。嗅神経は篩板の小さな穴をたくさん通って鼻腔へ行く。次に中頭蓋窩。視神経はどこを通るかな。
医学生医学生
眼窩に入るので、上眼窩裂……だと思っていました。
ドクタードクター
そこがこの問題の最初の落とし穴だ。視神経は蝶形骨小翼の根元にある視神経管を、眼動脈と一緒に通る。上眼窩裂は大翼と小翼の間の裂け目で、眼球運動に関わる動眼神経・滑車神経・外転神経と、三叉神経第1枝の眼神経、それに上眼静脈が通るんだ。
医学生医学生
つまり上眼窩裂は「目を動かす神経と目の周りの感覚の神経」の通り道で、見る神経は別ルートなんですね。
ドクタードクター
その理解でいい。臨床的にも大事で、上眼窩裂の障害なら全眼筋麻痺と前額部の感覚障害が出るけれど視力は保たれやすい。視力障害まで伴えば、視神経管も巻き込む眼窩先端部症候群を考える。次は三叉神経の残り2枝だ。
医学生医学生
上顎神経と下顎神経ですね。卵円孔と正円孔、どっちがどっちかいつも迷います。
ドクタードクター
三叉神経の3枝は、眼神経が上眼窩裂、上顎神経が正円孔、下顎神経が卵円孔と、前(上)から後ろ(下)へ順に並ぶと覚えるといい。「1・2・3が前から後ろへ、裂・正・卵」だ。だから卵円孔に上顎神経、正円孔に下顎神経という組合せは、ちょうど入れ替わっていて誤りになる。
医学生医学生
順番で覚えれば取り違えなくて済みそうです。卵円孔の後ろにある棘孔は何が通るんでしたっけ。
ドクタードクター
中硬膜動脈だ。頭部外傷で側頭骨が折れると損傷して急性硬膜外血腫の出血源になるから、救急でも必ず出てくる。では後頭蓋窩に移ろう。内耳孔には何が通る?
医学生医学生
名前からすると内耳神経ですが、顔面神経も一緒だったと思います。
ドクタードクター
正解。内耳孔は内耳道の入口で、顔面神経と内耳神経、それに迷路動脈が通る。顔面神経はその後、側頭骨の中の顔面神経管を走って、最終的には茎乳突孔から頭蓋外に出て表情筋を支配する。だから内耳孔と顔面神経の組合せは正しい。
医学生医学生
耳鼻科の実習で、聴神経腫瘍の患者さんに顔面のしびれや麻痺がないか確認していたのは、同じ通り道だからなんですね。
ドクタードクター
その通り。前庭神経鞘腫は難聴・耳鳴から始まり、大きくなると顔面神経や三叉神経にも影響しうる。小脳橋角部の解剖がそのまま症状になるわけだ。最後に頸静脈孔。
医学生医学生
舌咽神経・迷走神経・副神経の3本と、内頸静脈が通る孔ですね。迷走神経の組合せは正しいです。
ドクタードクター
よくできました。この部位の腫瘍などで3本がまとめて障害されると、嚥下障害、嗄声、胸鎖乳突筋や僧帽筋の筋力低下が出る。頸静脈孔症候群、いわゆるVernet症候群だ。ちなみに舌下神経は頸静脈孔ではなく、すぐ近くの舌下神経管を通るから混同しないように。
医学生医学生
CBTの過去問で、内頸動脈は頸動脈管、延髄は大後頭孔、というのもセットで出ていました。
ドクタードクター
いい補足だね。もう一つ発展として、海綿静脈洞も押さえておこう。外側壁を動眼神経・滑車神経・眼神経・上顎神経が走り、洞の中を内頸動脈と外転神経が通る。内頸動脈海綿静脈洞瘻では、まず外転神経麻痺が出やすいのはこのためだ。孔の知識は、神経症状から病変の場所を逆算する神経診察の土台になるんだよ。

まとめ

脳神経が頭蓋底を抜ける通路は、前頭蓋窩・中頭蓋窩・後頭蓋窩の順に整理すると覚えやすく、嗅神経は篩板、視神経は視神経管、動眼・滑車・外転神経と眼神経は上眼窩裂を通ります。三叉神経の枝は眼神経が上眼窩裂、上顎神経が正円孔、下顎神経が卵円孔と前から後ろへ並び、棘孔には中硬膜動脈が通ります。後頭蓋窩では内耳孔を顔面神経と内耳神経が、頸静脈孔を舌咽・迷走・副神経と内頸静脈が通り、舌下神経は舌下神経管を通ります。この対応は、上眼窩裂症候群・眼窩先端部症候群・小脳橋角部腫瘍・頸静脈孔症候群などで、障害された神経の組合せから病変部位を推定する際に直接役立ちます。孔と神経を「地図」として理解しておくことは、神経診察と画像診断を結びつける基礎になります。

解答・解説

正解はd, eです

本問は、脳神経が頭蓋腔から外へ出るときに通る孔(孔・管・裂)の組合せを問う解剖学の基本問題である。 脳神経は12対あり、それぞれ決まった通路を通って頭蓋底を抜ける。前方から順に整理すると覚えやすい。 ・前頭蓋窩:嗅神経(Ⅰ)→篩板 ・中頭蓋窩:視神経(Ⅱ)→視神経管、動眼神経(Ⅲ)・滑車神経(Ⅳ)・眼神経(Ⅴ1)・外転神経(Ⅵ)→上眼窩裂、上顎神経(Ⅴ2)→正円孔、下顎神経(Ⅴ3)→卵円孔 ・後頭蓋窩:顔面神経(Ⅶ)・内耳神経(Ⅷ)→内耳孔(内耳道)、舌咽神経(Ⅸ)・迷走神経(Ⅹ)・副神経(Ⅺ)→頸静脈孔、舌下神経(Ⅻ)→舌下神経管 三叉神経の3枝は、眼神経→上眼窩裂、上顎神経→正円孔、下顎神経→卵円孔の順に、上(前)から下(後)へ並ぶと覚えるとよい。この対応に照らすと、正しい組合せは「内耳孔―顔面神経」と「頸静脈孔―迷走神経」の2つである。

選択肢考察

  1. ×a.  上眼窩裂 ―― 視神経

    視神経(Ⅱ)は、眼動脈とともに蝶形骨小翼の根元にある視神経管を通って眼窩に入る。上眼窩裂は蝶形骨の大翼と小翼の間の裂け目で、眼球運動に関わる動眼神経(Ⅲ)・滑車神経(Ⅳ)・外転神経(Ⅵ)と、三叉神経第1枝の眼神経(Ⅴ1)、および上眼静脈などが通る。したがって誤りである。

  2. ×b.  卵円孔 ―― 上顎神経

    卵円孔は蝶形骨大翼の後方にある卵円形の孔で、三叉神経第3枝の下顎神経(Ⅴ3)が通る。上顎神経(Ⅴ2)は正円孔を通って翼口蓋窩へ出る。したがって誤りである。

  3. ×c.  正円孔 ―― 下顎神経

    正円孔は蝶形骨大翼の前内側にある孔で、三叉神経第2枝の上顎神経(Ⅴ2)が通る。下顎神経(Ⅴ3)は卵円孔を通る。選択肢bとは孔と神経の対応が入れ替わっており、誤りである。

  4. ○d.  内耳孔 ―― 顔面神経

    内耳孔は側頭骨錐体の後面に開く内耳道の入口で、顔面神経(Ⅶ、味覚や分泌を担う中間神経を含む)、内耳神経(Ⅷ、蝸牛神経と前庭神経)、および迷路動脈が通る。顔面神経はその後、側頭骨内の顔面神経管を走り、茎乳突孔から頭蓋外へ出て表情筋を支配する。聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)で難聴・耳鳴に加えて顔面神経の症状が出ることがあるのは、両神経が同じ通路を通るためである。正しい組合せである。

  5. ○e.  頸静脈孔 ―― 迷走神経

    頸静脈孔は側頭骨と後頭骨の間にある孔で、舌咽神経(Ⅸ)、迷走神経(Ⅹ)、副神経(Ⅺ)の3本の脳神経と、S状静脈洞から続く内頸静脈(および下錐体静脈洞)が通る。この部位の腫瘍などでⅨ・Ⅹ・Ⅺがまとめて障害されると、嚥下障害・嗄声・胸鎖乳突筋と僧帽筋の筋力低下を来す(頸静脈孔症候群、Vernet症候群)。正しい組合せである。

頭蓋底の主な孔と通過する構造

・篩板:嗅神経(Ⅰ) ・視神経管:視神経(Ⅱ)、眼動脈 ・上眼窩裂:動眼神経(Ⅲ)、滑車神経(Ⅳ)、眼神経(Ⅴ1)、外転神経(Ⅵ)、上眼静脈 ・正円孔:上顎神経(Ⅴ2) ・卵円孔:下顎神経(Ⅴ3) ・棘孔:中硬膜動脈(頭部外傷での急性硬膜外血腫の出血源として重要) ・内耳孔(内耳道):顔面神経(Ⅶ)、内耳神経(Ⅷ)、迷路動脈 ・茎乳突孔:顔面神経(Ⅶ)が頭蓋外へ出る出口 ・頸静脈孔:舌咽神経(Ⅸ)、迷走神経(Ⅹ)、副神経(Ⅺ)、内頸静脈 ・舌下神経管:舌下神経(Ⅻ) ・大後頭孔(大孔):延髄、椎骨動脈、副神経の脊髄根 ・頸動脈管:内頸動脈

海綿静脈洞を通る構造

外側壁を動眼神経(Ⅲ)、滑車神経(Ⅳ)、眼神経(Ⅴ1)、上顎神経(Ⅴ2)が走り、洞内を内頸動脈と外転神経(Ⅵ)が通る。海綿静脈洞症候群や内頸動脈海綿静脈洞瘻では、これらの神経の障害による眼球運動障害や顔面の感覚障害が生じる。

臨床との関連

・上眼窩裂症候群:Ⅲ・Ⅳ・Ⅵ・Ⅴ1の障害による全眼筋麻痺と前額部の感覚障害。視神経は通らないため、視力障害を伴えば眼窩先端部症候群を考える。 ・小脳橋角部腫瘍:内耳道周辺でⅦ・Ⅷ(進行するとⅤなど)が障害される。

POINT

・三叉神経の3枝:Ⅴ1→上眼窩裂、Ⅴ2→正円孔、Ⅴ3→卵円孔。 ・視神経は視神経管を通り、上眼窩裂は通らない。 ・内耳孔:Ⅶ・Ⅷ。顔面神経は最終的に茎乳突孔から頭蓋外へ出る。 ・頸静脈孔:Ⅸ・Ⅹ・Ⅺと内頸静脈。舌下神経(Ⅻ)は舌下神経管。 ・棘孔には中硬膜動脈が通る。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。