StudyMed医師国家試験

若年男性の陰嚢腫大―精巣腫瘍の主役はセミノーマ

第102回医師国家試験 I問題 第9問

国試問題にチャレンジ

第102回 I問題 第9問

精巣腫瘍で最も頻度が高いのはどれか。

  1. a.扁平上皮癌
  2. b.セミノーマ
  3. c.胎児性癌
  4. d.絨毛癌
  5. e.奇形腫

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は精巣腫瘍の組織型の頻度を問う問題だ。ポイントは、精巣にはどんな細胞があり、腫瘍の多くがどの細胞から生まれるのかという点。そこから考えると、選択肢を整理しやすくなるよ。
医学生医学生
精巣は精子をつくる臓器なので、精子のもとになる細胞から腫瘍ができるんでしょうか。
ドクタードクター
その通り。精巣腫瘍の9割以上は胚細胞腫瘍、つまり精子のもとになる胚細胞に由来する腫瘍なんだ。そして胚細胞腫瘍は、治療方針や予後の違いから「セミノーマ」と「非セミノーマ」の2群に大きく分けて扱う。
医学生医学生
病理学の講義で、非セミノーマには胎児性癌、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、奇形腫が含まれると習いました。種類が多いので、まとめると非セミノーマのほうが多い気もしますが……。
ドクタードクター
いいところに気がついたね。ただ問題は「単一の組織型として」どれが多いかだ。非セミノーマは単独で出てくることは少なく、複数の成分が混ざった混合型胚細胞腫瘍として見られることが多い。単一の組織型で最も多いのはセミノーマで、精巣腫瘍全体の40〜50%ほどを占める。だから正解はセミノーマだ。
医学生医学生
セミノーマはどんな患者さんに多いんですか。
ドクタードクター
好発年齢は30〜40歳代で、非セミノーマの20〜30歳代よりやや高い。腫瘍マーカーではAFPが上がらないのが特徴で、hCGは合胞体栄養膜細胞を含むと軽度上昇することがある。放射線にも化学療法にもよく反応して、予後は良好だよ。
医学生医学生
扁平上皮癌はどうでしょう。癌といえば扁平上皮癌や腺癌というイメージがあって、最初は候補に入れてしまいました。
ドクタードクター
多くの臓器ではそうだけれど、精巣には扁平上皮がないから、精巣原発の扁平上皮癌は通常の精巣腫瘍の分類に入らないんだ。陰嚢の皮膚や陰茎にできる扁平上皮癌と混同しないようにしよう。上皮性の癌が少ないというのが、精巣腫瘍の特殊なところだね。
医学生医学生
胎児性癌はセミノーマの次に多いと聞いたことがあります。
ドクタードクター
そう、非セミノーマの代表的な組織型で、未分化な細胞からなり悪性度が高い。ただ単独よりも混合型の一成分として見つかることが多く、単一組織型の頻度ではセミノーマに及ばない。
医学生医学生
絨毛癌はhCGが高くなる腫瘍でしたよね。産婦人科の実習でも、妊娠に関連した絨毛癌の話を聞きました。
ドクタードクター
よく結びつけたね。精巣の絨毛癌もhCGを大量に産生し、早期から血行性に肺や脳へ転移しやすい予後不良の腫瘍だ。ただし純粋型は1%未満と、胚細胞腫瘍の中で最もまれな部類に入る。
医学生医学生
奇形腫は卵巣でよく聞く腫瘍ですが、精巣ではどうなんでしょう。
ドクタードクター
精巣の奇形腫は思春期前の小児にひとつのピークがあり、小児では単独で見られることもある。でも成人ではほとんどが混合型の一成分なので、全体の頻度としてはセミノーマより低い。年齢によって組織型の分布が変わることも覚えておこう。乳幼児では卵黄嚢腫瘍や奇形腫、高齢者では悪性リンパ腫の割合が増えるんだ。
医学生医学生
年齢と組織型をセットで考えるんですね。腫瘍マーカーも組織型ごとに整理できそうです。
ドクタードクター
その通り。AFPは卵黄嚢腫瘍で上がり、胎児性癌でも上がりうる。hCGは絨毛癌で著明に上がる。LDHは特異性は低いけれど腫瘍量を反映して病期やリスク分類に使う。臨床で大事なのは、病理でセミノーマ成分だけに見えても血清AFPが上がっていれば、どこかに非セミノーマ成分があると考えて非セミノーマとして治療することだ。
医学生医学生
臨床実習で泌尿器科を回ったとき、陰嚢が腫れて痛くないという若い患者さんがいました。すぐに高位精巣摘除術の予定が組まれていて驚きました。
ドクタードクター
無痛性の陰嚢内腫大は精巣腫瘍の典型的な症状だね。診断は触診、陰嚢超音波、腫瘍マーカーで行い、確定診断と治療を兼ねて鼠径部からの高位精巣摘除術を行う。陰嚢を切開して生検すると播種の危険があるので行わない。最大の危険因子は停留精巣だから、既往歴の聴取も大切だよ。

まとめ

精巣腫瘍の9割以上は胚細胞腫瘍で、単一の組織型として最も多いのはセミノーマ(全体の約40〜50%)です。胎児性癌・卵黄嚢腫瘍・絨毛癌・奇形腫などの非セミノーマは、混合型胚細胞腫瘍の一成分として見られることが多く、精巣には扁平上皮がないため扁平上皮癌は通常の分類に含まれません。腫瘍マーカーはAFPが卵黄嚢腫瘍、hCGが絨毛癌、LDHが腫瘍量を反映し、AFPが上昇していれば非セミノーマとして扱います。若年男性の無痛性陰嚢腫大では精巣腫瘍を疑い、停留精巣の既往を確認したうえで、経陰嚢的生検は避けて高位精巣摘除術で診断・治療を行います。組織型の頻度、年齢分布、腫瘍マーカーを結びつけて理解しておくと、精巣腫瘍の診断と治療方針の判断に直結します。

解答・解説

正解はbです

精巣腫瘍の組織型の頻度を問う問題である。 精巣に発生する腫瘍の9割以上は胚細胞腫瘍(germ cell tumor:精子のもとになる胚細胞に由来する腫瘍)である。胚細胞腫瘍は、治療方針や予後の違いから「セミノーマ(精上皮腫)」と「非セミノーマ(胎児性癌、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、奇形腫など)」の2群に大別して扱われる。 単一の組織型として最も多いのはセミノーマであり、精巣腫瘍全体のおよそ40〜50%を占める。一方、非セミノーマは単独の組織型で存在することは少なく、複数の成分が混在する混合型胚細胞腫瘍として見られることが多い。 したがって、選択肢の中で最も頻度が高いのはセミノーマである。なお、扁平上皮癌のような上皮性の癌は、精巣には通常発生しない組織型である。

選択肢考察

  1. ×a.  扁平上皮癌

    精巣には扁平上皮が存在せず、精巣原発の扁平上皮癌は通常の精巣腫瘍の分類に含まれない。陰嚢皮膚や陰茎に生じる扁平上皮癌と混同しないよう注意する。

  2. ○b.  セミノーマ

    セミノーマ(精上皮腫)は単一組織型として最も頻度の高い精巣腫瘍で、全体の40〜50%を占める。好発年齢は30〜40歳代と、非セミノーマ(20〜30歳代)よりやや高い。AFP(α-フェトプロテイン)は上昇せず、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が軽度上昇する例がある。放射線・化学療法に対する感受性が高く、予後は良好である。

  3. ×c.  胎児性癌

    胎児性癌は非セミノーマの代表的な組織型で、セミノーマに次いで多い。ただし単一組織型で見られることは少なく、多くは混合型胚細胞腫瘍の一成分として認められる。未分化な細胞からなり悪性度が高い。セミノーマより頻度は低い。

  4. ×d.  絨毛癌

    絨毛癌は単一組織型としては最もまれな胚細胞腫瘍である(純粋型は1%未満)。hCGを大量に産生し、早期から血行性に肺・脳などへ転移しやすく、予後不良である。混合型の一成分として含まれることはある。

  5. ×e.  奇形腫

    奇形腫は小児期(思春期前)に一つの発症のピークがあり、小児では単独で見られることがある。しかし成人の精巣腫瘍では、単独よりも混合型胚細胞腫瘍の一成分として含まれることがほとんどであり、全体に占める頻度はセミノーマより低い。

精巣腫瘍の概要

・好発年齢は20〜40歳代で、この年代の男性の固形悪性腫瘍として重要である。小児期(乳幼児)にも小さなピークがあり、乳幼児では卵黄嚢腫瘍や奇形腫が多い。 ・危険因子として停留精巣(潜伏精巣)が最も重要である。 ・症状は無痛性の陰嚢内腫大が典型的である。 ・診断は触診、陰嚢超音波検査、腫瘍マーカーで行い、確定診断と治療を兼ねて高位精巣摘除術を行う(陰嚢を切開する経陰嚢的生検は、播種の危険があるため行わない)。

組織型の分類

・胚細胞腫瘍(90%以上)  セミノーマ  非セミノーマ:胎児性癌、卵黄嚢腫瘍(ヨークサック腫瘍)、絨毛癌、奇形腫、およびこれらの混合型 ・非胚細胞腫瘍:ライディッヒ細胞腫、セルトリ細胞腫など(まれ) ・高齢者の精巣腫瘍では悪性リンパ腫の頻度が高くなる。

腫瘍マーカー

・AFP:卵黄嚢腫瘍で上昇する。胎児性癌でも上昇しうる。 ・hCG(hCG-β):絨毛癌で著明に上昇する。セミノーマでも合胞体栄養膜細胞を含むと軽度上昇することがある。 ・LDH(乳酸脱水素酵素):特異性は低いが、腫瘍量を反映し病期・リスク分類に用いられる。 ・病理でセミノーマ成分のみと判断されても、血清AFPが上昇していれば非セミノーマ成分の存在を考え、非セミノーマとして治療する。

セミノーマと非セミノーマの対比

・セミノーマ:放射線・化学療法の感受性が高い。AFPは上昇しない。 ・非セミノーマ:化学療法(シスプラチンを含む多剤併用療法)が中心で、残存腫瘍に対しては後腹膜リンパ節郭清などの外科的切除を行う。

POINT

・精巣腫瘍の90%以上は胚細胞腫瘍で、単一組織型として最も多いのはセミノーマ(40〜50%)である。 ・非セミノーマは混合型として見られることが多い。 ・腫瘍マーカー:AFP(卵黄嚢腫瘍)、hCG(絨毛癌)、LDH(腫瘍量)。AFP上昇があれば非セミノーマとして扱う。 ・最大の危険因子は停留精巣。診断・治療は高位精巣摘除術。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。