若年男性の陰嚢腫大―精巣腫瘍の主役はセミノーマ
第102回医師国家試験 I問題 第9問
国試問題にチャレンジ
精巣腫瘍で最も頻度が高いのはどれか。
- a.扁平上皮癌
- b.セミノーマ
- c.胎児性癌
- d.絨毛癌
- e.奇形腫
対話形式の解説
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ドクターまとめ
精巣腫瘍の9割以上は胚細胞腫瘍で、単一の組織型として最も多いのはセミノーマ(全体の約40〜50%)です。胎児性癌・卵黄嚢腫瘍・絨毛癌・奇形腫などの非セミノーマは、混合型胚細胞腫瘍の一成分として見られることが多く、精巣には扁平上皮がないため扁平上皮癌は通常の分類に含まれません。腫瘍マーカーはAFPが卵黄嚢腫瘍、hCGが絨毛癌、LDHが腫瘍量を反映し、AFPが上昇していれば非セミノーマとして扱います。若年男性の無痛性陰嚢腫大では精巣腫瘍を疑い、停留精巣の既往を確認したうえで、経陰嚢的生検は避けて高位精巣摘除術で診断・治療を行います。組織型の頻度、年齢分布、腫瘍マーカーを結びつけて理解しておくと、精巣腫瘍の診断と治療方針の判断に直結します。
解答・解説
正解はbです
精巣腫瘍の組織型の頻度を問う問題である。 精巣に発生する腫瘍の9割以上は胚細胞腫瘍(germ cell tumor:精子のもとになる胚細胞に由来する腫瘍)である。胚細胞腫瘍は、治療方針や予後の違いから「セミノーマ(精上皮腫)」と「非セミノーマ(胎児性癌、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、奇形腫など)」の2群に大別して扱われる。 単一の組織型として最も多いのはセミノーマであり、精巣腫瘍全体のおよそ40〜50%を占める。一方、非セミノーマは単独の組織型で存在することは少なく、複数の成分が混在する混合型胚細胞腫瘍として見られることが多い。 したがって、選択肢の中で最も頻度が高いのはセミノーマである。なお、扁平上皮癌のような上皮性の癌は、精巣には通常発生しない組織型である。
選択肢考察
- ×a. 扁平上皮癌
精巣には扁平上皮が存在せず、精巣原発の扁平上皮癌は通常の精巣腫瘍の分類に含まれない。陰嚢皮膚や陰茎に生じる扁平上皮癌と混同しないよう注意する。
- ○b. セミノーマ
セミノーマ(精上皮腫)は単一組織型として最も頻度の高い精巣腫瘍で、全体の40〜50%を占める。好発年齢は30〜40歳代と、非セミノーマ(20〜30歳代)よりやや高い。AFP(α-フェトプロテイン)は上昇せず、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が軽度上昇する例がある。放射線・化学療法に対する感受性が高く、予後は良好である。
- ×c. 胎児性癌
胎児性癌は非セミノーマの代表的な組織型で、セミノーマに次いで多い。ただし単一組織型で見られることは少なく、多くは混合型胚細胞腫瘍の一成分として認められる。未分化な細胞からなり悪性度が高い。セミノーマより頻度は低い。
- ×d. 絨毛癌
絨毛癌は単一組織型としては最もまれな胚細胞腫瘍である(純粋型は1%未満)。hCGを大量に産生し、早期から血行性に肺・脳などへ転移しやすく、予後不良である。混合型の一成分として含まれることはある。
- ×e. 奇形腫
奇形腫は小児期(思春期前)に一つの発症のピークがあり、小児では単独で見られることがある。しかし成人の精巣腫瘍では、単独よりも混合型胚細胞腫瘍の一成分として含まれることがほとんどであり、全体に占める頻度はセミノーマより低い。
精巣腫瘍の概要
・好発年齢は20〜40歳代で、この年代の男性の固形悪性腫瘍として重要である。小児期(乳幼児)にも小さなピークがあり、乳幼児では卵黄嚢腫瘍や奇形腫が多い。 ・危険因子として停留精巣(潜伏精巣)が最も重要である。 ・症状は無痛性の陰嚢内腫大が典型的である。 ・診断は触診、陰嚢超音波検査、腫瘍マーカーで行い、確定診断と治療を兼ねて高位精巣摘除術を行う(陰嚢を切開する経陰嚢的生検は、播種の危険があるため行わない)。
組織型の分類
・胚細胞腫瘍(90%以上) セミノーマ 非セミノーマ:胎児性癌、卵黄嚢腫瘍(ヨークサック腫瘍)、絨毛癌、奇形腫、およびこれらの混合型 ・非胚細胞腫瘍:ライディッヒ細胞腫、セルトリ細胞腫など(まれ) ・高齢者の精巣腫瘍では悪性リンパ腫の頻度が高くなる。
腫瘍マーカー
・AFP:卵黄嚢腫瘍で上昇する。胎児性癌でも上昇しうる。 ・hCG(hCG-β):絨毛癌で著明に上昇する。セミノーマでも合胞体栄養膜細胞を含むと軽度上昇することがある。 ・LDH(乳酸脱水素酵素):特異性は低いが、腫瘍量を反映し病期・リスク分類に用いられる。 ・病理でセミノーマ成分のみと判断されても、血清AFPが上昇していれば非セミノーマ成分の存在を考え、非セミノーマとして治療する。
セミノーマと非セミノーマの対比
・セミノーマ:放射線・化学療法の感受性が高い。AFPは上昇しない。 ・非セミノーマ:化学療法(シスプラチンを含む多剤併用療法)が中心で、残存腫瘍に対しては後腹膜リンパ節郭清などの外科的切除を行う。
POINT
・精巣腫瘍の90%以上は胚細胞腫瘍で、単一組織型として最も多いのはセミノーマ(40〜50%)である。 ・非セミノーマは混合型として見られることが多い。 ・腫瘍マーカー:AFP(卵黄嚢腫瘍)、hCG(絨毛癌)、LDH(腫瘍量)。AFP上昇があれば非セミノーマとして扱う。 ・最大の危険因子は停留精巣。診断・治療は高位精巣摘除術。
