産道からやってくる二大起因菌―新生児髄膜炎はB群レンサ球菌と大腸菌で押さえる
第102回医師国家試験 I問題 第20問
国試問題にチャレンジ
新生児髄膜炎の起因菌として頻度の高いのはどれか。2つ選べ。
- a.大腸菌
- b.緑膿菌
- c.髄膜炎菌
- d.B群レンサ球菌
- e.インフルエンザ菌
対話形式の解説
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医学生まとめ
新生児髄膜炎の二大起因菌はB群レンサ球菌と大腸菌で、いずれも分娩前後に母体の産道や腸管から伝播する垂直感染が背景にあり、リステリア菌も新生児期に特徴的な起因菌です。インフルエンザ菌b型と肺炎球菌は生後3か月以降の乳幼児の代表的起因菌ですがワクチン普及で減少し、髄膜炎菌は日本ではまれ、緑膿菌は術後やシャント留置などの院内感染で問題となります。新生児では髄膜刺激症状が乏しく、哺乳不良や活気低下などの非特異的症状で気づかれるため、敗血症を疑えば髄液検査を積極的に行います。経験的治療はリステリア菌もカバーするアンピシリンとセフォタキシムの併用が基本で、GBSスクリーニングと分娩時の抗菌薬予防投与が早発型の予防に役立ちます。年齢ごとの起因菌を押さえることは、培養結果を待たずに治療を始める細菌性髄膜炎の診療の土台になります。
解答・解説
正解はa, dです
細菌性髄膜炎(化膿性髄膜炎)の起因菌は年齢によって大きく異なり、その年齢層で多い菌を想定して、培養結果が出る前から抗菌薬を選ぶ(経験的治療)ことになる。本問はそのうち新生児期の代表的起因菌を問うている。
新生児期に特有の菌が多い理由
新生児の感染の多くは、出生前後に母体の産道や腸管にすむ菌を受け取ることで起こる(垂直感染)。母体の腟・直腸に保菌されやすいB群レンサ球菌(GBS)と、腸内細菌である大腸菌が、新生児の敗血症・髄膜炎の二大起因菌である。頻度は低いが、同じく母体由来のリステリア菌も新生児期に特徴的な起因菌として知られる。
年齢別の主な起因菌
・新生児期〜生後3か月ごろ: B群レンサ球菌、大腸菌(ほかにリステリア菌) ・乳幼児期以降: インフルエンザ菌b型(Hib)、肺炎球菌 ・成人: 肺炎球菌が最多、ほかに髄膜炎菌(海外)など ・高齢者・免疫不全者: 肺炎球菌、リステリア菌、グラム陰性桿菌 この整理から、正解は大腸菌とB群レンサ球菌である。
選択肢考察
- ○a. 大腸菌
大腸菌は母体の腸管・産道に由来し、B群レンサ球菌と並ぶ新生児髄膜炎の代表的起因菌である。特に莢膜抗原K1をもつ株が髄膜炎を起こしやすい。早産児・低出生体重児ではB群レンサ球菌よりも大腸菌の割合が高くなる傾向がある。
- ×b. 緑膿菌
緑膿菌は健康な人に髄膜炎を起こすことはまれで、脳神経外科手術後、脳室腹腔シャント(VPシャント)などの留置物がある患者、長期入院や免疫不全の患者における院内感染として問題となる菌である。NICU(新生児集中治療室)の重症児で問題になることはあるが、新生児髄膜炎の頻度の高い起因菌ではない。
- ×c. 髄膜炎菌
髄膜炎菌はグラム陰性双球菌で、流行性髄膜炎(髄膜炎菌性髄膜炎)を起こし、急激に進行して電撃性紫斑病や副腎出血を伴うWaterhouse-Friderichsen症候群をきたすことがある。アフリカの髄膜炎ベルト地帯などでは流行がみられるが、日本での発生はまれであり、年齢としても思春期〜若年成人の集団生活(寮など)で問題となる。新生児期の頻度の高い起因菌ではない。
- ○d. B群レンサ球菌
B群レンサ球菌(GBS、Streptococcus agalactiae)は妊婦の腟・直腸に保菌されることがあり、分娩時に産道で新生児に伝播する。新生児髄膜炎・敗血症の最も重要な起因菌の一つである。生後7日未満に発症する早発型は敗血症や肺炎として急激に進行しやすく、生後7日以降〜3か月ごろに発症する遅発型では髄膜炎の割合が高い。重症化しやすく、死亡や神経学的後遺症を残すことも多い。予防として妊娠35〜37週ごろに腟・肛門周囲の培養検査を行い、陽性妊婦には分娩時にペニシリン系抗菌薬を静注する。これにより早発型は減少したが、遅発型は予防できない。
- ×e. インフルエンザ菌
インフルエンザ菌、特に莢膜をもつb型(Hib)は、肺炎球菌とともに生後3か月以降の乳幼児の細菌性髄膜炎の主な起因菌である。母体からの移行抗体が減る時期に増えるため、新生児期には少ない。なお日本ではHibワクチン(2013年から定期接種)の普及によりHib髄膜炎は激減しており、かつて乳幼児で最多だった状況は大きく変化している。
新生児髄膜炎の特徴
新生児では、項部硬直やKernig徴候などの髄膜刺激症状や、大泉門膨隆がはっきりしないことが多い。哺乳不良、活気の低下(not doing well)、発熱または低体温、無呼吸、けいれん、黄疸などの非特異的な症状で気づかれることが多い。そのため、敗血症が疑われる新生児では髄液検査を積極的に行う。
新生児髄膜炎の経験的治療
B群レンサ球菌・大腸菌・リステリア菌をカバーするため、アンピシリンと第3世代セファロスポリン(セフォタキシムなど)を併用するのが一般的である。リステリア菌はセファロスポリン系に自然耐性であるため、アンピシリンを含めることが重要である。新生児では核黄疸のリスクからセフトリアキソンは避けられることが多い。
乳幼児以降の細菌性髄膜炎
インフルエンザ菌b型と肺炎球菌が主な起因菌であったが、Hibワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの定期接種化(2013年)以降、いずれも大きく減少した。ワクチンでカバーされない肺炎球菌の血清型による髄膜炎が相対的に問題となっている。
B群レンサ球菌感染症の予防
妊娠後期に腟・肛門周囲のGBSスクリーニングを行い、陽性妊婦、前児がGBS感染症だった妊婦、GBS保菌状態が不明で早産・破水後長時間経過などのリスクがある妊婦に、分娩中の抗菌薬予防投与(ペニシリン系)を行う。
POINT
・新生児髄膜炎の二大起因菌: B群レンサ球菌、大腸菌(+リステリア菌)→ いずれも母体(産道・腸管)由来 ・乳幼児以降: インフルエンザ菌b型、肺炎球菌(ワクチン普及で減少) ・新生児の経験的治療: アンピシリン+セフォタキシム ・緑膿菌: VPシャント・術後・免疫不全などの院内感染、髄膜炎菌: 日本ではまれ
