CA19-9が上がった、だから膵癌?―四分割表で読み解く「陽性」の本当の重み
第102回医師国家試験 H問題 第25問
国試問題にチャレンジ
60歳の男性。他院で膵癌の疑いがあると言われたため,検査データを持ってセカンドオピニオンを求めて来院した。最近仕事が忙しく,食事が不規則になり,体重も減ってきた。検査データではCA19-9のみ上昇していた。CA19-9の膵癌検出の感度は50%,特異度は75%であり,この患者での膵癌の検査前確率を20%と仮定する。 CA19-9の上昇を考慮した検査後確率はどれか。
- a.26%
- b.33%
- c.40%
- d.47%
- e.54%
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
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ドクター
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ドクター
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ドクター
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ドクターまとめ
検査陽性時の検査後確率は陽性的中率に等しく、100人の集団を仮定して検査前確率→感度→特異度の順に四分割表を埋めると確実に求められます。本問では膵癌20人中真陽性10人、非膵癌80人中偽陽性20人となり、検査後確率は10/30で約33%です。尤度比を使う場合は、検査前確率をオッズに変換して陽性尤度比(感度÷(1−特異度)=2)を掛け、最後に確率へ戻すと同じ結果が得られます。感度・特異度は検査固有の性能ですが、的中率は検査前確率で大きく変わるため、感度や特異度が中程度の腫瘍マーカーは陽性でも陰性でも診断を決めきれません。検査結果を確率として読み解く力は、不要な不安や見逃しを避け、患者への説明や次の検査選択を適切に行うための基礎となります。
解答・解説
正解はbです
問われていること
検査前確率(事前確率)が20%の患者で、感度50%・特異度75%の検査(CA19-9)が陽性だったとき、実際に膵癌である確率(検査後確率)を求める問題である。検査陽性時の検査後確率は、その集団における陽性的中率(陽性反応適中度)と同じ意味である。
解法1:四分割表をつくる
仮に同じ条件の患者が100人いるとして表を埋める。 ①有病者(膵癌あり)=100×0.20=20人、非有病者=100−20=80人 ②感度50%より、有病者のうち検査陽性(真陽性)=20×0.50=10人、検査陰性(偽陰性)=20−10=10人 ③特異度75%より、非有病者のうち検査陰性(真陰性)=80×0.75=60人、検査陽性(偽陽性)=80−60=20人 膵癌あり 膵癌なし 合計 検査陽性 10 20 30 検査陰性 10 60 70 合計 20 80 100 検査陽性者30人のうち、本当に膵癌なのは10人であるから、 検査後確率=真陽性/(真陽性+偽陽性)=10/(10+20)=10/30≒0.33 → 約33%
解法2:尤度比とオッズを使う
陽性尤度比(LR+)=感度/(1−特異度)=0.50/0.25=2 検査前オッズ=0.20/(1−0.20)=0.25 検査後オッズ=検査前オッズ×LR+=0.25×2=0.5 検査後確率=検査後オッズ/(1+検査後オッズ)=0.5/1.5≒0.33 → 約33% どちらの方法でも同じ結果となる。CA19-9陽性によって膵癌の確率は20%から約33%に上がるが、依然として陽性者の3人に2人は膵癌ではないことになる。
選択肢考察
- ×a. 26%
計算結果の約33%と一致しない。陽性尤度比は2であり、検査前確率20%から計算される検査後確率は33%である。26%は検査による確率の上昇を過小評価した値である。
- ○b. 33%
100人の集団で考えると、有病者20人中の真陽性は10人(感度50%)、非有病者80人中の偽陽性は20人(1−特異度=25%)である。陽性者30人のうち膵癌は10人なので、検査後確率は10/30≒33%となる。尤度比を用いても、検査前オッズ0.25×陽性尤度比2=検査後オッズ0.5、確率に戻すと0.5/1.5≒33%で一致する。
- ×c. 40%
計算上の検査後確率は約33%であり、40%にはならない。検査後確率を40%にするには、検査後オッズが0.67、すなわち陽性尤度比が約2.7必要であり、本問の感度・特異度(陽性尤度比2)では達しない。
- ×d. 47%
計算上の検査後確率は約33%であり、47%にはならない。偽陽性者(20人)が真陽性者(10人)の2倍いることを考えれば、検査後確率は50%を大きく下回ることがわかる。
- ×e. 54%
計算上の検査後確率は約33%であり、54%にはならない。本問の条件では検査陽性者の中で偽陽性が真陽性より多いため、検査後確率が50%を超えることはない。
【検査特性の用語整理】(真陽性TP、偽陽性FP、偽陰性FN、真陰性TN) ・感度=TP/(TP+FN):病気のある人を検査が陽性と判定する割合。感度が高い検査は陰性のとき除外診断に役立つ。 ・特異度=TN/(TN+FP):病気のない人を検査が陰性と判定する割合。特異度が高い検査は陽性のとき確定診断に役立つ。 ・陽性的中率(陽性反応適中度)=TP/(TP+FP):検査陽性者のうち実際に病気がある割合。 ・陰性的中率(陰性反応適中度)=TN/(TN+FN):検査陰性者のうち実際に病気がない割合。 ・陽性尤度比=感度/(1−特異度)、陰性尤度比=(1−感度)/特異度。
検査前確率と的中率の関係
感度・特異度は検査そのものの性能であり、有病率(検査前確率)によって変わらない。一方、陽性・陰性的中率は検査前確率に大きく左右される。検査前確率が低い集団(例:無症状者の検診)では、特異度がある程度高くても偽陽性が多くなり、陽性的中率は低くなる。 参考までに本問の検査で陰性だった場合を計算すると、陰性尤度比は0.5/0.75≒0.67で、検査陰性時の膵癌の確率は10/70≒14%となり、20%からあまり下がらない。感度50%の検査では陰性でも膵癌を否定できないことがわかる。
CA19-9について
・膵癌、胆道癌などで上昇する腫瘍マーカーである。 ・早期膵癌では上昇しないことが多く、スクリーニングや早期診断には向かない。主に治療効果判定や再発の指標として用いられる。 ・胆道閉塞(閉塞性黄疸)、胆管炎、膵炎、糖尿病などの良性疾患でも上昇しうる。 ・ルイス式血液型でLe(a−b−)の人(日本人の約1割)はCA19-9を産生できず、癌があっても上昇しない。
POINT
・検査後確率(陽性時)=陽性的中率=真陽性/(真陽性+偽陽性)。 ・100人(または1,000人)の集団を仮定し、検査前確率→感度→特異度の順に四分割表を埋めると確実に解ける。 ・尤度比法:検査後オッズ=検査前オッズ×尤度比、確率=オッズ/(1+オッズ)。 ・本問:陽性尤度比2、検査前確率20% → 検査後確率約33%。 ・的中率は検査前確率(有病率)で変わるが、感度・特異度は変わらない。
