線源を「中に置く」放射線治療―密封小線源治療が輝く前立腺癌
第102回医師国家試験 G問題 第31問
国試問題にチャレンジ
密封小線源治療が適応となるのはどれか。
- a.腎細胞癌
- b.膀胱癌
- c.前立腺癌
- d.陰茎癌
- e.セミノーマ
対話形式の解説
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医学生まとめ
密封小線源治療は、放射性同位元素を封入した線源を腫瘍内(組織内照射)や体腔内(腔内照射)に置き、距離の2乗に反比例する線量減衰を利用して腫瘍に高線量を集中させる治療です。線源を正確に配置できる限局した腫瘍が対象で、前立腺癌(ヨウ素125シード永久挿入、イリジウム192高線量率照射)、子宮頸癌(イリジウム192腔内照射)、舌癌などの口腔癌が代表的な適応です。腎細胞癌は放射線感受性が低く、膀胱癌は外部照射を用いた化学放射線療法、セミノーマは精巣摘除後に所属リンパ節への外部照射を行うことがあり、陰茎癌の小線源治療は一般的ではありません。「放射線が効くか」と「線源を置けるか」は別の問題であり、照射方法ごとの適応を整理しておくことが放射線治療の理解の基本になります。
解答・解説
正解はcです
密封小線源治療(brachytherapy)は、放射性同位元素を金属カプセルなどに封入した小さな線源を、腫瘍の内部(組織内照射)や腫瘍に接する体腔内(腔内照射)に置いて照射する方法である。線源からの線量は距離の2乗に反比例して急速に減衰するため、腫瘍には高線量を集中させつつ、周囲の正常組織の被曝を抑えられる。一方、線源を正確に配置できる部位・大きさの腫瘍でなければ適応とならず、限局した比較的小さな腫瘍で、体表や体腔から到達しやすい臓器が対象となる。 現在、密封小線源治療が標準的に行われる代表的な疾患は、前立腺癌(ヨウ素125シードの永久挿入、イリジウム192による高線量率組織内照射)、子宮頸癌(イリジウム192を用いた高線量率腔内照射)、舌癌などの口腔癌(組織内照射)である。 選択肢の泌尿器・男性生殖器の悪性腫瘍のうち、密封小線源治療が確立した治療として広く行われているのは前立腺癌である。腎細胞癌は放射線感受性が低く、膀胱癌・セミノーマは外部照射が用いられる。陰茎癌は小線源治療の報告はあるが一般的ではない。
選択肢考察
- ×a. 腎細胞癌
腎細胞癌は放射線感受性が低い腫瘍であり、根治目的の放射線治療は原則として行われない。治療の中心は手術(根治的腎摘除術や腎部分切除術)で、進行例には分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が用いられる。放射線治療は骨転移・脳転移に対する疼痛緩和や症状緩和などの外部照射に限られ、密封小線源治療の適応はない。
- ×b. 膀胱癌
膀胱癌の放射線治療は、膀胱温存を目指す筋層浸潤癌に対して経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)と組み合わせた化学放射線療法(抗がん薬併用の外部照射)として行われるのが一般的である。膀胱は内腔が大きく形も変化するため線源の配置が難しく、わが国では密封小線源治療は通常行われない。
- ○c. 前立腺癌
前立腺癌の根治的放射線治療には外部照射と密封小線源治療がある。小線源治療では、経直腸超音波で前立腺を観察しながら会陰部から針を刺し、ヨウ素125(125I)を封入した小さなシード線源を前立腺内に多数永久に留置する方法(低線量率小線源治療)が代表的である。そのほかイリジウム192(192Ir)を一時的に挿入する高線量率組織内照射もある。前立腺に限局した低〜中リスクの癌が主な適応で、中〜高リスク例では外部照射やホルモン療法と組み合わせることもある。前立腺は会陰から到達しやすく、周囲臓器(直腸・膀胱・尿道)の線量を抑えながら高線量を投与できるため、小線源治療に適した臓器である。
- ×d. 陰茎癌
陰茎癌の多くは扁平上皮癌であり、治療の基本は陰茎部分切除術・全摘除術などの手術である。早期の小さな病変で陰茎の形態や機能の温存を目的に組織内照射などの小線源治療が行われた報告はあるが、症例自体がまれであり、前立腺癌のように標準治療として普及しているわけではない。本問の「適応となる」ものとしては前立腺癌を選ぶ。
- ×e. セミノーマ
セミノーマ(精上皮腫)は放射線感受性がきわめて高い精巣腫瘍である。治療はまず高位精巣摘除術を行い、その後、病期に応じて経過観察、化学療法、または傍大動脈リンパ節などの所属リンパ節領域への外部照射が選択される。原発巣は摘除されるため、密封小線源治療を行う対象はない。
放射線治療の照射方法
・外部照射:体外の装置(リニアック〈直線加速器〉など)から照射する。強度変調放射線治療(IMRT)、定位放射線治療、粒子線治療なども含まれる。 ・密封小線源治療:線源を体内に置く。組織内照射(線源を腫瘍に刺入)と腔内照射(子宮腔・腟など体腔に挿入)がある。 ・非密封放射性同位元素による内用療法:放射性医薬品を内服・静注する。甲状腺癌・Basedow病へのヨウ素131、骨転移へのラジウム223など。
密封小線源治療の主な適応と線源
・前立腺癌:125Iシード永久挿入(低線量率)、192Ir一時挿入(高線量率) ・子宮頸癌:192Irによる高線量率腔内照射(リモートアフターローディング法:まず器具を挿入し、医療者が退室した後に遠隔操作で線源を送り込む方法で、医療者の被曝を避けられる)。外部照射と組み合わせて根治を目指す。 ・舌癌・口腔癌:192Irや198Auなどによる組織内照射 ・そのほか食道癌・胆管癌の腔内照射、乳癌の術後照射、皮膚癌などに用いられることがある。
前立腺癌の125Iシード永久挿入の注意点
線源は体内に残るが、放射能は時間とともに減衰する(125Iの半減期は約60日)。挿入後しばらくは妊婦や小児との長時間の密接な接触を避けるなどの生活上の注意がある。合併症として排尿障害(頻尿・排尿困難)、直腸出血、勃起障害などがある。
POINT
・密封小線源治療は線源を腫瘍内・体腔内に置き、腫瘍に線量を集中させる治療 ・代表的な適応:前立腺癌(125Iシード永久挿入)、子宮頸癌(192Ir腔内照射)、舌癌(組織内照射) ・腎細胞癌は放射線感受性が低い(放射線は転移巣の緩和照射に用いる) ・セミノーマは放射線感受性が高く、精巣摘除後に所属リンパ節へ外部照射を行うことがある ・膀胱癌の放射線治療は化学放射線療法(外部照射)
