光は届いているのに瞳が縮まない―直接・間接対光反射で「入力」と「出力」を見分ける
第102回医師国家試験 E問題 第8問
国試問題にチャレンジ
直接および間接対光反射が左瞳孔で消失し,右瞳孔で正常である場合,病変部位はどれか。
- a.右視神経
- b.右動眼神経
- c.左視神経
- d.左動眼神経
- e.左後頭葉
対話形式の解説
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ドクターまとめ
対光反射は、視神経を入力、中脳の視蓋前域核から両側のEdinger-Westphal核を中枢、動眼神経の副交感神経線維を出力とする反射で、中枢で両側に連絡するため間接反射が生じます。視神経(入力側)の障害では障害眼の直接反射と健常眼の間接反射が消失し、動眼神経(出力側)の障害では障害眼の直接・間接反射がともに消失します。したがって左瞳孔の直接・間接反射がともに消失し右瞳孔が正常なら、左動眼神経の障害と判断でき、外側膝状体より後方の後頭葉障害では対光反射は保たれます。散瞳を伴う動眼神経麻痺は内頸動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤や鉤ヘルニアによる圧迫を示唆し、緊急の画像検査が必要です。経路を「入力・中枢・出力」に分けて考える方法は、RAPDやArgyll Robertson瞳孔など他の瞳孔異常の理解にもそのまま応用できます。
解答・解説
正解はdです
本問は、対光反射の経路を理解し、直接対光反射・間接対光反射の組み合わせから病変部位(入力側か出力側か、左右どちらか)を判定する問題である。
対光反射の経路
・入力(求心路): 網膜 → 視神経 → 視交叉(鼻側線維が交叉)→ 視索 → 外側膝状体には入らずに分かれて中脳の視蓋前域核(視蓋前核)へ。 ・中枢: 視蓋前域核から左右両側のEdinger-Westphal核(動眼神経副核)へ線維が送られる。このため片眼に光を入れても両眼の瞳孔が縮む。 ・出力(遠心路): Edinger-Westphal核 → 動眼神経(副交感神経線維)→ 毛様体神経節 → 短毛様体神経 → 瞳孔括約筋。 光を当てた眼の縮瞳を直接対光反射、反対眼の縮瞳を間接対光反射(共感性対光反射)という。
判定の原則
・入力側(視神経)の障害: 障害眼に光を当てると両眼とも縮瞳しない。健常眼に光を当てれば両眼とも縮瞳する。つまり、障害眼の直接反射と健常眼の間接反射が消失し、障害眼の間接反射は保たれる。 ・出力側(動眼神経)の障害: 障害眼の瞳孔はどちらの眼に光を当てても縮瞳しない。つまり、障害眼の直接・間接反射がともに消失し、健常眼の直接・間接反射は保たれる。
本問への当てはめ
左瞳孔は直接・間接の両方が消失し、右瞳孔は正常である。右瞳孔の間接反射が正常ということは、左眼に当てた光の情報は左視神経を通って中枢まで正常に届いている。それにもかかわらず左瞳孔がどちらの刺激でも縮まないのは、左瞳孔を縮める出力側、すなわち左動眼神経(その副交感神経線維)の障害と考えられる。
選択肢考察
- ×a. 右視神経
誤り。右視神経が障害されると、右眼に光を当てたときの情報が中枢に届かないため、右瞳孔の直接反射と左瞳孔の間接反射が消失する。左眼に光を当てれば左視神経経由で両側のEdinger-Westphal核に情報が届くため、左瞳孔の直接反射と右瞳孔の間接反射は保たれる。本問では右瞳孔の反射がすべて正常で、左瞳孔の直接反射も消失しているので合致しない。
- ×b. 右動眼神経
誤り。右動眼神経が障害されると、右の瞳孔括約筋が働かないため、右瞳孔の直接・間接反射がともに消失し、右瞳孔は散大する。左瞳孔の反射は保たれる。本問とは左右が逆の所見となる。
- ×c. 左視神経
誤り。左視神経障害では、左眼に光を当てても両眼とも縮瞳しないため、左瞳孔の直接反射と右瞳孔の間接反射が消失する。一方、右眼に光を当てれば両側の瞳孔が縮むので、左瞳孔の間接反射は保たれる。本問では左瞳孔の間接反射が消失し、右瞳孔の間接反射が正常であるため合致しない。このような入力側の左右差は、swinging flashlight test(交互対光反射試験)で相対的瞳孔求心路障害(RAPD、Marcus Gunn瞳孔)として検出される。
- ○d. 左動眼神経
正しい。動眼神経は対光反射の出力路であり、Edinger-Westphal核からの副交感神経線維を瞳孔括約筋へ運ぶ。左動眼神経が障害されると、左右どちらの眼から光刺激が入っても左の瞳孔括約筋が収縮できないため、左瞳孔の直接・間接反射がともに消失する。入力路(両側視神経)と右側の出力路は正常なので、右瞳孔の直接・間接反射は保たれる。本問の所見と完全に一致する。動眼神経障害では、ほかに左瞳孔散大、眼瞼下垂(上眼瞼挙筋麻痺)、外下方への眼位偏位(外転神経・滑車神経の作用が残るため)がみられうる。副交感神経線維は動眼神経の表層を走るため、内頸動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤や鉤ヘルニアによる圧迫では瞳孔異常が早期から出やすい。
- ×e. 左後頭葉
誤り。対光反射の求心線維は視索から外側膝状体を経ずに中脳の視蓋前域核へ向かうため、外側膝状体より後方の視放線や後頭葉(視覚野)は対光反射の経路に含まれない。左後頭葉の障害では右同名半盲(黄斑回避を伴うことが多い)が生じるが、対光反射は左右とも保たれる。両側後頭葉障害による皮質盲でも対光反射が保たれる点は、眼球・視神経の障害との鑑別に役立つ。
直接・間接対光反射による病変部位の整理(左側が障害された場合)
・左視神経障害: 左眼刺激で両眼とも縮瞳しない。右眼刺激では両眼とも縮瞳する。→ 左直接反射消失・右間接反射消失、左間接反射と右直接反射は正常。 ・左動眼神経障害: 左瞳孔はどちらの刺激でも縮瞳しない。右瞳孔はどちらの刺激でも縮瞳する。→ 左の直接・間接反射消失、右は正常。 ・左後頭葉障害: 対光反射は正常(右同名半盲のみ)。
主な瞳孔異常
・Marcus Gunn瞳孔(RAPD): 視神経炎などの片側視神経障害。swinging flashlight testで、健常眼から障害眼へ光を移すと両眼の瞳孔が散大する。 ・Adie瞳孔(瞳孔緊張症): 毛様体神経節の障害。片側の散瞳、対光反射の消失または緩徐化、近見反応は緩徐ながら保たれる。低濃度ピロカルピンに過敏に縮瞳する。 ・Argyll Robertson瞳孔: 神経梅毒などでみられる。両側の縮瞳、対光反射消失、輻湊反射(近見反応)は保たれる(対光-近見反応解離)。 ・Horner症候群: 交感神経路の障害。縮瞳、軽度の眼瞼下垂、同側顔面の発汗低下。対光反射は保たれる。
動眼神経麻痺と瞳孔
・圧迫性(内頸動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤、鉤ヘルニア): 表層の副交感神経線維が早期に障害されるため、散瞳を伴いやすい。緊急の画像検査が必要である。 ・虚血性(糖尿病など): 神経の中心部が障害されやすく、瞳孔は保たれやすい(pupil sparing)。
POINT
・対光反射の入力は視神経、出力は動眼神経(副交感神経)。中枢で両側に連絡するため間接反射が生じる。 ・視神経障害: 障害眼の直接反射と健常眼の間接反射が消失する(障害眼の間接反射は保たれる)。 ・動眼神経障害: 障害眼の直接・間接反射がともに消失する。 ・後頭葉(視覚野)の障害では対光反射は保たれる。
