胆汁酸をつくるのは誰か―肝臓の細胞たちの役割分担
第102回医師国家試験 E問題 第2問
国試問題にチャレンジ
胆汁酸を産生するのはどれか。
- a.肝細胞
- b.Pit細胞
- c.星(状)細胞
- d.Kupffer細胞
- e.胆管上皮細胞
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
胆汁酸は肝臓の実質細胞である肝細胞で、コレステロールを原料に律速酵素コレステロール7α-水酸化酵素を介して一次胆汁酸として合成され、抱合を受けて毛細胆管へ分泌されます。肝臓の類洞壁細胞には、物質交換を担う類洞内皮細胞、常在型マクロファージのKupffer細胞、Disse腔でビタミンAを貯蔵し活性化すると線維化を進める星(伊藤)細胞、肝臓のNK細胞であるPit細胞の4種類があり、いずれも胆汁酸は合成しません。胆管上皮細胞は重炭酸と水を分泌して胆汁の量やpHを調節しますが、胆汁酸の産生には関わりません。胆汁酸は腸内細菌で二次胆汁酸となり、回腸末端で再吸収されて腸肝循環します。各細胞の役割分担を理解しておくと、肝機能障害時の検査異常や肝線維化、胆管疾患の病態を筋道立てて理解できます。
解答・解説
正解はaです
肝臓を構成する細胞の種類と、それぞれの役割を問う問題である。 肝臓の細胞は大きく、実質細胞である肝細胞(肝臓の細胞数の約6〜7割、容積の約8割を占める)と、類洞(肝細胞索の間を走る毛細血管)の壁やその周囲に位置する非実質細胞(類洞壁細胞)に分けられる。類洞壁細胞には、類洞内皮細胞、Kupffer細胞、星(状)細胞、Pit細胞の4種類がある。これに加えて、胆汁の通り道をつくる胆管上皮細胞(胆管細胞)がある。 胆汁酸の合成、ビリルビンの抱合、糖・脂質・蛋白質代謝、アンモニアの尿素への変換、薬物代謝など、いわゆる「肝臓の代謝機能」はほぼすべて肝細胞が担う。胆汁酸は肝細胞内でコレステロールを原料に合成され、毛細胆管へ分泌される。したがって正解は肝細胞である。
選択肢考察
- ○a. 肝細胞
胆汁酸は肝細胞の滑面小胞体などでコレステロールから合成される。律速酵素はコレステロール7α-水酸化酵素(CYP7A1)であり、これにより一次胆汁酸(コール酸、ケノデオキシコール酸)がつくられる。一次胆汁酸はグリシンやタウリンと抱合されて毛細胆管へ分泌される。コレステロールを胆汁酸に変えて排泄することは、体内のコレステロールを処理する主要な経路でもある。
- ×b. Pit細胞
Pit細胞は類洞内に存在する肝臓固有のナチュラルキラー(NK)細胞であり、細胞質に顆粒をもつ大型リンパ球である。ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を傷害する免疫機能を担い、胆汁酸の合成には関わらない。
- ×c. 星(状)細胞
星(状)細胞(伊藤細胞、脂肪摂取細胞ともいう)は、類洞内皮細胞と肝細胞の間の隙間であるDisse腔に存在する。平常時は脂肪滴の中にビタミンAを貯蔵しているが、肝障害が続くと活性化して筋線維芽細胞様に変化し、I型コラーゲンなどの細胞外基質を産生して肝線維化・肝硬変の中心的役割を果たす。胆汁酸は産生しない。
- ×d. Kupffer細胞
Kupffer細胞は類洞内に定着している常在型マクロファージであり、門脈から流入する細菌やエンドトキシン、異物、老化赤血球などを旺盛に貪食する。老化赤血球を処理してヘムからビリルビンを生じる過程には関与するが、胆汁酸の合成は行わない。
- ×e. 胆管上皮細胞
胆管上皮細胞は肝内・肝外胆管の内腔を覆う細胞である。セクレチンなどの刺激によって重炭酸イオン(HCO3-)と水を分泌し、胆汁の量やpHを調節するが、胆汁酸そのものを合成することはない。原発性胆汁性胆管炎(PBC)では小葉間胆管の、原発性硬化性胆管炎(PSC)ではより太い胆管の上皮が主な傷害標的となる。
肝臓を構成する主な細胞
・肝細胞(実質細胞):胆汁酸合成、ビリルビンのグルクロン酸抱合と排泄、アルブミン・凝固因子の合成、糖新生・グリコーゲン貯蔵、脂質代謝、尿素回路によるアンモニア処理、薬物代謝(シトクロムP450)など ・類洞内皮細胞:小孔(fenestra)をもち基底膜を欠く内皮で、血液とDisse腔の物質交換を容易にする ・Kupffer細胞:類洞内の常在型マクロファージ。貪食、サイトカイン産生 ・星(状)細胞(伊藤細胞):Disse腔に位置。ビタミンA貯蔵、活性化で線維化 ・Pit細胞:肝臓のNK細胞 ・胆管上皮細胞:胆管を構成。HCO3-と水の分泌
胆汁酸の合成と腸肝循環
肝細胞でコレステロールから一次胆汁酸(コール酸、ケノデオキシコール酸)が合成され、グリシン・タウリン抱合体として胆汁中に排泄される。腸管内では腸内細菌によって脱抱合・7α-脱水酸化を受け、二次胆汁酸(デオキシコール酸、リトコール酸)となる。胆汁酸の大部分は回腸末端で再吸収され、門脈を通って肝細胞に取り込まれ再利用される(腸肝循環)。胆汁酸は界面活性作用で脂肪をミセル化し、脂肪や脂溶性ビタミンの吸収を助ける。
POINT
・胆汁酸は肝細胞でコレステロールから合成される(律速酵素:コレステロール7α-水酸化酵素)。 ・類洞壁細胞は4種類:類洞内皮細胞、Kupffer細胞(マクロファージ)、星(状)細胞(ビタミンA貯蔵・線維化)、Pit細胞(NK細胞)。 ・胆管上皮細胞は重炭酸と水を分泌するが、胆汁酸は合成しない。 ・肝臓の代謝機能のほとんどは肝細胞が担う。
