中心型か末梢型か―肺癌の組織型は「場所」と「喫煙」で整理する
第102回医師国家試験 D問題 第3問
国試問題にチャレンジ
原発性肺癌について正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.腺癌の頻度が最も高い。
- b.扁平上皮癌は女性に多い。
- c.扁平上皮癌は喫煙が危険因子である。
- d.小細胞癌は抗癌化学療法薬に感受性が低い。
- e.大細胞癌は閉塞性肺炎を合併することが多い。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
原発性肺癌で最も頻度が高い組織型は腺癌で、末梢型が多く、女性や非喫煙者にもみられ、EGFR変異などのドライバー遺伝子異常があれば分子標的治療の対象となります。扁平上皮癌と小細胞癌は喫煙との関連が強く男性に多い中心型で、太い気管支を閉塞させるため無気肺や閉塞性肺炎を起こしやすい一方、末梢型の大細胞癌では閉塞性肺炎は多くありません。小細胞癌は抗癌薬・放射線への感受性が高いものの、早期転移と再発のため予後は不良であり、化学療法(限局型では放射線併用)が治療の中心です。「中心型か末梢型か」と「喫煙との関係」の2軸で組織型を整理すると、症状・腫瘍随伴症候群・腫瘍マーカー・治療方針までを一貫して理解できます。
解答・解説
正解はa, cです
テーマ
原発性肺癌の組織型ごとの特徴(頻度、性差、危険因子、発生部位、治療反応性)を問う基本問題である。
組織型の大きな分け方
肺癌は治療方針の違いから、小細胞肺癌(small cell lung cancer:SCLC、全体の約10〜15%)と、それ以外の非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer:NSCLC、約85〜90%)に大別される。非小細胞肺癌には腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌などが含まれる。わが国での頻度はおおよそ、腺癌が約半数以上、扁平上皮癌が20〜25%前後、小細胞癌が10〜15%、大細胞癌が数%である。
中心型と末梢型で整理する
・中心型(肺門部の太い気管支に発生):扁平上皮癌、小細胞癌。いずれも喫煙との関連が非常に強く、男性に多い。太い気管支を狭窄・閉塞させるため、血痰、無気肺、閉塞性肺炎を起こしやすい。 ・末梢型(肺野の末梢に発生):腺癌、大細胞癌。気管支の閉塞は起こしにくく、無症状のまま検診やCTで発見されることが多い。腺癌は非喫煙者や女性にもみられる。
治療反応性
小細胞癌は増殖が速く、早期から転移しやすい一方で、抗癌薬と放射線への感受性が高い。このため化学療法(±放射線療法)が治療の中心となる。非小細胞癌は小細胞癌に比べ感受性が低く、早期なら手術が第一選択である。 これらを踏まえると、正しいのは「腺癌の頻度が最も高い」と「扁平上皮癌は喫煙が危険因子である」の2つである。
選択肢考察
- ○a. 腺癌の頻度が最も高い。
腺癌は原発性肺癌で最も多い組織型で、全体の約半数以上を占め、男女ともに第1位である。喫煙との関連は他の組織型より弱く、非喫煙者や女性の肺癌の大部分は腺癌である。喫煙率の低下やCT検診の普及で早期の小型病変が見つかるようになったことなどから、その割合は増え続けている。末梢型が多く、EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子などのドライバー遺伝子異常がみられることが多いため、分子標的治療薬の対象となりやすい。
- ×b. 扁平上皮癌は女性に多い。
扁平上皮癌は喫煙と強く結びついた組織型であり、患者の大部分(約8〜9割)が男性である。喫煙者の多い男性に偏っているためで、女性に多いのではない。女性や非喫煙者に比較的多くみられるのは腺癌である。
- ○c. 扁平上皮癌は喫煙が危険因子である。
扁平上皮癌は、タバコ煙中の発癌物質に長期間さらされた気管支上皮が、扁平上皮化生から異形成を経て癌化することで生じると考えられており、喫煙との関連が最も強い組織型の一つである(小細胞癌も同様に喫煙と強く関連する)。喫煙指数(1日の本数×喫煙年数)が高いほど発症リスクが増す。肺門部の太い気管支に好発する中心型が多く、喀痰細胞診で見つかることがある。高カルシウム血症(PTHrP産生)を伴うことがあり、腫瘍マーカーとしてはSCC抗原やCYFRAが用いられる。
- ×d. 小細胞癌は抗癌化学療法薬に感受性が低い。
小細胞癌は分化度の低い神経内分泌系の癌で、細胞増殖が速いため、抗癌薬と放射線に対する感受性はむしろ非常に高い。初回治療では高率に腫瘍の縮小が得られる。ただし、診断時にすでに遠隔転移していることが多く、再発も起こりやすいため、予後は不良である。治療は、白金製剤(シスプラチン・カルボプラチン)とエトポシドなどの併用化学療法が基本で、限局型では胸部放射線療法を同時に行う。進展型では免疫チェックポイント阻害薬を併用することもある。
- ×e. 大細胞癌は閉塞性肺炎を合併することが多い。
大細胞癌は肺の末梢に発生することが多く、発見時にはすでに大きな腫瘤を形成していることが多いが、太い気管支を閉塞させることは少ないため、閉塞性肺炎の合併は多くない。閉塞性肺炎や無気肺を起こしやすいのは、中枢の気管支に発生する扁平上皮癌(および小細胞癌)である。
組織型ごとの特徴のまとめ
・腺癌:最多(約半数以上)。末梢型。女性・非喫煙者にも多い。胸膜陥入像やすりガラス影を伴う結節で見つかることがある。腫瘍マーカーはCEA。EGFR変異、ALK融合遺伝子、ROS1、BRAFなどのドライバー遺伝子異常があれば分子標的治療薬の対象となる。 ・扁平上皮癌:20〜25%前後。中心型。男性・喫煙者。空洞形成を起こしやすい。高カルシウム血症(PTHrP)。腫瘍マーカーはSCC抗原、CYFRA。閉塞性肺炎・無気肺をきたしやすい。 ・小細胞癌:10〜15%。中心型。男性・喫煙者。増殖が速く早期に転移する。抗癌薬・放射線に高感受性。ACTH産生(異所性Cushing症候群)、ADH産生(SIADH)、Lambert-Eaton筋無力症候群などの腫瘍随伴症候群。腫瘍マーカーはNSE、ProGRP。病期は限局型と進展型に分けて治療を決めることが多い。 ・大細胞癌:数%。末梢型。発見時に大きな腫瘤であることが多い。腺癌・扁平上皮癌・小細胞癌のいずれの特徴も示さない未分化な癌で、除外診断的に分類される。なお、かつて大細胞癌に含まれていた大細胞神経内分泌癌(LCNEC)は、現在のWHO分類では小細胞癌とともに神経内分泌腫瘍に分類される。
中心型肺癌と末梢型肺癌
・中心型:咳嗽、血痰で発症しやすい。喀痰細胞診・気管支鏡で診断しやすい。閉塞性肺炎、無気肺を伴う。 ・末梢型:初期は無症状のことが多く、胸部エックス線やCTで発見される。胸膜浸潤で胸痛や胸水、肺尖部ではPancoast症候群をきたすことがある。
治療の大原則
非小細胞肺癌はⅠ〜Ⅱ期(一部のⅢA期)なら手術が第一選択、進行期は薬物療法(殺細胞性抗癌薬、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬)が中心。小細胞肺癌は化学療法が中心で、限局型では放射線療法を併用する。
POINT
・肺癌で最も多い組織型は腺癌(末梢型、女性・非喫煙者にも多い)。 ・扁平上皮癌と小細胞癌は中心型で、喫煙との関連が強く男性に多い。 ・閉塞性肺炎・無気肺は中心型の扁平上皮癌で起こりやすい。大細胞癌は末梢型で閉塞性肺炎は少ない。 ・小細胞癌は抗癌薬・放射線への感受性が高いが、早期転移・再発が多く予後不良。
