黒い胆石は血液から生まれる―溶血と肝硬変がつくる黒色石
第102回医師国家試験 D問題 第16問
国試問題にチャレンジ
胆嚢の黒色石の原因となるのはどれか。2つ選べ。
- a.肥満
- b.糖尿病
- c.肝硬変
- d.胆嚢炎
- e.溶血性貧血
対話形式の解説
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ドクターまとめ
胆石はコレステロール胆石、黒色石、ビリルビンカルシウム石に大別され、成因が異なります。黒色石はビリルビン重合体を主成分とし、胆嚢内に多発し胆汁は無菌で、溶血性貧血や、門脈圧亢進に伴う脾機能亢進で溶血が起こる肝硬変が代表的な原因です。肥満や糖尿病はコレステロール過飽和を介してコレステロール胆石の危険因子となり、胆汁うっ滞と細菌感染は胆管内のビリルビンカルシウム石を生じ、胆嚢炎は胆石の結果であって原因ではありません。若年者の胆石では溶血性疾患を疑い、ウルソデオキシコール酸による溶解療法はコレステロール胆石に限られるなど、結石の種類と成因の理解は診断と治療選択の両方に役立ちます。
解答・解説
正解はc, eです
胆石は主成分によって、コレステロール胆石と色素胆石に大別され、色素胆石はさらに黒色石とビリルビンカルシウム石に分けられる。それぞれ成因が異なるため、「どの結石がどんな背景で生じるか」を対応づけて覚えることが本問の鍵である。
黒色石
胆嚢内に多発する小さな黒色の結石で、割面も黒く無構造である。主成分はビリルビンが重合した黒色色素(ビリルビン重合体)である。胆汁中に非抱合型(間接)ビリルビンが増えることが主な成因と考えられ、溶血によるビリルビン産生の増加が代表的な背景となる。胆汁は通常無菌で、感染は関与しない。
ビリルビンカルシウム石
茶褐色で層状構造をもち、胆管内にできやすい。胆汁うっ滞と細菌感染が原因で、細菌のβ-グルクロニダーゼが抱合型ビリルビンを脱抱合し、カルシウムと結合して結石となる。
コレステロール胆石
胆汁中のコレステロールが過飽和となり析出してできる。肥満、高脂肪食、脂質異常症、糖尿病、妊娠、経口避妊薬(エストロゲン)、急激な体重減少などが危険因子である。 したがって、黒色石の原因としては溶血をきたす病態、すなわち溶血性貧血と、脾機能亢進などで溶血が起こる肝硬変を選ぶ。
選択肢考察
- ×a. 肥満
肥満では肝臓でのコレステロール合成と胆汁中への排泄が増え、胆汁がコレステロール過飽和の状態になる。そのためコレステロール胆石の代表的な危険因子であるが、ビリルビンを主成分とする黒色石の原因ではない。いわゆる「5F」(female、forty、fatty、fertile、fair)の一つとして知られる。
- ×b. 糖尿病
糖尿病では、インスリン抵抗性に伴う胆汁中のコレステロール過飽和や、自律神経障害による胆嚢の収縮能低下(胆汁の停滞)により、コレステロール胆石ができやすくなる。黒色石の原因ではない。
- ○c. 肝硬変
肝硬変では門脈圧亢進によって脾腫・脾機能亢進が起こり、赤血球が脾臓で破壊されやすくなる(溶血の亢進)。その結果ビリルビンの産生が増え、胆汁中の非抱合型ビリルビンも増加するため、溶血性貧血と同様の機序で黒色石が生じやすい。肝硬変患者では胆石の合併頻度が高く、その多くが黒色石である。よって黒色石の原因となる。
- ×d. 胆嚢炎
急性胆嚢炎の大部分は、胆嚢結石が胆嚢管に嵌頓することで生じる。つまり胆石が胆嚢炎の原因となるのであって、胆嚢炎が黒色石の原因となるわけではない。なお、胆汁の細菌感染はビリルビンカルシウム石の成因に関与するが、ビリルビンカルシウム石は主に胆管内にでき、黒色石とは別の結石である。
- ○e. 溶血性貧血
遺伝性球状赤血球症や鎌状赤血球症などの溶血性貧血では、赤血球の破壊が増えてヘモグロビン由来のビリルビンが大量に産生される。肝臓で抱合されて胆汁中に排泄されるビリルビンが増え、その一部が胆汁中で脱抱合されて非抱合型ビリルビンとなり、重合・沈殿して黒色石を形成する。黒色石の最も代表的な原因であり、若年者や小児の胆石では溶血性疾患の存在を疑う契機となる。
胆石の種類と成因のまとめ
・コレステロール胆石(純コレステロール石、混成石、混合石):わが国の胆嚢結石で最も多い。危険因子は肥満、高脂肪食、脂質異常症、糖尿病、女性、妊娠、経口避妊薬、急激な体重減少、回腸末端の切除・病変(胆汁酸の腸肝循環の障害)など。 ・黒色石:胆嚢内に多発する。溶血性貧血、肝硬変、心臓人工弁置換術後(機械弁による溶血)、胃切除後、Crohn病や回腸切除後(非抱合型ビリルビンの腸肝循環の増加)などで多い。高齢者にもみられる。胆汁は無菌で、X線で石灰化を伴って描出されることもある。 ・ビリルビンカルシウム石:胆管内に多い。胆汁うっ滞と細菌感染(大腸菌などのβ-グルクロニダーゼ)が原因で、かつてわが国で多かったが、衛生状態の改善で減少した。
治療の概略
症状のある胆嚢結石には腹腔鏡下胆嚢摘出術が標準である。経口胆汁酸溶解療法(ウルソデオキシコール酸)は、石灰化のない小さなコレステロール胆石で胆嚢機能が保たれている場合に限られ、黒色石には効果がない。
POINT
・黒色石=ビリルビン重合体、胆嚢内に多発、胆汁は無菌、原因は溶血(溶血性貧血、肝硬変の脾機能亢進、人工弁置換術後)。 ・ビリルビンカルシウム石=胆管内、胆汁うっ滞と細菌感染。 ・コレステロール胆石=肥満、糖尿病、脂質異常症、女性、妊娠、ピルなど。 ・胆嚢炎は胆石の結果であり、原因ではない。
