StudyMed医師国家試験

潰瘍の「向き」と「並び方」で読み解く―輪状なら結核、敷石ならCrohn病

第102回医師国家試験 D問題 第12問

国試問題にチャレンジ

第102回 D問題 第12問

組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. a.腸結核 ―― 輪状潰瘍
  2. b.Crohn病 ―― 敷石像
  3. c.薬物性腸炎 ―― 縦走潰瘍
  4. d.虚血性腸炎 ―― 偽膜形成
  5. e.潰瘍性大腸炎 ―― 非連続性病変

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、腸の炎症性疾患と内視鏡像を結び付ける組合せ問題だよ。ポイントは、潰瘍が腸管のどちらの方向に走っているか、病変が連続しているか飛び飛びか、そして疾患ごとの特徴的な形。この3つの軸で整理すると、ほとんどの腸炎はすっきり見分けられるんだ。
医学生医学生
潰瘍の向きって、縦か横かということですよね。正直、どの疾患がどっちだったか毎回混乱します。
ドクタードクター
丸暗記だと混乱しやすいから、理由とセットで覚えよう。まず腸結核。結核菌は回盲部のPeyer板などのリンパ組織から侵入して、腸管をぐるりと取り巻くように走るリンパ流に沿って広がる。だから潰瘍も腸管の短軸方向、つまり輪状・帯状にできるんだ。
医学生医学生
リンパ管の走り方に沿うから輪状になるんですね。理屈があると忘れにくいです。
ドクタードクター
そう。治ったあとも萎縮瘢痕帯や回盲弁の開大、盲腸の短縮といった変形が残ることがある。だから腸結核と輪状潰瘍の組合せは正しい。次はCrohn病。敷石像はどんな像か説明できるかな。
医学生医学生
縦走潰瘍が何本も走って、その間の粘膜が盛り上がって石畳みたいに見える像…でしたっけ。
ドクタードクター
その通り。全層性の炎症で縦走潰瘍が並び、取り残された粘膜が浮腫で盛り上がると、石畳を敷き詰めたように見える。縦走潰瘍と並んで診断基準の主要所見に入る、特異性の高い像だ。これも正しい組合せだね。
医学生医学生
縦走潰瘍がCrohn病なら、薬物性腸炎と縦走潰瘍の組合せはどうして違うんですか。
ドクタードクター
縦走潰瘍の代表はCrohn病で、虚血性大腸炎でもみられる。薬物性腸炎は原因薬によって像がまったく違うんだ。抗菌薬のあとのC. difficile感染なら偽膜、ペニシリン系などによる急性出血性大腸炎なら横行結腸中心のびまん性の発赤や出血、NSAIDsなら小さな潰瘍や膜様狭窄。縦走潰瘍が出ることもあるけれど、代表的な所見とはいえない。
医学生医学生
じゃあ偽膜形成は、虚血性腸炎ではなく偽膜性腸炎の特徴ということですね。
ドクタードクター
そう。偽膜は黄白色の小さな隆起が多発する像で、C. difficileによる偽膜性腸炎の顔だ。虚血性大腸炎は便秘気味の高齢者に、腹痛に続く下血で急に起こる病気で、脾弯曲部からS状結腸に好発する。内視鏡では発赤や浮腫を伴う縦走潰瘍、注腸造影では粘膜下の浮腫や出血を反映した母指圧痕像が典型的だよ。
医学生医学生
消化器内科の実習で、夜間に腹痛と下血で来た高齢の方がまさにそれでした。左側の結腸に区域性の病変がありました。
ドクタードクター
いい経験をしたね。では最後、潰瘍性大腸炎と非連続性病変の組合せは?
医学生医学生
潰瘍性大腸炎は直腸から口側に連続して広がるので、非連続性ではないですよね。飛び飛びになるのはCrohn病です。
ドクタードクター
正解。直腸から始まって連続性・びまん性に広がり、範囲によって直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型に分ける。非連続性病変、いわゆるskip lesionはCrohn病や腸結核の特徴だ。
医学生医学生
でも、Crohn病と腸結核はどちらも回盲部に好発して、どちらも非連続性ですよね。実際にはどうやって見分けるんですか。
ドクタードクター
そこは臨床でも本当に悩むところなんだ。潰瘍の向きが縦走か輪状か、生検の肉芽腫が非乾酪性か乾酪性か、さらに生検組織の培養やPCR、インターフェロンγ遊離試験を組み合わせて判断する。もし腸結核をCrohn病と誤診して免疫抑制薬や抗TNF-α抗体製剤を使うと、結核を悪化させてしまう危険がある。だから治療前に結核をしっかり除外することが大切なんだ。
医学生医学生
病理の講義で習った乾酪性と非乾酪性の違いが、こんなところで効いてくるんですね。
ドクタードクター
その通り。ほかにも、腸管Behçet病や単純性潰瘍なら回盲部の深い打ち抜き様潰瘍、アメーバ性大腸炎なら直腸や盲腸のたこいぼ様びらん、と形で覚えておくと鑑別の幅が広がるよ。

まとめ

腸の炎症性疾患は、内視鏡で見える潰瘍の向き・分布・形態からかなり絞り込めます。腸結核はリンパ流に沿って広がるため輪状(帯状)潰瘍を作り、Crohn病は縦走潰瘍とその間の粘膜が盛り上がった敷石像、非連続性病変が特徴です。潰瘍性大腸炎は直腸から連続性に広がり、虚血性大腸炎は縦走潰瘍と母指圧痕像、偽膜はC. difficileによる偽膜性腸炎を示します。Crohn病と腸結核はともに回盲部に好発するため、潰瘍の向き、肉芽腫の性状、培養やPCR、IGRAを組み合わせて鑑別し、免疫抑制治療の前に結核を除外することが重要です。所見を理由とともに整理しておくことが、内視鏡診断と安全な治療選択の土台になります。

解答・解説

正解はa, bです

大腸(および回腸末端)の炎症性疾患は、内視鏡でみえる潰瘍の「向き」「形」「分布」によってかなりの程度まで鑑別できる。本問はその代表的な対応関係を問うている。

潰瘍の向きで考える

・輪状(腸管の短軸方向、帯状に全周性に並ぶ)潰瘍:腸結核が代表である。結核菌は腸管のリンパ流(Peyer板などのリンパ組織から輪状に走るリンパ管)に沿って広がるため、潰瘍も輪状・帯状になる。 ・縦走(腸管の長軸方向)潰瘍:Crohn病が代表で、虚血性大腸炎でもみられる。

病変の分布で考える

・連続性:潰瘍性大腸炎(直腸から口側へ途切れずに広がる)。 ・非連続性(skip lesion、正常粘膜をはさんで飛び飛びに病変が出る):Crohn病、腸結核。

特徴的な形態

・敷石像(cobblestone appearance):縦走潰瘍と、それに囲まれて浮腫状に盛り上がった粘膜が石畳のようにみえる像で、Crohn病に特徴的である。 ・偽膜:黄白色の小隆起(プラーク)が多発する像で、Clostridioides difficile 感染による偽膜性腸炎に特徴的である。 これらの対応を正しく結び付ければ、腸結核と輪状潰瘍、Crohn病と敷石像の2つが正しい組合せとなる。

選択肢考察

  1. ○a.  腸結核 ―― 輪状潰瘍

    腸結核は回盲部(回腸末端〜盲腸)に好発する。結核菌が腸管のリンパ組織に侵入し、腸管を輪状に取り巻くリンパ流に沿って病変が広がるため、潰瘍は腸管の短軸方向に帯状・輪状に形成される。これが腸結核に特徴的な輪状潰瘍(帯状潰瘍)であり、小腸で特に目立つ。治癒過程では萎縮瘢痕帯や、回盲弁の開大・変形、腸管の短縮(盲腸の萎縮)などもみられる。よって正しい組合せである。

  2. ○b.  Crohn病 ―― 敷石像

    Crohn病は口腔から肛門までの消化管のどこにでも起こりうる全層性の肉芽腫性炎症で、回盲部に好発し、病変は非連続性(skip lesion)に分布する。長軸方向に走る縦走潰瘍が複数並び、その間に残った粘膜が浮腫で盛り上がると、石畳を敷き詰めたような敷石像を呈する。縦走潰瘍とともにCrohn病の診断基準の主要所見に含まれる特異性の高い像であり、正しい組合せである。

  3. ×c.  薬物性腸炎 ―― 縦走潰瘍

    縦走潰瘍の典型はCrohn病であり、虚血性大腸炎でもみられる。薬物性腸炎は原因薬剤によって像が異なり、抗菌薬投与後のC. difficile感染による偽膜性腸炎では黄白色の小隆起(偽膜)が多発し、ペニシリン系などによる急性出血性大腸炎では横行結腸を中心にびまん性の発赤・びらん・出血がみられる。NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)起因性腸炎では小さな潰瘍・びらんや膜様狭窄などが出る。薬物性腸炎で縦走潰瘍がみられることもあるが特徴的な所見ではなく、代表的な組合せとはいえない。

  4. ×d.  虚血性腸炎 ―― 偽膜形成

    偽膜形成を特徴とするのはC. difficile感染による偽膜性腸炎である。虚血性大腸炎(虚血性腸炎)は高齢者や便秘傾向の人に多く、腹痛に続く下血で急性発症し、下行結腸〜S状結腸の脾弯曲部付近に好発する。内視鏡では発赤・浮腫・出血を伴う縦走潰瘍(縦走びらん)がみられ、注腸造影では粘膜下の浮腫・出血を反映した母指圧痕像(thumb printing)が特徴である。偽膜は典型的な所見ではなく、誤った組合せである。

  5. ×e.  潰瘍性大腸炎 ―― 非連続性病変

    潰瘍性大腸炎は大腸粘膜にびらん・潰瘍をつくる炎症で、原則として直腸から始まり、口側へ連続性・びまん性に広がる。病変の範囲によって直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型に分類される。非連続性病変(skip lesion)はCrohn病や腸結核の特徴であり、誤った組合せである。

主な腸疾患の内視鏡・画像所見の整理

・Crohn病:縦走潰瘍、敷石像、アフタ(小さな浅い潰瘍)の縦列、非連続性病変、全層性炎症による狭窄・瘻孔。病理で非乾酪性類上皮細胞肉芽腫。 ・潰瘍性大腸炎:直腸からの連続性・びまん性病変、血管透見像の消失、粘膜の顆粒状変化、易出血性、偽ポリポーシス。注腸造影ではハウストラの消失(鉛管像)。 ・腸結核:回盲部に好発する輪状・帯状潰瘍、萎縮瘢痕帯、回盲弁の開大。病理で乾酪性肉芽腫。 ・虚血性大腸炎:脾弯曲部〜S状結腸に好発する区域性病変、縦走潰瘍、注腸造影で母指圧痕像。 ・偽膜性腸炎:抗菌薬投与後に発症し、黄白色の偽膜(小隆起)が多発する。C. difficileの毒素やGDH抗原で診断する。 ・腸管Behçet病・単純性潰瘍:回盲部の深い打ち抜き様潰瘍。 ・アメーバ性大腸炎:直腸や盲腸に好発し、たこいぼ様のびらん・潰瘍。

Crohn病と腸結核の鑑別

どちらも回盲部に好発し非連続性病変をとるため鑑別が問題になる。潰瘍の向き(Crohn病は縦走、腸結核は輪状)、肉芽腫の性状(非乾酪性か乾酪性か)、生検組織の培養やPCR、インターフェロンγ遊離試験(IGRA)などを組み合わせて判断する。

POINT

・腸結核=輪状(帯状)潰瘍、回盲部好発。 ・Crohn病=縦走潰瘍・敷石像、非連続性(skip lesion)。 ・潰瘍性大腸炎=直腸からの連続性病変。 ・虚血性大腸炎=縦走潰瘍、注腸で母指圧痕像。 ・偽膜=C. difficileによる偽膜性腸炎。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。