妊娠26週、子宮口2cm―切迫早産の妊婦に何を伝えるか
第102回医師国家試験 B問題 第43問
国試問題にチャレンジ
妊娠26週の初妊婦。定期健康診査で頻回の子宮収縮を感じると訴えた。内診で外子宮口は2cm開大し,腹部超音波検査で児の推定体重は700gであった。 患者への説明で正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.全分娩の約15%が早産する。
- b.感染は早産の主要な原因である。
- c.いま出生すると超低出生体重児となる。
- d.妊娠30週で出生した児の生存率は約60%である。
- e.妊娠36週で分娩すると正期産となる。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
妊娠22週以降37週未満に頻回の子宮収縮と子宮口開大を認める場合は切迫早産であり、その主要な原因は上行性感染による絨毛膜羊膜炎です。出生体重は2,500g未満を低出生体重児、1,500g未満を極低出生体重児、1,000g未満を超低出生体重児と分類し、推定700gの児がいま生まれれば超低出生体重児となります。日本の早産率は全出生の約5~6%、妊娠30週出生児の生存率はほぼ100%であり、正期産は37週0日から41週6日までなので36週の分娩は早産です。治療は入院管理下での子宮収縮抑制薬、感染があれば抗菌薬、34週未満で早産が迫る場合の母体ステロイド投与が柱となります。週数と体重の定義を正確に押さえることは、妊婦さんへの適切な説明と、少しでも妊娠を延ばす意義を伝えるための基盤になります。
解答・解説
正解はb, cです
所見の整理
・妊娠26週の初妊婦(はじめて妊娠した女性) ・頻回の子宮収縮の自覚 ・内診で外子宮口が2cm開大 ・超音波による推定児体重700g 妊娠22週以降37週未満の時期に、規則的・頻回な子宮収縮と子宮口の開大という早産に向かう徴候がみられており、切迫早産と診断できる。
診断と管理の考え方
切迫早産では、子宮収縮に加えて、性器出血、破水、経腟超音波での子宮頸管長の短縮や内子宮口の漏斗状開大(funneling)がみられる。原因として最も重要なのは上行性の腟内感染から起こる絨毛膜羊膜炎(CAM:chorioamnionitis)であり、母体の発熱・頻脈、胎児頻脈、子宮の圧痛、白血球増多やCRP上昇、腟分泌物の培養、頸管粘液中の顆粒球エラスターゼや胎児性フィブロネクチンなどで評価する。 本例は入院管理とし、胎児心拍数陣痛図(CTG)で子宮収縮と胎児の状態を監視しながら、子宮収縮抑制薬(リトドリン塩酸塩、硫酸マグネシウム)の投与、感染があれば抗菌薬投与、早産が避けられない場合に備えた母体へのステロイド投与(胎児の肺成熟促進)などを行う。
設問の考え方
患者への説明として正しい内容を選ぶ問題であり、早産の頻度と原因、出生体重による児の分類、週数別の予後、分娩時期の定義を正確に覚えているかが問われている。推定体重700gは1,000g未満であるから、いま生まれれば超低出生体重児に該当する。
選択肢考察
- ×a. 全分娩の約15%が早産する。
わが国で早産となるのは全出生の約5~6%程度(出題当時の記載では6%前後)であり、15%は過大である。なお、世界全体でみた早産率は約10%とされ、国によっては10%を超えるが、日本の妊婦への説明としては誤りである。低出生体重児(2,500g未満)の割合は1980年代以降増加して近年は全出生の約9~10%を占めるが、これは早産率とは別の指標である。
- ○b. 感染は早産の主要な原因である。
細菌性腟症などから腟内の細菌が子宮内へ上行して起こる絨毛膜羊膜炎は、早産の最も重要な原因の一つである。感染に伴う炎症によりサイトカイン(IL-1、IL-6、IL-8など)が産生され、プロスタグランジンの産生増加による子宮収縮、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の活性化による頸管熟化と卵膜の脆弱化(前期破水)が起こり、早産に至る。したがって感染の評価と治療は切迫早産管理の重要な柱であり、説明として正しい。
- ○c. いま出生すると超低出生体重児となる。
出生体重による分類では、2,500g未満を低出生体重児、1,500g未満を極低出生体重児、1,000g未満を超低出生体重児という。本例の推定体重は700gであり、いま生まれれば超低出生体重児となる。超低出生体重児では、脳室内出血や脳室周囲白質軟化症(PVL)による脳性麻痺などの神経学的後遺症、呼吸窮迫症候群、慢性肺疾患、未熟児網膜症、壊死性腸炎などのリスクが高く、できるだけ妊娠を継続させることの意義を患者に説明する必要がある。
- ×d. 妊娠30週で出生した児の生存率は約60%である。
妊娠30週の児の体重は平均で1,300~1,500g程度であり、新生児集中治療室(NICU)での管理により、生存率はほぼ100%(95%以上)に達する。生存率が大きく下がるのは妊娠22~24週前後の極めて早い時期の出生である。60%は誤りである。ハイリスク妊娠では、児の予後が大きく改善する妊娠30週以降まで妊娠を延長することが一つの目標とされる。
- ×e. 妊娠36週で分娩すると正期産となる。
正期産は妊娠37週0日から41週6日までの分娩をいう。妊娠36週の分娩は早産(22週0日~36週6日)に含まれる。34週0日~36週6日の早産は後期早産(late preterm)と呼ばれ、正期産児に比べて呼吸障害、低血糖、黄疸などが起こりやすい。
妊娠週数による分娩の区分
・流産:妊娠22週未満の妊娠の終結 ・早産:妊娠22週0日~36週6日の分娩 ・正期産:妊娠37週0日~41週6日の分娩 ・過期産:妊娠42週0日以降の分娩
出生体重による分類
・巨大児:4,000g以上 ・低出生体重児:2,500g未満 ・極低出生体重児:1,500g未満 ・超低出生体重児:1,000g未満
胎児体重のおおよその目安
妊娠22週で約500g、27~28週で約1,000g、32週で約1,500~1,800g、37週で約2,500gである。
切迫早産の原因とリスク因子
・絨毛膜羊膜炎、細菌性腟症などの感染 ・子宮頸管無力症、子宮頸管長の短縮(妊娠中期に経腟超音波で25mm未満はハイリスク) ・多胎妊娠、羊水過多による子宮の過伸展 ・子宮筋腫、子宮奇形 ・前期破水 ・早産の既往、喫煙、過度のストレスなど
絨毛膜羊膜炎の評価
臨床的には母体発熱(38℃以上)、母体頻脈、胎児頻脈、子宮圧痛、悪臭のある腟分泌物、母体の白血球増多などで疑う。頸管粘液中の顆粒球エラスターゼ高値や胎児性フィブロネクチン陽性は早産の予知に用いられる。羊水穿刺で細菌の検出、白血球増多、グルコース低値、IL-6高値などがあれば子宮内感染を強く示唆する。確定は分娩後の胎盤・卵膜の病理検査による。
切迫早産の主な治療
・安静、入院管理、CTGによる監視 ・子宮収縮抑制薬:リトドリン塩酸塩(β2刺激薬。副作用に動悸・頻脈、肺水腫、高血糖、低カリウム血症、顆粒球減少など)、硫酸マグネシウム(副作用に高マグネシウム血症による呼吸抑制・腱反射消失。胎児の脳保護作用も期待される) ・感染が疑われれば抗菌薬 ・妊娠34週未満で1週間以内の早産が予想される場合は、母体に副腎皮質ステロイド(ベタメタゾン)を投与し、胎児の肺成熟を促して新生児呼吸窮迫症候群や脳室内出血を減らす ・子宮頸管無力症には頸管縫縮術(シロッカー手術、マクドナルド手術)
POINT
・早産は妊娠22週0日~36週6日、正期産は37週0日~41週6日の分娩である。 ・日本の早産率は全出生の約5~6%である。 ・絨毛膜羊膜炎などの感染は早産の主要な原因である。 ・出生体重1,000g未満は超低出生体重児、1,500g未満は極低出生体重児、2,500g未満は低出生体重児。 ・妊娠30週で生まれた児の生存率はほぼ100%である。
