這い這いしない、人見知りで泣く―10か月健診で「正常」を見抜き、離乳の次の一歩を伝える
第102回医師国家試験 B問題 第44問
国試問題にチャレンジ
10か月の男児。健康診査のため来院した。在胎39週2日,頭位正常分娩で出生した。身長47.5cm,体重2,800g,Apgarスコア8点(1分)であった。つかまり立ちはするが,這い這いはしない。離乳食は2回で,お粥を子ども茶碗1杯と副食とを食べる。他に母乳を4回飲んでいる。2か月前から人見知りが始まり,両親以外の人が近づくと激しく泣く。毎日夜泣きをする。身長68.2cm,体重8.0kg。顔色は良好。胸部と腹部とに異常を認めない。医師の顔を見て泣く。成長曲線を別に示す。 親への説明で正しいのはどれか。

- a.母乳をやめる。
- b.摂取カロリーは不足している。
- c.1歳までに離乳食を3回にする。
- d.運動発達は遅れている。
- e.人見知り・夜泣きが激しいのは異常である。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
10か月児の健診では、成長曲線・運動発達・社会性・栄養を順に評価し、正常かどうかを判断したうえで月齢に応じた助言を行います。成長曲線は3~97パーセンタイル内で曲線に沿って増えていれば小柄でも正常であり、つかまり立ちは9~10か月ごろに可能となるため、這い這いを飛ばしても運動発達の遅れとはいえません。人見知り(6~8か月ごろから)や夜泣きは正常な発達の表れで、離乳中も母乳を急にやめる必要はありません。離乳食は5~6か月で1回、7~8か月で2回、9~11か月で3回へ進め、12~18か月ごろに完了するのが目安なので、2回食の10か月児には1歳ごろまでに3回食へ移行するよう助言します。鉄不足への配慮やはちみつの禁止なども含め、正常発達の知識を親への具体的な説明に変換できることが、乳幼児健診を担う医師の基本的な力になります。
解答・解説
正解はcです
所見の整理
・在胎39週2日の正期産、正常分娩。出生時の身長47.5cm、体重2,800gで、Apgarスコア(出生直後の新生児の状態を心拍・呼吸・筋緊張・反射・皮膚色で評価する10点満点のスコア)は1分値8点と良好である。 ・10か月時点で身長68.2cm、体重8.0kg。成長曲線では、身長・体重ともに3~97パーセンタイルの範囲内で、やや小柄な位置ながら曲線に沿って順調に増加している。途中で急に曲線から外れる(下方へ横切る)ような変化はなく、成長障害や栄養不足を示す所見はない。 ・運動:つかまり立ちができる(這い這いはしない)。 ・社会性:2か月前(生後8か月ごろ)から人見知りがあり、医師の顔を見て泣く。夜泣きを毎日する。 ・栄養:離乳食が1日2回(お粥を子ども茶碗1杯と副食)、母乳を1日4回。 ・身体所見に異常はない。
判断のプロセス
成長は成長曲線に沿っており、つかまり立ちは9~10か月ごろに可能となる標準的な運動発達である。人見知りも生後6~8か月ごろから現れる正常な社会性の発達である。したがって本児は正常な発育・発達をしている乳児と判断できる。
設問の考え方
健康診査で親にどのような助言をするかが問われている。正常な発育・発達と判断したうえで、月齢に応じた離乳の進め方を示すことが求められる。わが国の「授乳・離乳の支援ガイド」では、生後9~11か月ごろ(離乳後期)に離乳食を1日3回に進めるとされており、2回食の本児では、1歳ごろまでに3回食へ移行するよう助言するのが適切である。
選択肢考察
- ×a. 母乳をやめる。
10か月児で母乳を急にやめる必要はない。離乳とは、母乳や育児用ミルクなどの乳汁栄養から幼児食へ移行する過程をいい、その過程でも乳汁は子どもの欲するままに、あるいは離乳食の後などに与えてよいとされる。離乳の完了(形のある食べ物をかみつぶせるようになり、栄養の大部分を乳汁以外の食物からとれるようになった状態)は生後12~18か月ごろが目安で、母乳をいつやめるかは児と母親の状況に応じて決めればよい。離乳食が進むにつれて自然に母乳の回数は減っていく。
- ×b. 摂取カロリーは不足している。
成長曲線上、体重は3~97パーセンタイルの範囲内にあり、出生時から曲線に沿って順調に増えている。体重増加が停滞したり、パーセンタイル曲線を下向きに横切ったりしていないので、摂取カロリーが不足しているとはいえない。離乳食を2回、お粥を子ども茶碗1杯分と副食を食べ、母乳も4回飲んでおり、摂取量としても妥当である。
- ○c. 1歳までに離乳食を3回にする。
離乳食は、生後5~6か月ごろに1日1回から開始し(離乳初期)、7~8か月ごろに1日2回(離乳中期)、9~11か月ごろに1日3回(離乳後期)へと進め、12~18か月ごろに離乳を完了する(完了期)。本児は10か月で2回食であり、今後は食事のリズムを整えながら1歳ごろまでに3回食へ移行するよう助言するのが適切である。この時期は母乳だけでは鉄などの栄養素が不足しやすくなるため、離乳食から栄養をとる割合を増やすことが大切である。
- ×d. 運動発達は遅れている。
つかまり立ちは生後9~10か月ごろに可能となる動作であり、10か月でつかまり立ちができていれば運動発達は正常である。這い這い(四つ這い)をせずに、座位からつかまり立ちやつかまり歩きへ進む子ども(いわゆるshuffling babyを含む)も少なくなく、這い這いをしないことだけで運動発達の遅れと判断してはならない。
- ×e. 人見知り・夜泣きが激しいのは異常である。
人見知りは、生後6~8か月ごろに、養育者と見知らぬ人とを区別できるようになることで現れる正常な発達の表れであり、養育者との愛着が形成されている証でもある。強い人見知りも個人差の範囲である。夜泣きも生後半年から1歳半ごろによくみられ、多くは成長とともに自然に消失する。いずれも異常ではなく、親には心配いらないことを説明する。
離乳の進め方の目安(授乳・離乳の支援ガイド)
・離乳初期(生後5~6か月ごろ):1日1回。なめらかにすりつぶした状態のものを与える。 ・離乳中期(7~8か月ごろ):1日2回。舌でつぶせる固さ。 ・離乳後期(9~11か月ごろ):1日3回。歯ぐきでつぶせる固さ。鉄が不足しやすい時期であり、赤身の魚や肉、レバーなどを取り入れる。 ・離乳完了期(12~18か月ごろ):1日3回の食事と1~2回の補食。歯ぐきでかめる固さ。 ・はちみつは乳児ボツリヌス症予防のため1歳を過ぎるまで与えない。
乳児の運動発達の目安(おおよその通過月齢)
・首すわり:3~4か月 ・寝返り:5~6か月 ・お座り(支えなしの座位):7か月ごろ ・這い這い:8~9か月 ・つかまり立ち:9~10か月 ・伝い歩き:10~11か月 ・ひとり立ち:12か月ごろ ・ひとり歩き:12~15か月
社会性の発達
・社会的微笑(あやすと笑う):2~3か月 ・人見知り:6~8か月ごろから ・バイバイなどの身振りの模倣:9~10か月
成長曲線の見方
身長・体重が3パーセンタイル未満または97パーセンタイルを超える場合は精査を考慮する。一方で、範囲内であっても、パーセンタイル曲線を複数本またいで下向きに横切るような変化(成長率の低下)は異常のサインである。本児のように小柄でも曲線に沿って伸びていれば、正常範囲の体格と考えてよい。
POINT
・離乳食は5~6か月で1回、7~8か月で2回、9~11か月で3回とし、12~18か月で離乳を完了する。 ・離乳中でも母乳をやめる必要はない。 ・つかまり立ちは9~10か月で可能になる。這い這いをしないだけでは運動発達遅滞とはいえない。 ・人見知り(6~8か月ごろから)や夜泣きは正常な発達の範囲である。 ・栄養状態は成長曲線に沿った増加を示しているかで判断する。
