StudyMed医師国家試験

サーファクタントを出すのはII型―肺を支える細胞たちの役割分担

第102回医師国家試験 B問題 第37問

国試問題にチャレンジ

第102回 B問題 第37問

肺の細胞と機能の組合せで誤っているのはどれか。

  1. a.杯細胞 ―― 粘液分泌
  2. b.線維芽細胞 ―― 膠原線維産生
  3. c.神経内分泌細胞 ―― セロトニン分泌
  4. d.Ⅰ型肺胞上皮細胞 ―― サーファクタント分泌
  5. e.肺胞マクロファージ ―― 細菌貪食

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、気道と肺胞をつくる細胞それぞれの働きを問う問題だ。「誤っている組合せ」を選ぶ形式なので、一つずつ正誤を確かめていこう。肺の細胞は「気道の細胞」「肺胞の細胞」「間質・免疫の細胞」に分けて整理すると見通しがよくなるよ。
医学生医学生
組織学の講義で、肺胞にはI型とII型の上皮細胞があると習いました。どちらがどちらか、いつも混乱します。
ドクタードクター
そこがまさにこの問題の山場なんだ。先に結論を言うと、サーファクタントを分泌するのはII型肺胞上皮細胞で、I型に結び付けた組合せが誤り、つまり正解になる。
医学生医学生
I型は何をしているんですか。
ドクタードクター
I型は非常に薄く扁平な細胞で、数はII型より少ないけれど肺胞表面の約90〜95%を覆っている。毛細血管の内皮、基底膜とともに血液空気関門をつくって、ガス交換の場になるんだ。一方、II型は立方状の細胞で、層板小体にためたサーファクタントを肺胞腔に放出する。
医学生医学生
病理実習で、間質性肺炎の標本でII型肺胞上皮が目立つと教わりました。あれは修復の途中だったんですか。
ドクタードクター
いい観察だね。I型は分裂能に乏しいから、肺胞上皮が傷つくとII型が増殖してI型へ分化し、上皮を修復する。つまりII型はI型の前駆細胞でもあるんだ。では残りの組合せも確認しよう。杯細胞と粘液分泌はどうかな。
医学生医学生
気管支の上皮にあるワイングラス形の細胞で、粘液を出す、で正しいと思います。
ドクタードクター
正しい。杯細胞が出す粘液が粉じんや微生物を捕まえ、線毛細胞の線毛運動で咽頭側へ運ぶ。これを粘液線毛クリアランスという。喫煙や慢性気管支炎、喘息では杯細胞が増えて痰が多くなるんだ。
医学生医学生
線維芽細胞が膠原線維をつくるのも、組織学の基本どおりですよね。
ドクタードクター
そう。肺の間質にいて膠原線維や弾性線維を産生し、肺の構造を支えている。傷害時には筋線維芽細胞に分化して修復するけれど、これが過剰になると特発性肺線維症などの肺線維症につながる。
医学生医学生
神経内分泌細胞とセロトニンは少し自信がないです。消化管のカルチノイドのイメージが強くて。
ドクタードクター
肺にも神経内分泌細胞、いわゆるKulchitsky細胞が気道上皮の基底側にあって、セロトニンやガストリン放出ペプチドなどを分泌している。低酸素を感知する役割もあると考えられているよ。肺カルチノイドや小細胞肺癌はこの細胞に似た神経内分泌性の性格をもつ腫瘍なんだ。
医学生医学生
小細胞肺癌でProGRPが腫瘍マーカーになるのも、そこにつながるんですね。肺胞マクロファージの細菌貪食は正しいとして、ほかにも役割はありますか。
ドクタードクター
粉じんや細菌のほか、使い終わったサーファクタントの処理もしている。この処理にはGM-CSFが必要で、抗GM-CSF抗体ができると処理が滞り、肺胞腔にサーファクタント由来の物質がたまる自己免疫性肺胞蛋白症になるんだ。
医学生医学生
整理すると、粘液は杯細胞、膠原線維は線維芽細胞、セロトニンは神経内分泌細胞、貪食はマクロファージで、サーファクタントだけI型ではなくII型、ということですね。
ドクタードクター
その通り。最後にサーファクタントの臨床的な意味をまとめておこう。サーファクタントは肺胞内面の表面張力を下げ、Laplaceの法則で小さい肺胞ほどつぶれやすくなるのを防いで、呼気終末の肺胞虚脱を防いでいる。
医学生医学生
小児科の実習で、早産児の新生児呼吸窮迫症候群に人工サーファクタントを気管内投与するのを見ました。
ドクタードクター
まさにII型肺胞上皮細胞が未熟でサーファクタントが足りないために起こる病気だね。早産が予想されるときは母体に副腎皮質ステロイドを投与して胎児の肺成熟を促す。また、II型肺胞上皮細胞はKL-6やSP-A、SP-Dの産生源でもあり、これらは間質性肺炎の活動性の指標として使われる。細胞の役割を知っていると、検査値の意味も理解しやすくなるよ。

まとめ

肺の細胞は、気道の細胞(杯細胞・線毛細胞・神経内分泌細胞など)、肺胞の細胞(I型・II型肺胞上皮細胞)、間質・免疫の細胞(線維芽細胞・肺胞マクロファージ)に分けて整理すると理解しやすくなります。サーファクタントを分泌するのはII型肺胞上皮細胞で、I型は肺胞表面の大部分を覆う薄い細胞として血液空気関門をつくり、ガス交換を担います。杯細胞は粘液、線維芽細胞は膠原線維、神経内分泌細胞はセロトニンなど、肺胞マクロファージは細菌や不要なサーファクタントの貪食を担っています。サーファクタント不足は新生児呼吸窮迫症候群の原因となり、II型細胞由来のKL-6やSP-Dは間質性肺炎の評価に使われるなど、細胞レベルの知識は臨床と直結します。I型とII型の役割の取り違えは頻出のひっかけなので、確実に区別しておきましょう。

解答・解説

正解はdです

気道と肺胞を構成する細胞それぞれの役割を問う問題で、「誤っている組合せ」を選ぶ形式である。 肺の細胞は、大きく「気道(気管〜細気管支)の細胞」「肺胞の細胞」「間質・免疫の細胞」に分けて整理するとよい。 ・気道:多列線毛上皮からなり、線毛細胞・杯細胞・基底細胞・神経内分泌細胞などが並ぶ。細気管支ではクラブ細胞(旧称Clara細胞)が加わる。杯細胞が出す粘液で異物を捕らえ、線毛運動で口側へ送り出す仕組みを粘液線毛クリアランスという。 ・肺胞:扁平なI型肺胞上皮細胞と、立方状のII型肺胞上皮細胞からなる。I型はガス交換の場となる薄い壁をつくり、II型はサーファクタント(肺表面活性物質)を分泌するとともに、傷害時には増殖してI型へ分化し上皮を修復する。 ・間質・免疫:線維芽細胞が膠原線維などの細胞外基質を産生して肺胞壁を支え、肺胞マクロファージが肺胞腔内の異物や細菌を処理する。 本問で問われている「サーファクタント分泌」はII型肺胞上皮細胞の代表的な機能であり、I型に結び付けた組合せが誤りとなる。I型とII型の役割の取り違えは頻出のひっかけである。

選択肢考察

  1. ×a.  杯細胞 ―― 粘液分泌

    正しい組合せである。杯細胞は気管・気管支の上皮に散在する、ワイングラス(杯)のような形をした粘液分泌細胞で、細胞質に粘液顆粒(ムチン)をため込んでいる。分泌された粘液は吸入された粉じんや微生物を捕らえ、線毛細胞の線毛運動によって咽頭側へ運ばれる(粘液線毛クリアランス)。喫煙や慢性気管支炎、気管支喘息では杯細胞が増生(杯細胞化生)し、痰の増加の原因となる。

  2. ×b.  線維芽細胞 ―― 膠原線維産生

    正しい組合せである。線維芽細胞は肺の間質(肺胞壁や気管支・血管の周囲)に存在し、膠原線維(コラーゲン)や弾性線維、基質を産生して肺の構造を支持している。肺が傷害されると線維芽細胞が増殖し筋線維芽細胞へ分化して修復を行うが、これが過剰になると膠原線維が沈着し、特発性肺線維症などの肺線維症に至る。

  3. ×c.  神経内分泌細胞 ―― セロトニン分泌

    正しい組合せである。肺神経内分泌細胞(Kulchitsky細胞)は気道上皮の基底側に単独または小集団(神経上皮小体)で存在し、セロトニン、ガストリン放出ペプチド(ボンベシン)、カルシトニンなどを分泌する。低酸素を感知する働きがあると考えられている。肺カルチノイドや小細胞肺癌はこの細胞に類似した神経内分泌性の性格をもつ腫瘍であり、カルチノイド症候群(セロトニンによる紅潮・下痢など)やホルモン産生の背景となる。

  4. ○d.  Ⅰ型肺胞上皮細胞 ―― サーファクタント分泌

    誤った組合せであり、これが正解である。サーファクタントを分泌するのはII型肺胞上皮細胞で、細胞内の層板小体(lamellar body)に貯蔵したサーファクタントを肺胞腔へ放出する。I型肺胞上皮細胞は非常に薄く扁平な細胞で、数はII型より少ないものの肺胞表面の約90〜95%を覆い、毛細血管内皮・基底膜とともに血液空気関門を形成してガス交換を担う。I型は分裂能に乏しく、傷害されるとII型が増殖してI型へ分化し、上皮を再生する。

  5. ×e.  肺胞マクロファージ ―― 細菌貪食

    正しい組合せである。肺胞マクロファージは肺胞腔内に存在する食細胞で、吸入された粉じんや細菌、不要になったサーファクタントなどを貪食・消化する。自然免疫の初期防御を担うとともに、サイトカイン産生や抗原提示によって免疫応答を調節する。サーファクタントの処理にはGM-CSFが必要で、抗GM-CSF抗体によりこの機能が障害されると、自己免疫性肺胞蛋白症を生じる。

サーファクタントの働きと関連疾患

サーファクタントはリン脂質(主成分はジパルミトイルホスファチジルコリン、DPPC)と特異的蛋白質(SP-A、SP-B、SP-C、SP-D)からなる。肺胞内面の液層の表面張力を下げ、Laplaceの法則(肺胞内圧=2×表面張力/半径)に従って小さい肺胞ほどつぶれやすくなるのを防ぎ、呼気終末の肺胞虚脱を防止する。SP-A、SP-Dは病原体に結合して貪食を助ける自然免疫の役割ももつ。 ・新生児呼吸窮迫症候群(RDS):早産児ではII型肺胞上皮細胞が未熟でサーファクタントが不足し、肺胞が虚脱する。人工サーファクタントの気管内投与が有効で、母体への副腎皮質ステロイド投与は胎児の肺成熟を促す。在胎34週前後に産生が十分となる。 ・肺胞蛋白症:サーファクタントの処理障害により、肺胞腔内にサーファクタント由来の物質が貯留する。

気道・肺胞を構成するその他の細胞

・線毛細胞:線毛運動により粘液を口側へ輸送する。線毛の構造異常は原発性線毛機能不全症(Kartagener症候群など)の原因となる。 ・基底細胞:気道上皮の幹細胞として線毛細胞や杯細胞へ分化する。 ・クラブ細胞(旧称Clara細胞):細気管支に存在し、クラブ細胞分泌蛋白(CC16)などを分泌するほか、薬物・異物の代謝や細気管支上皮の再生に関わる。 ・II型肺胞上皮細胞:血清マーカーKL-6やSP-A、SP-Dの産生源であり、間質性肺炎の活動性評価に用いられる。

POINT

・サーファクタントを分泌するのはII型肺胞上皮細胞(層板小体) ・I型肺胞上皮細胞は肺胞表面の大部分を覆う扁平な細胞で、ガス交換(血液空気関門)を担う。 ・II型はI型の前駆細胞として肺胞上皮の修復も担う。 ・杯細胞=粘液、線維芽細胞=膠原線維、神経内分泌細胞=セロトニンなど、肺胞マクロファージ=貪食 ・サーファクタント不足は新生児呼吸窮迫症候群の原因となる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。