StudyMed医師国家試験

胸骨のすぐ裏にいるのは誰?―「ねじれた心臓」で読み解く心腔の立体配置

第102回医師国家試験 B問題 第38問

国試問題にチャレンジ

第102回 B問題 第38問

胸骨背面に最も近接するのはどれか。

  1. a.上・下大静脈
  2. b.右心房
  3. c.右心室
  4. d.左心房
  5. e.左心室

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、心臓の4つの部屋と大血管が胸の中でどの向きに並んでいるかを問う解剖の問題だ。ポイントは「心臓は胸の中でまっすぐ置かれていない」ということ。教科書の模式図のイメージのままだと間違えやすいよ。
医学生医学生
模式図だと右心系が右、左心系が左に並んでいるので、前後関係はあまり意識したことがありませんでした。
ドクタードクター
そうだよね。実際の心臓は、長軸が右後上方から左前下方、つまり右肩から左乳頭の方向へ斜めに走っている。さらに長軸のまわりで左へねじれるように回旋しているんだ。その結果、右の部屋が前へ、左の部屋が後ろへ回り込む。
医学生医学生
ということは、一番前に来るのは右心房か右心室のどちらかですね。右心房は右端にあるイメージなので…右心室でしょうか。
ドクタードクター
正解。胸部CTの横断像を思い浮かべるとわかりやすい。胸骨と肋軟骨のすぐ後ろにあるのが右心室、右側にあるのが右心房、左側から左下にかけて左心室、そして一番後ろ、脊柱や食道の側にあるのが左心房だ。心臓の前面、いわゆる胸肋面の大部分は右心室が占めているんだよ。
医学生医学生
放射線科の実習でCTを見たとき、胸骨の裏に三角形っぽい部屋があったのを思い出しました。あれが右心室だったんですね。
ドクタードクター
そうそう。では他の選択肢も確認しよう。上下大静脈はどうかな。
医学生医学生
右心房に流入する血管なので、右心房と同じく右側にありそうです。
ドクタードクター
その通り。上大静脈は右主気管支の前を下って右心房の上後部に、下大静脈は横隔膜を貫いて脊柱の右前方を上行し右心房の下後部に入る。どちらも心臓の右後方にあって、胸骨の直後ではない。右心房は心臓の右縁をつくり、右肺の縦隔面に接している。胸部X線正面像の右第2弓だね。
医学生医学生
左心室は心尖をつくるので、前胸壁に近い気もするんですが。
ドクタードクター
いい疑問だ。確かに心尖拍動は左第5肋間・鎖骨中線付近で触れるから、左心室の先端は前胸壁に当たる。でも左心室は右心室の左後方にあって、前面にはわずかに顔を出す程度。左縁と心尖、そして横隔膜に接する下面が主な担当なんだ。胸骨の真後ろは右心室が占めている。
医学生医学生
左心房は一番後ろ、食道に接しているから胸骨から一番遠いということですね。
ドクタードクター
その通り。左心房は心底、つまり心臓の後面の大部分を形成して、4本の肺静脈を受けている。後面が食道前壁に接しているから、経食道心エコーでは左心房や僧帽弁がとてもよく見えるんだ。
医学生医学生
循環器内科の実習で、心房細動の患者さんの左心耳血栓を経食道エコーで確認していました。食道から見る理由がやっとつながりました。
ドクタードクター
まさにその応用だね。この位置関係は画像診断でも役立つ。胸部X線の側面像では、心陰影の前縁で胸骨に接するのが右心室、後縁が左心房だ。胸骨後腔が狭くなっていれば右心室拡大、後縁が食道を後方に押していれば左心房拡大を疑う。僧帽弁狭窄症で左心房が大きくなると、食道が圧排されて嚥下障害をきたすこともある。
医学生医学生
正面像では右心室は辺縁をつくらないから、側面像が大事なんですね。
ドクタードクター
その通り。臨床での注意点も一つ。前胸部への鈍的外傷や胸骨付近の刺創では、最も前にある右心室が損傷を受けやすい。また剣状突起下から心嚢穿刺をするとき、針が最初に近づくのも右心室前壁だから、誤穿刺に注意が必要なんだ。
医学生医学生
救急で心タンポナーデの穿刺を見学したときに、先生がエコーで針先をすごく慎重に確認していた理由がわかりました。
ドクタードクター
解剖の知識はそのまま手技の安全につながる。「前は右心室、後ろは左心房」をCTやX線の像と結びつけて覚えておこう。

まとめ

心臓は長軸が右後上方から左前下方へ傾き、さらに左へ回旋しているため、4つの心腔は単純に左右には並ばず、最も前方(胸骨の直後)に右心室、最も後方(食道の前)に左心房が位置します。右心房は心臓の右縁と上下大静脈の流入部をつくり、左心室は左縁・心尖・横隔面を担います。この配置は、胸部X線側面像で胸骨後腔の狭小化を右心室拡大、食道の後方圧排を左心房拡大として読む根拠となり、経食道心エコーで左心房がよく見える理由でもあります。また前胸部外傷や剣状突起下からの心嚢穿刺では右心室が損傷・誤穿刺を受けやすい点も重要です。心腔の立体配置を画像と結びつけて理解することは、画像診断から手技の安全まで幅広い臨床場面の基礎になります。

解答・解説

正解はcです

心臓の各部屋が胸郭内でどの方向を向いているかを問う解剖学の問題である。 心臓は胸腔の中央、左右の肺に挟まれた縦隔(中縦隔)に位置する。心臓の長軸(心底から心尖へ向かう軸)は、右後上方から左前下方、すなわち右肩のあたりから左乳頭の方向へ斜めに走っている。さらに心臓は長軸のまわりに左へねじれるように回転しているため、4つの部屋は単純に「右が右、左が左」には並ばない。 胸部の水平断(CTの横断像をイメージするとよい)で整理すると、次のようになる。 ・最も前方(胸骨・肋軟骨の直後):右心室 ・右側:右心房(上下大静脈が流入する) ・左側から左下方:左心室(心尖を形成) ・最も後方(脊柱・食道側):左心房 したがって、胸骨の背面に最も近いのは右心室である。心臓の前面(胸肋面)の大部分は右心室が占めており、これは胸部X線の側面像で心陰影の前縁が胸骨に接する部分が右心室であることとも一致する。

選択肢考察

  1. ×a.  上・下大静脈

    上大静脈は右主気管支の前方を下降し、右心房の上後部に流入する。下大静脈は横隔膜を貫いて脊柱の右前方を上行し、右心房の下後部に流入する。いずれも右心房とともに心臓の右後方に位置しており、胸骨の直後にはない。

  2. ×b.  右心房

    右心房は右心室の右上後方に位置し、心臓の右縁を形成する。外側は右肺(主に中葉)の縦隔面に接している。胸部X線正面像で右第2弓を形成する構造であり、前面ではなく右側面を占める部屋である。

  3. ○c.  右心室

    心臓は長軸が右後上方から左前下方へ傾き、さらに左方へ回旋しているため、右心室が最も前方に回り込んでいる。心臓の前面(胸肋面)の大部分は右心室で構成され、胸骨および左の肋軟骨の直後に位置する。このため、前胸部からの鈍的外傷や胸骨正中からの穿刺・刺創では右心室が損傷を受けやすい。

  4. ×d.  左心房

    左心房は心臓の最も後方にあり、心底(心臓の後面)の大部分を形成する。後面は食道の前壁に接しているため、胸骨からは最も遠い部屋である。この位置関係から、経食道心エコーでは左心房や僧帽弁がよく観察でき、また左心房が拡大すると食道が後方へ圧排される。

  5. ×e.  左心室

    左心室は右心室の左後方に位置し、心臓の左縁と心尖を形成する。外側は左肺縦隔面の心圧痕に、下面は横隔膜に接する。前面にわずかに顔を出すものの、胸骨の直後を占めるのは右心室である。

心臓の面と構成する部屋

・前面(胸肋面):主に右心室。一部を右心房(右心耳)と左心室が構成する。 ・下面(横隔面):主に左心室と右心室の一部。横隔膜に接する。 ・後面(心底):主に左心房。4本の肺静脈が流入し、食道に接する。 ・右縁:右心房。 ・左縁(肺面):主に左心室。 ・心尖:左心室。左第5肋間・鎖骨中線付近に位置し、心尖拍動として触れる。

胸部X線正面像の心陰影

・右第1弓:上大静脈(上行大動脈) ・右第2弓:右心房 ・左第1弓:大動脈弓 ・左第2弓:肺動脈 ・左第3弓:左心耳(左心房) ・左第4弓:左心室 右心室は正面像では辺縁を作らず、側面像の前縁(胸骨後方)として現れる。側面像で胸骨後腔が狭くなっていれば右心室拡大を、後縁が食道を後方に押していれば左心房拡大を疑う。

臨床との関連

・左心房拡大(僧帽弁狭窄症など):食道造影で食道の圧排、嚥下障害をきたすことがある。 ・心嚢穿刺:剣状突起下からのアプローチでは、最初に当たるのは右心室前壁であり、誤穿刺に注意する。

POINT

・心臓の長軸は右後上方から左前下方へ走り、心臓は左へ回旋している。 ・最も前方(胸骨の直後)=右心室、最も後方(食道の前)=左心房。 ・右縁=右心房、左縁と心尖=左心室。 ・左心房拡大は食道を後方へ圧排する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。