心臓が自分に回す血液はたった5%―心拍出量の「配分表」を読み解く
第102回医師国家試験 B問題 第39問
国試問題にチャレンジ
安静時に心拍出量の約5%が灌流する臓器はどれか。
- a.脳
- b.心
- c.肺
- d.肝
- e.腎
対話形式の解説
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ドクターまとめ
安静時の心拍出量(約5 L/分)は、腹部内臓(門脈系+肝動脈)に約25〜30%、腎に約20%、骨格筋に約15〜20%、脳に約15%、皮膚に約5〜10%、そして心臓自身の冠循環に約5%が配分されます。冠血流は約250 mL/分と少なく見えますが、心筋は安静時から酸素摂取率が約70%と高く、需要増加には血流量の増加で応じるしかないため、冠動脈狭窄があると虚血に陥りやすくなります。肺は右心室の拍出量のほぼ全量が通る直列の回路であり、腎はろ過のために重量に比して多量の血流を受けるなど、臓器ごとに血流の意味が異なります。運動時には骨格筋への配分が大きく増え、腹部内臓や腎は絶対量も減少する一方、脳血流は自動調節でほぼ一定に保たれます。配分の数字をその理由とともに理解することは、虚血性心疾患やショック時の臓器障害を考える土台になります。
解答・解説
正解はbです
安静時の心拍出量(成人で約5 L/分)が、体循環(大循環)の各臓器へどの程度の割合で配分されるかを問う問題である。 安静時のおおよその配分は次のとおりである。 ・腹部内臓(消化管・脾・膵を経て門脈から肝へ、および肝動脈):約25〜30% ・腎:約20% ・骨格筋:約15〜20% ・脳:約15% ・皮膚:約5〜10%(体温調節によって大きく変動する) ・心(冠循環):約5% このうち約5%に相当するのは心臓自身を養う冠循環である。なお肺は体循環の一臓器ではなく、右心室から拍出された血液のほぼ全量が通過する「直列」の回路である点で、他の臓器とは性質が異なる。 数字を丸暗記するより、「重量あたりで見ると腎・心・脳は非常に血流が多い」「腎は重量が体重の0.5%程度なのに心拍出量の約20%を受ける」といった特徴とあわせて覚えると忘れにくい。
選択肢考察
- ×a. 脳
脳の血流量は約750 mL/分で、心拍出量の約15%に相当する。脳の重量は体重の約2%にすぎないが、ブドウ糖と酸素を大量に消費し、エネルギーの貯蔵がほとんどないため、多くの血流を必要とする。脳血流は自動調節能によって平均血圧がおよそ60〜150 mmHgの範囲では一定に保たれる。
- ○b. 心
心臓は全身へ血液を送り出すポンプであると同時に、冠動脈から血液の供給を受ける臓器でもある。安静時の冠血流量は約250 mL/分で、心拍出量の約5%にあたる。心筋は安静時でも冠血流中の酸素の約70%前後を取り込んでおり(酸素摂取率が高い)、需要が増えたときは酸素摂取率ではなく冠血流量そのものを増やして対応する。冠血流は主に拡張期に流れる点も特徴である。
- ×c. 肺
肺には右心室から拍出された血液のほぼ全量が肺動脈を通って流れるため、灌流量は心拍出量の約100%に相当する。厳密には、気管支静脈の一部や心最小静脈(テベシウス静脈)の血液が肺を経由せずに左心系へ戻る生理的シャントがあるため、肺循環の血流量は左心室の拍出量よりわずかに少ない。いずれにせよ5%ではない。
- ×d. 肝
肝臓は門脈と肝動脈の二重の血液供給を受け、合計で心拍出量の約25〜30%(約1.5 L/分)が流れ込む。そのうち約3/4が門脈から、約1/4が肝動脈からである。一方、酸素供給については肝動脈と門脈がほぼ半分ずつを担っている。
- ×e. 腎
腎血流量は左右合わせて約1.0〜1.2 L/分で、心拍出量の約20%にあたる。重量あたりの血流量は全身で最も多い部類に入る。これは腎が自らの酸素需要のためではなく、糸球体で血漿を大量にろ過(糸球体濾過量 約100〜120 mL/分)するために多量の血流を必要とするからである。
安静時の臓器別血流配分(成人、心拍出量 約5 L/分)
・腹部内臓(門脈系+肝動脈):約25〜30% ・腎:約20% ・骨格筋:約15〜20% ・脳:約15% ・皮膚:約5〜10% ・心(冠循環):約5% ・その他(骨など):残り
運動時の変化
激しい運動時には心拍出量は4〜5倍(20〜25 L/分)に増え、その大部分(80%以上)が骨格筋に配分される。冠血流量も絶対量として3〜4倍に増える。一方、腹部内臓や腎の血流は交感神経による血管収縮で絶対量としても減少する。脳血流は自動調節によって絶対量がほぼ一定に保たれるため、割合としては低下する。
酸素消費の視点
・心筋の酸素摂取率は安静時で約70%と高く、冠静脈洞血の酸素飽和度は低い。このため心筋の酸素需要の増加には冠血流量の増加で応じるしかなく、冠動脈狭窄があると虚血に陥りやすい。 ・腎は血流量に比べて酸素消費が少ないため、腎静脈血の酸素飽和度は高い。
POINT
・安静時の心拍出量の配分:肝・消化管 約25〜30%、腎 約20%、骨格筋 約15〜20%、脳 約15%、心 約5%。 ・肺は右心室の拍出量のほぼ全量(約100%)が流れる。 ・冠血流は主に拡張期に流れ、心筋の酸素摂取率は高いため、需要増加には血流量増加で対応する。
