StudyMed医師国家試験

「漿膜」があるかないか―体腔に面しているかで決まる消化管の最外層

第102回医師国家試験 B問題 第40問

国試問題にチャレンジ

第102回 B問題 第40問

漿膜がないのはどれか。

  1. a.食道
  2. b.胃
  3. c.十二指腸
  4. d.空腸
  5. e.横行結腸

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は消化管の壁構造、特に一番外側の層を問う解剖の問題だ。ポイントはただ一つ、「その臓器が体腔に面しているかどうか」。これが分かれば暗記に頼らず答えが出せるよ。まず、消化管の壁は内腔側からどんな層でできていたかな。
医学生医学生
粘膜、粘膜下層、固有筋層、そして一番外側が漿膜……だと組織学の講義で習いました。
ドクタードクター
基本はそれでいい。ただ、最外層は全部が漿膜というわけではないんだ。漿膜というのは、腹膜腔や胸膜腔といった体腔の内面と、そこに突き出た臓器の表面を覆う薄い膜で、表面が中皮という単層扁平上皮で覆われている。腹部ではいわゆる腹膜がこれにあたる。
医学生医学生
じゃあ、体腔に面していない臓器の最外層は何になるんですか。
ドクタードクター
外膜と呼ばれる疎性結合組織の層になる。中皮を持たず、臓器を周りの組織につなぎとめる役割をしている。つまり「漿膜か外膜か」は、臓器の置かれた場所で決まるわけだ。では、選択肢の中で体腔に面していないのはどれだろう。
医学生医学生
十二指腸は後腹膜臓器なので、漿膜がないのかなと思いました。
ドクタードクター
そこがよくある引っかけだね。十二指腸は球部を除いて後腹壁に固定された後腹膜臓器だけれど、腹膜腔に面している前面はちゃんと腹膜に覆われている。だから前面には漿膜がある。後腹膜臓器イコール漿膜なし、ではないんだ。
医学生医学生
なるほど、背中側が腹膜に覆われていないだけなんですね。そうなると、胸の中を通る食道でしょうか。
ドクタードクター
正解。食道は頸部から後縦隔を下って横隔膜の食道裂孔を抜け、胃につながる。その大部分は縦隔の結合組織の中に埋もれていて、胸膜腔の外にある。だから漿膜を持たず、最外層は外膜なんだ。横隔膜直下のごく短い腹部食道の前面だけは腹膜に覆われるけれど、一般には「食道に漿膜はない」と理解しておけばいい。
医学生医学生
胃や空腸、横行結腸は腹膜腔の中にある臓器なので、全部漿膜がありますね。
ドクタードクター
その通り。胃は前後両面が臓側腹膜に覆われ、小網や大網で周囲とつながっている。空腸は回腸とともに腸間膜で吊り下げられた腹膜内臓器で、全周に漿膜がある。横行結腸も横行結腸間膜をもつ腹膜内臓器だ。結腸のうち間膜があって動くのは横行結腸とS状結腸で、上行結腸と下行結腸は後腹膜に固定されている。
医学生医学生
解剖実習で、横行結腸とS状結腸はぶらぶら動かせたのに、上行結腸は後ろに貼り付いていたのを思い出しました。
ドクタードクター
実習の記憶は強いね。ちなみに食道以外にも漿膜を欠く部位がある。腹膜翻転部より下の下部直腸と肛門管、それから胆嚢の肝床部、つまり肝臓に接している面だ。これもセットで覚えておこう。
医学生医学生
漿膜がないことは、臨床的には何か意味があるんですか。
ドクタードクター
大いにある。漿膜はある種のバリアとして働くと考えられていて、それがない食道癌は気管や大動脈など周囲臓器へ直接浸潤しやすいとされる。リンパ管も豊富でリンパ行性にも広がりやすい。また、食道手術で縫合不全が起こりやすい一因にも挙げられているんだ。
医学生医学生
癌の深達度分類でも違いが出そうですね。胃癌では漿膜に露出しているかどうかが区分になっていたはずです。
ドクタードクター
よく気づいたね。胃癌や大腸癌では「漿膜下層まで」「漿膜表面に露出」で深達度を分けるけれど、食道癌や下部直腸癌では漿膜がないので「外膜まで」「周囲臓器へ浸潤」で評価する。解剖の知識が、そのまま病期分類や治療方針の理解につながっているわけだ。
医学生医学生
単なる暗記問題かと思っていましたが、外科や消化器内科の実習で見る話にもつながるんですね。
ドクタードクター
そう。「体腔に面していれば漿膜、面していなければ外膜」という原則を押さえれば、どの臓器でも自分で判断できる。CBTでも国試でも繰り返し問われる基本事項だから、臨床とのつながりと一緒に整理しておこう。

まとめ

消化管の壁は粘膜・粘膜下層・固有筋層と続き、最外層は臓器が体腔に面していれば中皮に覆われた漿膜、面していなければ疎性結合組織の外膜となります。後縦隔を通る食道は体腔に面していないため漿膜をもたず、ほかに下部直腸・肛門管や胆嚢の肝床部も漿膜を欠きます。胃・空腸・横行結腸は腹膜内臓器として全周に漿膜をもち、後腹膜臓器である十二指腸も腹膜腔に面した前面には漿膜がある点に注意が必要です。漿膜がないことは食道癌が周囲臓器へ直接浸潤しやすいことや、癌の深達度を「外膜」で評価することにも関わります。「体腔に面しているか」という原則で考える習慣は、解剖の理解を癌の病期分類や外科治療の理解へとつなげてくれます。

解答・解説

正解はaです

消化管の壁の最外層が漿膜か外膜かを問う問題である。 消化管の壁は、内腔側から粘膜・粘膜下層・固有筋層と続き、その外側に最外層がある。最外層は臓器が体腔(腹膜腔・胸膜腔)に面しているかどうかで二通りに分かれる。 ・漿膜:体腔の内面と、そこに突き出た臓器の表面を覆う薄い膜で、表面は単層扁平上皮(中皮)で覆われる。腹部では腹膜がこれにあたる。 ・外膜:体腔に面していない部分で、臓器を周囲組織につなぎとめる疎性結合組織の層。中皮を欠く。 消化管のうち、胸部の縦隔を通る食道は胸膜腔の外にあり、周囲の結合組織に埋もれているため漿膜をもたず、最外層は外膜である。また、腹膜翻転部より下の直腸(下部直腸)も腹膜腔の外にあるため漿膜を欠く。一方、胃・空腸・横行結腸は腹膜腔内にあって全周を腹膜に包まれ、十二指腸は後腹膜臓器ではあるが前面が腹膜に覆われている。 したがって、選択肢の中で漿膜がないのは食道である。

選択肢考察

  1. ○a.  食道

    食道は頸部から後縦隔を下行して横隔膜の食道裂孔を通り、胃に至る。その大部分は縦隔の結合組織の中にあり体腔に面していないため、最外層は漿膜ではなく疎性結合組織の外膜である(横隔膜直下の短い腹部食道の前面のみ腹膜に覆われる)。漿膜というバリアがないことは、食道癌が周囲の気管・大動脈などへ直接浸潤しやすく、リンパ行性にも広がりやすい理由の一つとされる。また、食道の外科手術で縫合不全が起こりやすい一因にも挙げられる。

  2. ×b.  胃

    胃は腹膜腔内にある腹膜内臓器で、前後両面が腹膜(臓側腹膜)で覆われており、最外層は漿膜である。胃の小彎側では小網(肝胃間膜)によって肝臓と、大彎側では大網・胃脾間膜によって横行結腸や脾臓と連結している。胃癌の深達度分類では、癌が漿膜表面に露出するか(T4a)が重要な区分となる。

  3. ×c.  十二指腸

    十二指腸は球部(上部の起始部)を除いて後腹壁に固定された後腹膜臓器(二次的腹膜後器官)であるが、腹膜腔に面した前面は腹膜に覆われており、漿膜をもつ。背側は腹膜に覆われず、後腹壁の結合組織に接している。後腹膜臓器であっても、腹膜腔に面している部分には漿膜がある点に注意する。

  4. ×d.  空腸

    空腸は回腸とともに腸間膜によって後腹壁から吊り下げられた腹膜内臓器であり、全周を腹膜に覆われ漿膜をもつ。腸間膜をもつことから、空腸と回腸をまとめて腸間膜小腸と呼ぶ。腸間膜の中を血管・リンパ管・神経が通る。

  5. ×e.  横行結腸

    横行結腸は横行結腸間膜をもつ腹膜内臓器で、全周が腹膜に覆われ漿膜をもつ。結腸のうち間膜をもち可動性があるのは横行結腸とS状結腸(盲腸も可動性がある)であり、上行結腸と下行結腸は後腹壁に固定された後腹膜臓器で、前面のみ腹膜に覆われる。

消化管壁の基本構造

内腔側から、粘膜(粘膜上皮・粘膜固有層・粘膜筋板)→粘膜下層→固有筋層(内輪走筋・外縦走筋)→漿膜下層→漿膜、の順に並ぶ。体腔に面していない部位では漿膜の代わりに外膜が最外層となる。

漿膜をもたない消化管・関連臓器

・口腔〜咽頭〜食道(腹部食道の前面を除く) ・直腸の腹膜翻転部より下(下部直腸)および肛門管 ・胆嚢の肝床部(肝臓と接する面)

腹膜と臓器の関係

・腹膜内臓器(全周が腹膜に覆われ、間膜をもつ):胃、十二指腸球部、空腸、回腸、虫垂、横行結腸、S状結腸、肝臓、脾臓など ・後腹膜臓器(前面のみ腹膜に覆われる、または腹膜に覆われない):十二指腸(球部以外)、膵臓、上行結腸、下行結腸、直腸(上部は前・側面のみ腹膜あり)、腎臓、副腎、尿管、腹部大動脈、下大静脈など

臨床とのつながり

・癌の壁深達度:胃癌や大腸癌では「漿膜下層まで」「漿膜表面に露出」という区分があるが、食道癌や下部直腸癌では漿膜がないため「外膜まで」「周囲臓器へ浸潤」で評価する。 ・漿膜がない部位の癌は周囲臓器へ直接浸潤しやすい。

POINT

・漿膜は体腔に面した臓器表面を覆う中皮の膜であり、体腔に面していない部分の最外層は外膜である。 ・消化管で漿膜をもたないのは食道と下部直腸(腹膜翻転部以下)。胆嚢の肝床部も漿膜がない。 ・十二指腸などの後腹膜臓器も、腹膜腔に面する前面には漿膜がある。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。