ICDの作り手はどこ?―国際機関の「担当分野」で解くWHOの役割
第102回医師国家試験 B問題 第2問
国試問題にチャレンジ
世界保健機関〈WHO〉について正しいのはどれか。
- a.二国間協力を基本としている。
- b.世界食糧援助計画を実施する。
- c.国際疾病分類〈ICD〉を作成する。
- d.労働者の健康保護について勧告を行う。
- e.2001年にポリオの世界根絶を達成した。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
WHOは1948年に設立された国連の専門機関で、多国間協力を基本とし、感染症対策や保健統計、国際疾病分類(ICD)などの国際分類の作成を担っています。ICDの最新版はICD-11(2019年採択、2022年発効)で、日本の死因統計などもICDに準拠しています。食糧援助はWFP、労働者保護の勧告はILO、二国間協力はODA・JICA、子どもの支援はUNICEFと、各機関の担当分野を対応づけて覚えることが鑑別の鍵です。世界根絶が達成された感染症は天然痘(1980年)のみで、ポリオは西太平洋地域で2000年に根絶が宣言されたものの、世界根絶には至っていません。国際機関の役割を理解することは、死亡診断書の記載が国際統計につながるなど、日常診療と国際保健の結びつきを知るうえでも重要です。
解答・解説
正解はcです
本問は、世界保健機関(WHO: World Health Organization)が担う役割を、他の国際機関の役割と区別できるかを問う問題である。 WHOは1948年に設立された国際連合(国連)の専門機関で、本部はスイスのジュネーブにある。加盟国が参加する多国間の枠組みで、「すべての人々が可能な最高水準の健康に到達すること」を目的としている。主な活動には、感染症対策、保健統計の収集と公表、国際的な基準・分類の作成(国際疾病分類など)、医薬品に関する国際基準の策定、加盟国への技術協力などがある。 国際保健分野の問題では、各機関の担当分野を対応づけて覚えておくことが解答の鍵になる。食糧援助は世界食糧計画(WFP)、労働者の保護は国際労働機関(ILO)、子どもの支援は国連児童基金(UNICEF)、二国間協力は政府開発援助(ODA)や国際協力機構(JICA)が担う。これらをWHOの業務と混同させる選択肢が典型である。また、根絶が達成された感染症は天然痘(1980年に根絶宣言)であり、ポリオは現在も根絶に向けた取り組みが続いている点も頻出である。
選択肢考察
- ×a. 二国間協力を基本としている。
WHOは多数の加盟国で構成される国連の専門機関であり、多国間協力を基本とする。二国間協力とは、援助する国と受ける国が直接協定を結んで行う協力で、日本では政府開発援助(ODA: Official Development Assistance)がその中心であり、国際協力機構(JICA: Japan International Cooperation Agency)が実施主体となっている。NGO(非政府組織)による協力もある。
- ×b. 世界食糧援助計画を実施する。
食糧援助を担うのは世界食糧計画(WFP: World Food Programme)であり、WHOの業務ではない。WFPは国連と国連食糧農業機関(FAO: Food and Agriculture Organization)によって設立された機関で、飢餓や災害時の緊急食糧支援などを行う。FAOは農業生産や食料安全保障に関する政策・技術支援を主に担っている。
- ○c. 国際疾病分類〈ICD〉を作成する。
国際疾病分類(ICD: International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)は、死因や疾病の統計を国際的に比較できるよう、WHOが作成・改訂している分類である。日本の人口動態統計(死因統計)や患者調査などもICDに準拠している。現在の最新版はICD-11で、2019年のWHO総会で採択され2022年1月に発効した。日本の公的統計では、ICD-10を基にした分類が現在も用いられており、ICD-11への移行が進められている。
- ×d. 労働者の健康保護について勧告を行う。
労働者の保護に関する条約や勧告を採択するのは国際労働機関(ILO: International Labour Organization)である。ILOは政府・使用者・労働者の三者で構成される国連の専門機関で、労働安全衛生に関する条約・勧告を定めている。WHOもILOと協力して労働衛生分野の活動を行うが、労働者保護の勧告を行う主体はILOである。
- ×e. 2001年にポリオの世界根絶を達成した。
ポリオ(急性灰白髄炎)の世界根絶はまだ達成されていない。WHOの地域単位では、日本を含む西太平洋地域が2000年に野生株ポリオの根絶を宣言している。野生株のうち2型は2015年、3型は2019年に根絶が宣言されたが、1型はパキスタンとアフガニスタンで流行が続いている。人類が世界根絶を達成した感染症は天然痘であり、1980年にWHOが根絶を宣言した。
WHOの概要
・設立:1948年4月7日(WHO憲章の発効日。世界保健デー) ・本部:スイス・ジュネーブ ・最高意思決定機関:世界保健総会(WHA: World Health Assembly)。毎年開催され、全加盟国が参加する。 ・6つの地域事務局を持つ。日本は西太平洋地域事務局(本部はフィリピン・マニラ)に属する。
WHOの主な活動
・感染症対策(情報の収集・提供、国際保健規則〈IHR〉の運用、予防接種の推進など) ・保健統計の収集・公表(世界保健統計など) ・国際疾病分類(ICD)、国際生活機能分類(ICF)などの国際分類の作成 ・医薬品に関する国際基準(国際薬局方、必須医薬品リストなど)の策定 ・たばこ規制枠組条約(FCTC)など、保健分野の国際的な枠組みづくり ・加盟国への技術協力(専門家派遣など)、プライマリヘルスケアの推進
国際機関と担当分野の対応
・WFP(世界食糧計画):食糧援助 ・FAO(国連食糧農業機関):農業・食料安全保障。WHOと合同でコーデックス委員会(食品の国際規格)を運営 ・ILO(国際労働機関):労働条件・労働者の保護 ・UNICEF(国連児童基金):子どもの健康・栄養・教育の支援 ・UNHCR(国連難民高等弁務官事務所):難民の保護 ・UNAIDS(国連合同エイズ計画):HIV/エイズ対策
根絶・排除に関する事項
・天然痘:1980年に世界根絶宣言 ・ポリオ:西太平洋地域では2000年に根絶宣言。世界根絶は未達成 ・日本の麻疹:2015年にWHO西太平洋地域事務局から排除状態にあると認定された
POINT
・ICD(国際疾病分類)はWHOが作成・改訂する。最新版はICD-11(2022年発効)。 ・WHOは多国間協力が基本。二国間協力はODA・JICA。 ・食糧援助はWFP、労働者保護の勧告はILO。 ・世界根絶が達成された感染症は天然痘のみ(1980年)。ポリオは未達成で、西太平洋地域での根絶宣言は2000年。
