石の正体は何か―日本人の尿路結石の主役はシュウ酸カルシウム
第101回医師国家試験 F問題 第47問
国試問題にチャレンジ
日本人の尿路結石で最も多いのはどれか。
- a.尿酸結石
- b.シスチン結石
- c.リン酸カルシウム結石
- d.シュウ酸カルシウム結石
- e.リン酸マグネシウムアンモニウム結石
対話形式の解説
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医学生
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ドクターまとめ
日本人の尿路結石はカルシウム含有結石が約8〜9割を占め、その中心はシュウ酸カルシウムであり、単独またはリン酸カルシウムとの混合結石の形をとることが多いです。頻度はおおむねカルシウム含有結石、尿酸結石、感染結石、シスチン結石の順で、尿酸結石はX線透過性で尿アルカリ化により溶解可能、感染結石はウレアーゼ産生菌によるアルカリ尿でサンゴ状結石を形成し、シスチン結石はシスチン尿症で六角形結晶を示します。リン酸カルシウムが主体の結石では原発性副甲状腺機能亢進症や遠位尿細管性アシドーシスを考えます。シュウ酸カルシウム結石の予防には十分な飲水と食事指導が重要で、カルシウムは腸管でシュウ酸と結合して吸収を抑えるため極端に制限しないのがポイントです。成分ごとの成因と特徴を押さえることは、再発の多い尿路結石の診療で個別の予防策を立てる基盤になります。
解答・解説
正解はdです
問われていること
日本人の尿路結石を成分別にみたとき、最も頻度の高いものを問う知識問題である。
考え方
尿路結石は成分により、①カルシウム(Ca)含有結石(シュウ酸Ca、リン酸Ca、およびその混合)、②尿酸結石、③感染結石(リン酸マグネシウムアンモニウム)、④シスチン結石、などに分けられる。日本の上部尿路結石ではCa含有結石が全体の約8〜9割を占め、圧倒的に多い。その中心はシュウ酸Caであり、純粋なシュウ酸Ca結石、またはシュウ酸Caとリン酸Caの混合結石の形をとることが多い。リン酸Caは単独の成分としては少なく、主にシュウ酸Caとの混合結石の構成成分として現れる。 頻度の順はおおむね「Ca含有結石(シュウ酸Caが主体)>尿酸結石>感染結石>シスチン結石」と覚えておくとよい。
選択肢考察
- ×a. 尿酸結石
尿酸結石はCa含有結石に次いで多いが、全体に占める割合は数%(10%未満)にとどまる。高尿酸尿(痛風、高プリン体食、腫瘍崩壊など)と酸性尿(尿pHがおおむね5.5未満)が主な危険因子であり、メタボリックシンドロームや糖尿病でも増える。X線透過性であるため単純X線(KUB)では写らないが、CTでは描出される。尿のアルカリ化(クエン酸製剤)による溶解療法が可能な点が特徴である。
- ×b. シスチン結石
シスチン結石は、常染色体劣性遺伝のシスチン尿症で生じる。近位尿細管と小腸で二塩基性アミノ酸(シスチン、オルニチン、リシン、アルギニン)の輸送が障害され、溶けにくいシスチンが尿中に大量に排泄されて結石をつくる。頻度は約1%と非常にまれである。若年から再発を繰り返しやすく、尿沈渣で六角形の結晶がみられることが診断の手がかりとなる。治療は大量飲水と尿アルカリ化、チオプロニンなどが用いられる。
- ×c. リン酸カルシウム結石
リン酸Caは結石の成分としてはしばしば検出されるが、多くはシュウ酸Caとの混合結石の一部としてであり、リン酸Ca単独の結石は数%程度と少ない。アルカリ尿で析出しやすく、原発性副甲状腺機能亢進症や遠位尿細管性アシドーシス(1型RTA)などで生じやすい。
- ○d. シュウ酸カルシウム結石
日本人の尿路結石で最も多い成分はシュウ酸Caであり、単独またはリン酸Caとの混合の形でCa含有結石の大部分を占める。成因としては、高Ca尿症(特発性のものが多い)、高シュウ酸尿症(ほうれん草・茶などシュウ酸の多い食品の摂取、脂肪の多い食事、腸管切除や炎症性腸疾患による腸管性高シュウ酸尿症)、低クエン酸尿症、飲水不足などがある。尿pHの影響を受けにくく、X線不透過性で単純X線でも描出される。予防には十分な飲水(1日尿量2,000 mL以上を目安)、動物性タンパク・塩分・シュウ酸の過剰摂取を避けることが勧められ、Caは極端に制限せず適量をとる(腸管内でシュウ酸と結合し吸収を抑えるため)。
- ×e. リン酸マグネシウムアンモニウム結石
リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP、ストルバイト)結石は感染結石と呼ばれ、単独成分としての頻度は数%程度である。プロテウス属などウレアーゼ産生菌が尿素を分解してアンモニアを生じ、尿が強いアルカリ性になることで形成される。腎盂腎杯を鋳型状に埋めるサンゴ状結石や膀胱結石の原因となりやすく、女性や尿路の通過障害・カテーテル留置例に多い。
尿路結石の成分別の特徴
・シュウ酸Ca結石:最多。X線不透過。尿pHの影響を受けにくい。 ・リン酸Ca結石:アルカリ尿で生じやすい。混合結石が多い。原発性副甲状腺機能亢進症、遠位型RTAに注意。 ・尿酸結石:酸性尿。X線透過性(CTでは描出)。尿アルカリ化で溶解可能。 ・MAP結石(感染結石):ウレアーゼ産生菌によるアルカリ尿。サンゴ状結石。 ・シスチン結石:シスチン尿症(常染色体劣性)。六角形結晶。X線ではやや淡く写る。
尿路結石の疫学
・上部尿路結石(腎・尿管)が大部分を占め、男性に多い(男女比はおよそ2〜3:1)。 ・生活習慣(高タンパク・高塩分・高脂肪食、飲水不足、肥満、メタボリックシンドローム)との関連が強く、近年は増加傾向にある。 ・再発率が高く、生活指導・再発予防が重要である。
症状と診断の要点
・尿管結石では、突然の側腹部〜背部の疝痛発作、肋骨脊柱角の叩打痛、血尿、悪心・嘔吐がみられる。 ・画像診断は単純CTが最も感度が高い。超音波検査では水腎症や結石の音響陰影を確認できる。
POINT
・日本人の尿路結石はCa含有結石が約8〜9割で、最も多い成分はシュウ酸Ca。 ・頻度の目安:Ca含有結石>尿酸結石>感染結石(MAP)>シスチン結石。 ・尿酸結石はX線透過性・酸性尿・尿アルカリ化で溶解。 ・MAP結石はウレアーゼ産生菌によるアルカリ尿でサンゴ状結石。 ・シスチン結石はシスチン尿症(常染色体劣性)で六角形結晶。
