「水を飲め」は最強の処方―尿路結石の再発を防ぐ食事と生活の原則
第119回医師国家試験 A問題 第8問
国試問題にチャレンジ
尿路結石症の予防で正しいのはどれか。
- a.低カルシウム食が推奨される。
- b.予防法は結石成分によらず同じである。
- c.野菜と果実の摂取量を制限することが推奨される。
- d.食事によるナトリウム摂取量を制限する必要はない。
- e.1日尿量が2,000mL以上となるように水分摂取が推奨される。
対話形式の解説
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ドクターまとめ
尿路結石症は再発しやすく、10年でおよそ半数が再発するため、発作後の再発予防が重要です。最も基本的で結石成分を問わず有効なのは飲水で、1日尿量2,000mL以上を目標にします。カルシウムは制限せず適量をとり(低カルシウム食は腸管からのシュウ酸吸収を増やし逆効果)、塩分・動物性たんぱく質は控え、野菜・果物はクエン酸やカリウムの供給源として十分にとります。さらに結石分析に基づき、尿酸・シスチン結石では尿アルカリ化、感染結石では感染制御と完全除去といった成分別の対策を加え、再発例や若年例では副甲状腺機能亢進症などの背景疾患を検索します。結石形成の原理から各予防策の理由を理解しておくことが、患者指導の説得力にもつながります。
解答・解説
正解はeです
上部尿路結石(腎結石・尿管結石)は再発しやすく、10年間でおよそ半数が再発するといわれる。そのため、初めての発作の治療が終わった後の再発予防がとても大切である。再発予防は次の2本立てで考える。 (1) 結石の種類にかかわらず、すべての患者に勧める一般的な対策 (2) 結石成分の分析と血液・尿の検査(代謝評価)の結果に応じて行う、成分別の対策 結石ができるのは、尿中で結石の材料(カルシウム、シュウ酸、尿酸、リン酸など)が濃くなりすぎ(過飽和)、結晶ができて大きくなるからである。予防の基本は、次の3つの方向で尿の状態を整えることである。 ・尿を薄める(尿量を増やす) ・結石の材料が尿に出る量を減らす ・結石ができるのを邪魔する物質(クエン酸、マグネシウムなど)が尿に出る量を増やす 日本の尿路結石症診療ガイドラインでは、一般的な対策として次のものが挙げられている。 ・飲水を勧めて、1日尿量を2,000mL以上に保つ ・カルシウムを適量とる(極端な制限はしない) ・塩分(ナトリウム)、動物性たんぱく質、シュウ酸、脂肪、糖分をとりすぎない ・野菜・果物を十分にとる ・夕食を遅い時間に食べない ・肥満やメタボリックシンドロームを改善する 各選択肢がこれらの原則に合っているかを確かめれば、正解を選べる。
選択肢考察
- ×a. 低カルシウム食が推奨される。
誤り。食事でとったカルシウムは、腸の中で食物のシュウ酸と結合し、吸収されないシュウ酸カルシウムになって便に出る。食事のカルシウムを減らすと、結合相手を失ったシュウ酸が腸から多く吸収され、尿中のシュウ酸が増える(高シュウ酸尿)。その結果、シュウ酸カルシウム結石はかえってできやすくなる。また、骨量の減少にもつながる。このため、カルシウムは極端に制限せず、1日600〜800mg程度の適量をとることが勧められる。
- ×b. 予防法は結石成分によらず同じである。
誤り。飲水や食事の改善など共通の対策に加えて、結石成分ごとに異なる対策が必要である。例を挙げる。 ・尿酸結石とシスチン結石: 尿が酸性だとできやすいため、クエン酸製剤で尿をアルカリ性にする(尿アルカリ化)。尿酸結石では尿酸生成抑制薬も使う。 ・感染結石(リン酸マグネシウムアンモニウム結石): ウレアーゼという酵素をつくる細菌(Proteus属など)の感染で尿がアルカリ性になってできる。そのため、感染の治療と結石の完全な除去が重要で、尿をアルカリ化すると逆効果になる。 ・カルシウム結石: クエン酸製剤や、尿中カルシウムが多い場合にはサイアザイド系利尿薬を使う。 このように、結石成分を分析することが予防法を選ぶ前提となる。
- ×c. 野菜と果実の摂取量を制限することが推奨される。
誤り。野菜や果物を十分とることが勧められる。野菜・果物にはカリウムやクエン酸が多く含まれる。これらは尿をアルカリ性に傾け、尿中のクエン酸を増やす。クエン酸は尿中でカルシウムと結合して結晶ができるのを抑えるため、結石予防に働く。さらに食物繊維も腸でのカルシウム吸収を抑える。ただし、ほうれん草などシュウ酸を多く含む食品はとりすぎないようにし、ゆでてシュウ酸を減らす、カルシウムを含む食品と一緒にとる、などの工夫をする。
- ×d. 食事によるナトリウム摂取量を制限する必要はない。
誤り。食塩をとりすぎると、腎臓の尿細管でナトリウムとカルシウムの再吸収がともに減る。その結果、尿中のカルシウム排泄が増え(高カルシウム尿)、カルシウム結石の危険因子となる。また、塩分のとりすぎは尿中クエン酸を減らすとも考えられている。したがって、適度な塩分制限が必要である。
- ○e. 1日尿量が2,000mL以上となるように水分摂取が推奨される。
正しい。尿量を増やして尿を薄めると、結石の材料の濃度が下がり(過飽和が解消され)、小さな結晶も早く外へ流し出される。これは結石の種類に関係なく効果がある、最も簡単で確実な再発予防法である。目安は、食事に含まれる水分とは別に1日2,000mL程度飲み、1日尿量を2,000mL以上に保つことである。甘い清涼飲料水やアルコールは結石のリスクを高めるため、水分補給には向かない。
尿路結石症の疫学
・上部尿路結石は壮年期の男性に多い。女性では閉経後に増える。 ・結石の成分は、シュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムを合わせたカルシウム結石が大部分(約8〜9割)を占める。ほかに尿酸結石、感染結石(リン酸マグネシウムアンモニウム)、シスチン結石がある。 ・尿酸結石とシスチン結石以外は、X線に写る(X線不透過)ことが多い。尿酸結石はX線に写らず、CTで見つかる。
成分別の主な予防策
・シュウ酸カルシウム結石: 飲水、カルシウムを適量とる、シュウ酸の多い食品をとりすぎない、クエン酸製剤を使う。高カルシウム尿がある場合はサイアザイド系利尿薬を使う。 ・尿酸結石: 飲水、プリン体と動物性たんぱく質を控える、尿アルカリ化(目標の尿pHは6.0〜7.0程度)、尿酸生成抑制薬(アロプリノール、フェブキソスタットなど)。 ・シスチン結石: 大量に飲水する、尿アルカリ化、チオプロニンを使う。 ・感染結石: 結石を完全に取り除く、尿路感染症を治療する、尿路の通過障害を改善する。
背景疾患の検索
再発を繰り返す場合や、若い人の結石、多発例では、背景にある病気を調べる。原発性副甲状腺機能亢進症(高カルシウム血症を伴う)、腎尿細管性アシドーシス、痛風・高尿酸血症、シスチン尿症、腸管切除後の腸管性高シュウ酸尿症などが原因となる。
POINT
・尿路結石は再発しやすく、10年でおよそ半数が再発する。 ・最も基本的な予防は飲水で、1日尿量を2,000mL以上に保つ。 ・カルシウムは制限せず適量とる。低カルシウム食は尿中シュウ酸を増やし、逆効果になる。 ・塩分と動物性たんぱく質はとりすぎない。野菜・果物は十分にとる(クエン酸・カリウムの補給になる)。 ・結石成分によって予防策は異なる。尿酸結石・シスチン結石は尿アルカリ化、感染結石は感染の制御と結石の完全な除去。
