カルテは病院の外にも置ける?―電子保存の3要件と外部保存のルール
第101回医師国家試験 C問題 第3問
国試問題にチャレンジ
診療録に関して誤っているのはどれか。
- a.電子媒体による保存が認められている。
- b.患者の請求があれば開示してよい。
- c.保存は医療機関内に限られる。
- d.見読性の確保が必要である。
- e.保存性の確保が必要である。
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
診療録は医師法第24条により、診療後遅滞なく記載し5年間保存することが義務づけられた公的記録です。電子媒体での保存は真正性・見読性・保存性の3要件を満たせば認められ、一定の条件のもとで医療機関の外部での保存も可能なため、「保存は医療機関内に限られる」は誤りです。患者から開示の求めがあれば原則として開示し、本人や第三者に重大な害が及ぶおそれがある場合などに限り例外的に不開示とできます。電子カルテの修正履歴やバックアップといった日常業務の仕組みが、これらの法的要件に支えられていると理解しておくと、診療記録を扱う医師としての責任を具体的にイメージできます。
解答・解説
正解はcです
診療録(カルテ)は、医師法第24条により、医師が診療をしたときに遅滞なく記載することが義務づけられた公的な記録である。記載すべき事項として、患者の住所・氏名・性別・年齢、病名と主要症状、治療方法(処方・処置)、診療の年月日が定められている。保存については、病院・診療所で行った診療の診療録はその管理者が、それ以外は医師本人が、5年間保存しなければならない。 本問は「誤っているもの」を選ぶ形式である。判断のための知識は次の3点に整理できる。 1) 保存の方法: 紙媒体に限らず、一定の要件を満たせば電子媒体での保存が認められている(電子カルテ)。 2) 電子保存の3要件: 真正性、見読性、保存性の確保が求められる。紙の診療録でも、判読できる記載と、紛失・劣化を防ぐ保管は当然の前提である。 3) 保存の場所と開示: 一定の条件を満たせば医療機関の外での保存も認められている。また患者本人の求めに応じて診療情報を開示することは、個人情報保護法や厚生労働省の指針のもとで行われている。 これらをふまえ、保存場所を医療機関内に限定する記述が事実と異なることを見抜けばよい。
選択肢考察
- ×a. 電子媒体による保存が認められている。
正しい記述である(本問は誤りを選ぶ問題なので、正解ではない)。1999年の厚生省(当時)の通知により、真正性・見読性・保存性の3つの基準を満たすことを条件に、診療録等を電子媒体で保存することが認められた。現在の電子カルテはこの枠組みに基づいて運用されており、具体的な技術的・運用的要件は厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に示されている。
- ×b. 患者の請求があれば開示してよい。
正しい記述である。診療録は患者本人の個人情報を含む記録であり、厚生労働省の「診療情報の提供等に関する指針」(2003年)は、患者等から求めがあった場合、医療機関は原則として診療記録を開示しなければならないとしている。個人情報保護法でも本人による保有個人データの開示請求が認められている。ただし、開示によって患者本人や第三者の生命・身体などに重大な害を及ぼすおそれがある場合などは、例外的に全部または一部を開示しないことができる。実際には、各医療機関が院内の手続きに沿って開示の可否を判断し、その経過を記録に残す。
- ○c. 保存は医療機関内に限られる。
誤った記述であり、これが正解である。2002年の厚生労働省通知により、診療録等を医療機関の外部で保存すること(外部保存)が認められた。紙の診療録であれば、紛失・破損や情報漏洩を防ぐ管理体制が整い、必要なときに速やかに取り出せるといった条件のもとで、外部の保管施設に預けることができる。電子媒体の場合も、安全管理の基準を満たせば、外部のデータセンターなどでの保存が可能である。したがって、保存場所が医療機関内に限られるわけではない。
- ×d. 見読性の確保が必要である。
正しい記述である。見読性とは、記録の内容を必要なときに、肉眼で読める形(画面表示や印刷)で速やかに確認できることをいう。電子保存の3要件の1つであり、データがあっても表示・出力できなければ診療にも開示にも使えない。紙の診療録においても、第三者が判読できる文字で記載することは基本的な義務といえる。
- ×e. 保存性の確保が必要である。
正しい記述である。保存性とは、法令で定められた保存期間(診療録は5年間)にわたり、記録が破損・劣化・消失することなく、読める状態で保たれることをいう。電子媒体では、媒体の劣化、ウイルスなどによるデータ破壊、システム更新に伴う読み出し不能などへの対策(バックアップ、データ移行など)が必要となる。紙媒体でも、火災・水害・紛失から守る保管が求められる。
電子保存の3要件
・真正性: 誰がいつ記載したのかが明確であり、故意または過失による虚偽入力・書き換え・消去が防止されていること。修正した場合は修正前の内容と修正者・日時が残る仕組みが必要である。 ・見読性: 必要なときに内容を読める状態で表示・印刷できること。 ・保存性: 法定の保存期間中、内容が失われず復元可能な状態で保存されること。
診療に関する記録の保存期間
・診療録: 5年間(医師法第24条) ・病院の診療に関する諸記録(処方せん、手術記録、検査所見記録、エックス線写真など): 2年間(医療法施行規則) ・保険診療に関する帳簿・書類(療養担当規則): 3年間(ただし患者の診療録は完結の日から5年間)
診療情報の開示
・診療情報の提供は、インフォームド・コンセントの前提となる患者の知る権利に基づく。 ・原則として本人に開示するが、本人・第三者の利益を害するおそれがある場合などは例外的に不開示とすることがある。 ・開示の求めを受けた際の手続き、費用、理由の説明などは、各医療機関があらかじめ定めて運用する。 ・患者には「知らされない権利」もあり、情報提供の際はその意思にも配慮する。
POINT
・診療録は医師法第24条により記載と5年間の保存が義務づけられている。 ・電子媒体での保存は、真正性・見読性・保存性の3要件を満たせば認められる。 ・一定の条件を満たせば、医療機関の外部での保存も認められている。 ・患者から開示の求めがあれば、原則として開示する。
