「今日はどうされましたか」―医療面接の最初のひと言に込められた意味
第101回医師国家試験 C問題 第10問
国試問題にチャレンジ
一般外来における初診患者に対し,本人の確認を行った後の医師の発言として適切なのはどれか。
- a.「これまでに大きな病気にかかったことがありますか」
- b.「家族に大きな病気にかかった方がおられますか」
- c.「今日はどんなことでおいでになりましたか」
- d.「現在の症状を手短に述べていただけますか」
- e.「どこか痛いところがありますか」
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
医療面接は、挨拶・本人確認のあと、主訴(受診理由)、現病歴、既往歴・家族歴・生活歴の順に進めるのが基本です。本人確認の直後は受診理由を尋ねる段階であり、「今日はどんなことでおいでになりましたか」のように答え方を限定しない開かれた質問で、患者に自由に語ってもらうのが適切です。「どこか痛いところがありますか」のような閉じた質問や「手短に」と長さを制限する言い方、既往歴・家族歴をいきなり尋ねることは、話題を狭めたり患者を戸惑わせたりして、主訴や受診の背景を聞き逃す原因になります。質問は開かれた質問から焦点を絞った質問、閉じた質問へと漏斗型に進めるのが原則で、この流れを身につけることは、OSCEだけでなく実際の外来で信頼関係を築き、正確な診断に近づくための土台となります。
解答・解説
正解はcです
医療面接(問診)の最初の段階で医師が何を尋ねるべきかを問う問題である。
医療面接の一般的な流れ
①挨拶・自己紹介と患者本人の確認(氏名・生年月日など) ②受診理由(主訴)の聴取 ③現病歴の聴取(いつから、どこが、どのように、経過、随伴症状など) ④既往歴・服薬歴・アレルギー歴・家族歴・生活歴・社会歴などの聴取 ⑤要約と確認、質問の有無の確認、次の診察・検査への説明 本人確認が終わった直後は②の段階にあたる。ここでは患者が困っていることを患者自身の言葉で自由に語ってもらうことが目的であり、「はい・いいえ」や一語では答えられない開かれた質問(open-ended question)で受診理由を尋ねるのが原則である。最初から医師側が話題を限定すると、患者が本当に伝えたいことや受診の背景(不安・期待)を聞き逃すおそれがある。 したがって、順序(何を最初に聞くか)と質問形式(開かれた質問か)の両面から判断すると、受診理由を自由に語ってもらう問いかけが最も適切となる。
選択肢考察
- ×a. 「これまでに大きな病気にかかったことがありますか」
既往歴を尋ねる質問である。既往歴は重要な情報だが、主訴と現病歴を聴いた後に確認する項目であり、本人確認の直後にいきなり尋ねるのは順序として不適切である。また「ありますか」という形は、はい・いいえで答えられる閉じた質問に近い。
- ×b. 「家族に大きな病気にかかった方がおられますか」
家族歴を尋ねる質問である。遺伝性疾患や生活習慣病のリスク評価に役立つが、受診理由や現病歴を把握した後に聴取する項目であり、面接の冒頭で尋ねるものではない。何のために来院したかを聞く前に家族の病気を尋ねると、患者は戸惑い、信頼関係の形成も妨げられる。
- ○c. 「今日はどんなことでおいでになりましたか」
受診理由(主訴)を尋ねる質問であり、本人確認直後に行うべき内容として順序が正しい。さらに、答え方を限定しない開かれた質問(open-ended question)であるため、患者は症状だけでなく、心配していることや受診のきっかけも自由に話すことができる。面接の導入として最も適切である。
- ×d. 「現在の症状を手短に述べていただけますか」
受診理由をまだ聞いていない段階で「症状」を前提にしており、健診結果の相談や書類作成など症状以外の理由で来院した患者には答えにくい。また「手短に」と話す長さを制限する言い方は、患者に急かされている印象を与え、自由な発言を妨げる。医療面接の冒頭では、患者の話をさえぎらずに傾聴する姿勢が求められるため不適切である。
- ×e. 「どこか痛いところがありますか」
受診理由が痛みであるとは限らないのに、医師側が話題を「痛み」に限定している。はい・いいえで答えられる閉じた質問(closed question)であり、面接の冒頭に用いると、発熱・咳・動悸・不安など痛み以外の主訴を聞き漏らすおそれがある。閉じた質問は、開かれた質問で全体像をつかんだ後、細部を確認する段階で用いる。
質問形式の種類
・開かれた質問(open-ended question):「どうされましたか」「その痛みについて詳しく教えてください」など、患者が自由に答えられる質問。情報量が多く、患者の考えや感情も引き出せる。面接の導入や現病歴の聴取の最初に用いる。 ・閉じた質問(closed question):「熱はありますか」「痛みは右側ですか」など、はい・いいえや一語で答える質問。特定の事実を効率よく確認できるが、多用すると医師主導になり情報が偏る。 ・焦点を絞った質問(focused question):「その痛みはどのような時に強くなりますか」など、テーマを限定しつつ自由に答えてもらう質問。開かれた質問と閉じた質問の中間にあたる。 ・多重質問(「熱や咳や痰はありますか」など複数を一度に聞く)や誘導的な質問(「痛みは食後に強くなるでしょう?」)は避ける。
面接の基本技法
・傾聴:うなずき・あいづち、視線を合わせる、話をさえぎらない。 ・促し・繰り返し・言い換え:患者の話を広げ、理解を確認する。 ・共感的態度:患者の感情を受け止める言葉をかける。 ・要約:聴き取った内容をまとめて患者に確認し、誤解を防ぐ。 ・解釈モデルの聴取:患者自身が病気をどう考え、何を心配し、何を期待しているかを尋ねる。 一般的には「開かれた質問 → 焦点を絞った質問 → 閉じた質問」と、広い質問から狭い質問へ進める(いわゆる漏斗型の聴き方)のが基本である。
POINT
・医療面接は、挨拶・本人確認 → 主訴(受診理由)→ 現病歴 → 既往歴・家族歴・生活歴などの順に進める。 ・受診理由は開かれた質問で尋ね、患者に自由に語ってもらう。 ・冒頭から閉じた質問や、内容・長さを限定する質問(「痛みはありますか」「手短に」)は避ける。 ・既往歴・家族歴は主訴と現病歴を把握した後に聴取する。
