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その検査は何を測っている?―BT-PABA試験が急性膵炎に使えない理由

第100回医師国家試験 G問題 第91問

国試問題にチャレンジ

第100回 G問題 第91問

検査と疾患の組合せで誤っているのはどれか。

  1. a.食道内圧検査 ―― 食道アカラシア
  2. b.胃液検査 ―― Zollinger-Ellison症候群
  3. c.ICG試験 ―― 肝硬変
  4. d.消化吸収試験 ―― 蛋白漏出性胃腸症
  5. e.BT-PABA試験 ―― 急性膵炎

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、消化器の機能検査と疾患の組合せから「誤っているもの」を選ぶ問題だ。丸暗記で挑むより、それぞれの検査が「どの臓器の、どんな働きを測っているのか」を考えると、自然に答えが見えてくる。一つずつ確認していこう。
医学生医学生
まず食道内圧検査と食道アカラシアは、教科書の定番の組合せなので正しいと思います。
ドクタードクター
そうだね。アカラシアは食道壁のAuerbach神経叢の神経細胞が減って、嚥下しても下部食道括約筋、つまりLESがゆるまず、食道体部の蠕動も消えてしまう運動障害だ。内圧検査では、嚥下に伴うLESの弛緩不全、LES静止圧の上昇、一次蠕動波の消失が見られ、確定診断に最も役立つ。
医学生医学生
消化器内科の実習で、食道造影の「鳥のくちばし状」の先細り像を見せてもらいました。あれは形を見る検査で、内圧検査は動きを見る検査ということですね。
ドクタードクター
いい整理だ。最近は多数のセンサーで圧を連続表示する高解像度内圧検査が普及して、病型分類にも使われている。内視鏡で癌を除外することも忘れずにね。次は胃液検査とZollinger-Ellison症候群だ。
医学生医学生
ガストリノーマで胃酸が大量に出る病気なので、胃酸の量を測る胃液検査は合っていますよね。
ドクタードクター
その通り。膵臓や十二指腸にできるガストリン産生腫瘍のせいで胃酸が過剰に出て、難治性・多発性の潰瘍や下痢を起こす。胃液検査では基礎酸分泌量が著明に増え、もともと最大近くまで刺激されているから、最大酸分泌量との比も高くなる。
医学生医学生
でも高ガストリン血症なら、血中ガストリンを測れば十分ではないんですか。
ドクタードクター
鋭い疑問だね。実は高ガストリン血症は萎縮性胃炎や酸分泌抑制薬の内服でも起こる。こちらは胃酸が少ないからガストリンが上がっている状態。だから胃液検査で「胃酸が本当に多い」と確かめることが鑑別に意味を持つんだ。セクレチン負荷でガストリンが逆説的に上がるのを確認するセクレチン試験も有名だよ。
医学生医学生
次のICG試験と肝硬変は、CBTの勉強でICG R15を覚えました。正常は10%以下でしたよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。ICGは静注すると肝細胞に取り込まれ、代謝されずに胆汁に出ていく色素で、その消え方の速さが肝血流と肝細胞の働きを反映する。肝硬変ではR15が上昇し、肝切除の前に切除範囲を決める際にも重要な肝予備能の指標になる。体質性ICG排泄異常症では肝機能が正常でも高値になる点は注意だ。
医学生医学生
消化吸収試験と蛋白漏出性胃腸症は少し迷いました。蛋白が漏れる病気なのに、吸収を見る検査でいいのかなと。
ドクタードクター
その迷いはもっともだ。蛋白漏出そのものの証明には、α1-アンチトリプシンの便中クリアランスや標識アルブミンのシンチグラフィを使う。ただ、腸リンパ管拡張症のように原因によっては脂肪などの吸収不良を伴うことがあり、便中脂肪やD-キシロース試験などで吸収障害を評価するのは病態把握に役立つ。だから明らかな誤りとまではいえない組合せなんだ。
医学生医学生
そうなると、残るBT-PABA試験と急性膵炎が怪しいですね。BT-PABAは膵臓の検査だった気がしますが、急性膵炎には使わないんですか。
ドクタードクター
そこが今回の答えだ。BT-PABA試験は、経口投与した薬が十二指腸で膵液中のキモトリプシンに分解され、生じたPABAが吸収されて尿に出る量を測る。つまり膵外分泌機能、膵臓がどれだけ消化酵素を出せるかを見る検査なんだ。
医学生医学生
膵臓の働きが落ちているかを見る検査なら、膵実質が長い時間をかけて壊れていく慢性膵炎向き、ということですね。
ドクタードクター
その通り。進行した慢性膵炎で膵実質が荒廃すると排泄率が下がる。一方、急性膵炎は膵酵素が膵臓の中で活性化して起こる急性の炎症で、診断は急性の上腹部痛と圧痛、血中・尿中のアミラーゼやリパーゼの上昇、超音波やCTの画像所見のうち2項目以上を満たし、他疾患を除外して行う。急性期に外分泌機能を測る意味はないから、この組合せが誤りなんだ。
医学生医学生
急性膵炎では「酵素が血中に漏れ出しているか」を見て、慢性膵炎では「酵素を出す力が残っているか」を見る、と考えると区別しやすいです。
ドクタードクター
見事なまとめだ。補足すると、BT-PABA試験は腎機能障害や小腸の吸収障害でも偽陽性になる。膵外分泌機能をより直接に見るのは、十二指腸に管を入れて膵液を採るセクレチン試験だ。なお、BT-PABA試験は検査薬の供給が終わっていて、今の日常診療ではほとんど行われていない。それでも「何を測る検査か」という考え方は、便中エラスターゼなど他の検査を理解するうえでも生きてくるよ。
医学生医学生
尿素呼気試験ならピロリ菌、24時間pHモニタリングなら逆流性食道炎というふうに、検査ごとに測っている対象をセットで覚えておきます。
ドクタードクター
それがいちばん応用の利く覚え方だ。検査名と疾患名を線で結ぶのではなく、間に「測っている機能」をはさむ。そうすれば初めて見る組合せでも判断できるようになる。

まとめ

消化器の機能検査は、それぞれが何の機能を測っているかを押さえると、対象疾患との組合せを正しく判断できます。食道内圧検査はLESの弛緩不全や蠕動消失を捉えて食道アカラシアの確定診断に、胃液検査は基礎酸分泌量の著増からZollinger-Ellison症候群の評価に、ICG試験はR15の上昇から肝硬変などの肝予備能評価に用いられます。BT-PABA試験はキモトリプシン活性を介して膵外分泌機能を測る検査で、膵実質が荒廃した慢性膵炎の評価に使うものであり、腹痛・血中尿中膵酵素の上昇・画像所見で診断する急性膵炎の検査ではありません。蛋白漏出性胃腸症では漏出の証明にα1-アンチトリプシン便中クリアランスを用い、吸収不良の合併評価に消化吸収試験が役立つこともあります。検査と疾患の間に「測定している機能」をはさんで理解することは、国試の組合せ問題だけでなく、臨床で適切な検査を選ぶ力にもつながります。

解答・解説

正解はeです

消化器疾患と、その診断・評価に用いる機能検査の組合せを問う問題である。「誤っているもの」を選ぶ形式であることに注意する。 各検査が「何の機能を測るのか」を押さえれば判断できる。 ・食道内圧検査: 食道の蠕動と下部食道括約筋(LES)の圧・弛緩を測る → 食道運動障害の診断 ・胃液検査: 胃酸の分泌量を測る → 胃酸分泌が異常に増える疾患の評価 ・ICG試験: 色素の肝臓からの排泄速度を測る → 肝予備能(肝臓に残っている働きの余力)の評価 ・消化吸収試験: 栄養素の消化・吸収の状態を調べる → 吸収不良をきたす腸疾患の評価 ・BT-PABA試験: 膵臓から分泌される消化酵素キモトリプシンの働きを測る → 膵外分泌機能の評価 BT-PABA試験は膵外分泌機能の低下を検出する検査であり、膵実質が長い時間をかけて荒廃する慢性膵炎(特に進行例)の診断・評価に用いる。急性膵炎は膵酵素が膵内で活性化されて起こる急性の炎症であり、その診断は臨床症状、血中・尿中膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ)の上昇、画像検査(CT、超音波)で行う。急性期に膵外分泌機能検査を行う意義はないため、BT-PABA試験と急性膵炎の組合せが誤りである。

選択肢考察

  1. ×a.  食道内圧検査 ―― 食道アカラシア

    組合せは正しい。食道アカラシアは、食道壁内のAuerbach神経叢(筋層間神経叢)の神経細胞が減少・消失し、嚥下時にLESが弛緩しなくなり、食道体部の蠕動も失われる食道運動障害である。食道内圧検査では、嚥下に伴うLESの弛緩不全(嚥下性弛緩の消失)、LES静止圧の上昇、食道体部の一次蠕動波の消失が認められ、確定診断に最も有用な検査である。現在は多数のセンサーで圧を連続的に表示する高解像度食道内圧検査(HRM)が普及しており、その結果によって病型分類も行われる。食道造影でのバリウムの停留や下部食道の平滑な先細り像(鳥のくちばし状)、内視鏡による悪性腫瘍の除外も併せて行う。

  2. ×b.  胃液検査 ―― Zollinger-Ellison症候群

    組合せは正しい。Zollinger-Ellison症候群は、ガストリンを産生する神経内分泌腫瘍(ガストリノーマ。膵臓や十二指腸に好発する)によって胃酸が過剰に分泌され、難治性・多発性の消化性潰瘍や下痢をきたす疾患である。胃液検査では基礎酸分泌量(BAO)が著明に増加し、すでに最大に近い刺激を受けているため、ガストリン刺激後の最大酸分泌量(MAO)との比(BAO/MAO)が高くなる。高ガストリン血症は萎縮性胃炎や酸分泌抑制薬の使用でも起こるため、胃液検査で胃酸が多いことを確認することは、両者を区別するうえで意味がある。ほかに空腹時血中ガストリン値の測定や、セクレチン負荷で血中ガストリンが逆説的に上昇することを確かめるセクレチン試験が行われる。

  3. ×c.  ICG試験 ―― 肝硬変

    組合せは正しい。ICG(インドシアニングリーン)は静注すると血中で蛋白と結合し、肝細胞に取り込まれて、代謝を受けずにそのまま胆汁中に排泄される色素である。その血中からの消失の速さは、肝血流量と肝細胞の取り込み・排泄能を反映するため、肝予備能の指標となる。一般に静注15分後の血中停滞率(ICG R15)で評価し、正常は10%以下である。肝硬変では肝細胞の減少や門脈血流の変化によりICG R15が上昇する。肝切除術の前に切除可能な範囲を決める際にも重要な検査である。なお、体質性ICG排泄異常症では肝機能が正常でも高値となる点に注意する。

  4. ×d.  消化吸収試験 ―― 蛋白漏出性胃腸症

    組合せは誤りとまではいえない。蛋白漏出性胃腸症は、血漿蛋白(主にアルブミン)が消化管の粘膜から管腔内へ異常に漏れ出し、低蛋白血症と浮腫をきたす症候群である。原因として腸リンパ管拡張症、Ménétrier病、炎症性腸疾患、膠原病などがある。漏出そのものの証明には、α1-アンチトリプシンの便中クリアランスや、99mTc標識ヒト血清アルブミンを用いたシンチグラフィが用いられる。一方、原因疾患によっては腸粘膜の障害やリンパ流のうっ滞のために脂肪などの吸収不良を伴うことがあり(特に腸リンパ管拡張症)、便中脂肪の測定やD-キシロース試験などの消化吸収試験で吸収障害の有無を評価することは、病態把握に役立つ。そのため、他の選択肢と比べて明らかに誤りとはいえない。

  5. ○e.  BT-PABA試験 ―― 急性膵炎

    誤った組合せであり、これが正解である。BT-PABA試験(PFD試験)は、BT-PABA(ベンゾイル-チロシル-パラアミノ安息香酸)を経口投与し、それが十二指腸で膵液中のキモトリプシンによって分解されて生じるPABA(パラアミノ安息香酸)が小腸から吸収され、尿中に排泄される量(6時間尿中排泄率)を測る検査である。排泄率が低ければ膵外分泌機能の低下を意味し、慢性膵炎(特に進行して膵実質が荒廃した例)の診断に用いられる。急性膵炎は急激な腹痛と血中・尿中膵酵素の上昇、CTなどの画像所見で診断する急性炎症性疾患であり、膵外分泌機能を測るBT-PABA試験の対象ではない。なお、BT-PABA試験は近年、検査薬の供給が終了しており、日常診療ではほとんど行われていない。

急性膵炎と慢性膵炎の診断の違い

・急性膵炎: 上腹部の急性腹痛と圧痛、血中または尿中の膵酵素(アミラーゼ、リパーゼなど)の上昇、超音波・CT・MRIでの膵の異常所見のうち2項目以上を満たし、他の疾患を除外して診断する(厚生労働省の急性膵炎診断基準)。重症度は予後因子と造影CT所見で判定する。原因はアルコールと胆石が多い。 ・慢性膵炎: 膵臓の線維化・石灰化が徐々に進み、腹痛や、進行すると膵外分泌機能不全(脂肪便・体重減少)や膵内分泌機能不全(糖尿病)を生じる。画像での膵石・膵管の不整な拡張などが診断の中心で、膵外分泌機能の低下も診断の補助となる。膵外分泌機能検査は慢性膵炎の評価に用いるものである。

膵外分泌機能検査

・BT-PABA試験(PFD試験): 経口で簡便に行えるが、腎機能障害や小腸での吸収障害があると偽陽性となる。 ・セクレチン試験: 十二指腸に管を入れ、セクレチン刺激後の膵液量・重炭酸濃度・酵素量を直接測る。最も直接的な方法である。 ・便中エラスターゼ測定、便中脂肪定量なども用いられる。

消化器の主な機能検査と対象疾患

・食道内圧検査: 食道アカラシア、びまん性食道痙攣などの食道運動障害 ・24時間食道pHモニタリング: 胃食道逆流症 ・胃液検査: Zollinger-Ellison症候群(酸分泌亢進)、萎縮性胃炎(酸分泌低下) ・ICG試験: 肝予備能(肝硬変、肝切除前評価) ・α1-アンチトリプシン便中クリアランス: 蛋白漏出性胃腸症 ・D-キシロース試験: 小腸の吸収能(小腸性か膵性かの吸収不良の鑑別) ・尿素呼気試験: Helicobacter pylori感染 ・BT-PABA試験: 膵外分泌機能(慢性膵炎)

POINT

・BT-PABA試験は膵外分泌機能検査 → 慢性膵炎の評価に用いる(急性膵炎の診断には用いない) ・急性膵炎の診断は、腹痛+血中・尿中膵酵素上昇+画像所見 ・食道アカラシアの確定診断は食道内圧検査(LESの弛緩不全、蠕動消失) ・Zollinger-Ellison症候群では胃液検査で基礎酸分泌量が著増する ・ICG R15(正常10%以下)は肝予備能の指標で、肝硬変で上昇する ・蛋白漏出性胃腸症の漏出証明はα1-アンチトリプシン便中クリアランス

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。