ネフロンの「量」と「質」―遠位尿細管が担うカリウム分泌の仕組み
第100回医師国家試験 G問題 第44問
国試問題にチャレンジ
遠位尿細管の機能はどれか。
- a.リン再吸収
- b.レニン分泌
- c.カリウム分泌
- d.アミノ酸再吸収
- e.ブドウ糖再吸収
対話形式の解説
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医学生まとめ
ネフロンでは、近位尿細管がNa+と水の約3分の2、ブドウ糖・アミノ酸のほぼ全量、リンや重炭酸の大部分を再吸収する「量」の調節を担い、遠位尿細管から集合管がホルモン依存的に「質」を微調整します。遠位側の主細胞ではアルドステロンの作用でENaCを介したNa+再吸収とK+分泌が行われ、尿中K+排泄量はこの分泌でほぼ決まるため、カリウム分泌が遠位尿細管の機能として正しいといえます。リン・アミノ酸・ブドウ糖の再吸収は近位尿細管の機能で、その障害がFanconi症候群です。レニンは輸入細動脈の傍糸球体細胞から分泌され、遠位尿細管の緻密斑はNaCl濃度を感知する役割にとどまります。部位ごとの輸送体と利尿薬・ホルモンの作用点を結びつけて理解することが、利尿薬による低K血症やアルドステロン作用低下による高K血症など、臨床の電解質異常を読み解く土台になります。
解答・解説
正解はcです
ネフロン(腎臓の機能単位)の部位ごとの役割分担を問う問題である。 糸球体で濾過された原尿は、近位尿細管 → ヘンレループ → 遠位尿細管 → 接合尿細管 → 集合管の順に流れ、各部位で再吸収・分泌を受けて尿になる。 ・近位尿細管: 「量」の再吸収を担う部位である。濾過されたNa+と水の約2/3、ブドウ糖とアミノ酸のほぼ全量、HCO3-の大部分、リンの大部分(約80%)を再吸収する。有機酸・薬物の分泌も行う。 ・ヘンレループ: 対向流系により髄質の浸透圧勾配をつくる。太い上行脚ではNa+-K+-2Cl-共輸送体(NKCC2、ループ利尿薬の標的)でNaClを再吸収する。 ・遠位尿細管〜集合管: 「質」の微調節を担う部位である。遠位曲尿細管ではNa+-Cl-共輸送体(NCC、サイアザイド系利尿薬の標的)によるNaCl再吸収と、PTH(副甲状腺ホルモン)依存性のCa2+再吸収が行われる。後半部(接合尿細管・皮質集合管)の主細胞では、アルドステロンの作用によりNa+再吸収(上皮型Naチャネル ENaC)とK+分泌(ROMKなどのKチャネル)が行われ、間在細胞がH+分泌を担う。 したがって、各選択肢を「近位尿細管の機能か」「遠位側の機能か」「尿細管以外の細胞の機能か」に振り分ければ、遠位尿細管の機能としてはカリウム分泌が選ばれる。
選択肢考察
- ×a. リン再吸収
誤り。濾過されたリンの大部分(約80%)は近位尿細管で、Na+依存性リン共輸送体(NaPi-IIa、IIc)を介して再吸収される。PTHはこの輸送体を減らしてリン再吸収を抑制し(リン利尿)、FGF23も同様に作用する。遠位側での再吸収はわずかであり、リン再吸収を遠位尿細管の代表的機能とはいえない。近位尿細管の障害(Fanconi症候群)で低リン血症を来すのはこのためである。
- ×b. レニン分泌
誤り。レニンは傍糸球体装置のうち、輸入細動脈壁にある傍糸球体細胞(JG細胞、顆粒細胞)から分泌される。JG細胞は平滑筋が変化した細胞であり、尿細管上皮ではない。遠位尿細管の一部である緻密斑(macula densa)はNaCl濃度を感知してレニン分泌を調節するが、分泌そのものを行うわけではない。
- ○c. カリウム分泌
正解。K+は近位尿細管やヘンレループでその大部分が再吸収され、尿中に排泄されるK+量は主に遠位側(遠位尿細管後半〜接合尿細管・皮質集合管)の分泌量で決まる。この部位の主細胞では、基底側膜のNa+-K+-ATPaseで細胞内に取り込んだK+を、管腔側膜のKチャネルから尿中へ分泌する。アルドステロンはENaCによるNa+再吸収を増やして管腔内を負電位にし、K+分泌を促進する。遠位への尿流量やNa+到達量の増加もK+分泌を増やすため、ループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬では低K血症が起こりやすい。
- ×d. アミノ酸再吸収
誤り。濾過されたアミノ酸はほぼすべて近位尿細管で、Na+との共輸送体などを介して再吸収される。近位尿細管の障害であるFanconi症候群では、アミノ酸尿、腎性糖尿、リン酸尿、重炭酸尿(近位尿細管性アシドーシス)が同時にみられる。
- ×e. ブドウ糖再吸収
誤り。ブドウ糖は近位尿細管で再吸収される。前半部(S1・S2分節)では大容量のNa+-グルコース共輸送体2(SGLT2)が約90%を、後半部(S3分節)では高親和性のSGLT1が残りを再吸収する。血糖値が再吸収能の閾値(おおよそ170〜180 mg/dL)を超えると尿糖が出る。SGLT2阻害薬はこの近位尿細管での再吸収を阻害して血糖を下げる。
ネフロンの部位と主な輸送体・作用する薬剤・ホルモン
・近位尿細管: Na+/H+交換輸送体(NHE3)、SGLT2/1、NaPi-II、炭酸脱水酵素(阻害薬アセタゾラミド)。PTHはリン再吸収を抑制し、ビタミンDの活性化(1α水酸化)もここで行われる。 ・ヘンレループ太い上行脚: NKCC2(ループ利尿薬フロセミドの標的)。Ca2+、Mg2+の傍細胞経路での再吸収も多い。 ・遠位曲尿細管: NCC(サイアザイド系利尿薬の標的)。PTHによるCa2+再吸収。 ・接合尿細管・集合管: 主細胞のENaC(アミロライドなどの標的)とKチャネル。アルドステロン(拮抗薬スピロノラクトン)が作用し、Na+再吸収とK+分泌を促進する。抗利尿ホルモン(ADH、バソプレシン)がアクアポリン2を介して水再吸収を増やす。間在細胞はH+分泌(A型)やHCO3-分泌(B型)を担う。
K+分泌を増やす因子
アルドステロン、高K血症、遠位尿細管への尿流量・Na+到達量の増加、アルカレミア。逆にアルドステロン作用が低下する病態(Addison病、スピロノラクトン投与など)では高K血症になりやすい。
傍糸球体装置
傍糸球体細胞(レニン分泌)、緻密斑(遠位尿細管のNaCl濃度感知)、糸球体外メサンギウム細胞から構成される。
POINT
・近位尿細管: ブドウ糖・アミノ酸はほぼ全量、Na+・水の約2/3、リン・HCO3-の大部分を再吸収 ・遠位尿細管〜集合管: アルドステロン依存性のNa+再吸収とK+分泌、H+分泌による微調節 ・レニンは輸入細動脈の傍糸球体細胞から分泌(尿細管ではない) ・Fanconi症候群=近位尿細管障害(糖尿・アミノ酸尿・リン酸尿・重炭酸尿)
