StudyMed医師国家試験

ネフロンの「量」と「質」―遠位尿細管が担うカリウム分泌の仕組み

第100回医師国家試験 G問題 第44問

国試問題にチャレンジ

第100回 G問題 第44問

遠位尿細管の機能はどれか。

  1. a.リン再吸収
  2. b.レニン分泌
  3. c.カリウム分泌
  4. d.アミノ酸再吸収
  5. e.ブドウ糖再吸収

対話形式の解説

ドクタードクター
今回はネフロンの部位ごとの役割分担を問う問題だ。選択肢を「近位尿細管の仕事か」「遠位側の仕事か」「そもそも尿細管の仕事か」に振り分けるのがコツになる。まず、糸球体で濾過された原尿がどんな順でネフロンを流れるか言えるかな。
医学生医学生
近位尿細管、ヘンレループ、遠位尿細管、集合管の順です。生理学の講義でネフロンの図を何度も描かされました。
ドクタードクター
そう。キーワードは、近位が「量」、遠位が「質」。近位尿細管はNa+と水の約3分の2、ブドウ糖とアミノ酸のほぼ全量、重炭酸やリンの大部分をまとめて取り戻す。遠位尿細管から集合管はホルモンの指令を受けて、最終的な尿の組成を微調整する場所なんだ。
医学生医学生
じゃあブドウ糖とアミノ酸の再吸収は近位尿細管ですね。SGLT2阻害薬が効く場所も近位だと薬理で習いました。
ドクタードクター
その通り。ブドウ糖は近位尿細管の前半でSGLT2が約90%、後半でSGLT1が残りを再吸収する。血糖がおおよそ170〜180 mg/dLを超えると再吸収が追いつかず、尿糖が出てくる。アミノ酸もNa+との共輸送で、ほぼすべて近位で回収されるよ。
医学生医学生
リン再吸収はどうでしょう。PTHでリンが尿に出ていくので、ホルモン調節を受ける遠位側かと思ったんですが。
ドクタードクター
よくある誤解だね。PTHがリン再吸収を抑えるのは近位尿細管なんだ。リンの約80%は近位尿細管のNa+依存性リン共輸送体で再吸収され、PTHやFGF23はこの輸送体を減らしてリン利尿を起こす。遠位尿細管でPTHが促進するのはカルシウム再吸収のほうだよ。
医学生医学生
PTHは近位でリンを捨てて、遠位でカルシウムを拾う。作用部位が違うとは意識していませんでした。
ドクタードクター
では、近位尿細管がまとめて障害されるとどうなるか知っているかな。
医学生医学生
Fanconi症候群です。糖尿、アミノ酸尿、リン酸尿、重炭酸尿が同時に出るんでしたよね。
ドクタードクター
完璧。今回の選択肢のうち3つがFanconi症候群で失われるものだと気づけば、近位の機能だとすぐに分かる。残るはレニン分泌とカリウム分泌だ。
医学生医学生
遠位尿細管には緻密斑があって、レニンに関係していたはずです。正直ここで迷いました。
ドクタードクター
迷いやすいポイントだね。傍糸球体装置は、輸入細動脈壁の傍糸球体細胞、遠位尿細管の一部である緻密斑、糸球体外メサンギウム細胞からなる。レニンを分泌するのは傍糸球体細胞で、これは平滑筋が変化した細胞であって尿細管上皮ではない。緻密斑は尿細管内のNaCl濃度を感知してレニン分泌を調節するセンサーで、分泌そのものはしないんだ。
医学生医学生
センサーと分泌する細胞は別、ということですね。そうなると正解はカリウム分泌です。
ドクタードクター
正解。K+は近位尿細管とヘンレループで大部分が再吸収されてしまうので、尿中に出るK+の量は遠位側での分泌でほぼ決まる。厳密な主座は遠位尿細管後半から接合尿細管・皮質集合管の主細胞で、基底側膜のNa+-K+-ATPaseで取り込んだK+を、管腔側のKチャネルから尿中へ出している。アルドステロンは上皮型Naチャネル(ENaC)によるNa+再吸収を増やして管腔内を負電位にし、K+分泌を後押しするんだ。
医学生医学生
だからアルドステロンが不足するAddison病では高K血症になるんですね。内分泌内科の実習で、低Na・高Kの患者さんを担当しました。
ドクタードクター
いい結びつけだね。スピロノラクトンなどのアルドステロン拮抗薬でも高K血症に注意が要る。逆に、遠位への尿流量やNa+の到達量が増えるとK+分泌も増えるから、ループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬では低K血症が起こりやすい。
医学生医学生
利尿薬は作用部位が違いましたよね。フロセミドはヘンレループ太い上行脚のNKCC2、サイアザイドは遠位曲尿細管のNCCでした。
ドクタードクター
その通り。臨床では、心不全でループ利尿薬を使っている患者さんのK値をこまめに確認し、必要に応じてK保持性の薬を組み合わせる。一方、腎機能が低下した人にACE阻害薬やアルドステロン拮抗薬を重ねると高K血症を起こしやすい。部位・輸送体・作用する薬やホルモンをセットで覚えると、電解質異常の理解がぐっと楽になるよ。
医学生医学生
部位ごとに輸送体と薬を並べた表を作り直して、CBTの復習ノートにまとめておきます。

まとめ

ネフロンでは、近位尿細管がNa+と水の約3分の2、ブドウ糖・アミノ酸のほぼ全量、リンや重炭酸の大部分を再吸収する「量」の調節を担い、遠位尿細管から集合管がホルモン依存的に「質」を微調整します。遠位側の主細胞ではアルドステロンの作用でENaCを介したNa+再吸収とK+分泌が行われ、尿中K+排泄量はこの分泌でほぼ決まるため、カリウム分泌が遠位尿細管の機能として正しいといえます。リン・アミノ酸・ブドウ糖の再吸収は近位尿細管の機能で、その障害がFanconi症候群です。レニンは輸入細動脈の傍糸球体細胞から分泌され、遠位尿細管の緻密斑はNaCl濃度を感知する役割にとどまります。部位ごとの輸送体と利尿薬・ホルモンの作用点を結びつけて理解することが、利尿薬による低K血症やアルドステロン作用低下による高K血症など、臨床の電解質異常を読み解く土台になります。

解答・解説

正解はcです

ネフロン(腎臓の機能単位)の部位ごとの役割分担を問う問題である。 糸球体で濾過された原尿は、近位尿細管 → ヘンレループ → 遠位尿細管 → 接合尿細管 → 集合管の順に流れ、各部位で再吸収・分泌を受けて尿になる。 ・近位尿細管: 「量」の再吸収を担う部位である。濾過されたNa+と水の約2/3、ブドウ糖とアミノ酸のほぼ全量、HCO3-の大部分、リンの大部分(約80%)を再吸収する。有機酸・薬物の分泌も行う。 ・ヘンレループ: 対向流系により髄質の浸透圧勾配をつくる。太い上行脚ではNa+-K+-2Cl-共輸送体(NKCC2、ループ利尿薬の標的)でNaClを再吸収する。 ・遠位尿細管〜集合管: 「質」の微調節を担う部位である。遠位曲尿細管ではNa+-Cl-共輸送体(NCC、サイアザイド系利尿薬の標的)によるNaCl再吸収と、PTH(副甲状腺ホルモン)依存性のCa2+再吸収が行われる。後半部(接合尿細管・皮質集合管)の主細胞では、アルドステロンの作用によりNa+再吸収(上皮型Naチャネル ENaC)とK+分泌(ROMKなどのKチャネル)が行われ、間在細胞がH+分泌を担う。 したがって、各選択肢を「近位尿細管の機能か」「遠位側の機能か」「尿細管以外の細胞の機能か」に振り分ければ、遠位尿細管の機能としてはカリウム分泌が選ばれる。

選択肢考察

  1. ×a.  リン再吸収

    誤り。濾過されたリンの大部分(約80%)は近位尿細管で、Na+依存性リン共輸送体(NaPi-IIa、IIc)を介して再吸収される。PTHはこの輸送体を減らしてリン再吸収を抑制し(リン利尿)、FGF23も同様に作用する。遠位側での再吸収はわずかであり、リン再吸収を遠位尿細管の代表的機能とはいえない。近位尿細管の障害(Fanconi症候群)で低リン血症を来すのはこのためである。

  2. ×b.  レニン分泌

    誤り。レニンは傍糸球体装置のうち、輸入細動脈壁にある傍糸球体細胞(JG細胞、顆粒細胞)から分泌される。JG細胞は平滑筋が変化した細胞であり、尿細管上皮ではない。遠位尿細管の一部である緻密斑(macula densa)はNaCl濃度を感知してレニン分泌を調節するが、分泌そのものを行うわけではない。

  3. ○c.  カリウム分泌

    正解。K+は近位尿細管やヘンレループでその大部分が再吸収され、尿中に排泄されるK+量は主に遠位側(遠位尿細管後半〜接合尿細管・皮質集合管)の分泌量で決まる。この部位の主細胞では、基底側膜のNa+-K+-ATPaseで細胞内に取り込んだK+を、管腔側膜のKチャネルから尿中へ分泌する。アルドステロンはENaCによるNa+再吸収を増やして管腔内を負電位にし、K+分泌を促進する。遠位への尿流量やNa+到達量の増加もK+分泌を増やすため、ループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬では低K血症が起こりやすい。

  4. ×d.  アミノ酸再吸収

    誤り。濾過されたアミノ酸はほぼすべて近位尿細管で、Na+との共輸送体などを介して再吸収される。近位尿細管の障害であるFanconi症候群では、アミノ酸尿、腎性糖尿、リン酸尿、重炭酸尿(近位尿細管性アシドーシス)が同時にみられる。

  5. ×e.  ブドウ糖再吸収

    誤り。ブドウ糖は近位尿細管で再吸収される。前半部(S1・S2分節)では大容量のNa+-グルコース共輸送体2(SGLT2)が約90%を、後半部(S3分節)では高親和性のSGLT1が残りを再吸収する。血糖値が再吸収能の閾値(おおよそ170〜180 mg/dL)を超えると尿糖が出る。SGLT2阻害薬はこの近位尿細管での再吸収を阻害して血糖を下げる。

ネフロンの部位と主な輸送体・作用する薬剤・ホルモン

・近位尿細管: Na+/H+交換輸送体(NHE3)、SGLT2/1、NaPi-II、炭酸脱水酵素(阻害薬アセタゾラミド)。PTHはリン再吸収を抑制し、ビタミンDの活性化(1α水酸化)もここで行われる。 ・ヘンレループ太い上行脚: NKCC2(ループ利尿薬フロセミドの標的)。Ca2+、Mg2+の傍細胞経路での再吸収も多い。 ・遠位曲尿細管: NCC(サイアザイド系利尿薬の標的)。PTHによるCa2+再吸収。 ・接合尿細管・集合管: 主細胞のENaC(アミロライドなどの標的)とKチャネル。アルドステロン(拮抗薬スピロノラクトン)が作用し、Na+再吸収とK+分泌を促進する。抗利尿ホルモン(ADH、バソプレシン)がアクアポリン2を介して水再吸収を増やす。間在細胞はH+分泌(A型)やHCO3-分泌(B型)を担う。

K+分泌を増やす因子

アルドステロン、高K血症、遠位尿細管への尿流量・Na+到達量の増加、アルカレミア。逆にアルドステロン作用が低下する病態(Addison病、スピロノラクトン投与など)では高K血症になりやすい。

傍糸球体装置

傍糸球体細胞(レニン分泌)、緻密斑(遠位尿細管のNaCl濃度感知)、糸球体外メサンギウム細胞から構成される。

POINT

・近位尿細管: ブドウ糖・アミノ酸はほぼ全量、Na+・水の約2/3、リン・HCO3-の大部分を再吸収 ・遠位尿細管〜集合管: アルドステロン依存性のNa+再吸収とK+分泌、H+分泌による微調節 ・レニンは輸入細動脈の傍糸球体細胞から分泌(尿細管ではない) ・Fanconi症候群=近位尿細管障害(糖尿・アミノ酸尿・リン酸尿・重炭酸尿)

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。