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週3回の透析が教える「溜めない」生活―透析間体重増加を抑える意味

第100回医師国家試験 G問題 第116問

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第100回 G問題 第116問

維持血液透析で正しいのはどれか。

  1. a.高蛋白食を指導する。
  2. b.水分摂取量は自由にする。
  3. c.透析間体重増加を少なくする。
  4. d.月1回5時間の透析を施行する。
  5. e.血液ヘモグロビン濃度を9g/dL以下に維持する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、維持血液透析を受けている患者さんの管理を問う問題だ。食事、体重、透析スケジュール、貧血と幅広く聞かれているけれど、根っこにある考え方は一つ。「24時間働く腎臓を、週に数回の透析で代わりに担っている」という仕組みを思い浮かべながら考えてみよう。
医学生医学生
腎臓は休まず働いているのに、透析は週3回・1回4時間くらいですよね。その間は何も処理されないということですか。
ドクタードクター
その通り。透析と透析の間には、水分、塩分、カリウム、リン、尿毒素が体の中にどんどん溜まっていく。それを次の透析でまとめて取り除くわけだ。だから患者さんの管理では、「透析の間に溜めすぎない」ことが大きなテーマになる。
医学生医学生
透析の患者さんはほとんど尿が出ないので、飲んだ水分はそのまま体重に出るんですね。
ドクタードクター
そう。透析間の体重増加は、ほぼそのまま溜まった水分量を表す。これを少なくすることが正解だ。増加量が多いと、限られた時間で大量に除水しなければならず、除水速度が速くなる。すると組織から血管内への水の戻り、つまりプラズマリフィリングが追いつかず、透析中の血圧低下、筋けいれん、嘔気が起きやすくなるんだ。
医学生医学生
腎臓内科の実習で、透析中に血圧が下がって除水を止めた場面を見ました。あれは体重増加が多かったからかもしれません。
ドクタードクター
十分ありうるね。逆に除水しきれなければ体液過剰が残って、高血圧、心不全、左室肥大の原因になる。目安は、透析間隔が中1日なら体重の3%以内、中2日なら5%以内。これを守ることは心血管系の負担を減らし、生命予後の改善にもつながるんだ。
医学生医学生
それなら、水分摂取を自由にするのは真逆ですね。
ドクタードクター
そうだね。水分を自由にすれば透析間の体重増加が大きくなり、浮腫や肺水腫を招く。ここで大事なのは、水分制限を守るカギが塩分制限だということ。口渇の最大の原因は塩分摂取だから、食塩を1日6g未満に抑えると、自然と飲水量も減らしやすくなる。
医学生医学生
蛋白質はどうでしょう。CKDの講義では、保存期は蛋白制限と習いましたが、透析が始まると逆に高蛋白にするのかと思っていました。
ドクタードクター
よくある誤解だね。透析導入後は、透析液中へアミノ酸が失われることや、低栄養が予後を悪くすることから、保存期ほど厳しい制限はしない。目安は標準体重あたり0.9〜1.2g/kg/日。ただ、蛋白質を多く摂るとリンやカリウム、尿毒素も増える。高リン血症は血管石灰化や二次性副甲状腺機能亢進症につながるから、「高蛋白食」を勧めることはない。適量の蛋白と十分なエネルギーを摂ってもらうのが基本だ。
医学生医学生
「緩めるけれど増やしはしない」ということですね。透析の回数が月1回というのは、さすがに少なすぎますよね。
ドクタードクター
月1回では、尿毒素も水分もカリウムもまったく処理が追いつかず、高カリウム血症による不整脈や肺水腫で命に関わる。標準は週3回、1回4時間以上だ。透析が十分かどうかは、尿素の除去をもとにしたKt/Vで評価し、1.2以上、目標は1.4程度を確保する。
医学生医学生
貧血については、腎臓でエリスロポエチンが作られなくなるので、腎性貧血になるんでしたよね。
ドクタードクター
その通り。透析患者ではほぼ必発だ。放置すると心拍出量が増えて左室肥大や心不全が進み、生活の質も落ちる。そこで赤血球造血刺激因子製剤や鉄剤で治療し、血液透析ではHb 10〜12g/dL程度を目標にする。9g/dL以下は治療すべき範囲であって、目標値ではないんだ。
医学生医学生
それなら、正常値まで上げたほうが良さそうに思えますが。
ドクタードクター
そこが落とし穴だね。Hb 13g/dL以上を目指して上げすぎると、脳卒中や血栓症、心血管イベントが増えることが示されている。だから「下げすぎず、上げすぎず」の範囲に保つ。最近は、低酸素誘導因子を安定化させて内因性のエリスロポエチンを増やす内服薬、HIF-PH阻害薬も使われているよ。
医学生医学生
体重管理の話に戻りますが、透析後の目標体重はどうやって決めるんですか。
ドクタードクター
ドライウエイトと呼ばれる、体液が過剰でも不足でもない透析終了時の体重だ。浮腫がないこと、血圧が適正なこと、胸部X線で心胸郭比がおおむね50%以下であること、透析中に血圧低下を起こさないことなどを指標に設定する。ほかにも、高リン血症や二次性副甲状腺機能亢進症などの骨ミネラル代謝異常、β2ミクログロブリンが沈着する透析アミロイドーシスによる手根管症候群など、長期透析ならではの合併症も覚えておきたい。
医学生医学生
透析は機械に任せる治療というより、患者さん自身の毎日の塩分と水分の管理が大事なんですね。
ドクタードクター
その通り。透析室では、体重の増え方を見ながら患者さんと一緒に食事や生活を振り返ることが、何よりの治療になるんだ。

まとめ

維持血液透析は、24時間働く腎臓の機能を週3回・1回4時間以上の透析で間欠的に代行する治療であり、透析の間には水分や塩分、カリウム、リンが蓄積します。そのため透析間体重増加を中1日で3%、中2日で5%以内に抑えることが重要で、増加が大きいと除水速度が速くなり、透析中の血圧低下や心不全の原因となります。水分制限を守るためには食塩6g/日未満の塩分制限がカギで、蛋白質は保存期より緩めた0.9〜1.2g/kg/日とし、高蛋白食は勧めません。腎性貧血はESAや鉄剤などで治療してHb 10〜12g/dLを目標とし、低すぎても高すぎても予後に悪影響があります。透析の仕組みから管理の原則を導く考え方は、ドライウエイトの設定や長期合併症の理解にもつながる重要な基盤です。

解答・解説

正解はcです

維持血液透析は、末期腎不全で失われた腎臓の働きのうち、尿毒素の除去、水分の除去(除水)、電解質・酸塩基平衡の是正を、体外循環によって間欠的に代行する治療である。腎臓は本来24時間休まず働いているが、標準的な血液透析は週3回・1回4時間程度しか行わない。そのため、透析と透析の間(透析間)には水分・塩分・カリウム・リンなどが体内に溜まっていき、それを次の透析でまとめて取り除くことになる。 この仕組みを踏まえると、透析患者の管理の要点は次のように整理できる。 ・透析間に溜まる水分(体重増加)をできるだけ少なくし、1回の透析で急激に除水しなくてすむようにする。そのために塩分と水分の摂取を制限する。 ・保存期(透析導入前)に比べて蛋白質の制限は緩めるが、摂りすぎはリンやカリウム、尿毒素の負荷を増やすので適量にとどめる。 ・腎臓で作られるエリスロポエチンが不足して生じる腎性貧血を、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)などで治療し、ヘモグロビン(Hb)を適切な範囲に保つ。 ・十分な透析量を確保するため、週3回・1回4時間以上を標準とする。 選択肢はそれぞれ、食事(蛋白・水分)、体重管理、透析スケジュール、貧血管理を問うており、上の原則に照らして判断すればよい。

選択肢考察

  1. ×a.  高蛋白食を指導する。

    透析導入後は、保存期のような厳しい蛋白制限(0.6〜0.8g/kg/日程度)は緩和され、標準体重あたり0.9〜1.2g/kg/日が目安となる。これは、透析液中へアミノ酸が失われることや、低栄養が透析患者の予後を悪くすることを考慮したものである。しかし蛋白質を多く摂るとリン(高リン血症は血管石灰化や二次性副甲状腺機能亢進症の原因)、カリウム、尿素などの尿毒素も増えるため、「高蛋白食」を勧めることはない。適量の蛋白と十分なエネルギー(30〜35kcal/kg/日)の摂取を指導する。

  2. ×b.  水分摂取量は自由にする。

    透析患者の多くは尿量が大きく減っているか無尿であり、摂った水分はほとんど体内に残る。水分を自由に摂らせると透析間の体重増加が大きくなり、高血圧、浮腫、肺水腫・心不全を引き起こす。したがって水分摂取は制限する。また、口渇の最大の原因は塩分の摂取であるため、食塩を1日6g未満に抑えることが水分制限を守るうえでも重要である。

  3. ○c.  透析間体重増加を少なくする。

    透析間の体重増加は、ほぼそのまま体内に溜まった水分の量を表す。増加量が大きいと、限られた透析時間内に多くの水を除かなければならず、単位時間あたりの除水速度が速くなる。血管内から急速に水が抜かれると、組織から血管内への水の戻り(プラズマリフィリング)が追いつかず、透析中の血圧低下、筋けいれん、嘔気などを起こしやすい。逆に除水しきれなければ体液過剰が続き、高血圧や心不全、左室肥大の原因となる。目安として、透析間隔が中1日なら体重の3%以内、中2日なら5%以内に体重増加を抑えるよう指導する。これは心血管系への負担を減らし、生命予後の改善にもつながる。

  4. ×d.  月1回5時間の透析を施行する。

    月1回では尿毒素、水分、カリウムの蓄積に全く対応できず、高カリウム血症による不整脈や肺水腫で生命に関わる。維持血液透析は週3回、1回4時間以上が標準である。十分な透析が行われているかどうかは、尿素の除去率をもとにした指標であるKt/V(標準化透析量)などで評価し、1.2以上(目標1.4程度)を確保する。

  5. ×e.  血液ヘモグロビン濃度を9g/dL以下に維持する。

    透析患者では腎性貧血(エリスロポエチン産生低下による貧血)がほぼ必発である。貧血を放置すると心拍出量の増加から左室肥大や心不全が進み、生活の質も低下する。そのためESA(エリスロポエチン製剤など)や鉄剤で治療し、血液透析患者ではHb 10〜12g/dL程度(おおむねHb 10g/dL未満で治療開始)を目標とする。9g/dL以下は貧血として治療すべき範囲である。一方、Hb 13g/dL以上を目指して過剰に上げると、脳卒中や血栓症、心血管イベントが増えることが示されており、上げすぎにも注意する。

維持血液透析患者の食事指導の目安(日本透析医学会の基準)

・エネルギー: 30〜35kcal/kg/日(標準体重あたり) ・蛋白質: 0.9〜1.2g/kg/日 ・食塩: 6g/日未満 ・水分: できるだけ少なく ・カリウム: 2,000mg/日以下 ・リン: 蛋白質(g)×15mg/日以下

透析間体重増加とドライウエイト

・ドライウエイト(DW)とは、体液が過剰でも不足でもない、透析終了時の目標体重である。浮腫がない、血圧が適正、胸部X線で心胸郭比がおおむね50%以下、透析中に血圧低下を起こさない、などを指標に設定する。 ・透析間体重増加は中1日で3%、中2日で5%以内が目安。除水速度が速すぎる(体重あたり1時間15mL程度を超える)と、透析中の血圧低下が増え、予後も悪化するとされる。

透析スケジュール

・標準: 週3回、1回4時間以上。 ・長時間透析や頻回透析(在宅血液透析など)は、より生理的で予後改善が期待される。

腎性貧血

・原因: エリスロポエチン産生低下が主で、鉄欠乏、赤血球寿命の短縮、透析回路での失血なども関与する。 ・治療: ESA(エポエチン、ダルベポエチン、エポエチンベータペゴル)、鉄剤、HIF-PH阻害薬(低酸素誘導因子を安定化させて内因性エリスロポエチンを増やす内服薬)。 ・目標: 血液透析ではHb 10〜12g/dL。

透析患者のその他の主な合併症

・慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD): 高リン血症、二次性副甲状腺機能亢進症、血管石灰化 ・透析アミロイドーシス(β2ミクログロブリンの沈着、手根管症候群など) ・心血管疾患(死亡原因として心不全が上位)、感染症

POINT

・透析間体重増加を少なくすると除水速度を抑えられ、透析中の血圧低下や心不全を防げる(中1日3%、中2日5%以内が目安)。 ・透析患者では塩分(6g/日未満)と水分を制限する。 ・蛋白質は保存期より緩め0.9〜1.2g/kg/日とするが、高蛋白食は勧めない。 ・標準的な血液透析は週3回、1回4時間以上。 ・腎性貧血はESAなどで治療し、血液透析ではHb 10〜12g/dLを目標とする。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。