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バルーン1本で開く弁―小児カテーテル治療の代表は肺動脈弁狭窄症

第100回医師国家試験 G問題 第118問

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第100回 G問題 第118問

小児の先天性心疾患でカテーテル治療が最もよく行われるのはどれか。

  1. a.大動脈縮窄症
  2. b.僧帽弁狭窄症
  3. c.大動脈弁狭窄症
  4. d.肺動脈弁狭窄症
  5. e.上大静脈狭窄症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、小児の先天性心疾患のうち、カテーテル治療が最もよく行われるものを選ぶ問題だ。選択肢はすべて「狭窄」なので、どれもバルーンで広げられそうに見える。着眼点は、広げたときに本当にうまく治るのか、そして広げた後に困ったことが起きにくいのか、という2点だよ。
医学生医学生
狭窄ならどれもバルーンで広げればいいように思ってしまいます。何が違うんでしょうか。
ドクタードクター
いい疑問だね。カテーテル治療が第一選択として定着するには、狭窄の形がバルーン拡張に向いていること、拡張後の逆流や再狭窄、血管損傷が少ないこと、そして手術と同等以上の成績が出ることが必要なんだ。開胸も人工心肺もいらない低侵襲な治療だけど、条件がそろう疾患は意外と限られる。
医学生医学生
小児科の講義で、心房中隔欠損を閉鎖栓でふさぐ治療を習いました。あれもカテーテル治療ですよね。
ドクタードクター
そう、閉鎖術も小児カテーテル治療の柱の一つだ。ほかにも動脈管開存のコイル閉鎖や、完全大血管転位症で心房間の血液の混合を増やすバルーン心房中隔裂開術、いわゆるRashkind法などがある。ただ今回は狭窄を広げる治療の比較だね。では正解から。答えは肺動脈弁狭窄症だ。
医学生医学生
肺動脈弁狭窄症はなぜバルーンと相性がいいんですか。
ドクタードクター
典型的な先天性肺動脈弁狭窄症は、弁尖の交連部が癒合してドーム状になった形をしている。バルーンで膨らませると、この癒合部がきれいに裂けて狭窄が解除され、圧較差が大きく改善するんだ。しかも静脈から右心系に入るので手技が比較的やさしい。
医学生医学生
でも、弁を裂くなら逆流が起きてしまいそうです。
ドクタードクター
鋭いね。実際に肺動脈弁逆流は起こりうる。ただ肺動脈側は低圧系で、右心室は軽い逆流にはよく耐えられるから、臨床的な問題になりにくい。そのため経皮的バルーン肺動脈弁形成術は1980年代以降、外科手術に代わる第一選択となり、新生児の重症例にも行われている。
医学生医学生
では大動脈弁狭窄症も同じように弁を広げればいいのでは、と思ったんですが。
ドクタードクター
そこが違いだ。先天性大動脈弁狭窄症にもバルーン形成術は行われるし、新生児の重症例では外科的交連切開と並ぶ選択肢になる。でも拡張で弁尖が裂けて大動脈弁逆流が起きると、高圧の左心室に容量負荷がかかる。だから控えめにしか広げられず、再狭窄も多く、結局手術が必要になることが多いんだ。
医学生医学生
右と左で、逆流への耐えやすさがまったく違うんですね。大動脈縮窄症はどうですか。
ドクタードクター
大動脈縮窄症、特に乳児期の初回治療は外科手術が原則だ。未治療の縮窄部をバルーンで広げると、再縮窄や大動脈瘤形成が起こりやすいからね。カテーテル治療が役立つのは主に術後の再縮窄で、体格の大きい年長児ではステント留置も選ばれるけれど、頻度としては肺動脈弁狭窄症に及ばない。
医学生医学生
僧帽弁狭窄症は、循環器内科の実習でPTMCを見学しました。あれは有名な治療ですよね。
ドクタードクター
PTMCは確立した治療だけど、対象は主に成人のリウマチ性僧帽弁狭窄症だ。交連部の癒合が主体だから裂けば広がる。一方、小児の先天性僧帽弁狭窄症はパラシュート僧帽弁のように弁下組織まで異常を伴う複雑な形が多く、バルーンの効果が乏しくて逆流も起こしやすい。小児で行われることはまれなんだ。
医学生医学生
上大静脈狭窄症は、先天性心疾患としてあまり聞いたことがありません。
ドクタードクター
その感覚は正しい。単独の先天性疾患として問題になることはまれで、多くはMustard手術やSenning手術、Glenn手術などの術後や、長期留置カテーテルに伴う狭窄だ。バルーン拡張やステント留置が行われることはあるけれど、症例自体が少ないから、最もよく行われる治療とはいえない。
医学生医学生
狭窄の形がバルーン向きで、広げた後の逆流にも耐えやすい、という条件がそろうのが肺動脈弁狭窄症なんですね。
ドクタードクター
その通り。発展知識も押さえておこう。肺動脈弁狭窄症は先天性心疾患の約5〜10%を占め、胸骨左縁第2肋間の駆出性収縮期雑音、呼気で強くなる駆出音、II音の幅広い分裂と肺動脈成分の減弱が手がかりになる。心エコーで右室と肺動脈の圧較差を評価して、中等度以上なら治療を検討するんだ。
医学生医学生
新生児の重症例ではチアノーゼが出ると聞きました。
ドクタードクター
そう、重症例では卵円孔を介した右左短絡でチアノーゼを呈し、動脈管依存性になることがある。その場合も早期のバルーン形成術が選択肢になる。それから、Noonan症候群に多い弁が厚く硬い異形成弁では、バルーンの効果が劣ることがある点も臨床では注意しておきたいね。

まとめ

小児の先天性心疾患で最もよく行われるカテーテル治療は、肺動脈弁狭窄症に対する経皮的バルーン肺動脈弁形成術で、本症の第一選択となっています。交連部が癒合したドーム型弁はバルーンで効果的に裂開でき、低圧系の右心系では拡張後の肺動脈弁逆流も問題になりにくいことがその理由です。大動脈弁狭窄症では逆流による左室容量負荷、大動脈縮窄症では再縮窄や大動脈瘤が問題となり、成人のリウマチ性僧帽弁狭窄症に行うPTMCとは異なり小児の先天性僧帽弁狭窄症はバルーンに不向きです。カテーテル治療の適否を、狭窄の形態と拡張後の合併症への耐性から考える視点は、閉鎖術やRashkind法を含む小児インターベンション全体を理解する土台になります。

解答・解説

正解はdです

問われていること

小児の先天性心疾患に対するカテーテル治療(インターベンション)のうち、最も一般的に行われ、標準治療として確立しているものを選ぶ問題である。

カテーテル治療の基本

小児のカテーテル治療には、狭窄した弁や血管をバルーンで押し広げる経皮的バルーン形成術(弁形成術・血管形成術)、ステント留置、心房中隔欠損や動脈管開存を閉鎖栓(デバイス)でふさぐ閉鎖術、心房中隔を裂いて血流を確保するバルーン心房中隔裂開術(BAS)などがある。開胸・人工心肺を必要としないため低侵襲で、入院期間も短い。

考え方

選択肢はいずれも「狭窄」であり、バルーンで広げる治療の適否を比べる問題である。治療が第一選択として定着するには、(1) 狭窄の形態がバルーン拡張に適していること、(2) 拡張後の合併症(逆流・再狭窄・血管損傷)が少ないこと、(3) 手術と同等以上の成績が得られること、が必要である。 先天性の肺動脈弁狭窄症は、弁尖が癒合してドーム状になった形態(典型的なドーム型弁)が多く、バルーンで癒合部を裂くと狭窄が効果的に解除される。右心系の低圧系で操作しやすく、拡張後に肺動脈弁逆流が生じても右心室は比較的よく耐えられるため、臨床的な問題になりにくい。このため経皮的バルーン肺動脈弁形成術(PTPV)は1980年代以降、外科手術に代わる第一選択となり、小児のカテーテル治療の代表となっている。一方、大動脈弁や大動脈縮窄では拡張後の逆流・再狭窄・動脈瘤形成などが問題となりやすく、適応が限られる。

選択肢考察

  1. ×a.  大動脈縮窄症

    大動脈縮窄症の初回治療は、特に乳児期では外科手術(縮窄部切除・端々吻合など)が原則である。乳児期の未治療例にバルーン拡張を行うと再縮窄や大動脈瘤形成の頻度が高いためである。カテーテル治療(バルーン血管形成術)が有用なのは主に術後の再縮窄であり、体格の大きい年長児・成人ではステント留置が選択されることもある。ただし肺動脈弁狭窄症ほど一般的には行われない。

  2. ×b.  僧帽弁狭窄症

    経皮的僧帽弁交連切開術(PTMC)は、主に成人のリウマチ性僧帽弁狭窄症(交連部の癒合が主体)に対して確立した治療である。小児の先天性僧帽弁狭窄症は、パラシュート僧帽弁(乳頭筋が1本で腱索が集中する形態)や弁上輪など弁下組織を含む複雑な形態をとることが多く、バルーン拡張の効果が乏しいうえ逆流を生じやすい。このため小児でカテーテル治療が行われることはまれで、頻度は低い。

  3. ×c.  大動脈弁狭窄症

    先天性大動脈弁狭窄症(二尖弁などが原因)に対して経皮的バルーン大動脈弁形成術(BAV)が行われることはあり、特に新生児の重症例では外科的交連切開術と並ぶ選択肢となる。しかし拡張により弁尖が裂けて大動脈弁逆流を生じる危険が高く、逆流は左心室の容量負荷となるため、拡張の程度を控えめにせざるを得ない。再狭窄も多く、後に外科手術を要することが多い。肺動脈弁狭窄症に比べ実施頻度は少ない。

  4. ○d.  肺動脈弁狭窄症

    典型的な先天性肺動脈弁狭窄症は弁尖の交連部が癒合したドーム型弁であり、経皮的バルーン肺動脈弁形成術(PTPV)で癒合部を裂開すると圧較差が大きく改善する。静脈側から到達でき手技が比較的容易であること、拡張後の肺動脈弁逆流は右心室が耐えやすく問題になりにくいこと、長期成績が外科手術と同等以上であることから、本症の第一選択の治療となっている。新生児の重症例(critical PS)にも行われ、小児のカテーテル治療の中で最も多く行われる代表的な手技である。なお、弁が厚く硬い異形成弁(Noonan症候群に多い)では効果が劣ることがある。

  5. ×e.  上大静脈狭窄症

    上大静脈狭窄が単独の先天性心疾患として問題になることはまれである。臨床的に問題となるのは、心房位血流転換術(Mustard手術・Senning手術)、Glenn手術、静脈洞型心房中隔欠損の修復術後などの手術後の狭窄や、長期留置カテーテルに伴う狭窄が多い。これらにはバルーン拡張やステント留置、あるいは外科的修復が行われるが、症例自体が少なく、小児のカテーテル治療として最もよく行われるものではない。

小児の主なカテーテル治療

・経皮的バルーン肺動脈弁形成術(PTPV): 肺動脈弁狭窄症の第一選択。 ・経皮的バルーン大動脈弁形成術(BAV): 先天性大動脈弁狭窄症。逆流の出現に注意。 ・バルーン血管形成術・ステント留置: 大動脈縮窄症の術後再縮窄、末梢性肺動脈狭窄など。 ・カテーテル閉鎖術: 二次孔型心房中隔欠損(閉鎖栓による閉鎖)、動脈管開存(コイルや閉鎖栓)、一部の筋性部心室中隔欠損。 ・バルーン心房中隔裂開術(BAS、Rashkind法): 完全大血管転位症などで心房間の血液の混合を増やすために行う緊急的処置。

肺動脈弁狭窄症の概要

先天性心疾患の約5~10%を占める。軽症では無症状で、胸骨左縁第2肋間の駆出性収縮期雑音や、呼気で強くなる収縮期駆出音(クリック)、II音の幅広い分裂とII音肺動脈成分の減弱が手がかりとなる。重症になると右心室肥大・右心不全を来し、新生児の重症例(critical PS)では卵円孔を介した右左短絡でチアノーゼを呈し、動脈管依存性となる。心エコーで右室-肺動脈間の圧較差を評価し、中等度以上(おおむね40~50 mmHg以上)の圧較差がある場合にPTPVが検討される。Noonan症候群では弁の異形成を伴いやすい。

POINT

・小児の先天性心疾患で最も多く行われるカテーテル治療は、肺動脈弁狭窄症に対するバルーン肺動脈弁形成術(PTPV)であり、第一選択である。 ・大動脈縮窄症は手術が原則で、カテーテル治療は主に術後の再縮窄が対象。 ・大動脈弁狭窄症へのバルーン形成は大動脈弁逆流の危険がある。 ・PTMCは成人のリウマチ性僧帽弁狭窄症が主な対象。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。