StudyMed医師国家試験

血液の流れが再発を決める―大腸癌はなぜ肝臓に戻ってくるのか

第100回医師国家試験 B問題 第33問

国試問題にチャレンジ

第100回 B問題 第33問

大腸癌治癒切除後の再発が最も多いのはどれか。

  1. a.脳
  2. b.肺
  3. c.肝
  4. d.骨
  5. e.リンパ節

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は大腸癌を根治的に切除した後、どこに再発しやすいかを問う問題だ。丸暗記でも解けるけれど、大腸からの血液とリンパがどこへ流れるかを思い浮かべると、理由ごと納得できるよ。
医学生医学生
癌は血液に乗って転移するので、大腸の静脈がどこに行くかがカギになりそうです。
ドクタードクター
いい着眼点だ。結腸と直腸上部の静脈血は、上・下腸間膜静脈を経て門脈に集まり、まず肝臓に流れ込む。血流に乗った癌細胞は、最初に出会う毛細血管網、つまり肝臓で捕らえられやすいんだ。
医学生医学生
解剖学の実習で、門脈が腸からの血液を集めて肝臓に入るところを確認しました。あの流れがそのまま転移の経路になるんですね。
ドクタードクター
その通り。治癒切除で見える癌をすべて取り切っても、手術の時点で画像に写らない微小な転移が肝臓に潜んでいることがある。それが術後に育って見つかるのが再発だ。だから大腸癌全体では肝再発が最も多い。
医学生医学生
では肺は2番目ということですか。消化器内科の実習で、肺転移の患者さんも担当しました。
ドクタードクター
そう、肺は肝臓に次いで多い。肝臓を通り抜けた癌細胞が次に引っかかるのが肺の毛細血管網だからね。ただし直腸癌では話が少し変わる。直腸の中・下部の静脈血は中・下直腸静脈から内腸骨静脈、下大静脈へと入り、門脈を通らずに直接肺へ向かう経路があるんだ。
医学生医学生
だから直腸癌では肺転移が多めになるんですね。でも、それなら直腸癌では肺が最多になることもあるんですか。
ドクタードクター
データによって順位は変わるので断定は避けたいけれど、直腸癌では肺再発の割合が結腸癌より高い、と押さえておけば十分だ。加えて、骨盤という狭い空間での手術になるため、切除部位の周りに再び癌が出てくる局所再発も結腸癌より多い。それでも大腸癌全体で見れば、最も多いのは肝臓だよ。
医学生医学生
リンパ節はどうでしょう。癌といえばリンパ節転移が真っ先に浮かびます。
ドクタードクター
自然な発想だね。でも大腸癌の手術では、腫瘍と一緒に所属リンパ節を系統的に郭清する。だから治癒切除後に、リンパ節が単独の再発部位として最多になることはない。大動脈周囲リンパ節や、直腸癌での側方リンパ節の再発はあるけれど、頻度は肝や肺に及ばないんだ。
医学生医学生
脳や骨はかなり少ない印象です。脳転移なら肺癌や乳癌、骨転移なら前立腺癌や乳癌を連想します。
ドクタードクター
よく整理できているね。大腸癌の脳転移はまれで、ほかの臓器への転移が先行した進行例でみられることが多い。骨転移も比較的少ない。骨転移しやすい癌としては、前立腺癌、乳癌、肺癌、腎癌、甲状腺癌を代表として覚えておこう。
医学生医学生
静脈還流をたどれば、肝が最多で次に肺、という順番が自然に出てくるわけですね。
ドクタードクター
その通り。ここからは臨床での話だ。大腸癌の再発の大部分は術後3年以内、ほぼすべてが5年以内に見つかる。だから術後5年間を目安に、CEAやCA19-9といった腫瘍マーカー、胸腹部CT、大腸内視鏡で定期的にフォローするんだ。
医学生医学生
再発を早く見つけても、遠隔転移なら治療は限られるのではないですか。
ドクタードクター
そこが大腸癌の大きな特徴なんだ。大腸癌の肝転移や肺転移は、個数や大きさなどの条件がそろえば切除が第一選択になり、長期生存や治癒も期待できる。他の多くの消化器癌とは違うところだね。切除が難しい場合は、抗EGFR抗体や抗VEGF抗体などの分子標的薬を含む薬物療法を行い、縮小して切除可能になればconversion surgeryを検討することもある。
医学生医学生
だからこそ定期的なCTで早く見つける意味があるんですね。外科の実習で肝切除を見学したとき、大腸癌の肝転移の症例だったのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにその実例だね。再発部位を知ることは、どこを重点的にフォローし、見つけたらどう治療につなげるかを考えるための土台になるんだ。

まとめ

大腸(結腸と直腸上部)の静脈血は上・下腸間膜静脈から門脈を経て最初に肝臓へ流入するため、大腸癌の治癒切除後の再発部位は肝臓が最も多く、肝臓を通過した癌細胞が捕らえられる肺がこれに次ぎます。直腸中下部は門脈を経由せず下大静脈へ還流する経路があり、骨盤内手術の難しさもあって、直腸癌では肺再発や局所再発の割合が結腸癌より高くなります。所属リンパ節は手術で郭清されるため最多の再発部位にはならず、脳や骨への転移は比較的まれです。再発の大部分は術後3年以内に生じるため5年間を目安に腫瘍マーカーやCTで経過観察を行い、肝・肺転移は切除可能なら切除が第一選択となる点が大腸癌の特徴であり、静脈還流と再発部位を結びつけて理解することがフォローアップと治療戦略の理解につながります。

解答・解説

正解はcです

大腸癌の再発部位を考えるには、大腸からの血液とリンパの流れを思い浮かべるとよい。 大腸(結腸と直腸の上部)の静脈血は、上・下腸間膜静脈を経て門脈に集まり、まず肝臓に流れ込む。血液に乗って運ばれた癌細胞は、最初の毛細血管網である肝臓で捕らえられやすい。そのため、根治的な切除(治癒切除)を行った後に、手術時には見えなかった微小な転移が育って現れる再発(遠隔再発)は、肝臓が最も多い。肝臓を通り抜けた癌細胞は次に肺の毛細血管網に達するため、肺が肝に次いで多い。 ただし直腸癌では事情が少し異なる。直腸下部の静脈血は中・下直腸静脈から内腸骨静脈を経て下大静脈に入り、門脈を経由せずに直接肺へ向かう経路がある。また、骨盤という狭い空間での手術のため、切除した部位の周囲に癌が再び現れる局所再発が結腸癌より多い。直腸癌では局所再発や肺再発の割合が結腸癌より高いことを押さえておく。 それでも大腸癌全体として治癒切除後の再発部位で最も多いのは肝臓である。

選択肢考察

  1. ×a.  脳

    大腸癌の脳転移はまれである。多くは肺転移など他臓器の転移が先行した進行例で、血流に乗って全身に広がった段階でみられる。治癒切除後の初回再発部位として脳が多いことはない。脳転移の原発巣として多いのは肺癌、乳癌である。

  2. ×b.  肺

    肺は、肝臓を通過した癌細胞や、直腸下部から門脈を経由せずに体循環に入った癌細胞が捕らえられる臓器であり、大腸癌の再発部位として肝臓に次いで多い。特に直腸癌では肺再発の割合が結腸癌より高い。しかし大腸癌全体では肝再発が最も多いため、本問の正解ではない。

  3. ○c.  肝

    結腸と直腸上部の静脈血は門脈を通ってまず肝臓に流入するため、血行性に広がった癌細胞は肝臓に最も定着しやすい。このため大腸癌の治癒切除後の再発部位としては肝臓が最も多い。大腸癌の肝転移は、個数や大きさの条件がそろえば肝切除によって長期生存や治癒が期待できる点が他の多くの癌と異なり、術後の定期的な画像検査(CTなど)で早期に見つけることに意味がある。

  4. ×d.  骨

    大腸癌の骨転移は比較的少なく、治癒切除後の再発部位として多くはない。骨転移しやすい癌としては、前立腺癌、乳癌、肺癌、腎癌、甲状腺癌が代表的である。

  5. ×e.  リンパ節

    大腸癌の手術では、腫瘍とともに所属リンパ節(腸管傍リンパ節、中間リンパ節、主リンパ節)を系統的に郭清する。このため治癒切除後にリンパ節が単独の再発部位として最も多くなることはなく、肝再発より少ない。大動脈周囲リンパ節や側方リンパ節(直腸癌で問題となる骨盤壁に沿ったリンパ節)の再発はみられるが、頻度としては肝・肺に及ばない。

大腸癌治癒切除後の再発の特徴

・再発部位: 大腸癌全体では肝が最多で、肺がこれに次ぐ。直腸癌では局所再発(骨盤内での再発)と肺再発の割合が結腸癌より高い。 ・再発率は病期が進むほど高く、ステージIではまれだが、ステージIIIでは明らかに高くなる。 ・再発時期: 再発の大部分は術後3年以内に、ほぼすべてが5年以内に見つかる。このため術後5年間を目安に、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)、胸腹部CT、大腸内視鏡などによる定期的なフォローアップ(サーベイランス)が行われる。

再発・転移巣の治療

大腸癌の肝転移・肺転移は、切除可能であれば切除が第一選択とされ、他の消化器癌に比べて切除による予後改善が期待できる。切除が難しい場合は、分子標的薬(抗EGFR抗体、抗VEGF抗体など)を含む全身薬物療法が行われる。薬物療法で縮小して切除可能になる例もある(conversion surgery)。

大腸の静脈還流の整理

・結腸、直腸上部: 上・下腸間膜静脈 → 門脈 → 肝臓 ・直腸中下部: 中・下直腸静脈 → 内腸骨静脈 → 下大静脈 → 肺(門脈を経由しない)

POINT

・大腸癌治癒切除後の再発部位は肝が最多、次いで肺。 ・理由: 大腸の静脈血は門脈を経て最初に肝臓へ流入する。 ・直腸癌では局所再発と肺再発が結腸癌より多い(直腸下部は門脈を経由せず体循環へ)。 ・再発の大部分は術後3年以内、ほぼすべてが5年以内。 ・大腸癌の肝・肺転移は切除可能なら切除が第一選択。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。