塗るほど悪化する顔の赤み―酒皶様皮膚炎に潜む「ステロイド長期外用」の落とし穴
第99回医師国家試験 G問題 第7問
国試問題にチャレンジ
65歳の女性。顔面の皮疹を主訴に来院した。半年前から顔面の痒みに対し,近医で処方された外用薬による治療を受けていた。最近,その外用薬に反応しない皮疹が出現し,増悪してきた。顔面の写真を別に示す。 使用していた可能性が高い外用薬はどれか。

- a.抗真菌薬
- b.免疫抑制薬
- c.ビタミンD3薬
- d.抗ヒスタミン薬
- e.副腎皮質ステロイド
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
顔面にステロイド外用薬を長期連用すると、皮膚萎縮や毛細血管拡張を背景に、びまん性の潮紅や毛孔一致性の丘疹・膿疱を生じる酒皶様皮膚炎(ステロイド酒皶)を起こすことがあり、中年以降の女性に多くみられます。初めは効いていた外用薬が効かなくなって増悪し、中止すると一時的にリバウンドが起こるため、悪循環に陥りやすいのが特徴です。治療は原因となったステロイドの中止とテトラサイクリン系抗菌薬の内服が中心で、リバウンドについて事前に説明することが重要です。抗真菌薬や抗ヒスタミン薬の外用は接触皮膚炎が主な副作用で、タクロリムス軟膏は顔面の長期管理に用いられる代替薬です。顔面は吸収率が高いため弱いランクを短期間に限るという原則は、どの診療科でも役立つ外用薬処方の基本です。
解答・解説
正解はeです
所見の整理
・65歳女性。顔面の皮疹。 ・半年前から顔の痒みに対して、近医処方の外用薬を使い続けていた(長期連用)。 ・最近になって、その外用薬が効かない皮疹が新たに出現し、悪化している。 ・写真では、前額部から両頬にかけて境界が比較的はっきりした紅斑があり、その上に毛孔(毛穴)に一致する小丘疹が多発している。
診断へのプロセス
顔面という皮膚の薄い部位に長期間外用薬を塗り続けた後、びまん性の潮紅・紅斑、毛細血管拡張、毛孔一致性の丘疹や膿疱が生じ、しかも元の外用薬では良くならない(むしろ中止すると一時的に悪化するため、やめられずに悪循環となる)という経過は、ステロイド外用薬の副作用として生じる酒皶様皮膚炎(ステロイド酒皶)に典型的である。中年以降の女性の顔面に多い。 鑑別として、酒皶(原因となる薬剤がなくても生じる)、口囲皮膚炎、接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、全身性エリテマトーデスの蝶形紅斑、皮膚真菌症(ステロイドで修飾された白癬など)が挙がるが、半年間の外用歴と外用薬抵抗性の増悪という経過が決め手になる。
設問の考え方
酒皶様皮膚炎を起こす外用薬として最も代表的なのは副腎皮質ステロイドである。したがって、顔面の痒みに対して処方されていた薬剤はステロイド外用薬であった可能性が最も高い。
選択肢考察
- ×a. 抗真菌薬
抗真菌薬の外用で酒皶様皮膚炎を起こすことはない。起こりうるのは接触皮膚炎などである。なお逆に、真菌症をステロイドで治療してしまうと、症状が修飾されて診断が難しくなる(異型白癬)ことがあり、そちらが注意点となる。
- ×b. 免疫抑制薬
外用の免疫抑制薬の代表はタクロリムス軟膏で、ステロイドのような皮膚萎縮や毛細血管拡張を起こしにくいため、顔面の湿疹に用いられる。酒皶様の皮疹を誘発した報告はあるものの頻度はまれで、主な副作用は塗布部位のほてり・刺激感や、ヘルペスなどの皮膚感染症である。本問で最も考えやすい薬剤ではない。
- ×c. ビタミンD3薬
活性型ビタミンD3外用薬(カルシポトリオール、マキサカルシトールなど)は主に尋常性乾癬や角化症に用いる薬剤であり、顔面の痒みに対して処方されることは通常ない。副作用は刺激感・紅斑や、大量使用時の高カルシウム血症であり、酒皶様皮膚炎は生じない。
- ×d. 抗ヒスタミン薬
抗ヒスタミン薬の外用剤は痒みに用いられることがあるが、酒皶様皮膚炎の原因にはならない。副作用としては接触皮膚炎(かぶれ)や光線過敏が問題となる程度である。
- ○e. 副腎皮質ステロイド
顔面は皮膚が薄く経皮吸収が高い部位であり、ステロイド外用薬を長期連用すると、皮膚萎縮、毛細血管拡張、潮紅、毛孔一致性の丘疹・膿疱を生じ、酒皶様皮膚炎となる。初めは抗炎症作用で症状が抑えられるため使用が続けられ、やがて外用薬に反応しなくなり増悪する。中止すると一時的にリバウンドで悪化するため、やめられずに悪循環に陥りやすい点も特徴である。
酒皶様皮膚炎(ステロイド酒皶)
・原因:顔面へのステロイド外用の長期連用(強いランクほど、また使用期間が長いほど起こりやすい)。 ・好発:中年以降の女性の顔面(頬、前額、鼻、口囲)。 ・症状:びまん性の潮紅・紅斑、毛細血管拡張、毛孔一致性の丘疹・膿疱、ほてり感・灼熱感。皮膚萎縮を伴う。口の周囲に限局するものは口囲皮膚炎と呼ばれる。 ・治療:原因のステロイド外用を中止する(中止後に一時的な悪化=リバウンドが起こるため、あらかじめ説明しておく)。テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン、ドキシサイクリン)の内服を併用し、症状の沈静化を図る。メトロニダゾール外用なども用いられる。
ステロイド外用薬の主な局所副作用
皮膚萎縮、皮膚線条、毛細血管拡張、紫斑、酒皶様皮膚炎、ステロイドざ瘡、多毛、皮膚感染症の誘発・悪化(白癬、カンジダ、ヘルペス、細菌感染)、創傷治癒遅延など。
顔面の湿疹への外用薬の使い分け
顔面は吸収率が高く副作用が出やすいため、弱いランクのステロイドを短期間に限って使うのが原則である。長期管理が必要な場合(アトピー性皮膚炎など)は、タクロリムス軟膏などのステロイド以外の抗炎症外用薬が選択肢となる。
POINT
・顔面へのステロイド外用の長期連用 → 酒皶様皮膚炎(潮紅、毛細血管拡張、毛孔一致性丘疹・膿疱)。 ・中年以降の女性の顔面に多い。 ・「外用薬に反応しなくなり増悪」「中止すると悪化」が特徴的な経過。 ・治療はステロイド中止+テトラサイクリン系抗菌薬内服。
