塗るほど悪化する顔の赤いブツブツ―ステロイド外用が招く酒皶様皮膚炎
第113回医師国家試験 C問題 第36問
国試問題にチャレンジ
47歳の女性。顔面の皮疹を主訴に来院した。2か月前から自宅近くの診療所で顔面の皮疹に対し外用薬が処方され,使用しているうちに新たな皮疹が出現してきたという。口周囲,頰部に丘疹,膿疱を認める。顔面の写真を別に示す。 この皮疹の原因と考えられる外用薬はどれか。

- a.抗菌薬
- b.抗真菌薬
- c.過酸化ベンゾイル
- d.活性型ビタミンD3
- e.副腎皮質ステロイド
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
顔面にステロイド外用薬を長期間塗り続けると、毛細血管拡張を伴う紅斑を背景に毛孔一致性の丘疹・膿疱が頰部や口囲に多発する酒皶様皮膚炎(口囲に限局すれば口囲皮膚炎)を生じます。塗布中は一時的に改善して見え、中止するとリバウンドで悪化するため、使用を続けて悪循環に陥りやすいのが特徴です。抗菌薬、抗真菌薬、過酸化ベンゾイル、活性型ビタミンD3の外用は接触皮膚炎の原因にはなりえますが、酒皶様皮膚炎は起こしません。治療はステロイドの中止が基本で、反跳性増悪をあらかじめ説明し、テトラサイクリン系内服などで炎症を抑えながら離脱させます。皮膚の薄い顔面では弱いランクを短期間使うという原則とあわせて、ステロイド外用の局所副作用を体系的に理解しておくことが、日常診療での適正使用につながります。
解答・解説
正解はeです
所見の整理
・47歳女性、顔面の皮疹で受診。 ・2か月前から近医で顔面の皮疹に外用薬を処方され、使っているうちに新しい皮疹が出てきた。 ・口周囲と頰部に丘疹・膿疱がある。写真では両頰から口囲・下顎にかけて、紅斑を背景に小丘疹と膿疱が散在・多発している。
診断に至るプロセス
ポイントは「顔面への外用薬を数か月単位で使い続けたのちに、口囲・頰部に紅斑・丘疹・膿疱が出てきた」という経過である。この組み合わせから、副腎皮質ステロイド外用薬の長期連用による酒皶様皮膚炎(口囲に限局する場合は口囲皮膚炎)が最も考えられる。 顔面は皮膚が薄く経皮吸収がよいため、ステロイド外用薬の局所副作用が出やすい部位である。ステロイドを使っている間は炎症が抑えられて一時的に改善して見えるが、連用するうちに毛細血管拡張を伴う紅斑、毛孔に一致する丘疹・膿疱が生じ、ほてり感を伴うこともある。中止すると一時的にかえって悪化(リバウンド)するため、患者が使用を続けてしまい悪循環に陥りやすい。 鑑別として、外用薬による接触皮膚炎(刺激性・アレルギー性)が挙がる。しかし接触皮膚炎は通常、使い始めて数日〜数週で、外用部位に一致した瘙痒の強い紅斑・漿液性丘疹・小水疱などの湿疹病変として現れ、毛包に一致する膿疱が主体となることは少ない。尋常性痤瘡(にきび)も丘疹・膿疱を呈するが、47歳での新規発症で外用薬使用後に出現した経過や、面皰(コメド)の記載がないことから考えにくい。
設問の考え方
選択肢の外用薬はいずれも接触皮膚炎の原因にはなりうるが、長期使用で酒皶様皮膚炎を引き起こすことが知られているのは副腎皮質ステロイドである。
選択肢考察
- ×a. 抗菌薬
外用抗菌薬(クリンダマイシン、ナジフロキサシンなど)は尋常性痤瘡の炎症性皮疹や皮膚細菌感染症に用いられる。副作用として接触皮膚炎や刺激感はあり得るが、酒皶様皮膚炎の原因とはならない。むしろ丘疹・膿疱を抑える方向に働く薬剤である。
- ×b. 抗真菌薬
外用抗真菌薬(ケトコナゾールなど)は白癬・カンジダ症や脂漏性皮膚炎に用いられる。副作用として接触皮膚炎を起こすことはあるが、酒皶様皮膚炎の原因とはならない。
- ×c. 過酸化ベンゾイル
過酸化ベンゾイルは抗菌作用と角質剥離作用をもつ尋常性痤瘡の外用薬である。使用初期の刺激感・乾燥・紅斑・落屑(刺激性皮膚炎)や、アレルギー性接触皮膚炎を生じることがあるが、酒皶様皮膚炎の原因とはならない。
- ×d. 活性型ビタミンD3
活性型ビタミンD3外用薬(カルシポトリオール、マキサカルシトールなど)は表皮角化細胞の増殖を抑え分化を促す作用をもち、尋常性乾癬や角化症に用いられる。副作用は刺激感・接触皮膚炎のほか、広範囲・大量に使うと高カルシウム血症をきたし得ることが重要であるが、酒皶様皮膚炎の原因とはならない。
- ○e. 副腎皮質ステロイド
副腎皮質ステロイド外用薬を顔面に長期間使い続けると、皮膚萎縮や毛細血管拡張とともに、紅斑・毛孔一致性の丘疹・膿疱を特徴とする酒皶様皮膚炎(口囲に限局すれば口囲皮膚炎)を生じる。2か月の外用継続中に口周囲・頰部の丘疹・膿疱が出現した本例の経過はこれに合致する。治療の基本は原因となったステロイド外用の中止であり、中止後の一時的な増悪に備えて説明を行い、テトラサイクリン系抗菌薬の内服などで炎症を抑えながら離脱させる。
ステロイド外用薬の局所副作用
・皮膚萎縮、皮膚線条、紫斑(真皮のコラーゲン産生抑制による) ・毛細血管拡張 ・酒皶様皮膚炎・口囲皮膚炎 ・ステロイド痤瘡(毛孔一致性の丘疹・膿疱) ・多毛 ・感染症の誘発・増悪:白癬(ステロイドで修飾され典型像を失った白癬を異型白癬という)、カンジダ症、単純ヘルペス・伝染性軟属腫などのウイルス感染症、毛包炎などの細菌感染症 ・接触皮膚炎(ステロイドそのものや基剤によるが頻度は低い) ・眼周囲への使用では眼圧上昇(緑内障)・白内障にも注意する。 顔面・陰部・腋窩など皮膚の薄い部位は吸収率が高く副作用が出やすいため、弱めのランクを短期間使うのが原則である。
酒皶様皮膚炎の臨床像
・好発部位:頰部、口囲、鼻周囲、前額部、眼囲。中年女性に多い。 ・所見:びまん性の潮紅・紅斑と毛細血管拡張を背景に、毛孔に一致した小丘疹・膿疱が多発する。ほてり感・灼熱感を伴うことがある。 ・口囲皮膚炎:病変が口の周囲に限局するもので、口唇のすぐ外側(口紅縁に接する部分)が帯状に保たれることが多い。 ・原因:ステロイド外用薬の長期使用が代表的。タクロリムス外用でも同様の皮疹が報告されている。 ・治療:ステロイド外用の中止(中止後1〜数週間の反跳性増悪をあらかじめ説明する)、テトラサイクリン系抗菌薬(ミノサイクリン、ドキシサイクリン)の内服、メトロニダゾール外用などを用いる。
酒皶(しゅさ)との関係
酒皶は中高年の顔面中央部に紅斑・毛細血管拡張・丘疹・膿疱などを生じる原因不明の慢性炎症性疾患で、酒皶様皮膚炎は外用薬など誘因の明らかな、これに類似した皮膚炎である。
POINT
・顔面へのステロイド外用薬の長期連用→酒皶様皮膚炎(口囲に限局すれば口囲皮膚炎)。 ・所見は頰部・口囲の紅斑、毛細血管拡張、毛孔一致性の丘疹・膿疱。 ・治療はステロイド外用の中止が基本。中止後のリバウンドを説明し、テトラサイクリン系内服などを併用する。 ・抗菌薬、抗真菌薬、過酸化ベンゾイル、活性型ビタミンD3の外用はいずれも接触皮膚炎の原因になり得るが、酒皶様皮膚炎は起こさない。 ・活性型ビタミンD3外用は大量使用で高カルシウム血症に注意。
