首に掛けた聴診器が犯人?―看護師の頸部皮膚炎とパッチテスト
第104回医師国家試験 B問題 第42問
国試問題にチャレンジ
26歳の女性。看護師。両側頸部の皮疹を主訴に受診した。1年前から両側頸部に痒みを伴う帯状の紅色の皮疹が出現した。休暇中は軽快したが,仕事を再開すると再燃した。左側頸部の写真を別に示す。 診断に最も有用なのはどれか。

- a.針反応
- b.光線テスト
- c.パッチテスト
- d.プリックテスト
- e.スクラッチテスト
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
皮疹が特定の物の接触部位に一致し、曝露をやめると軽快して再開すると再燃する経過は、接触皮膚炎を強く示唆します。本例は看護師が首に掛ける聴診器の金属やゴムによるアレルギー性接触皮膚炎が疑われ、Ⅳ型(遅延型)アレルギーの原因同定にはパッチテスト(48時間貼付し、除去後から72時間後以降まで判定)が最も有用です。プリックテストやスクラッチテストは15〜20分で判定するⅠ型(即時型)アレルギーの検査で、針反応はBehçet病、光線テストは光線過敏症の検査です。判定までの時間とアレルギーの型を対応させて整理すると、検査選択を迷わず行えます。原因物質を特定して回避することが根本的な治療となり、職業性皮膚炎では就労の継続にも直結します。
解答・解説
正解はcです
所見の整理
・26歳女性、職業は看護師。 ・1年前から両側頸部に、痒みを伴う帯状の紅斑が出現している。 ・休暇中は軽快し、仕事に戻ると再燃する。つまり職場で繰り返し触れる何かが原因と考えられる。 ・写真では、頸部に掛けた聴診器の金属製チューブ(耳管部)が皮膚に当たっており、その接触部位に一致して境界のはっきりした紅斑がみられる。
診断へのプロセス
皮疹が「特定の物が触れる部位」に限られ、「その物に触れる期間だけ悪化する」という経過は、接触皮膚炎の典型である。両側頸部という分布も、聴診器を首に掛ける習慣とよく合う。痒みが強く、慢性に再燃を繰り返すことから、刺激性ではなくアレルギー性接触皮膚炎(Ⅳ型=遅延型アレルギー)が疑われる。原因として、聴診器の金属(ニッケル、クロムなど)や、チューブ・被覆部分のゴム(加硫促進剤など)が考えられる。
設問の考え方
アレルギー性接触皮膚炎の診断を確定し、原因物質(アレルゲン)を特定するには、疑わしい物質を皮膚に一定時間貼付して遅延型反応を観察する検査を行う。Ⅳ型アレルギーの検出に適した検査を選べばよい。即時型(Ⅰ型)アレルギーを調べる検査や、他疾患に特有の検査との区別が問われている。
選択肢考察
- ×a. 針反応
針反応は、滅菌した注射針で前腕の皮膚を刺し、24〜48時間後に刺入部に紅斑や小膿疱が生じるかをみる検査である。皮膚の過敏性(好中球の反応亢進)を反映し、Behçet病の診断の参考所見として用いられる。スウィート病などでもみられることがある。本例は接触部位に一致した湿疹であり、Behçet病を疑う口腔内アフタ・外陰部潰瘍・眼症状などもないので、適応はない。
- ×b. 光線テスト
光線テストは、紫外線(UVA、UVB)や可視光線を皮膚に照射し、最小紅斑量(MED:紅斑を生じさせる最小の照射量)の低下などを調べる検査で、光線過敏症(日光皮膚炎、薬剤性光線過敏症、色素性乾皮症など)を疑うときに行う。光アレルギー性接触皮膚炎を疑う場合は、貼付と照射を組み合わせた光パッチテストを用いる。本例の皮疹は日光が当たる部位ではなく、聴診器が触れる部位に一致しているため、光線テストは診断に役立たない。
- ○c. パッチテスト
パッチテスト(貼付試験)は、疑わしい物質を専用の絆創膏(パッチテストユニット)で背部や上腕内側に48時間貼付し、除去後(48時間後)、72時間後、1週間後などに判定する検査である。Ⅳ型アレルギーによるアレルギー性接触皮膚炎の原因物質を同定する標準的な方法で、本例のような職業性接触皮膚炎に最も有用である。金属ではニッケル、クロム、コバルトなどの試薬、ゴム製品では加硫促進剤などの試薬が用意されており、聴診器そのものの一部を貼付して調べることもできる。原因を特定できれば、その物質を避ける(例:チューブをカバーで覆う、金属を含まない製品に替える)という根本的な対策につながる。
- ×d. プリックテスト
プリックテストは、アレルゲン液を皮膚に1滴置き、専用の針(ランセット)や注射針で皮膚の表面を浅く刺して、15〜20分後に膨疹と紅斑の大きさを判定する検査である。IgEが関与する即時型(Ⅰ型)アレルギーを調べるもので、蕁麻疹、食物アレルギー、ラテックスアレルギー、アレルギー性鼻炎などで用いられる。本例は遅延型反応による湿疹であり、この検査では原因を同定できない。
- ×e. スクラッチテスト
スクラッチテスト(掻破試験)は、注射針などで皮膚に浅い線状の引っかき傷を作り、そこにアレルゲン液を滴下して、15〜20分後の膨疹・紅斑を判定する検査である。プリックテストと同じく即時型(Ⅰ型)アレルギーを調べる方法であり、遅延型のアレルギー性接触皮膚炎の診断には適さない。
接触皮膚炎の分類
・刺激性接触皮膚炎:物質そのものの刺激・毒性によって生じる。免疫学的機序によらず、誰にでも起こりうる。洗剤、酸・アルカリ、頻回の手洗いなど(看護師の手荒れもこの型が多い)。 ・アレルギー性接触皮膚炎:Ⅳ型(遅延型、T細胞介在性)アレルギー。一度感作が成立した人に限り、再度接触すると通常24〜48時間後から湿疹が生じる。金属(ニッケル、クロム、コバルト)、ゴム(加硫促進剤)、染毛剤(パラフェニレンジアミン)、植物(ウルシ)、外用薬などが原因となる。 ・光接触皮膚炎:物質と光線の両方がそろうと生じる(湿布薬のケトプロフェンなど)。光パッチテストで診断する。
皮膚アレルギー検査の整理
・Ⅰ型(即時型)を調べる検査:プリックテスト、スクラッチテスト、皮内テスト。判定は15〜20分後。 ・Ⅳ型(遅延型)を調べる検査:パッチテスト。判定は48時間後、72時間後(1週間後も)。 ・光線過敏を調べる検査:光線テスト(MEDの測定)、光パッチテスト。 ・Behçet病:針反応。
パッチテストの注意点
・ステロイドや免疫抑制薬の内服・外用は偽陰性の原因となる。 ・貼付部位を濡らさない、強い日光を当てない。 ・貼付直後に現れる刺激反応とアレルギー反応とを区別するため、除去直後だけでなく72時間後以降にも判定する。
POINT
・皮疹が接触部位に一致し、原因への曝露中止で軽快・再開で再燃する経過は接触皮膚炎を示唆する。 ・アレルギー性接触皮膚炎はⅣ型アレルギーで、原因同定にはパッチテストを行う(48時間貼付、48・72時間後以降に判定)。 ・プリックテスト・スクラッチテストはⅠ型(即時型)アレルギーの検査。 ・針反応はBehçet病、光線テストは光線過敏症の検査。
