StudyMed医師国家試験

1歳半健診の皮膚で一番多いのは?―「生まれたとき」と「1歳半」で変わる皮膚疾患の顔ぶれ

第105回医師国家試験 A問題 第2問

国試問題にチャレンジ

第105回 A問題 第2問

1歳6か月児健康診査でみられる皮膚疾患で最も頻度が高いのはどれか。

  1. a.アトピー性皮膚炎
  2. b.イチゴ〈苺〉状血管腫
  3. c.サーモンパッチ
  4. d.尋常性魚鱗癬
  5. e.伝染性軟属腫

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、1歳6か月児健康診査で出会う皮膚疾患のうち、どれが最も多いかを問う問題だ。どれも乳幼児にみられる疾患だけれど、ポイントは「その年齢の時点で、どれくらいの子が持っているか」という有病率の視点だよ。
医学生医学生
乳児の皮膚というと、サーモンパッチがすごく多いイメージがあります。小児科の臨床実習で新生児室を回ったとき、おでこが赤い赤ちゃんをたくさん見ました。
ドクタードクター
そこが今回の落とし穴なんだ。サーモンパッチは額の中央や眉間、上眼瞼にみられる淡い紅色の平らな斑で、新生児では数十%と本当に多い。でも大部分は1歳半ごろまでに自然に消えてしまう。だから健診の時点ではもう目立たなくなっているんだ。
医学生医学生
つまり「新生児期に一番多いもの」と「1歳半で残っているもの」は別だということですね。
ドクタードクター
その通り。時間軸で考えるのが大事なんだ。では、イチゴ状血管腫はどうだろう。
医学生医学生
今は乳児血管腫と呼ぶんでしたよね。生後に出てきて大きくなって、そのあと小さくなる、と講義で習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。血管内皮細胞が増殖する良性腫瘍で、生後数週以内に現れ、1歳ごろまで増大し、その後数年かけて退縮していく。頻度は日本人の乳児で約1%前後とされていて、そもそも多い疾患ではないんだ。
医学生医学生
そうすると、残るのはアトピー性皮膚炎、尋常性魚鱗癬、伝染性軟属腫ですね。水いぼは保育園の子にすごく多い印象ですが……。
ドクタードクター
伝染性軟属腫はポックスウイルスによる感染症で、中心がくぼんだ光沢のある小丘疹が多発する。プールや集団生活で広がるから、好発は幼児期から学童期だね。1歳半でもみられるけれど、頻度としてはアトピー性皮膚炎には及ばない。
医学生医学生
尋常性魚鱗癬は、フィラグリン遺伝子の変異でしたっけ。
ドクタードクター
そう。皮膚のバリア機能にかかわるフィラグリンの異常で、四肢伸側や体幹に乾燥と細かい鱗屑が出る。アトピー性皮膚炎を合併しやすいことも重要だけれど、頻度はやはりアトピー性皮膚炎より明らかに低い。
医学生医学生
ということで、正解はアトピー性皮膚炎ですね。乳幼児の1割くらいが持っていると聞いたことがあります。
ドクタードクター
正解。厚生労働省の研究班による全国調査でも、1歳6か月児での有病率はおよそ10%程度と報告されている。かゆみを伴う湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性疾患で、背景には皮膚バリア機能の低下とアトピー素因がある。
医学生医学生
皮疹の分布は年齢で変わるんでしたよね。CBTの勉強で表にまとめた覚えがあります。
ドクタードクター
いいね。乳児期は顔面・頭部から始まる湿潤した紅斑・丘疹で、幼小児期になると頸部や肘窩・膝窩などの屈側に乾燥した湿疹や苔癬化が目立つ。思春期以降は顔面・頸部・上胸部・背部など上半身に強くなる。診断は、かゆみ、特徴的な皮疹と分布、慢性・反復性の経過の3つで考え、慢性の目安は乳児で2か月以上、それ以外では6か月以上だ。
医学生医学生
健診で湿疹のある子を見たら、分布と経過を確認すればいいんですね。
ドクタードクター
そう。臨床で注意したいのは、バリアが壊れた皮膚では伝染性軟属腫や伝染性膿痂疹が広がりやすいこと。それから、うなじにできる同様の赤い斑はウンナ母斑と呼ばれ、額のサーモンパッチと違って成人まで残ることが多い。保護者に「いずれ消えますよ」と説明するときは部位に気をつけよう。
医学生医学生
同じ血管性の斑でも、場所で経過が違うんですね。乳児血管腫の治療はどうするんですか。
ドクタードクター
多くは自然退縮を待つけれど、目の近くで視機能を妨げるもの、気道にかかわるもの、潰瘍をつくるものなどではプロプラノロール内服などの治療を考慮する。健診は「今ある所見」と「これからの経過」を両方見る場なんだよ。

まとめ

1歳6か月児健康診査で最も多くみられる皮膚疾患はアトピー性皮膚炎で、有病率はおよそ10%程度と報告されています。サーモンパッチは新生児では数十%と非常に多いものの大部分は1歳半ごろまでに消え、乳児血管腫(イチゴ状血管腫)は乳児の約1%前後で1歳ごろを境に退縮に向かいます。伝染性軟属腫や尋常性魚鱗癬も幼児期にみられますが、頻度はアトピー性皮膚炎に及ばず、いずれもバリア機能の低下を介してアトピー性皮膚炎と関連が深い疾患です。アトピー性皮膚炎は乳児期の顔面・頭部から幼小児期の屈側へと皮疹の分布が変わり、かゆみ・特徴的な皮疹と分布・慢性反復性の経過で診断します。皮膚疾患を「どの時期に多く、いつ消えるか」という時間軸で整理しておくと、健診や外来での説明や判断に役立ちます。

解答・解説

正解はaです

1歳6か月児健康診査(母子保健法に基づく乳幼児健診の一つ)で遭遇する皮膚疾患のうち、最も多いものを選ぶ問題である。考えるポイントは「その年齢でどれくらいの子どもが持っているか(有病率)」である。 選択肢はいずれも乳幼児にみられる皮膚疾患であるが、頻度には大きな差がある。 ・アトピー性皮膚炎:乳幼児の約1割前後にみられる、きわめてありふれた疾患である。厚生労働省の研究班による全国調査でも、1歳6か月児での有病率はおよそ10%程度と報告されている。 ・イチゴ状血管腫(乳児血管腫):発生頻度は乳児の約1%前後で、しかも1歳半ごろにはすでに退縮期に入っている。 ・サーモンパッチ:新生児期には非常に多い(数十%)が、大部分は1歳半ごろまでに消えてしまう。 ・尋常性魚鱗癬、伝染性軟属腫:幼児期にみられるが、頻度はアトピー性皮膚炎に及ばない。 「新生児期に最も多いもの」と「1歳6か月の時点で残っているもの」を区別することが鍵であり、1歳6か月の時点で最も多いのはアトピー性皮膚炎である。

選択肢考察

  1. ○a.  アトピー性皮膚炎

    アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性の皮膚疾患で、皮膚のバリア機能低下とアトピー素因(アレルギーを起こしやすい体質)が背景にある。乳児期(生後2〜3か月ごろ)から顔面・頭部に始まり、幼児期には頸部や肘窩・膝窩などの屈側に移っていくのが典型である。乳幼児での有病率は約1割前後と高く、1歳6か月児健診でも約10%程度にみられると報告されており、選択肢の中で最も頻度が高い。診断は、かゆみ、特徴的な皮疹とその分布、慢性・反復性の経過(乳児では2か月以上、その他では6か月以上)の3項目を満たすことによる。

  2. ×b.  イチゴ〈苺〉状血管腫

    イチゴ状血管腫は現在「乳児血管腫」と呼ばれ、血管内皮細胞が増殖してできる良性腫瘍である。生後数週以内に出現し、生後数か月〜1歳ごろまで急速に大きくなる(増殖期)が、その後は数年かけて自然に小さくなっていく(退縮期)。発生頻度は日本人の乳児で約1%前後であり、アトピー性皮膚炎よりはるかに少ない。視機能や気道を障害する部位、潰瘍を形成するものなどではプロプラノロール内服などの治療が考慮される。

  3. ×c.  サーモンパッチ

    サーモンパッチは、額の中央、眉間、上眼瞼などにみられる淡い紅色の平らな斑で、毛細血管奇形(かつての単純性血管腫)の一型とされる。新生児では数十%と非常に高頻度にみられるが、大部分は1歳6か月ごろまでに自然消退するため、1歳6か月児健診の時点での頻度は低い。なお、うなじ(項部)に生じる同様の斑はウンナ母斑と呼ばれ、成人まで残ることが多い。

  4. ×d.  尋常性魚鱗癬

    尋常性魚鱗癬は、表皮の角化とバリア機能にかかわるフィラグリン遺伝子の変異が原因となる遺伝性疾患(常染色体顕性〔優性〕遺伝の形式をとる)で、生後数か月以降に発症し、四肢伸側や体幹に皮膚の乾燥と細かい鱗屑(うろこ状の皮膚片)がみられる。アトピー性皮膚炎を合併しやすい。乳幼児期に目立ち始める疾患であるが、頻度はアトピー性皮膚炎よりも明らかに低い。

  5. ×e.  伝染性軟属腫

    伝染性軟属腫はポックスウイルス科の伝染性軟属腫ウイルスによる感染症で、いわゆる「水いぼ」である。中心がくぼんだ(中心臍窩を伴う)光沢のある小丘疹が多発する。皮膚どうしの接触やタオル・浮き輪などの共用で感染し、プールや保育園・幼稚園での集団生活が感染の機会となる。好発は幼児期から学童期であり、1歳6か月児にもみられるが、頻度はアトピー性皮膚炎より低い。アトピー性皮膚炎でバリア機能が低下した皮膚では広がりやすい。

乳幼児健康診査

母子保健法により、市町村は1歳6か月児健康診査と3歳児健康診査を行うことが義務づけられている。そのほか乳児健診(3〜4か月児健診など)が広く行われている。健診では身体発育、運動・精神発達、言語、視聴覚、歯科、皮膚などが確認される。

乳幼児の主な皮膚疾患と時期

・新生児期に多いもの:新生児中毒性紅斑、稗粒腫、新生児痤瘡、サーモンパッチ、蒙古斑など。多くは自然に消える。 ・乳児期に多いもの:乳児脂漏性皮膚炎(生後数か月まで)、おむつ皮膚炎、乳児血管腫、アトピー性皮膚炎の発症。 ・幼児期に多いもの:アトピー性皮膚炎、伝染性軟属腫、伝染性膿痂疹(とびひ)、尋常性魚鱗癬の顕在化。

血管性病変の整理(ISSVA分類)

・血管性腫瘍:乳児血管腫(旧イチゴ状血管腫)など。生後に出現して増大し、その後自然退縮する。 ・血管奇形:毛細血管奇形(旧単純性血管腫、ポートワイン母斑)など。生下時から存在し、体の成長に比例して大きくなり自然消退しない。ただし、額や眉間のサーモンパッチは例外的に自然消退しやすい。

アトピー性皮膚炎の年齢による皮疹の変化

乳児期:顔面・頭部から始まる湿潤した紅斑・丘疹で、体幹・四肢へ広がる。 幼小児期:頸部、肘窩・膝窩などの屈側に乾燥した湿疹、苔癬化。 思春期・成人期:顔面・頸部・上胸部・背部など上半身に皮疹が強い。

POINT

・1歳6か月児健診でみられる皮膚疾患で最も多いのはアトピー性皮膚炎(有病率は約10%程度)。 ・サーモンパッチは新生児では非常に多いが、大部分は1歳半ごろまでに消える(項部のウンナ母斑は残りやすい)。 ・乳児血管腫(イチゴ状血管腫)は乳児の約1%前後、1歳ごろまで増大し、その後数年で自然退縮する。 ・伝染性軟属腫は水いぼ(ポックスウイルス)、尋常性魚鱗癬はフィラグリン遺伝子変異で、ともにアトピー性皮膚炎と関連が深い。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。